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山田富士雄君 ただいま御紹介ありました
山田富士雄でございます。
全十勝農民連盟の
委員長をやっております。
地元帯広大正
農協の
委員長もやっておりまして、農民運動十六年目、あるいは十七年目に入ったところでございます。
いろいろな観点で私自身も四十年間
農業に携わってまいりました。まさしく、畜力からトラクターへという変革の中で、変動の中の四十年間の
農業の中で、今回の
政策ほど大きな転換を余儀なくされることはないのではないかなというような思いで、今、いろいろなことを各地区の総会の中においても提言して、皆さんの反応を見ているところでございます。
今回、昨年の十月に
経営所得安定対策大綱、
WTO農業協定上の黄色の
政策であります
価格支持
政策を廃止し、
農業所得の減少も、直接
支払いで、緑の
政策として、
担い手に、あるいは主業
農家にそれを集中させてこの
政策が行われるということで、ある
意味で希望を持ってこの
政策の
内容を検討させていただきました。
もともと言われていることでございますけれ
ども、
価格は市場で、所得は
政策でというような、
価格補償
政策から所得補償
政策へというようなことで、ある
意味で我々が望んでいた
一つの方向性でもありました。ただ、現実性の中で、いろいろな今のところの
内容を検討してみる限りにおいては、現場との乖離はかなりあるのかなと。それと、
北海道十勝
農業がこれまで培ってきた
農業に対する取り組み方、その取り組み方すらも、ひょっとしたら否定されるようなことがこの中に大きく盛り込まれているというような気がしてなりません。
御案内のとおり、
大豆、麦、てん菜、バレイショというような土地利用型作物、そして
面積支払いを受けられないほかの対象作物、そして
農業経営というのは成り立っているわけでございまして、今回の大きな矛盾点を感じることの
一つには、基本計画の中では
自給率を上げるというようなことが当然うたわれているわけでございまして、四五%あるいは五〇%というような
食料自給率の
目標に向かっての今回の
政策の
整合性が見受けられないということもありますし、特に十勝は、今まで
自給率を上げるために頑張って、麦、てん菜、
大豆、あるいはでん原バレイショの
生産に多大な努力をし、そして土地
生産性を上げてまいりました。
てん菜におけることの一端を申しますと、三トンぐらいの収量が、六トン、六トン以上と、倍以上になり、
価格が下がったにもかかわらず
農業粗収入が上がっていく。麦においても、四俵、五俵という収量のものが十俵ぐらいをとれるような技術、あるいは品種改良に伴うものから確立をしてまいりました。ただし、それらのものについては、今回の
自給率目標の中では、どちらかというと下がるというような状況にございますし、これらについては、
生産現場として本当に希望あるものなのかどうかという疑問を持たざるを得ないという状況にございます。
また、今回のもう一方の柱といたしまして、
農地・水・
環境保全向上対策というようなことで、新たな
政策が盛り込まれました。これは、品目横断的な
対策と車の両輪というようなことで組まれているかと思いますけれ
ども、自動車というよりは自転車に近く、いつこけるのかな、そんなような心配で現場は今のところ見ているところでございます。ただ、十八年度、十勝
地方においても、鹿追町がそのモデル地域ということで、その動向を見守りながら、取り組みについては積極的にいきたいなというふうに思っております。
今回、いずれにいたしましても、政府の提案されました
法案の中で大きな柱となる品目横断的な
対策、
農地・水・
環境保全
対策については大幅な見直し、修正が必要であると私自身思っておりますし、修正をすることによって、
農業、
農村が、新たな
食料の
供給、安全、安心、
自給率の
向上、
多面的機能、国土保全、
農村社会の
維持といったような二重の役割を十分に発揮するような
政策を確立していただきたいものだということで、具体的な
政策について
意見を述べさせていただきます。
まず、一点目でございますけれ
ども、品目横断的な経営
対策につきましては、具体的な仕組み、主業
農家が将来にわたり安定的な経営が
維持できるというようなことで、再
生産可能な所得水準を確保できる仕組みということになっております。
特に、
生産条件格差是正対策における
支援水準につきましては、
面積支払いに変わっても各作物の再
生産を可能とする
支払い水準にすることが重要である、このことによって初めて
自給率向上にもつながるのではないかというふうに思っております。この
生産費のとり方等につきましても後で述べさせていただきます。
