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2005-09-29 第163回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年九月二十九日(木曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成十七年九月二十九日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 扇千景

    ○議長(扇千景君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二十六日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。円より子君。    〔円より子君登壇、拍手〕
  3. 円より子

    円より子君 民主党・新緑風会の円より子でございます。会派を代表し、小泉総理所信表明演説に対する代表質問を行います。  さきの総選挙で、我が民主党は残念ながら議席を激減させ、与党に三分の二以上の絶対安定多数を許してしまいました。改革政治目的と履き違えた小泉自民党とは違い、私たち民主党は、国民の命と暮らしを守るための真の構造改革を目指す党でありましたのに、郵政民営化法案抵抗勢力のように誤解されてしまいました。  しかしながら、二千四百八十万人の人々が支持をしてくれたのです。それは、現在の生活に満足していないという四〇%もの人々や、働きたくても職場のない若者たち子供を持つことをためらう団塊ジュニアの三十代、リストラされ、勤めていた会社が倒産し自殺考えた、また自殺をしてしまった人たちの家族、こつこつまじめに働いて商売をしてきたのに銀行の貸し渋りや貸しはがしで商売を続けられなくなった人たち、そういう人たちの夢と信頼をかち得たからだと自負しております。  さらに、野党すべての小選挙区の得票数は三千四百五十万票であり、自公両党の三千三百五十万票を実に上回っています。これは一体何を物語っているのでしょうか。中選挙区制とは異なり、小選挙区制度の妙味によって議席数が三分の二以上になっただけであって、大勝したとか完勝だとかおっしゃるのは国民を見ていないことになります。国民は、小泉自民党に絶対安定多数の三分の二以上を許すつもりはありませんでした。それが国民の半数が反対票を投じたことに表れているのです。この国民の真意についてどのようにお考えになりますか。  国民は今、表面的な大勝に浮かれている与党が、絶対安定多数をかさに着て、どんな法案も通せるとか、改憲でも増税でもできないことはないという状況になったことに大変な懸念を持っております。この懸念を必ず吹き飛ばすことを私たち民主党国民の皆様にお約束したい。また、おごれる者は久しからずという言葉どおり、勝ち過ぎた者はいずれ必ず負けるのです。これは歴史が証明しております。  私たち小泉自民党が実力で勝ったとは思っておりません。総理は、こうした民意を冷徹にくみ上げ、国民の半数は、与党による国益に反する郵政民営化法案にも、四年間国民に痛みを押し付けただけの総理のえせ改革にも、全面的に賛同したわけではないことをしっかりと脳裏に刻み込み、残り一年の任期を今度こそ国民のために働かれることを望みたいと思います。  まず、総理郵政改革考え方について伺いたいと思います。私には、総理が、アメリカ国益は優先しても我が国国民の安全、安心国益を優先しておられるとはとても思えないからです。  総理は先日の所信表明演説でもその大半を郵政民営化法案に費やされました。この欠陥のある郵政民営化法案に対し、国民の財産を守るためにどうしても譲れないことを、既に国会でも我が民主党同僚議員が何度も追及したことではありますが、再度ただしておきたいと思います。  郵便貯金簡易保険を合わせて三百五十兆円がこの法案の成立によって真に国民に役立つように活用されるのかどうか、その問題であります。この三百五十兆円の金融資産は、日本国民が額に汗してためた大切な財産です。  これらの膨大な資金について、竹中大臣は次のように言われています。