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山口壯君
民主党の
山口壯です。
民主党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
在日米軍駐留経費負担特別協定について
質問します。(
拍手)
このいわゆる
思いやり予算というのは、苦肉の策でしょうが、
同盟政策を金で済まそうという名残が感じられるし、何よりも、
我が国がみずから秩序をつくろうという志が感じられません。幾つもの違和感があります。
まず第一に、
我が国は、みずからの
防衛費を削りながら、この
思いやり予算を面倒見続けているわけですけれども、アメリカは、
国防費を過去何年もふやし続けています。
近年、
我が国は、ほぼ一貫して
防衛費を減らしています。
主要装備も減らしている。戦車は、
平成七年の
大綱で九百両だったものが、今の新
防衛大綱では六百両に、
護衛艦も五十隻から四十七隻に、そして
戦闘機も三百機から二百六十機に減るわけです。
我が国の
防衛費より
在日米軍の
駐留経費負担の方が大事なのか。
特に、
前回の
特別協定の
国会審議は五年前、二〇〇〇年の秋、すなわち、二〇〇一年の九・一一
同時テロ事件の前でした。九・一一前は
日本は金で済ます面があったかもしれないけれども、九・一一後は、ショー・ザ・フラッグと言われてインド洋へ
自衛艦を派遣し、ブーツ・オン・ザ・グラウンドと言われて
イラクへ
陸上自衛隊を派遣するよう踏み切ったわけで、
前回二〇〇〇年に議論をしたときと比べて、
我が国は金だけでなく実際に人を出しているという
意味で、
日米関係が質的に変化している
状況があります。それをすべて是とするものではないにせよ、従来からの
経費負担を機械的に継続することが適当なのかどうかは、よく吟味せねばなりません。
今回も同じように
請求書を突きつけられて、オーケーするのかどうか。
我が国がみずからの
防衛費を削っている中で、
前回同様、
思いやり予算によって
在日米軍の
駐留経費の面倒を見なければならないとする基本的哲学は何なのか。
外務大臣、基本的哲学について所見を求めます。(
拍手)
第二に、今回の
思いやり予算は、
もともと地位協定では読めないものです。そして、
日米地位協定は、一九六〇年に
締結されて以来、一度も改定されていません。
それならば、その場しのぎの、そのたび
ごとの
特別協定によってではなく、ホスト・ネーション・サポートを真っ正面から新しい
地位協定の中に書き込み、対応することが本筋かつ望ましいのではないか。そして、アメリカにも裁判権の問題等、譲るところは譲らせる、それが
外交でしょう。
地位協定の改定なしに、
運用でもって改善するというその場しのぎのやり方は、既に限界に来ている。裁判権の問題等含めて、
地位協定の改定交渉をすべきです。
外務大臣の
答弁を求めます。
第三に、そもそも
思いやり予算は、
我が国の
安全保障をアメリカに守ってもらうという発想が根底にあるわけで、いわゆる核の傘もそのような発想の一環ですが、今、果たして
日本の
安全保障について、本当にアメリカ任せでいいのかどうか。
例えば、小泉内閣が
イラクへの
陸上自衛隊の派遣を決めた際には、いざというときに北朝鮮から守ってもらわねばならないからということも大きな要因だったでしょうが、アメリカは、北朝鮮の核・
ミサイル問題を六カ国
協議という形で
中国に丸投げしてしまっており、何もしていないわけです。のみならず、北朝鮮を攻撃しないと言ってしまっているわけですから、アメリカの核の傘は実質上なくなっているかもしれないと覚悟しなければなりません。
北朝鮮は、既に核弾頭を何発も持っている。そして、毎年ふやしています。
ミサイル防衛についてその技術的欠陥が種々議論されることもあわせて、
我が国の
安全保障について、本当にアメリカ任せで大丈夫か、我々はそろそろ、ギブ・ミー・チョコレートの
世界から目覚めるべきではないのか。
外務大臣の所見を求めます。(
拍手)
第四に、今回の
特別協定に密接に関連するものとして、
沖縄海兵隊のグアム移転にかかわる費用の話があります。
米軍再編の一環として海兵隊がグアムに移転することに伴う
経費を分担するのかどうかという話です。
しかし、グアムの海兵隊は、
在日米軍ではないわけですから、これまでのように
在日米軍に関する
地位協定、
特別協定ではカバーできません。
約八千億円の
経費分担が
日米当局間で議論されていると言われますけれども、
外務大臣に
質問します。そもそも、外国に駐留していた
米軍がどこか他国に移転するとき、その移転
経費を出した前例が
世界のどこかにあったでしょうか。私は、寡聞にして聞いたことがありません。
今、原理原則があいまいになってしまっていないか。
米軍の何を
日本が
負担すべきか、何を面倒見ることが
日本として正しいのか。
沖縄の
負担を軽くするためと言えば、いかにもそれらしく聞こえるけれども、果たして、何から何まで面倒を見るのが
