○山口(壯)
委員 確かに、旧
安保条約では、
日本が有事のときにアメリカから守られるということが規定されなかったわけですね。しかし、これが
日本にとっては一番実は大事なことだったわけです。
三ページ目の英文ですけれ
ども、これはもう
外交文書が公開されている中のもので、一九五一年の七月の末にアメリカ側から示されてきたものです。アメリカ側は、いかにして
日本に対するコミットメントをゼロに近くするか、これに物すごく腐心していたわけです。当時は、次の大戦はヨーロッパで行われるというふうにアメリカはみんな信じていたわけですから、極東、東の端で足をとられてはかなわぬということが、特にペンタゴン、国防省の中には強くあったわけです。
そのことを踏まえて、例えば、当時、これは実現しなかったけれ
ども、太平洋協定というものまでアメリカは出してきたんです。要するに、みんなで守ることにして、アメリカの
日本に対するディフェンスコミットメントをどれだけ減らすかということを物すごく苦心した。
結局、多国間協定には至らなかったわけですけれ
ども、この二国間協定で
最後の
最後に出してきたこの案文が、四ページ目のところを見ていただくと、その1に、四行目から五行目にかけて書いていますね、線を引いてあるところ。これは原文に線が引いてあるんです。「サッチ フォーシズ メイ ビー ユーティライズド ツー コントリビュート ツー ザ メンテナンス オブ インターナショナル ピース アンド セキュリティー イン ザ ファー イースト」となっているんですね。メイ・ビー・ユーティライズドとなっている。
これをどういうふうにとったかということなんですね。それがこの六ページ目からの文書に、これも
外交文書ですね。当時、これは五一年の七月三十日に書かれたものですね。午前十時から四十分まで、井口、西村と書いてある。西村さんというのが西村熊雄という当時の
条約局長です。井口さんというのが当時の
外務次官。二人でフィン書記官に会っている。シーボルト大使に会っているわけですね。
そのときに先方から
説明があって、その一番の焦点が八ページ目から九ページ目に書いてあるんです。何て書いてあるか。これは
日本側がとった意図でもあるんですけれ
ども、八ページ目の一番
最後から、「この点を明白にしておくため、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持並びに外部からの武力攻撃に対する
日本の安全に寄与するために使用することができる。」とする。この点のみが、実質上の問題である。」と先方が言ったと記録してあるんですよ。アメリカ側から、この点のみが事実上の問題であるという
説明を受けたと西村さんが書いてあるわけですね。
その九ページ目の
最後に、「実質的に、こうなくては動きがとれない。」と向こうは
説明したというふうに書いてあるわけです。
そして、これをずっとめくっていただくと、これはきょうの問題とはちょっと別ですけれ
ども、十二ページ目をちょっと見てください。この案文をいつ公表したらいいかという話の中で、いずれにせよ、
国会の後がよいというような話もしているんです。何か今の
グアムの話にちょっと、若干、私なんかつい気になってしまうんですね。だから、これは昔から、
条約をまとめる立場はこういう発想をどうしてもしがちだとは思うんですけれ
ども、やはりこういう点は改めた方がいいと思うんです。
それで、このいろいろな流れの中で、アメリカ側からこういうアイデアがずっと出てきて、そしてその真意は、できるだけディフェンスコミットメントをなくすること、こういうことなんです。
それで、もう少し見ていきますと、
日本がこれに対してどういうふうな検討を加えたかということなんですね。これは、
日本が、実は七月の三十日に、
総理に
報告をして、これでいいかというくだりがあるんです。
十三ページ目をあけていただけますか。十三ページ目の右側にちょっと、西村さんの字で書いていますでしょう。「七月三十一日午前箱根で
総理に
説明 了承を得 午後次官よりシーボルト大使に渡す」と。
大臣が今持っておられるものにも、右側に書いていますね。
そこに、1に「オール サジェスティッド チェンジズ アー アグリーアブル ツー ザ ジャパニーズ ガバメント」、もうそれでいいよと。これは、実は七月三十日に渡されて、七月三十一日にはもうアメリカ側に、それでいいよと、1の一番最初の二行です。「オール サジェスティッド チェンジズ アー アグリーアブル ツー ザ ジャパニーズ ガバメント」と書いていますね。信じがたいことなんだけれ
ども、ぽんぽんと返事しちゃっているんです。何でだろう。これは今でもわかりません。
ただし、西村さんが後で本を書いているんです。その本の中に、十九ページをあけてもらっていいですか、十八ページから十九ページ。十八ページは西村さんが書いた本の題名です。「
日本外交史 二十七」という本の
内容なんです。十九ページ目に、この二行、百七十四ページに書いてあるんですけれ
ども、いろいろな「などなど——について、」この線は私が引きました、「充分考慮を払わないで「同意あって然るべし」との結論を
