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仙谷委員 三次にわたるある種の、
政府のといいましょうか、国家的な
がん戦略があるといいましょうか、あったし、現在も続いておるということなのであります。
ただ、問題は、専門家に聞きましても、現在のレベルは、特に化学療法、放射線治療、先ほどから出ております緩和ケアというふうな領域を中心として、先進国のレベルでいえば十年から十五年、二十年ぐらいおくれているんじゃないか、堂々と専門家の方もおっしゃるわけであります。私は、なぜそうだったのかということの真摯な検討というか、自己批判的な考察といいましょうか、総括がなければ、これは、
日本の
がん治療もその他の医療もなかなか進んでいかないというふうに思います。
この間、今回の医療
制度関連
法案の審議等々をめぐって、いろいろな
資料が厚生省の中にあることがわかりました。相当、
厚生労働科学研究あるいはいろいろな検討会というのを次から次につくって、そこではそれなりの結論が出ておる。つまり、メニューはほとんど網羅的に出ておるんですね。実行だけが残されておるのでありますが、実行の体制がほとんど脆弱だ。予算もつかない。
さらに大問題なのは、ここに
日本の大問題が横たわってきているわけであります。先ほどから文科省、つまり、大学医学部、大学病院との関係を、連携とか協力とかいろいろなことをおっしゃって、何とかなるんじゃないかというふうなことをおっしゃっておるわけでありますが、そうは問屋が卸さなかったのがここまでの事態というふうに私は理解をしております。
考えてみますと、この
がん治療の前進というのは、せんじ詰めると、専門家、これはお医者さんだけじゃなくてコメディカルも含めてその養成にどのぐらい力点を置くのか、これは研究も含めて、そこにどのぐらいの資源を投下することができるのかということに尽きるのかなという感じがいたします。
といいますのは、国立
がんセンターを退院してきていろいろな話を聞いたりしておりまして、四年前の私のこの
厚生労働委員会での
質問を改めてお読みいただければわかると思いますが、つまり、そこで申し上げているのは、化学療法についてのおくれと未承認薬の使用の問題あるいは適応外使用の問題というふうに、化学療法の問題について、患者さんからの訴えを中心に、私が
日本の
がん治療のおくれを指摘し、申し上げたという
質問になっております。
実はそのときに、私は、世界標準治療の中で使われておる抗
がん剤というふうなものについて、これを使うべきだという主張を随分しておりました。現在もその思いは変わらない部分がございます。
しかし、そのときに、今は亡き今井澄参議院
議員は、その私の考え方や患者さんの要求に対して批判的でありました。なぜ今井澄参議院
議員が批判したかというと、使えない医者が使ったら大変なことになる、こういう話を彼は力説をしておったわけであります。つまり、抗
がん剤の使用というのはそれほど簡単なものではない、訓練のできていないお医者さんが抗
がん剤を適当に使ったりしたら、次の新たな問題が起こるというのが今井澄参議院
議員の説でございました。
つまり、そこで、改めてその観点を少々聞いて回ったりして勉強しますと、本当は、臨床腫瘍内科という学問、オンコロジーという学問もあり講座もあるんだけれども、
日本には専門家が甚だ少ないということがわかってきました。まだ臨床腫瘍内科学会か、これが設立されていない時代の話であります。たった四年でもそのぐらいのギャップ、タイムギャップみたいなものがあります。
その一年後ぐらいにこの学会は設立されたわけでありますが、そして、現在その学会が正式に認定している臨床腫瘍内科の認定専門医は、全国で四十七人ということになっているわけであります。先ほど放射線治療医の話が、五百人という話が出ましたが、放射線治療医の、放射線腫瘍学会の認定医が五百人、それから臨床腫瘍学会、つまり、化学療法の、抗
がん剤使用の学会の認定専門医が四十七人、暫定指導医認定者が六百七十四人、こういうレベルが
日本のレベルでございます。
この専門家の養成というのは、一方では、当然のことながら大学、大学病院の仕事にしてもらわなければならない話であります。あるいは、
がんセンターを初めとする先進的な
がん治療の病院でそういう高度な専門医を育ててもらわなければなりません。
ちょっと、御本人からいただいた手紙で、公表するのが後で問題になったらいけませんが、こういうお手紙をいただきました。これは、さる
日本の
最高クラスの大学の医学部の、緩和ケアと放射線治療のドクターからのお手紙であります。
その大学でも、「緩和ケアの講義は二コマだけ、それも、六年生の冬に、
社会医学のなかで、ゲリラ的に行っているだけです。現在、医学部の講座は、臓器別になっているため、緩和ケアや放射線治療のような、横断的なものは、教えることができないシステムになってしまっています。放射線治療も、十年後には、