我が国のあるべき
同盟政策なのか。
誇りある
日本の
同盟政策として、グアムに
米軍のための住宅を建てたり、レクリエーション
施設をつくったり、病院、学校、育児所、銀行、郵便局、果てはガソリンスタンドからスーパーマーケットなどなど、本当に
負担するのかどうか。これは一体どういう
経費なのか。
沖縄からの立ち退き料ですか。同盟の
考え方から余りにもかけ離れている。まるで、属国が宗主国に貢ぎ物をするような構図にも見えてしまう。このような
経費分担をアメリカ
政府が当然のことのように言うこと自体、おかしい。自分の出身でもあり、これは私情において言うに忍びないけれども、
外務省も、アメリカにこんなことを言わせるようでは、どうかしている。
これは
思いやり予算ではなく、アメリカが、
日本はどうせ言うことを何でも聞くだろうとたかをくくって、思いつきで突きつけている、思いつき予算とでも呼ばれるようなものです。(
拍手)
昨年十月のいわゆる2
プラス2の文書で、
日本国政府は、「
米国政府と
協力して、これらのグアムへの移転を実現可能とするための適切な資金的その他の
措置を見出すための
検討を行う。」となっています。しかし、このような新しい法的枠組みを要するであろう支出について、国会の議論を経ずして事実上のコミットメントがなされてしまっていることは、極めて問題ではないですか。シビリアンコントロールの
観点からも憂慮にたえない。
日本は属国にあらず。昔の吉田茂なら、アメリカにそんなことは言わせなかったはずだ。そうだ、
吉田茂首相は、麻生大臣のおじいさんに当たられるんですね。
麻生大臣、当時の
吉田茂首相は、今の
地位協定の前身である行政
協定の交渉に当たって、アメリカ側から、統合司令部、ユニファイドコマンドという概念を、NATOのような概念を突きつけられたわけです。これは、有事のときには
米軍の司令官が
日米全軍を指揮するというものです。
吉田茂首相は、
日本は対等の同盟
関係を望むから、これについては一切受け付けられないと
最後まで突っ張りました。アメリカは、それなら安保条約も講和条約も上院で批准しないぞ、ほごにするぞ、そこまでの圧力を受けながら、
最後まで突っ張ったわけです。がつんとやったわけです。小泉総理対ブッシュ大統領の
関係とは大分違いませんか。
麻生大臣、
吉田茂首相のDNAをぜひ思い起こしていただいて、このグアムの話についてはアメリカとがつんとやらなきゃいけない。この点についての
麻生外務大臣の対処方針についてお聞かせください。(
拍手)
そして、グアムに移転する海兵隊について、その移転にかかわる
経費負担を見ようとする場合に、
在日米軍に関する
地位協定も
特別協定も当てはまらないとしたら、どのような枠組みにより対応できるとお
考えか、
外務大臣の
見解を求めます。
さて、
最後に、
思いやり予算に関しては、極めて残念ながら、
防衛施設庁の官製談合問題が絡みます。
額賀
防衛庁長官、今、
施設庁の
長官、北原さんが事実の
究明に努めていると聞きます。私も、
外務省から
防衛庁に出向させてもらって
運用課にいたときに、北原さんがちょうど
調査一課の専任部員でした。そして、大韓航空機撃墜
事件の後始末を一緒にやってから、北原さんの高潔な人格、そして立派な人柄については毫の
疑いも持っていません。しかし、また、ともに苦労したあの当時の
防衛庁の仲間を思い起こすと、これも言うに忍びないけれども、今回の官製談合の
事件があったからには、
防衛庁の省への昇格の問題についても見送らざるを得ないのではないか。額賀
長官の所見を伺います。
相対性理論のアインシュタインが次のような言葉を残したと言われています。
近代
日本の発展ほど
世界を驚かせたものはない。一系の天皇をいただいていることが、今日の
日本をあらしめたのである。私は、このようなたっとい国が
世界に一カ所ぐらいなくてはならないと
考えていた。
世界の未来は進むだけ進み、その間、幾度か争いは繰り返されて、
最後に戦いに疲れるときが来る。そのとき人類は、まことの平和を求めて、
世界的な盟主を挙げなければならない。この
世界の盟主は、武力や財力ではなく、あらゆる国の歴史を超えた、最も古くてまたたっとい家柄でなくてはならない。
世界の文化は、アジアに始まってアジアに帰る。それには、アジアの高峰、
日本に立ち戻らねばならない。我々は神に感謝する。我々に
日本というたっとい国をつくっておいてくれたことを。
アインシュタインは、
日本が人類の平和実現のための
世界の盟主であると言い切ったわけです。アインシュタインが正しかったことを証明できるように、あすのアジアと
世界についての確たる願いを持った
日本としての誇り高い
安全保障政策に少しでも近づくためのスタートに、今回の議論がつながればと心から願って、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣麻生太郎君
登壇〕