総理に上申したことは、今日に至ってなお事務当局として汗顔の至りである。」ああ、なるほど、こうだったのかと。「これらすべては一九六〇年一月十九日の日米相互協力及び
安全保障条約で是正された。せめてもの慰めである。」と。
当時、朝鮮戦争も行われていましたから、アメリカ側から、メイ・ビー・ユーティライズド、使うことができるというのだから、使うかもしれないよというつもりで、アメリカはもうディフェンスコミットメントをいかに少なくするかという文言を提出してきたわけです。
日本側は、動きがとれないから困るという
説明をそのままうのみにして、次の日にはもうアグリーアブルだと返事している。
ところが、それで、しまったと思ったわけですね。これは多分、吉田
総理が気がついたんでしょう。しまったと思ったところが出てくるんですよ。
二十ページをあけてもらえますか。もう七月三十一日にはアグリーアブルと返事しているわけですね。ところが、その後、追加で文書を出しているんですよ。
外交上こういうのはほとんど認められません。しかし、もう必死の思いでやっているんでしょうね。「八月三日午後フィン氏に手渡す 藤崎」。藤崎さんというのは、当時
条約課長だったんです。西村さんの下で
条約課長をやっていた。ここに書いてあるのは、左横にひゅっと線が引いてあるところをちょっと読みます。
「サッチ フォーシズ ウイル ビー」、要するにメイビーじゃなくて、「ウイル ビー ユーティライズド ツー コントリビュート ツー ザ セキュリティー オブ ジャパン アゲンスト アームド アタック フロム ウイズアウト」、要するに、
日本の本土に攻撃があったときは、これはメイじゃなくてウイルですねというふうに一生懸命言っているわけですね。
それから、「メイ ビー ユーティライズド ツー コントリビュート ツー ザ メンテナンス オブ インターナショナル ピース アンド セキュリティー イン ザ ファー イースト」、極東のものはメイビー、こういうことなんでしょうと一生懸命
日本側からすがっているわけです。
ノートで書いてある、「イン ザット パート オブ ザ センテンス フイッチ セズ ザット サッチ フォーシズ メイ ビー ユーティライズド」云々とあるのは、この四行目、「ザ ワード メイ イズ コンストルード ツー ミーン ザット ジャパン ウッド ハブ ノー オブジェクション ツー ザ ユナイテッド ステーツ」、要するにメイビーとあるのは、
日本が反対しないよということ、そんな
意味でのメイなんでしょうと一生懸命言っているんです。使うかもしれないというメイじゃなくて、
日本がオブジェクションしないという
意味なんですねと一生懸命すがっているんですよ。これをフィン氏に渡しているんです。
ところが、アメリカはもう聞くわけないですよ。一たんアグリーアブルと来て、もうやったとえらい喜んでいるんです。やったやった、何で
日本はこれを認めたんだろうというぐらいに喜んでいるんです。
それで、二十二ページ目を見てください。二十二ページは、今度はアメリカから返事が来るんです。すぐですよ。もう、こんなの絶対本省にまで上げていないですよ。国務省にもペンタゴンにも絶対上げていない。
四日の返事が、三行目ですか、このチェンジズが「ハブ ビーン アプルーブド バイ ザ プリンシパリー インタレスティッド デパートメンツ」、もう主な関係
省庁には全部認められましたからと、
日本側の
最後の望みをぽんとけっているわけですよ。これが実は実態だったんですね。
それで、次の二十三ページをちょっと見ていただければ、これはアメリカ側の文書なんです。フォーリン・リレーションズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツというものの一九五一年のボリューム6というものですね。
これはそれの千二百五十七ページ、私、ちょっと括弧で囲ませてもらったんですけれ
ども、これはロベットという左側に出ています国防
長官代理から国務
長官あてへの文書の中で、この括弧の中、「アイ テーク ジス オポチュニティー ツー エクステンド ザ アプリシエーション オブ ザ デパートメント オブ ディフェンス フォー ザ ラピッド サクセス」、それはラピッドだった、一日でオーケーをとったんだから。「ラピッド サクセス ウイズ フイッチ アンバサダー シーボルド イン トーキョー ゲインド ザ アセント オブ ザ ジャパニーズ ガバメント ツー ザ チェンジズ イン ザ ドラフト US ジャパン セキュリティー トリーティー アンド フォー ザ コオペレーション オブ ミスター ダレス アンド ザ デパートメント オブ ステート」、よくやってくれた、よくこの
合意を取りつけてくれたと感謝しているわけです。アメリカがどういうつもりでこの案文を出してきたかということが余りにも明らかなんですね。
確認のため、
大臣、
最後に、この十七ページをもう一回、ちょっとめくってください。十七ページは、同じフォーリン・リレーションズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツの五一年のボリューム6の中にある千二百六十一ページなんです。これは、左側の方に書いてあるように、ジョイント・チーフス・オブ・スタッフ、統合参謀本部の意見として出された言葉なんです。
