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山崎最高
裁判所長官代理者 それでは、
委員からちょうだいいたしました表でございますか、そのリストに従って御
説明したいと思います。
まず最初の、東京地裁の案件でございますが、
平成十七年の十月九日、性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例違反被疑
事件の被疑者であります少年につきまして勾留状を発付した、そういうものでございます。
この被疑事実の法定刑は罰金五十万円と定められております。少年法四十一条、「
司法警察員は、少年の被疑
事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる
犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを
家庭裁判所に送致しなければならない。」こういうふうに定めておりまして、この点につきましては、学説には異説もあるようでございますが、実務上は、法定刑や罰金以下の
犯罪を犯した少年について、警察は
事件を検察庁ではなくて直接
家庭裁判所に送致するのが通常となっているようでございます。したがいまして、実務的には、このような場合に、少年が検察庁に送致されて、検察庁から勾留請求されるということはまず起こり得ないということでございます。
担当
裁判官は、被疑者が少年であること、被疑事実の法定刑が罰金刑であることは
認識していたわけでございますから、当然、少年法四十一条の規定に留意して、被疑者の勾留請求手続について慎重に検討しなければならないということであったわけでありますが、この点を看過いたしまして、警察からの送致手続が先ほどの少年法四十一条に合致しないことに気がつかないままに勾留状を発付した、こういう事案でございます。
次に、熊本地裁の事例でございます。
これは、
平成十六年十一月ごろから
平成十七年十月ごろまでの間でございますが、携帯電話の出会い系サイトを通じて知り合った相手方と、執務時間中に一日
当たり一、二回、多いときで十回くらいということでございますが、自分の携帯電話を利用しまして電子メールの作成をし、送受信を行うということで、そういうサイトを経由して電子メールを交換するということをやっておりました。そのメールの上で、仮想のSMプレーというのがあるんだそうでございますが、そういうことをやって、つき合いをしておったということでございます。
そのやりとりの中で、相手方に対しまして、自分の実名ですとか、職業が
裁判官であることを明らかにした、さらに、自分の法服姿などの写真の画像ファイルを送ったりしていた、こういうことがあったようでございまして、それが週刊誌で報道されることによりまして、
裁判官としての品位を辱める、こういうことがございました。
以上が、二番目の事案の概要でございます。
それから三番目の、兵庫、加古川簡裁というところでございますが、これは、被告人が出頭しなければ判決宣告をすることができない業務上過失傷害被告
事件におきまして、判決宣告期日に、検察官及び弁護人は出廷していたわけですが、被告人は出廷していなかったのです。
しかし、
刑事訴訟法の規定によりますと、長期三年以下の懲役もしくは禁錮または五十万円を超える罰金に当たる
事件の被告人は、判決を宣告する場合には、公判期日に出頭しなければならないというふうにされておるわけでございまして、業務上過失傷害罪の法定刑は五年以下の懲役または禁錮もしくは罰金五十万円以下ということでありますから、当然、被告人不出頭では判決宣告ができない。これを
裁判官は誤解いたしまして、出頭を要しない軽微
事件であるというふうに思い込んでしまって、被告人不出頭のまま、罰金三十五万円の判決宣告をした、こういう事案でございます。
次は、京都地裁の事例でございます。
この京都地裁の事例は、実は京都地裁の舞鶴支部で起こったことでございます。舞鶴支部で強盗殺人等被告
事件、この公判期日が
平成十七年十月二十五日午前十時三十分に指定されておったわけでございます。合議
事件でございますから、その右陪席
裁判官である当該
裁判官、これは当然、前もって期日の連絡を受けていたわけでございます。この
裁判官は、本来、福知山支部で勤務しておりまして、合議
事件の場合にだけ舞鶴支部で勤務する、こういう形態でございましたが、この公判期日を失念してしまって、通常どおり本務庁であります福知山支部で勤務を開始した、出勤した。そういうことがございまして、気がつきまして、急遽舞鶴支部へ出かけたわけですが、おくれてしまった。開廷時間を午前十一時十五分までおくらせてしまった、こういう事案でございます。
それから、大阪地裁の例でございますが、これは
裁判官三人、別の
裁判官ですが、関係しておりまして、
裁判官の押印を欠いた逮捕状を発付するですとか、あるいは、
裁判官の押印を欠いた逮捕状を見過ごしたまま勾留状を発付するですとか、そういったことがあった、そういう事案でございます。
以上でございます。