また、一方の緑の
政策といたしましては、
面積支払いのほか、黄色の
政策である
生産量や
品質に応じた
支払いということも行うとしていますが、黄色の
政策部分につきましては、現行
予算の枠内での執行ということになるかというふうに思っております。
今の国の考え方では、単に現行
予算を
面積支払いと数量
支払いに区分して、
農家への
支払いを変えるだけにすぎないというふうに思わざるを得ません。これでは、
農家間に大きな不公平感を生じることはもとより、
面積支払いという緑の
政策の変更によって生じた
農家間の不公平感を是正させるためには、やはり数量・
品質支払いについての別枠
予算を設けるべきではないかというふうに提案する次第でございます。所得は
政策でという公約を果たすことにつながるのではないかというふうに思います。
二点目は、新規就農者や規模拡大の
農家が、新たな品目横断的な
政策の中で、事実上
作付できないということであります。
このことにつきましては、最近のデータのとり方等の中にもあるわけでございまして、要するに、
農家の個人実績については、十六年、十七年、十八年と、過去三年間の実績をもって緑のゲタをつくるということでございます。したがって、このことにつきましては、まだ検討中ではございますけれ
ども、特に、この三年間の間に
面積を拡大した人については、別の
措置をとらないことには、逆に、十九年度においては、要するに経営の縮小というようなゲタになりかねないのかなということも大変危惧するところでございますし、また一方、十九年以降、前任者の吉田さんもお話をしたわけでございますけれ
ども、
面積をふやした方に対しての担保が何もないと。そういう政府管掌作物四品目をつくっている方については、その
面積の移行は可能なんですけれ
ども、逆に、酪
農家のように畑作物の実績のないもの、品目横断的な作物に属さないものをつくった方の土地を引き受けた場合については、麦あるいはてん菜、
大豆、でん粉芋の
作付をしてもゲタがなしということでは、当然、理想的な輪作体系を形成することができないということになりますと、規模拡大における大きな障害になるのではないかということもございますし、一点、てん菜だけのことを言わせてもらいますと、てん菜においては
交付金対象数量ということでございまして、こうなってきますと、十六年については、実は千円という、要するに、
農家が調整金の赤字を埋めるために後で拠出したお金があります、それらもマイナスすると。あるいは、十七年度においては、上限キャップということで、過去の実績の中でとれた量までの
生産がなされていない。当然、十八年も、
砂糖でいえば六十四万七千トンという
交付金対象額の数量分しか対象にならないということになったら、ここ三年間の経営努力というのは実際問題としてはカウントされないのではないか、そういうことも危惧している次第でございます。
それらは一例ではございますけれ
ども、大きな矛盾点の中でこのゲタがつくられるとしたら、そして、そのゲタがなおかつ、今の段階としてはどの段階で見直すかということが明確になっておりません。また、これを明確にすることによって黄色の
政策になるということなのだとするならば、違う方向の中でやはり記述をきちんとつくるべきではないか。
ということは、十九年から、本当に
意欲ある
農家が
生産を伸ばしたものについては、それをどこかでカウントする仕掛け、あるいは別枠でそれを奨励する
施策を持っていかないと、
意欲ある
農家が残ったにもかかわらず、
意欲が減退してしまうのではないか、そういうことが、我々にも、あちらこちらで聞こえてくる声でございます。
それらに対して、今度の
政策の中で、本当に
担い手に集積して、
生産力が上がり、
自給率が上がるというような大きな柱があるとしたら、それが具体的に見えてこないという現状の中で、それが見えてくるような
政策に何とか修正をしていただきたいということを願わざるを得ないというふうに思っております。そんなことで、二点目でございます。
あと、三点目ですけれ
ども、これはまた、
条件不利地帯に対しての
配慮がどうなるのかということだというふうに思っております。
平均的な
数字でいきますと、町の平均、あるいは道、あるいは国の平均的な
数字が
一つの基礎
数字になります。そして個人のデータがそこに入ってきます。個人のデータの中には、百軒の
農家がありましたら百軒それぞれの経営の特徴がございます。そして条件の格差がございます。当然、湿地帯、あるいは乾燥地、もともと条件のいいところでやっている方、そして条件が悪くて経費をたくさんかけないと収量が上がらないところ、それらについての見直しというのがどこで図られるのか。それと、その三年間のデータの中には地域的な災害等もあります。それらの、三年間の地域的あるいは個人的な災害や何かについても、もしそれが三年ないし五年というゲタを引きずるとしたら、大変なハンディを背負って、三年ないし五年、もっと先まで営農しなきゃいけないということに関しては、極めて理不尽だと言わざるを得ないし、逆に、私はよく例として言うんですけれ