この四角の中、私が引いたんですけれ
ども、「アコーディングリー イット シュッド ビー メード アンミステーカブリー クリア ザット ザ レスポンシビリティーズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ フォーシズ アー ノット リミテッド ツー ザ テリトリー オブ ジャパン」、とにかく
日本に縛られるということがないようにしたいんだと一生懸命言っているわけです。
これを踏まえて、アメリカがメイ・ビー・ユーティライズドと出してきて、
日本は、西村局長は本当にかわいそうだ、汗顔の至りであると。だって、アメリカ側の
説明で、朝鮮でもやっているんだから、メイ・ビー・ユーティライズドすることができると、これが実質的なポイントなんですと言われたから、ああ、そうだなと思ったと思うんですね。
ところが、これを
総理にも余り考えずに上申してというので、えらくびっくりして、
総理がその後どういう指示をしたか、これはわからないんです。
外交文書に出てこないんです。だけれ
ども、八月三日には、メイビーは実は
日本本土が攻撃されたときはウイルビーのことですよなんて一生懸命すがっている。でも、アメリカは完全に門前払いを食らわせている。そこが、実は五一年の
安保条約の最大のポイントだったんですね。
では、六〇年ではどうなったか。六〇年の文言は、新しいものが一ページ目ですね、今の
安保条約というのが一ページ目で、その二段目に書いてある今の第五条ですね。
第五条に、「各締約国は、
日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」ある
意味で、各締約国は勝手に宣言しているわけです。
一応、これで対日防衛義務が決まったことになっていますけれ
ども、書き方としては、できるだけ薄めようとした
努力が私には
感じられてしまう。ここまでとるのが精いっぱいだったと思うんですよ。だけれ
ども、一応、これで各締約国が宣言しているんだから、あることになっています。
さあ、これで大丈夫かということなんです。本当に大丈夫かと。我々はこういう一九五一年の
安保条約ができたときの経緯、
麻生大臣としてはそれは、アメリカが
条約上、対日防衛義務があると
答弁せざるを得ないです。それは間違っていません。他方、その
答弁をされるときにも、やはりアメリカがどういうつもりでいるかということは一応、心の中でこっそりいろいろ考えた上で
答弁してもらいたいわけです。私は、アメリカとの同盟を否定しているものでも何でもありません。だけれ
ども、そういうアメリカであるということを知った上でないと大変なんです。
そして、きょうはちょっと追加でお配りさせていただいたワシントン・ポストの
記事。別に
大臣、困るような質問を私はしていませんから大丈夫ですよ。ワシントン・ポスト、これは四月の九日ですね。四月の九日に、この右上の方に
記事が出ていますね。「US イズ スタディーング ミリタリー ストライク オプションズ オン イラン」、要するに、イランに軍事攻撃をかけるオプションを考えている。このすぐ後で、いわゆるそれを否定する
記事もどんどん出ていますけれ
ども、これは当然、政権側がリークしています。
ワシントン・ポストというのは、これは私も言い方は非常に気をつけなきゃいけないですけれ
ども、今グラハムさんという人が持っていますね。グラハムというのはいかにもアングロサクソン的な名前ですけれ
ども、お母さんのキャサリン・グラハムさん、そうですね、あの美人だったキャサリン・グラハムさん。旧姓はキャサリン・マイヤーですから、マイヤーというのはドイツ系ユダヤ人の名前です。
この
記事をずっと読んでいただくと、字が小さいから、ただ単につけましたけれ
ども、イスラエルが物すごく心配して頼んでいるということが詳細に書いてあるんです。
それで、私は言いました、
グアムの
移転の話の中で。イランは今核兵器を持っていない。だけれ
ども、ブッシュさんはイランのことでもう頭がいっぱいになっている。そして、核兵器を現実に持っていると自分でも言っているし、
日本も一応その
可能性は否定しない北朝鮮、このことについてアメリカは
中国に丸投げをしてしまっている、六カ国
協議という格好で。しかも
中国は、北朝鮮が問題であればあるほど自分の値打ちが高まるから、本気で解決しようとしているかどうか、私は危ういと思う。北朝鮮の問題を
中国に丸投げして、まだ持っていないイランについては頭がいっぱいになっている。そのアメリカから、
グアムに
移転するから金を出してくれ、半分出してくれなんというのは、これはおこがましいぞというのを私は申し上げたわけです。
大臣、きょうは私、このことをまず、この歴史の事実を、私は全部これは原典に当たったわけです。原典以外の何物もない。この原典を踏まえた上で、アメリカに対して
日本がこれからどう対処すべきか。友達は友達としてずっとつなぎながらも、やはり
日本が自分の
安全保障をどう考えていくかということは、もう考える時期に来ていると思うわけです。
残り時間少ないですから、
大臣の
答弁を哲学的なものも含めていただいて、私の質問を終わります。