○森本哲生君
民主党・
無所属クラブの森本哲生でございます。
本日は、河野
議長のお許しを得て、初
登壇のお許しをいただき、万感胸に迫る思いでございます。この場を与えていただきました皆様に心より感謝を申し上げ、ただいま
議題となりました
内閣提出の運輸の
安全性の
向上のための
鉄道事業法等の一部を改正する
法律案につきまして、
質疑をいたします。(
拍手)
ただいまの北側国土交通
大臣の
趣旨説明によれば、本
法案は、最近のヒューマンエラーなどによる運輸分野の事故、トラブルの多発という立法事実に基づき立法対応を行うということであります。
私は、本
法律案が、立法事実に的確に対応した施策体系、施策
内容になっているか、特に、種々の業務を行うこととなる事業者にとって対応予測が容易でわかりやすい
内容になっているか、
法律の施行によって交通サービスに対する
国民の安心を取り戻すことができるのかという、三つの基本的な視座に立って
議論することが必要だと考えます。
運輸事業者は、昨今、経営
環境が大変厳しい
状況にあり、そのことはマクロ的指標で見ると一目瞭然であります。事業者は、原価コストの上昇など外的要因によっても経営
環境が大きく左右される中、その上でアウトソーシングの
推進による経営の
効率化を図っており、さらには労働生産性の
向上を目指して競争力を一層強化しなければならないという、厳しい経営判断、経営戦略を迫られていることは周知の事実であります。
昨年四月二十五日のJR福知山線脱線事故では、百七名のとうとい命が犠牲となり、負傷者も五百名を超えております。そして、今もなお後遺症で苦しんでおられる方がおみえになります。
昨年九月六日に鉄道事故調査委員会がまとめた建議に従い、自動列車停止装置の機能
向上、事故発生時における列車防護の確実な実行等については、JR西
日本による改善が行われているところであります。委員会の建議には含まれておりませんが、ラッシュ時でも余裕のあるダイヤを編成すること、乗務員に対する
指導監督の
あり方を基本的に
改革することなども事故の予防策として実行されていることを承知いたしております。
また、航空分野においては、
我が国に限らず諸外国のインシデントを見る限り、より一層高い
安全性の
向上とヒューマンファクターの防止の目的でコンピューターを多用いたしておりますが、人とコンピューターのインターフェイスが開発途上にあることから、これらを暗示する事故、トラブルが発生するようになってきております。第四世代型の旅客機においても、過去の事故から得た教訓がかなり反映されていることとは思いますが、究極的には同様の問題が当てはまるのではないでしょうか。
安全管理の徹底に向けた企業努力は、
先ほど申し上げた経営
環境の厳しい中でも、決して軽んじられることがあってはなりません。
それでは、このような企業、事業者による安全管理の徹底、事故防止の対策と、
政府の
権限と
責任ということがどのような関係にあるのが望ましいのか、
見解を述べさせていただきます。
市場化テスト
法案に象徴されるように、小泉内閣は今、民間にできることは民間にというスローガンの
もとで、公共サービスの民間開放を徹底して進められようとしております。しかしながら、他方では、運輸サービスの安全に対するリスクは、このような規制
改革の
推進が直接的にも間接的にも起因しているということも問題視されるべきではないでしょうか。
むしろ、運輸サービスにおける事故というリスク、内部不経済を絶対に発生させないためには、官と民がしっかりとしたパートナーシップを組んで、どのように
国民全体の安心を取り戻すか、事業者に対する
国民の信頼を取り戻すかという真摯な政治姿勢が求められると私は考えます。本
法案がこの試金石となると言っても過言ではないでしょう。
また、本
法律案のスキームについて、総論的に
問題点を幾つか指摘させていただきます。
第一に、本
法律案の構成についてであります。
本
法律案は、事業者に対し安全管理の
責務を負わせる部分、インフラとしての踏切道対策に係る部分、さらには鉄道・航空事故調査会の権能に係る部分と、三つの相異なる政策のユニットから構成をされています。
あえてこのように一括して本
法律案が構成されていることは、各セクトに関する十分な審議を
ないがしろにするものであり、大いに
議論することが必要と考えます。また、立法事実と施策の関係については、人命がかかわる重大な事柄を扱う以上、きっちりと分割して、個別に十分な検証を行うことが当然と考えます。
第二に、本
法律案の形式についてであります。
本
法律案の本則には、政令及び国土交通省令という文字が五十カ所以上出てまいります。この点、
憲法四十一条の「立法」を実質的
意味の立法ととらえるならば、
法律の形式として大きな問題を内在するものと言わざるを得ません。