郵便貯金銀行郵便保険会社株式は、民営化された後は十年以内に持ち株会社日本郵政株式会社からすべて放出されて、その株式は自由にだれでも、これは外資でもということでございますが、買えるようになると。  民営化した後にできる日本郵政株式会社という持ち株会社株式上場されたとき、これをいわゆるハゲタカファンドがどれだけ買えるか、あるいは外国資本が二〇%以上は買うことができないような歯止めを法律で掛けるかどうかがそこで大変重要になってきます。ところが、これに歯止め、つまり法的規制を掛ける議論は一切総理はなさろうとしなかった。これは大変危険なものをはらんでおります。これでは日本郵政株式会社株式が無制限に外資に取得される可能性が高くなる懸念があるからです。  総理は、アメリカの言うことなら即座に支持するとの姿勢を常に取られるようですが、そのアメリカでは、郵政事業国民のためのパブリックサービスであると同時に、国防にもかかわる基本的な事業であるととらえ、民間企業外国資本による株式の取得を制限するように法的規制を掛けております。このことを御存じないわけはありますまい。  アメリカも掛けているこの法的規制だけはどんなことがあってもやっていただきたい。私は、国民の汗の結晶である最後の三百五十兆円を国民のために守る義務が、そして責任総理にはあると思います。必ず国民のためにこれはやると確約を総理はすべきだと思います。その決意を伺いたい。  次にお聞きしたいのは、国民の安全と安心の大きな基盤、財政再建についてです。国民は今、我が国財政状況について深刻な危機感を持っております。  我が国財政は、バブル崩壊以降の累次の経済対策による歳出の拡大に加えて、度重なる減税や景気の低迷による大幅な税収減によって国と地方の長期債務残高が加速度的に累増し、その残高は、財務省の発表では、今年六月末現在、七百九十六兆円に達しました。今や主要先進国中最悪であり、正に破綻寸前状況にございます。そして、国民の皆さんはこの事実を御存じでしょうか。何と、このうちの三分の一の二百六十一兆円は、改革を進めているはずの小泉内閣がつくった借金なのです。  財政赤字債務残高の拡大により財政に対する国民や市場の信認が低下すれば、長期金利の上昇を通じて、回復過程にある景気に重大な悪影響を及ぼします。このような中で、財政破綻を回避し、将来にわたり持続可能な財政を構築していく道筋を示すことこそが国民安心につながるのではないでしょうか。  そこで、総理に伺います。  総理は、所信表明演説において、二〇一〇年代初頭に政策的な支出を新たな借金に頼らずその年度の税収等で賄えるようにする、プライマリーバランス黒字化による財政構造改革に取り組むと改めて述べられました。しかし、演説では、その達成に向けた具体的な道筋を何ら明らかにされておりません。  しかも、しかも内閣府は、改革が進展すれば本格的な消費税引上げを行わなくても二〇一二年にプライマリーバランス黒字化できると極めて楽観的な見通しを示し、財務省消費税の二けたへの引上げは不可避であるとの全く逆の悲観的な見通しを示しています。今後の財政再建に関する政府部内の問題意識がこんなにばらばらでいいのでしょうか。  また、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランス黒字化できるとしても、これはあくまでも国と地方を合わせた財政収支であり、国は依然として大幅なプライマリー赤字であることは明らかです。したがって、プライマリーバランス黒字化した後の財政再建目標、とりわけ国の財政再建目標が今後の重大な政策課題になります。  平成九年に導入された財政構造改革法は、金融危機景気失速のあおりで凍結され、今なおたなざらしにされているのです。これに代わる新たな財政再建目標を早急に策定することにより、財政に大枠をはめるとともに、個別分野ごと歳出削減目標を定め、聖域なき歳出改革を積極的に進めていくべきと考えますが、総理見解をお伺いいたします。  あわせて、財政再建のためには、国の一般会計歳出改革だけでなく、各省庁の独自財源として聖域化され、巨額な無駄遣いの温床ともなっている国の三十一すべての特別会計をゼロベースで見直して、事業の廃止や民営化を含めた抜本的な改革を行うべきではないでしょうか。