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上薗参考人 私は、明るさも全然見えない重度の
視覚障害者です。
情報障害の
視覚障害者という
立場で、ちょっと偏っているかもしれませんが、私なりの
意見を申し上げます。
視覚障害者といっても、生まれたときから見えない人とか、途中で
事故や病気で見えなくなる人、さまざまです。最近では、
糖尿病とか成人病の合併症などで、四十、五十を過ぎてから見えなくなる人もいらっしゃいます。
視覚障害者は、いろいろな
意味で
情報障害者、
自分がいるところ、その
周辺がほとんどわからないといったような状態で、前回の
バリアフリー法であるとか今回の
バリアフリー新
法案に
期待するものです。
先ほどから申し上げていますように、
視覚障害者の一人
歩きというのはとても困難なものなんです。一人
歩きをしていますと、ぶつかったり
段差から落ちたり、それで迷っているうちにまたぶつかったりして大変なことになって
事故に遭ってしまうという
現実、これは一人
歩きしている者の
現実です。
視覚障害者の中にも、かなり見える人とか、ちょっとだけ見える人とか、少し見える方を
弱視というふうに言っていますが、私は全然見えない
全盲と言います。
弱視者も含めると半数ぐらいの人がプラット
ホームから落ちています。
全盲だけでいうと、六割、七割。私の
感じでは、一人
歩きを本当にしている者の中ではもっと多いかなという気がしています。
私は、これまで
ホームから四回落ちてしまいました。四回落ちてきて、幸い
電車がそこに来なかったので、今ここでお話しさせていただいていますが、
最初の二回は
歩き始めて三年以内という、まだ未熟さ、ベテランになっても落ちるんですけれども。三回目は、駅員が私を案内しながら歩いていまして一緒に落ちてしまったという、何とも、ありがとうございますと言いたいところなんですが、ちょっと、どうしてかということは私はわかりません。
その以前からなんですけれども、
視覚障害者たちのいろいろな運動で、今では八割ぐらいの
ホームに
点字ブロックは敷設されていると思います。この
点字ブロックというのは、私
たち視覚障害者が
ホームから転落しないための
ブロックなんですが、その
ブロックが敷設されていて、毎日私が使っている、もうほとんど知っているかなと思うような駅で二年前にやはり落ちてしまいました。ですから、
点字ブロックだけでは
視覚障害者の
転落防止はできないのかなと私は思っています。
どこかの駅で、最近は特に、いろいろな
事故が発生した、
人身事故という話を聞きますと、ああ、あそこにはだれがいるな、あいつは大丈夫だろうかと本当に心配してしまいます。多分、私の知り合いもそうだと思います。
二〇〇三年度の
ホームからの
転落死傷者数は四十二名で、そのうち二十一名が亡くなっています。これは少ないと思うか。私
たちは、
自分に降りかかってくる、今か、きょうか、あすかという問題ですから、とても不安でなりません。もちろん、この数字にはもっともっと多くの
自殺者というものは含まれていませんので、その辺は加味して考えてください。
点字ブロックが敷設され、
バリアフリー法ができてからも、線路への
転落事故というのは減っているようには思えません。現在で
日本に九千五百ぐらいの駅があるんですけれども、
可動式ホームさくとか
ホームドアが
設置されている駅は二百七十ぐらいかと思われます。これはたった三%弱という本当にお寒い状況です、私が思うに。
可動式ホームさくが
設置されている駅では
転落事故は起きていませんので、ぜひ
可動式ホームさくの
設置促進を
お願いしたいと思います。
設置するというのはとても難しいらしいんですけれども、ドア位置の異なる
電車が入るとか
ホームが曲線であるとか、技術的な問題ですね。ただ、もう
一つは費用負担の問題があります。費用負担をどうするかというのは、どのことについても難しいことかと思います。
新規路線ではドア位置を統一することはたやすいと思うんですけれども、このごろは、特に都市部だと思うんですけれども、いろいろな路線が相互乗り入れをしているというそれなりに便利な状況なのですが、一方、ドア位置という
意味だけで考えると、これは新規路線だけでやってくれると簡単に可動式の
ホームさくができるかなと思っています。利潤追求だけでなくて、安全な
交通機関をつくるためには、安全な
ホームさく、
ホームドアをつけた駅をつくるようにしてほしいと思います。
私
たち、
情報障害者と言っていましたけれども、
点字ブロックは、
視覚障害者誘導用
点字ブロックというものはJIS規格というのがされたんですね。大分
整備が進んでいます。私
たちは、
点字ブロックを目安に、警告だなとか、ここを目安にしていろいろ歩いています。
ただ、
点字ブロックというのは、皆さんが思っていらっしゃるほど私
たちにとって万能なものではないんですね。見ていて、幅の広い、三十センチとか四十センチあるんですけれども、あの広い、黄色いものというのはすぐわかりそうなんですけれども、私
たち全盲の者は足で踏んで、あるいは白杖、白いつえでさわって初めてありかがわかるんですね。ですから、離れていたところではどこに
