○滝
委員 日本の
選挙運動では、厳密に
解釈すると、四、五軒歩いただけでも逮捕というのが、
戦前というか、
戦前以来の
日本の
判例にあるんですよね、現実問題として。したがって、警察当局の方向によっては、昔は幾らでも逮捕できた。それが
戸別訪問の
禁止の一つの根拠になってきたわけでございます。したがって、
選挙を自由にやろうと思ったら、まずそういうところを緩和しなきゃいかぬわけですよね。
先ほど来出ていますように、
戸別訪問をなぜイギリスでは自由に認めて、各国も認めているかといえば、これがやはり
選挙の本体。ただし、
買収のおそれがありますから、例えばイギリスなんかの場合は、
戸別訪問するときにはプラカードを持っていくんですよね。プラカードを掲げて、それに
自分の名前を、
候補者の名前を掲げていく。私は
戸別訪問していますよということを周辺に知らせるわけですよね。したがって、そこでもって金のやりとりとか物のやりとりをすれば、みんなが見ている。やはり、そういう知恵がヨーロッパの
選挙の中に培われてきていると思うんですね。
日本は、
戸別訪問をただ単に認めたらどこまで入り込んでくるかわからないわけですから、これは密室でもってよろしくやるというようなおそれなしとしない。やはり、さすが、そういうような
経験というものを含んでおると、少しは緩和した方がいいんじゃないだろうかなと。いろいろな推薦を
お願いする、そういうときも警察の風の向きによっては逮捕というんではたまったものじゃありませんし、
選挙が終わったら軒並み御用の筋で呼び出しがかかるというような
日本の
選挙体制というのは、甚だよろしくないんじゃないだろうかな。
ただし、そういう国で、今御報告いただきましたけれども、
選挙人名簿の扱いの問題というのは、私は、もう少し実態を調べて、最近の
日本における不詳事件の原因にならないような配慮をどうしていくかというのは、これからの問題だろうと
思います。私は、今回の
改正というのはとりあえずの適切な措置というふうには
考えておりますけれども、これからの
情報収集をよろしく
お願い申し上げたいと
思います。
それからもう一つ、海外の問題ですね。海外の居住者の拡大の問題でございます。ここの
場所でもたびたび御披露がございましたけれども、私の場合には海外からこの間の
選挙でもって票をいただいたのかどうかはっきりしませんけれども、
基本的に
当選者はみんなそういう自覚がないんですよね。恐らく、ほとんどの方が海外からの何がしかの、少なくとも数票ぐらいはもらっていると思うのでございますけれども、そういう海外の
人たちが期待をして票を入れているという自覚は
基本的に
当選者に余りないんだろうと思うんです。それではやはりまずいんですよね。しかし、それを今度は小
選挙区まで広げるとなると、ますますその辺のところが何となくぼけてくる。ここのところがやはり思案のしどころかなという
感じがするんです。
先ほどここにも
議論がございましたように、例えばフランスなんかの場合は、昨年の年末に行かせてもらいましたら、大変巧みなんですよね。これは、フランスの場合は憲法上の問題でございますから、第五共和国の憲法第二十四条の三項に、海外居住者は元老院が
代表する、こう書いてあるんです、憲法に。したがって、下院の
選挙には一切関係ない、上院の
選挙にこの海外居住者が
投票権を持つ。しかも、その場合には、要するに海外
選挙区を設けて、上院の場合には、アメリカの大統領
選挙みたいに代理人
選挙なんですよね。
ですから、各ブロックごと、
世界じゅうをブロックに分けて、ブロックが代理人を選出する。その選出された代理人が、今度は
候補者を選ぶ。
候補者も、海外
選挙区の
候補者が十二人おって、それを各ブロックごとに
選挙する、こういうことですから。そうすると、海外における本国に要望したいこと、それがいわば海外
選挙区の
議員を通じて
国政に反映される、そういう仕組みになっているんですね。
したがって、
日本の場合には、たまたまそんなことができませんから比例区でやっているわけでございますけれども、その海外からの
国民の、住んでいる方々の
思いがどこまで国会に反映されるのかというのは、甚だ心もとない。ただ単に
選挙権はちゃんと行使できるようになっていますよということであって、海外居住者の利害がどれだけ反映されるかということが本当は一番必要なんだろうというふうに思うんですね。国内の人間と海外の人間とそれぞれ歯ぎしりをしながら、海外から
日本の
国政に注文をつけたいという
人たちの意思がなかなか反映できにくい仕掛けがあるんじゃないだろうかな、こういう
感じがございます。
したがって、これはある意味では憲法上の問題にもなりますけれども、今の現行憲法内で
議論するとすれば、やはりこれもこれからの問題として取り上げていっていかないと、せっかくの、苦労して、総務省と外務省とそれから全国の選管を通じて同仕掛けの
選挙準備をしながら、なかなか本当の意思が反映できないおそれがあるんじゃないだろうかなというふうに
思いますので、これからの検討課題として、引き続きよろしく
お願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと
思います。
ありがとうございました。