この点についても総理の答弁をお伺いいたします。  さて、小泉総理はこれまでほとんど通貨の問題について言及されていないように思いますが、通貨国民の安全、安心にかかわる重要問題です。  近年、円を取り巻く環境に内外で大きな変化が見られ、円の国際通貨としての役割を推進しようという議論が活発に行われています。  長年にわたる欧州の悲願の結果として、国際通貨金融資本市場に登場した国際通貨ユーロは、これまでの米ドル一極体制に変化を迫る可能性を秘めております。  このユーロ誕生を目前にして新たな国際通貨体制を模索する動きが出始めていた中、一九九七年七月のタイ・バーツ切下げに端を発したアジア通貨危機は、その発生原因一つ米ドルに過度にリンクしたアジア諸国通貨システムであったこともあり、新たな国際通貨システム模索への議論をより加速させる結果となりました。  既に新たな国際通貨システムへの一歩として、欧州でのユーロの誕生以外にも、米州においては、例えばアルゼンチンにおけるドル化といった動きも見られます。  こうした流れの中でアジアとして打ち出していくべき道は、よりアジア各国と経済的な結び付きが強く、経済的規模も大きい日本を中心とした通貨システム、例えば日本円の比重を増した通貨バスケットシステム等を築いていくことではないでしょうか。  といいますのも、世界ではアメリカによるグローバルスタンダードと呼ばれる価値観が広まり、ヨーロッパではEUの統合が着実に進展していますが、欧米とは異なる考え方価値観を持つアジアにおいては、アジアにふさわしいやり方で、お互いの協力関係を強化し、人的交流を深め、関税などの通商障壁を撤廃し、投資に関するルールや経済社会制度の調和を進めていく必要があると考えるからです。  日本が円の国際化に伴う国際的責任を分担し、円の国際化を推進していくことは、アジアの発展、国際通貨体制の安定に寄与することになり、ひいては日本の安定的な成長につながります。  石油だけでなく、通貨イラク戦争を起こしたと専門家の間では既に言われており、我が国通貨エネルギーに関してしっかりとした戦略を持つ必要があります。総理戦略はあるのか、通貨について総理のお考えを伺います。  次に、これも国民の大きな安全、安心一つ防災対策について質問します。  我が国防災対策を見ますと、震災対策津波対策風水害対策火山被害対策など、個別の対策にはそれなりの進展が見られます。また、この七月には最近の災害を教訓として、国の中央防災会議防災基本計画を修正し、地震防災戦略津波対策集中豪雨時等における情報伝達の改善及び高齢者等の避難への支援、洪水ハザードマップ活用推進等による洪水・土砂災害対策などについて、その強化を図ることといたしました。  しかしながら、これらの対策はいずれも対症療法的と言わざるを得ません。なぜなら、災害を未然に防止し、拡大させない国土づくり都市づくりという観点が根本的に政府対策には欠けているからです。  国土の均衡ある発展という名において、美しく、また災害に対する抵抗力を元来備えている森林等の自然を破壊し、ダムや道路あるいは人工林国土を画一的に覆い尽くそうという政策等は何ら変わっていないからです。こうした政策にもかかわらず、山間地等における過疎化は止まらず、高齢者のみでコミュニティーを支えざるを得なくなり、災害時の避難も思うに任せなくなっています。  都市部においても、規制緩和の名において、小泉政権土地利用規制を形骸化させ、無秩序な土地利用が進みました。また、緩い容積率斜線規制等を目一杯利用した建物の建築により、町の美観が損なわれるだけでなく、防災という面では大変脆弱になっています。近年多発している都市直下型地震都市部でのゲリラ型豪雨に対する対応は極めて不十分なものと言わざるを得ません。  そこで、この際、より根本的な防災対策として、災害を未然に防止し、拡大させない国土づくりへと政策の方向を転換すべきと考えます。  具体的には、いまだに日本列島改造の発想から抜け切れていない工業再配置法を始めとする地域開発立法を全面的に見直すことが必要です。