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山田議員 私は、
提出者を代表して、ただいま議題となりました
食料の
国内生産及び
安全性の
確保等のための
農政等の
改革に関する
基本法案につきまして、その提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。
最近、スーパーに行くと、中
国産の野菜はもちろん、米
国産のブロッコリー、チリ産の養殖サケなど、外
国産が所狭しと並んでいます。さらに、我々が毎日食べている食用油、そのほとんどは、米国からの遺伝子組み換え大豆や、カナダからの遺伝子組み換え菜種でつくられています。その食用油を搾った遺伝子組み換え大豆のかすで、日常使われているみそ、しょうゆの大半が賄われているとしたら、どうなるのでしょうか。EUは遺伝子組み換え
食品を厳しく規制しています。
最近の
調査によれば、アトピー症がこの十年間で二倍に増加していること、また、このところの杉花粉症の蔓延など、我々
日本人は、過去に経験しなかった体質変化を今、来しつつあります。米国からの輸入牛肉、BSEのおそれもさることながら、
鳥インフルエンザの脅威など、今日ほど、食の安全について、我々政治家がその責任を果たさなければならないときはありません。
一方、
日本の
食料自給率はカロリーベースで四〇%、穀物自給率に至っては二七%、世界で百二十四番目と北朝鮮よりも低くなっています。世界の人口が爆発的に増加し、地球温暖化などの影響もあって、このままでは、近い将来必ず世界的な
食料危機がやってきます。また、水産においても、資源の枯渇もさることながら、輸入魚の増大によって魚価が大幅に下落し、かつては一〇〇%を超えていた水産物の自給率が今や五五%、水産国としての面影もありません。
日本にとって、今こそ食の安全、
食料安全保障が大事なときはありません。
さて、
政府提案の
法律案に触れさせていただきます。
民主党は直接支払いを
政府に強く求めてきましたが、構造
改革に反するとしてこれまで拒否されてきました。今回、初めて直接支払いを取り入れたことは画期的なことです。それだけに、
国民、
農業者の
期待も大きく、我々も強い
関心を持って迎えたのですが、残念ながら大きく
期待外れの内容となっています。
何となれば、この法案の前提である基本
計画では、十年後に自給にとって最も大切な
小麦は八十六万トンと横ばいで、大豆に至っても二十三万トンから二十七万トンとわずか四万トンの増加
計画でしかありません。これでは、
政府の自給率目標四五%の達成は到底及びません。もともと
政府が予定していた四五%の自給率目標は、相も変わらず食育で米の
消費を伸ばすとか、カロリーベースでの
消費を十年後には四%も落として自給率を上げるというまやかしのものでしかありません。
さらに、直接支払いの対象となる
農家も農地四ヘクタール以上の認定
農家に限られるとされていますが、それでは、長崎県の場合を例にとりましても、
農家の耕作面積の平均は一・二ヘクタールですから、五百人ほどの
農家しか直接支払いの対象にならなくなります。集落営農に対する
助成をするといっても、経理を一元化するとなれば、現実的にはなかなか難しいものがあります。しかも、予算額は明らかにされていません。千七百億円ほどだと聞いていますが、もしそうだとすれば、
政府案では、自給率目標の達成はおぼつかないお粗末なものだと言わざるを得ません。
本法案は、このような考え方をもとにして、ここに
提出するものであります。
以下、法案を御説明申し上げます。
まず第一に、
食料自給率は、十年後には必ず五〇%以上にすること、将来は六〇%にすることを法案に明記し、
国民に約束します。そのために、大胆に単年度で一兆円の直接支払いの予算を組みます。その財源は、橋や道路などに使われている
農業土木事業予算一兆三千億円から五千億円、
民主党が予定している地方への一括
交付金十八兆円のうちから五千億円を充てることにいたします。
そして、国が、米、
小麦、大豆、菜種、飼料作物、地域振興作物としてのてん菜など、主要農産物を定めて、生産数量の目標を設定し、内外生産条件の格差を是正するために直接支払いを行います。こうした直接支払いを通じて、具体的には、
小麦は八十三万トンから四百万トンへ、大豆は二十七万トンから五十二万トンへ、現在わずかしか生産されていない菜種も三十二万トンへ、それぞれ大増産を目指します。これによって、残留農薬の心配のない
国産の
パン、うどん、遺伝子組み換えでない
国産の大豆を利用した豆腐、納豆、みそ、しょうゆ、昔懐かしい菜種油など、安全、安心なものを食べることができるようになります。
我々は、それらの確実な実現を図るために、
計画を立てて販売するすべての
農家に一兆円の直接支払いをいたします。ばらまきとならないよう、農地を集約する者への規模加算、捨てづくりにならないよう、品質加算、棚田の維持、有機
農業の実践など、環境保全への取り組みに応じた加算も行います。
米国では新
農業法のもと、今や
農家所得の四六%は国からの直接支払いで賄われています。また、EU諸国もその所得の五二%は国からの
助成金で占められています。欧米諸国は、このようにして自給率を八〇%から一〇〇%以上の水準に維持しています。
一方、
日本の
農家は、国からの
助成がほとんどない
状況の中、外国との厳しい競争にさらされ、
農業では食べていけなくなり、深刻な
状況に置かれています。一刻も早く一兆円の直接支払いを実現する必要があります。
また、米の生産調整は廃止いたしますが、米については、市場に出回ることがないよう、棚上げ方式で備蓄を行い、バイオマス利用などの活用を法案に盛り込んでおります。
第二に、水産行政に関しては、何としても枯渇した資源の回復を図るために、漁業者ごとに漁獲量を割り当てるTAC制度を取り入れます。同時に、漁業者への収入の安定を図るため、直接支払いを実現します。また、沿岸、沖合漁業に係る漁業権制度について、新規参入の促進を含め、現行制度を抜本的に見直します。さらに、いその清掃、藻場や海中の森の造成、種苗の放流など、自主的に漁場の生産力の
向上に取り組む集落に対して、直接支払いを行います。
第三に、
食料の安全、安心についてですが、例えば、米国から牛肉を輸入する場合、ステーキ肉に塩コショウをかけただけで
加工食品の扱いとなり、原産地の表示をしなくてもよくなっています。今回の法案は、すべての
加工食品等の原料原産地表示を義務づけることにいたしました。また、
日本は、世界で最大の
食料純輸入国でありますので、主要な輸入
食料に対して、輸入先国での
検査官による査察を含め、輸入検疫体制の整備を図ります。
ただいま申し上げましたこのような
改革を実施することによって、
食料の自給率目標は達成され、食の安全、安心も確保されるのです。
以上が、本法案の提案理由及びその概要であります。
委員各位の御
審議と御賛同をお願いいたします。