ブロックがあるかわからないという、ある
意味欠点ですけれども。
点字ブロックは、便利なんだけれども、まだ足りないんだよということです。
それで、黄色い突起なんですけれども、あの中には、あるだけということで、これは何を
意味しているか、ある程度はありますね、警告という
意味を持っているんですけれども、この
ブロックをたどっていくとどこへ着くのかということは簡単にはわかりません。ですから、それをたどって安心しながら歩いていると、変な着き方もまだまだありまして、
事故につながるということもないことはなくて、結構そういう事態に陥った人も多いと思います。
敷設するためには、
ブロックを利用している人
たちの
意見を十分聞いていただきたいと思います。
今度は、音声
情報というのがあるんですけれども、私
たちは、日常的にいろいろな音、今皆さんがページを繰る音とか、そういういろいろな音を利用して歩いています。あそこにポストがあるなとか、そういうことを
感じながら歩いています。先ほどお話ししました
点字ブロックの弱点を補うことでは、点字の読めない人もいますし、足の感覚が鈍くなった人もいますので、音声とか音響による
情報提供は、
バリアフリーを考えたときに有力な
情報手段であると私は思います。
交通バリアフリー法が二〇〇〇年に施行されて、音声
誘導が一定位置づけられたんですけれども、まだ実効性が結構低いという事実もあります。
エレベーターの案内もまだまだ少ないですので、これを義務づけてほしいこと、音響信号機がまだ多分二十分の一とか、五%ぐらいにしかないと思いますので、これの
促進を進めていただきたい。私
たち、信号のあるところでも、方向が、どっちに渡っていいかわからなかったり、車が来てしまってひかれるケース。私はこれまで二回
交通事故に遭っているんです。
いろいろな技術のことがあります。音の出る信号機は、以前、鳴りっ放しのものが多かった、それで深夜になったり早朝とかはとめられるというケースもあったんですけれども、近年では、
誘導用の押しボタンがつけられていまして、鳴っていない信号機の位置を確かめることができます。それで、ボタンを押して、そうすると青のときに音が鳴る、そういうもので、便利にはなってきています。このように、技術開発を適切に進めることによって、音声や音響による
情報提供が
現実的なものになってきている例が多くなりました。
しかし、残念ながら、せっかく費用と時間をかけたのに、私
たちが実際には便利になったなという
感じがしないことも確かです。また、私
たちが反対している
設備をどんどん導入しているケースもあります。
例えば、
トイレの前の触地板というものなんですけれども、
トイレの入り口あたりに便座の位置などを細かく書いたもの、皆さんもごらんになったことがあるかと思います。
トイレの中に入ってしまうと、狭いですから、私
たちは迷ってもそんなに大した時間をとらないというものなので、あれは余り、さわって、ここがどこだな、これが便座だなというふうには地図では要らないと思います。何しろ、
トイレというのは緊急性の高いものですので、さわっている暇がないようなことが特に私
たちには多いんです。
ほかに、赤外線による音声
情報システムというのもあるんです。これは
視覚障害者団体が反対したものなんですけれども、これはよいものだよ、よいものだよといって、つけられてしまったというケースもあります。これは、便利なこともあるんですね。端末を私
たちが持って、ビルから案内が出るものに私
たちが向けながら歩くものなんですけれども、
視覚障害者はいろいろなものを探すというのはとても不得手なので、そっちに向けながら探して歩かないといけませんので、右手には例えば白杖を持って歩いて、左手にこういう受信機を持って歩くと、踊りを踊っているみたいなんですけれども、なかなかうまくいかないというような
設備もあります。
せっかく、技術開発というのはいいんですけれども、私
たちが使えるものをぜひ導入していただきたいと思います。
それで、最近は心の
バリアフリーということがいろいろ言われていますけれども、先ほどの
ホームドア、
可動式ホームさくとかいうもの、ハードでできるものはきっちり、
点字ブロックでわかるものは
点字ブロック、あれは余り壊れるものじゃないですから、はっきりしていただきたいと思うんです。
最後に、人の助け。私
たちが一人
歩きするときに
最初に習うことというのは、人に物を
お願いするということなんですね。これはとても大事なことなんです。
最初は人に頼むということはできないんです。それができるようになると、おお、おまえも一人前かというようなことになるんですけれども、危険な
ホームから人も減っています。有人改札、人のいる改札も減っています。これは私
たちにとってはとても憂慮されることです。最後のよりどころとしては、やはり人の細かいアドバイス、サポートだと思いますので、人の削減はできるだけやめていただきたいと思います。
これを一番最後に
お願いして、私の
意見を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(
拍手)