また、水害防止地球温暖化防止といった森林の公益的機能を早急に再生させるため、治山治水事業を隠れみのとした環境破壊型の公共事業を縮減し、環境と緑を守る持続可能な公共事業、すなわち緑のダム事業へと転換するべきだと考えます。  都市づくりにおいても、計画なくして土地利用なし、建築なしの原則を確立するため、建築基準法単体規制に特化させ、都市計画法をあまねくすべての地域を対象とするまちづくり法へと大胆に改変するとともに、地域コミュニティーの自立、再生、充実を図るまちづくり基本原則を明記した景観・まちづくり基本法を制定する必要があるのではないでしょうか。  防災対策としての国土づくり都市づくりなしに国民の安全、安心をうたう総理の見識を疑いたくなるのですが、総理見解はいかがでしょうか。  さて、最も重要なのは、世界の中の日本についての総理認識とその対応です。  総理のこの間の行動を見ますと、向米一辺倒で、それだけで我が国の国際的な平和と安定を維持できるとお考えのように見えます。  総理は、我が国の安全と繁栄には世界の平和と安定が欠かせないとおっしゃいますが、残念ながらその外交には総合的戦略が欠けております。今の我が国にとって必要なのは、長期的、総合的な外交戦略です。そのためにどのような布石を打つべきか。  第一は、当然、日米同盟の強いきずなを維持すること。しかし、過剰なアメリカ追随アジア諸国との友好を妨げます。というのは、第二の布石は東アジアにおける日本の貢献であり、そのためには中国韓国との友好な関係を築くことこそが我が国の平和と安定にとって大変重要だからです。第三は、国際社会の一員としての存在を示すことです。この三つのバランスが外交には重要ですのに、総理は全く国益に反することをやっておられると皆さん思われませんでしょうか。  中国日本常任理事国入りに厳しい姿勢を取ることが分かっていたのに、総理は殊更に靖国問題で日中間に荒波を立て、国際社会に戦後六十年たっても隣人と仲良くできない国に常任理事国が務まるのかという疑念をかき立てました。国連改革への参画、安保理常任理事国入りも大切ですが、まずは近隣諸国との信頼関係を確かなものにしていくことが先決ではないでしょうか。  中国とは首脳同士相互交流が途絶えています。韓国とは竹島問題や歴史認識問題でぎくしゃくした関係が続き、日韓国交正常化四十周年の事業も盛り上がりを欠いています。小泉総理は、自ら種をまいた靖国問題と日中、日韓関係の修復、アジア外交の立て直しを速やかに実行に移すべきではないか。  東シナ海の海洋資源をめぐる日中間のあつれきも重大な岐路に差し掛かっています。ガス田の操業を始め既成事実を重ねる中国側姿勢は容認するわけにいきませんが、この問題を日中の対抗意識のぶつかり合いに陥らせてはなりません。海洋資源日中双方合意の下で開発、生産され、日本企業が多数進出している中国沿海部エネルギー需要を賄えば、双方の利益となります。我が国資源エネルギー源多様化安定供給の確保に資する観点からも、政府中国との協議に臨むに当たり知恵をもっと出すべきではないでしょうか。  次に、自衛隊海外派遣について伺います。  小泉総理は、テロとの闘いを標榜し、アフガニスタン戦争に伴う海上自衛隊によるインド洋での洋上補給活動という戦時派遣に踏み込み、また、イラク戦争に際して、人道復興支援の名の下に陸上自衛隊イラク派遣という戦地派遣の扉を開きました。何事も進むのはたやすく、引き際のタイミングをとらえることは難しい。  十一月一日に期限の迫るテロ対策特措法の再延長を取りやめ、洋上給油の需要が乏しくなったインド洋から海上自衛隊を速やかに撤収させるお考えはないか、総理見解を伺います。  そもそも、四年前にできたテロ特措法は、九・一一に関するものであり、二年間の時限立法だったはず。それを二年間延長し、更に二度目の延長もしようというこの不自然さをどう考えておられるのか、伺いたいと思います。  イラクでは、イラク戦争開戦理由とされた大量破壊兵器は結局発見されず、テロ掃討作戦という暴力の連鎖は、正に内戦とも形容すべき深刻な状況です。民主党は、派遣自衛隊は十二月までに撤退させ、日本にふさわしい復興支援に取り組むと主張してきました。