安全管理体制の確立に向けて、事業者の対応は、これら命令の具体的
内容によって定まります。本
法律案はこの点が明らかではなく、実務、
現場の
問題点を踏まえた十分な検証をすることができないと考えます。
第三に、本
法律案の射程範囲の問題です。
各事業者法の一部改正という法形式をとっています。対象は、鉄道事業法、鉄道営業法、軌道法、道路運送法、貨物自動車運送事業法、海上運送法、内航海運業法、航空法です。これらはどのような基準で対象が決められたのでございましょうか。
先ほどの立法事実にかんがみれば、港湾運送事業法や倉庫業法を含める必要があると考えますが、いかがでございましょうか。
さらには、
平成十四年六月には、自動車運転代行業の業務の適正化に関する
法律が施行され、
平成十六年現在で認定された運転代行業者は五千六百三十五に上っています。
法律の所管は警察庁となっておりますが、サービスの客観的態様を比べれば、これも本
法律案の射程範囲に入るのか入らないのか、陸海空のあらゆる輸送モードを所管する国土交通省として、より深く検討する必要があると思います。
次に、本
法律案の各論部分について、
問題点を幾つか指摘します。
まず第一に、安全管理規程と安全統括管理者についてであります。
事業者は、輸送の安全に関する内部管理規程をマニュアル化し、管理職、従業員に周知徹底をしているところでありますが、今回さらに安全管理規程の作成が
義務づけられることで
安全性の
向上が担保されるでしょうか。単なる屋上屋にならないでしょうか。
また、法令によって定められる安全管理規程の
内容は、事業
規模によって差異がないと見られることから、特に中小の事業者にとっては
負担になり、安全の
格差が生じる危険性があります。安全管理規程が余りにも精緻になり過ぎると、かえって、
人間本性に由来する冷静かつ的確な危険回避の判断を失わしめることにもなりかねません。
さらに、安全統括管理者とは、事業体の中でどのような法的地位を有するのかということも明確でありません。もし、経営の実質的意思決定に参画する職階を想定しているのであれば、身分、職務の独立性の担保が不可欠だと思われます。
第二に、報告の徴収と立入検査についてであります。
業種によっては安全管理の部分についてもアウトソーシングは相当程度進んでいますが、検査を受忍しなければならない
法律上の
義務を負う受託先をどこまでの範囲で考えるのか、基本的指針の
内容と関連して、その適正な判断が求められます。
さらに、近時の目まぐるしい会社法制の改正により、所有と経営の分離という株式会社
制度の本質と特徴が一層顕著になり、分社化が進展しています。例えば、阪急電鉄グループや
日本航空グループが持ち株会社に移行するなど、会社の所有者と実質的経営主体が異なる現象が見られます。これを単に民事法制上の問題として個別にとらえるのか、本
法律案の射程範囲に加え、報告の徴収と立入検査の対象とするのか、検討が必要ではないでしょうか。
第三に、海上運送に関してですが、船舶の安全航行及び汚染防止のための国際管理コード、通称ISMコードが国際航海に従事する総トン数五百トン以上のすべての船舶に適用をされます。本
法律案で新たに適用になる安全管理規程と
制度的に重複していないのか、実効性の点でも問題であります。
第四に、本
法律案の適用外である航空管制官のヒューマンエラー防止に関する問題です。
フライトナンバーの聞き違えによるニアミスによる事故、クローズ中の滑走路への着陸誘導など、再発防止のためにどのような
取り組みがなされてきたかということです。この問題も不可分一体で解決しなければ、真の安全は実現しないでしょう。
第五に、あかずの踏切対策であります。
平成十七年三月十五日に東武鉄道竹ノ塚駅構内の踏切で発生した事故は、踏切保安係員の重大な業務上の過失により、二名が死亡、二名が負傷をいたしました。
鉄道・航空事故調査会が事故調査を行わなかったその実質的な
理由と当該地区における高架化の見通しについて、現在、国土交通省はどのような見通しを立てておられるのかということを、特に
地域住民の方が重大な関心を持っておられます。今後五カ年の踏切道対策としてどのように数値
目標を持っておられるのか、それに対応する予算、
財源をどこまで考えておられるのか、本
法律案の施策とあわせてお
伺いをいたします。
第六に、ただいま触れました鉄道・航空事故調査委員会の
あり方であります。
これについては、アメリカの
国家運輸安全委員会と同様に独立した行政機関として、海上輸送と自動車輸送を含めたすべての輸送モードを所管する調査機関と改組することが、本
法律案の立法
趣旨に沿うのではないでしょうか。
本
法律案はまだまだ幾つかの論点がありますが、以上の点について北側国土交通
大臣の答弁をお願いし、私の
質疑は終わります。(
拍手)
〔
国務大臣北側一雄君
登壇〕