がん患者さんの半数、
日本人全体の四人に一人近くが、受けると予想されていますが、」先ほどの斉藤
委員の答弁とほとんど同じでありますが、「講座があるのは、八十の医学部のうち、十二大学のみ、四十九大学では、放射線治療の教授職がないなど、問題だらけです。」ここまでが現状であります。「先般、文科省の高等教育局長と
お話する
機会を得ましたが、大学自治、で逃げられてしまいました。」こういうお手紙を実はいただいたわけであります。
先般、いわゆる医師不足問題で、医学部の地元枠、地域枠をふやしてほしい、我が党の菊田
議員も厚生省へ行ったら、厚生省にそういうことをお願いしたら、それは文科省へ行け、文科省に行ったら、大学の自治だ、独法化された国立大学法人の自律的、自主的な範囲だ、こういうふうに言われたということでございます。このような事態がまだ現在の事態だ。そうすると、
厚生労働省がいろいろな研究をされたり、いろいろな検討会をしたり、いろいろなプログラムをつくったり、アクションプログラムをつくったりしても、それがどうも空回りをして絵にかいたもちになってきていたというのがこの間の姿ではないかと私は思うんですね。
それは、
法律にちゃんと位置づけられていないということもありましょう、それに伴う予算づけも問題であったということもありましょう。ただ、人的養成といいますか人材養成だけは、大学医学部、大学病院、そして国立系の病院や先進的な病院が、やはり一つの有機的な体制としてやっていただかないとうまく機能しないのではないか、そして、事が教育という問題であるだけに、これはマーケットに任せておくだけでできるんだろうかという思いがしてならないわけであります。
国立
がんセンターの今のそういう人材養成の使命、ミッションからする問題点は、実は、レジデント、あるいはあれは専門修練医というのですか、その後期の高度研修医の枠も募集枠がなかなか満たされないというふうな事態であるということを聞きます。それから、
がんセンターにおいては、麻酔医が不足していることで、手術数が最近ふえないというかふやせられないというのも聞きます。
あとの問題はさておくとしましても、人材養成のところに資源がつぎ込まれない、予算がつぎ込まれない、お金がつぎ込まれない、ここがこの間の化学療法といい、臨床腫瘍内科といい、放射線治療といい、あるいは緩和ケアといい、このレベルがもう一つ隔靴掻痒。均てん化といいながら、では、言い出してからどのぐらい進んだのだと言われたら、依然として、ことしもお医者さんはおりません、我が町の拠点病院には専門家は一人もおりません、東京へ行ってくださいみたいな、こういう話がまだまだ続いているということが私は問題なんだろうと思うんですよ。
今回の
法案も、結局のところ、私どもが
がん対策推進本部というのが必要だというふうに申し上げておるのは、公明党さんも当初はそうおっしゃっておったようでありますが、これはやはり、
厚生労働省の部門と文科省の部門とそれと自治体を包括して、一元的に、ある施策、とりわけ人材養成といいましょうか専門家の養成について、集中的に一丸となって取り組む。それも、私どもに言わせれば、年間五百億も使えばどんどん進んでいくという話のようでありますから、どうしてそういうことができないのかという思いで、この間の医療
制度改革関連議案にも我々は取り組んできたつもりでございます。
私は、
厚生労働省の健康局や医政局の
皆さん方に、別にあなた方を追及していじめておるんではない、これはあなた方をエンカレッジしているんだといつも言っておるんですが、余り理解されないんですね。この辺が最大の心理的な問題だと思うんですよ。
厚生労働大臣、本当に、人材の問題というのは、先般の医療
制度改革関連
法案では、産科、小児科、内科等々を中心にして特に女医さんの大量の合格、まことにいいことですばらしいことでありますが、ことしは合格者が五〇%を超えたという説もございますよね、何かすごい話になってきておるわけですが、そういう時代動向を前提にしてそれにふさわしいような勤務体系をつくらなければならないというのが、先般の医療
確保問題といいましょうか医師不足問題だったはずであります。
今度は、専門家をどうやってつくるのか。そして、専門家と、専門家もお医者さんだけではなくて、
がん登録についての専門家、あるいは情報センターを運営する専門家、あるいは情報センターと両々相まって運営される相談センターの専門家というような、コメディカルあるいは補完的なスタッフ、そういうところの専門家、あるいは、放射線治療であれば読影医や読影技師の養成ですね。要するに、人的な資源というか人材養成のところに意識的に集中して資源を投入しないと、この問題はうまくいかないということがわかってきたのであります。
そういう考えについて、今度の
法案を作成されているわけでありますけれども、この
法案なり、
法案を制定するに際して何を
議論しておけばいいのか、
鴨下先生、どのようにお考えでございましょうか。