十二月十四日の自衛隊派遣期限の再延長国会閉会後に強行されるようですが、それは国会論議を封じることであり、自衛隊に対する政治のコントロール、シビリアンコントロールの責任をなげうつことになってしまいはしませんか。  イラク治安状況を見れば、非戦闘地域への派遣という政府の説明は既に崩壊しております。サマワに派遣された自衛隊に対する度重なる攻撃の現実を見据えれば、撤退の決定を先延ばしすべきではありません。総理の御認識を伺います。  次に、在日米軍再編問題に関してお聞きします。  日米間の調整に基づいての中間報告が間もなく十月中にも出されると言われていますが、果たしてそれは事実なのかどうか。あるいは、タイムリミットは十一月にも開かれる見通し日米首脳会談までずれ込むのかどうか、その見通しについてまず明らかにしていただきたい。  更に踏み込めば、再編問題に対してそもそも日米認識の違いがあります。総理はいかがお考えか。ハイテク技術を駆使すればいつでもどこでも対処できるため、前方に軍を常駐させることはもはや不要となっておりますが、しかしながら、アメリカアジア太平洋地域においての抑止力を低下させようとはそもそも考えておりません。いわゆる不安定の弧に対処するため、現にアメリカはインドやパキスタンと盛んに接触しているではありませんか。また今後、日本単独の有事もないとアメリカは見ています。つまり、日米安保は変質し、日本を守るという目的からアジア太平洋地域の平和と安定をともに守っていきたいと考えていると思われます。  そうした戦略環境変化に対応しようという米軍の再編を日本は基地問題ととらえてしまい、アーミテージ氏に、日本には理念から入るべきだったと言わしめたと聞きます。こうした米軍再編成の認識について議論すること、また、この日米認識の違いを国民に知らせることがまず必要だとお考えになりませんか。  もちろん、国民にとって、特に沖縄県民にとって基地問題は重要です。米軍の再編に合わせて基地の海外移転を図りたいというのは当然のことです。しかし、日米認識の差があることから、既にSACO合意から十年近くの月日が経過しているにもかかわらず、普天間返還は暗礁に乗り上げております。仮に十一月の日米首脳会談でも決着が得られなかった場合には総理政治責任という問題が起きます。国民の安全、安心とは口先だけなのでしょうか、リーダーシップを取るお考えはないのか、重ねて明確な答弁を求めます。  さて、打ち合わせたわけではないんですが、昨日、我が民主党鳩山由紀夫幹事長も、衆議院における代表質問の中で、二・二六事件後の昭和十一年五月七日、第六十九議会における斎藤隆夫のいわゆる粛軍演説に言及されました。  私は、私事で恐縮ですが、一昨年に上梓した拙著「一人でも変えられる」の本の中に彼のことを書いており、尊敬する政治家の一人でございますので、文語口調ではありますが、まるで今の時代を映しているその演説内容をしばらく引用することをお許し願いたいと思います。  まず第一は革新政治の内容に関することでありまするが、一体近ごろの日本革新論及び革新運動流行時代であります。革新を唱えない者は経世家ではない、思想家ではない、愛国者でもなければ憂国者でもないように思われているのでありまするが、しからば進んで何を革新せんとするのであるか、どういう革新を行わんとするのであるかといえば、ほとんど茫漠として捕捉することはできない。言論をもって革新を叫ぶ者あり、文章によって革新を鼓吹する者あり、甚だしきに至っては暴力によって革新を断行せんとする者もありまするが、彼らの中において、真に世界の大勢を達観し、国家内外の実情を認識して、たとえ一つたりとも理論あり、根底あり、実行性あるところの革新案を提供したる者あるかというと、私は今日に至るまでこれを見いだすことができないのである。国家改造を唱えるが、いかに国家を改造せんとするのであるか、昭和維新などということを唱えるが、いかにして維新の大業を果たさんとするのであるか。しかも、この種類の無責任にして矯激なる言論が、ややもすれば思慮浅薄なる一部の人々を刺激して、ここにもかしこにも不穏の計画を醸成し、不逞の凶漢を出すに至っては、実に文明国民の恥辱であり、かつ醜態であるのであります。  