○長妻議員 私は、民主党・無所属クラブ
提出の、ただいま議題となりました
居住者・
利用者等の立場に立った
建築物の
安全性の
確保等を図るための
建築基準法等の一部を
改正する
法律案につきまして、提案者を代表して、提案
理由及び内容を御
説明申し上げます。
一生に一度の何千万円もする、人生の希望を託した買い物。このマンションが、耐震偽装の発覚により、一夜にして価値がゼロになってしまう。絶望のどん底に突き落とされた多くの被害者が眠れぬ夜を過ごしております。姉歯物件以外でも、耐震性を満たさない建物が
全国各地で次々に見つかっています。
衣食住の住の安全が脅かされ、国全体に社会不安に近い状態が広がっています。建物の安全をいかに
確保するか、国家百年の計として国挙げて取り組む重要課題です。
私たちの
法案は、
居住者、
利用者、購入者などの立場に立って、安全な建物を支える、政府案にはない三本の太い柱を用意いたしました。
まず一本目の柱は、設計、施工分離の促進です。
姉歯元一級建築士は、国会の証人喚問で、偽装のきっかけとして、建設
会社から厳しい
コスト圧力があった旨の証言をしました。現在、構造設計士を含む一級建築士の多くの方々が、ゼネコンや建設
会社、ディベロッパー等の下請的立場に置かれています。
本来、建築士は、良心に従って、法令を遵守した設計をすると同時に、工事監理者として、建設現場で、建設
会社の現場監督を指導する立場で、手抜きや手抜かりがないか厳しくチェックし、防止する役割を担っています。
しかし、立場の弱い建築士が、設計段階で厳しい
コストダウンの要求を繰り返し突きつけられた場合、本来のあるべき安全な設計が本当にできるでしょうか。また、建築士が建設現場で図面どおりに工事がなされているか等厳しい指導をすることは、建設
会社やディベロッパー等にとって
コストアップにつながり、立場の弱い建築士が現場で工事監理を徹底できないという事情があることも事実です。
設計が施工の下請になっていては、チェック
機能が働くはずもありません。設計と施工を分離し、厳しいチェックを実現するには、建築士の
地位と独立性を高めていくことが重要です。
民主党案では、すべての建築士を建築士の会に御加入いただき、自治組織としての
運営を図り、独立性を
向上させます。その中で、建築士同士の情報交換を密にし、構造を初めとした専門建築士育成のための研修、検定などを充実させてまいります。実際に、弁護士、公認会計士、税理士、行政書士、司法書士等にも全員に加入義務のある自治組織があります。
また、現在、建築士の資格を持っていない建設
会社やディベロッパー
関係者が建築士事務所を開設し、資本金を拠出して、
株式会社として建築士を雇うケースが多く見られます。
民主党案では、建築士事務所の開設者を建築士に限定して、
株式会社とは異なる建築士法人
制度を新設し、独立性を高めます。同時に、建築士に無限責任を負わせるなど、責任も強めてまいります。
二本目の柱は、保険加入の促進です。
現在、住宅の十年間瑕疵担保責任を保証するための保険がありますが、加入しているのは、平成十六年度、新築一戸建ての二八・四%、マンションに至っては新築のたった一・一%にすぎません。売り主が倒産しても保証される保険の普及が不可欠です。
民主党案では、すべての一戸建て及びマンション販売の広告に、その住宅が保険に加入しているか否かを表示させることを義務づけています。保険に加入していない場合でも、加入していないことの表示を義務づけ、文字の大きさや体裁も規定し、違反には罰則を科します。
これによって、消費者が保険加入の有無を事前にはっきりと知ることができるようになります。同時に、保険に加入できない物件は売れ行きにマイナスの影響が出ることになり、保険加入の促進が期待できます。保険に加入する際には建物が保険
会社の査定を受けることになり、多角的なチェックがなされます。
また、保険が普及すれば、売り主が支払う保険料は、より安全な建物に関してはより安くなります。逆に、手抜きをすればするほど保険料が上がれば、手抜きは
経済的にも割に合わない行為となります。
三本目の柱は、建築確認の確認済証は、
民間確認検査機関の物件であっても、最終的には特定行政庁が発行するというものです。
官から民への流れの中で、責任までもルールなく
民間に丸投げしたツケを、ざる検査として今私たちは払わされているのです。
民主党案では、特定行政庁に苦情や内部告発の窓口の設置を求め、
民間確認検査機関が手がけた物件でも、不審情報が寄せられたものや不自然に早過ぎる建築確認に関しては、特定行政庁が済み証発行をストップさせることができます。車検でも
民間が検査しますが、合格証である自動車検査証は、行政が発行しています。
さらに、建築主事登録に設計や現場監督経験を要件とすること。すべての建物に中間検査と完成二年後検査を義務づけること。罰則の
強化。一定規模以上の建物の建築確認に専門家同士による相互チェック、つまりピアチェックの体制も
整備いたします。
民主党案は、
法案名にもあるように、あくまでも
居住者、
利用者、購入者の立場に立ち、役所や業界に厳しくても、安全な住宅を
確保する
制度です。しかし、政府案は、この期に及んでも、あくまでも役所や業界の立場に立って、余り厳しくない、従来の
制度を取り繕ったびほう策にすぎません。
政府案と民主党案とは、提供者側に立つのか、生活者側に立つのか、どの立場から
制度を組み立てるのか、この立ち位置が百八十度異なるものです。
役所や業界に差しさわりがない政府案は、国民の皆様にとっては大いに差しさわりがあります。
居住者の安全を二の次にしていると言わざるを得ません。政府は、ざる検査を放置した責任ばかりか、再発防止の責任までも放棄しております。
お集まりの議員各位の良識に訴え、何とぞ成立させていただくことを切にお願い申し上げ、私の趣旨
説明を終わります。