ども、ちょうどお父さんから後継者にかわった、お父さんがたまたま立派な
農家の方だったらいいんですけれ
ども、その地域としては平均以下の
農家だった、息子さんがやることによって平均以上の収量を上げるようになった、ところが、お父さんのその低いゲタの中で
農業をやっている限りではなかなか努力が報われない。果たして、そんなことで、本当の
意欲ある
農家が残った、あるいは後継者が安心して
意欲を持って
農業ができるということにつながるのかということについても、今回の
政策そのものについては大変危惧するものでございます。
そんなようなこと、あるいは傾斜地、あるいはいろいろな条件格差、これをどう個人的なデータの中で修正できるかというのが、これは、もしこれから、ことしの七月、八月にかけて、個人の
数字、そして、十八年が入らないと、地域の
数字は最終的に決定しないわけなんですけれ
ども、それらが出てきた段階で初めて何で自分の
数字がこんななのだろう、こんな
数字しか出ないんだろうかという大きな不安に駆られる
農家が数多く出るのではないかというふうに思わざるを得ません。
最後でございますけれ
ども、また、今回のこの
内容につきましては、要するに必要な財源の確保がどうなのかということだというふうに思っております。これにつきましては、現行の
予算の中で枠が組まれていると言わざるを得ないというふうに思っております。
一例を申し上げますと、てん菜でございます。てん菜につきましては、今まで、最低
生産者価格が決まりまして、それによって、言い方がどうかわかりませんけれ
ども、青天井でもって
農家に支払われたという、今その調整金会計が六百億あると言われていますけれ
ども、少なくとも、
生産者の努力が量をとることによって報われた。だけれ
ども、今度の
政策の中で、
生産調整がその中で織り込まれております。そうなってくると、てん菜における
交付金の対象数量というのは六十四万トンに限られるということになったら、当然、今までより、
農家の手取りといいますかゲタが低くなるということは、紛れもないということになるかと思います。
そういうことにもなりますし、それと、何と言っても、十勝、二万戸あった
農家が今七千戸だということで、約三分の一になりました。精鋭が残っている三分の一と私は自負しております。ただし、それは、いい
意味での競争の中で今日優秀な
農家が残ったということでございますし、これらが、今後、こういういい
意味での競争の原理がそがれるのではないか、今度の
政策において。これは確かに、
政策上の
一つの協定、黄色の
政策がだめだということになればそうですけれ
ども、競争の原理がそこに働かないということですから、それは当然と言われれば当然かもしれません。だけれ
ども、現場としては、それをなくして
農業生産の
向上はないし、今、国が目指している
農地の有効利用、そして
食料自給率を上げるためには、一体全体どういう
政策が必要なのか。そして、今度の基本計画と、前段も言いましたけれ
ども、例えばの話ですが、この経営安定、所得補償
政策、これが畑全体にゲタができるとしたら、例えば、それに
飼料用穀物をつくることによって
飼料用穀物の
自給率が上がる、そしてゲタができることによって所得性も高くなるということになれば、当然、
自給率向上にも貢献できるし、
農家の所得も、違った
意味で安定するというふうに思われます。
ただし、今回は、いずれにいたしましても、畑作、
北海道におければ四品でございますし、米を入れたとしても五品の中で組まれる
政策でございます。ただし、
北海道の十勝
農業、その四品、五品だけではなくて、多くの作物の中でこの四品、五品が入っているということでございますし、それら総合的な、要するにトータルでの本当の所得の安定がこれで図られるかということについて、極めて疑問と言わざるを得ません。それは、今言ったように、
予算の総額等を考えても、これが、全体的に今までよりこれだけ多くの
予算を使うんですよ、そして
担い手に集積するんですよということなんですけれ
ども、実際問題、シミュレーションの中では、
担い手に集積されるようなことには基本的には今のところはなっていないというふうに思わざるを得ません。
そんなことで、私の時間も大体来ましたので、以上のことを公述いたしまして、今回の
政策が、本当の
意味で、後継者に安心して
農業が任せられるようなものにしていただきたいということを切に願うものでございます。
以上です。