文語調でございましたが、皆様はお分かりいただけましたでしょうか。この斎藤隆夫演説を行った時代から実に七十年もの時が流れております。しかしながら、この革新、つまり改革に浮かれた時代状況は今と全く変わらないと思われませんか。当時も、革新世の中すべてが叫んではいても、いかにしてそれを実現するか全く明らかにされていない。そして、それは小泉総理の言う改革とも共通します。  改革なくして成長なし、改革を止めるな、改革なくして明日はないといった元気な言辞を頻繁に弄した名アジテーター小泉総理に乗せられ、改革とさえ叫べばすべてがうまくいくかのような幻想に陥ってしまった人々が多くいます。  しかし、この四年間、年金の不安は消えたでしょうか。子供の出生は増えたでしょうか。自殺は減りましたか。小学校の子供たちまでが教師を襲い、親の子供への虐待は増え続けています。この世の中がとても良くなっているとは思えません。世界を見ても、うまくいっているように見える日米関係はBSE問題や基地問題などがあり、アジアでは、中国からも韓国からも尊敬されるどころか、両国との友好関係が瓦解しそうであることは既に申し上げたとおりです。  小泉総理、あなたは改革を叫んで一体どういう社会をつくりたいのですか。あなたの改革とは何なのでしょう。あなたは改革をあたかも正義であるかのように人々を鼓舞しておりますが、改革は正義ではありません。目的ではありません。手段にしかすぎないのです。  人を幻想に陥れる天才とでもいうべき総理がやりたい改革は、よもや海外で武力行使ができる国に日本をすることではありますまい。何も説明をせず、弾道ミサイル防衛に多額の予算をつぎ込んでアメリカと協力すれば、中国韓国アジア諸国から危険な国と見られるのは必至です。日本の高度な省エネ技術物づくり技術をODAに生かして世界の国の尊敬と信頼を得るよりも、分担金の額が多いのだから安保理常任理事国になるのは当然だと主張すれば、キリスト教圏の人から見れば、札束で人の顔を張るような、ならず者国家のように映ります。  総理が小さな政府を志向したサッチャーさんの改革を範とするのはよしとしても、市場原理のみを追求し、社会的弱者となってしまった人たちを放置すれば、それはサッチャーさんの改革の片面だけを追うことになり、政治家としての責務を果たしたことにはなりません。  さらに、人生いろいろ、会社もいろいろ発言は、この国の人々のモラールを一気に低下させました。この責任をどうお取りになりますでしょうか。  御自身の厚生年金について追及されたときもそうです。親身に政治家小泉を育てようと言ってくれる人がいて、働いてもいないのにそういう資格を取ってもらえた。しかし、そういう恩恵を受けられない人々が多数であることを考えれば自分は恵まれ過ぎている。申し訳ないから厚生年金の資格を返上します。例えばこのように謝られれば、国民のモラールの低下は食い止められたかもしれません。しかし、にやにやとお笑いになって、人生いろいろ、会社もいろいろと発言なさいましたから、国民年金の未納は広がる一方です。  人生いろいろとは、人生いろいろとは、この言葉は苦境にある人に励ましの言葉としてこそ言うべきもので、恵まれた人々が自らを肯定するために発する言葉ではないのです。一国の総理が発する言葉が社会にどれほどのインパクトを与えるものかを認識せず、日本語の使い方をこうも歪曲した総理はこれまでおられなかったのではないでしょうか。  今、マスコミはあなたのけんか上手を褒めそやし、おもねってもおりますが、五年、十年後、小泉総理のワンフレーズポリティックスとその社会的影響の是非といいますか、その罪は明らかとなるでありましょう。  私と私たち民主党は、国会での議席では少数派となりはしても、斎藤隆夫のように、人々改革熱に浮かされることなく、世界の大勢を達観し、国家内外の実情を認識するというあるがままに見るリアリズムを尊んで、これからも断固行動していくことを国民にお誓い申し上げ、さらに、総理の御答弁次第では再質問させていただくことを通告し、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  4. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 円議員に答弁いたします。  今回の総選挙の投票結果についてでございますが、おかげさまで自由民主党と公明党合わせて過半数以上の議席を獲得することができました。国民の大きな支持を支えにして、今後とも、郵政民営化のみならず、もろもろの構造改革を断行していきたいと思います。前原新代表も改革競争をしたいということでございます。大いに切磋琢磨しながら、改革実現に向けて協力をしていきたいと思っております。  日本郵政株式会社外資規制でございますが、日本郵政株式会社は公的な役割を担う会社であり、政府が安定株主として議決権の三分の一超を保有することとするとともに、特殊会社として主務大臣による監督規定を設けております。これにより、会社の経営の安定、適正な業務の遂行を確保できると考えられるため、外資規制は設けないこととしております。  財政再建への道筋でございますが、政府としては、二〇一〇年代初頭に政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えることを目指して、社会保障制度改革、三位一体の改革公共事業費の削減など様々な分野の改革に聖域なく取り組んでおり、今後とも歳出歳入一体の財政構造改革を強力に進めてまいります。  基礎的財政収支改善に向けた中期的取組については、経済財政諮問会議における議論等を通じて、おおむね来年半ばを目途に改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにし、平成十八年度までに結論を得る考えであります。  基礎的財政収支黒字化後の財政再建目標についてでございますが、二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支黒字化後の財政再建目標をどう考えるかは重要な課題ではありますが、基礎的財政収支黒字化に向けた中期的取組について結論を得ることとし、歳出歳入一体の財政構造改革を強力に推進することが必要であると考えます。  特別会計でございますが、受益と負担の関係を明確にできるなどの意義がある一方、近年、硬直化して無駄な支出が行われているのではないか等の問題が指摘されております。したがって、国全体としての一層の歳出の合理化、効率化の観点から、すべての特別会計の事務事業等を精査し、非効率なものを洗い出し、温存を許すことのないよう一層徹底した改革を行ってまいります。  円の国際化でございますが、日本経済全体として為替変動の影響を受けにくくなるほか、アジア域内経済や国際通貨体制の一層の安定といった観点からも望ましいものと考えており、政府としては、今後ともその一層の推進に向け、着実に取り組んでまいります。  根本的な防災対策として、国土づくり都市づくりについてのお尋ねですが、水害、地震等の災害から国民の生命、財産、生活を守るため、危機管理の観点から東京圏等への過度な集中を是正し、国土全体を災害に強い構造としていかなければなりません。また、災害の発生に備えて、建築物の耐震化や密集市街地の改善を進めるとともに、堤防を始めとする防災施設の整備と防災情報の提供などを組み合わせた総合的な防災対策が必要であります。こうした取組を通じ、災害に強い国土づくり都市づくりを進めてまいります。  地域開発立法の見直しや緑のダム事業、新しいまちづくり法制でございますが、地域開発立法については、地域をめぐる状況変化を踏まえ、見直しが必要なものについては適時適切に見直しを行うとともに、適切な運用を図っております。  森林を健全に整備保全することは、災害を防止し、地球環境を保全する観点から重要だと考えておりますが、我が国洪水森林の保水機能をはるかに上回る規模で発生しているのが実情であります。そのため、治山治水の事業について、必要性を厳格に評価した上で、真に必要なものを効率的に実施することが引き続き必要であると考えております。  都市計画については、秩序ある土地利用を実現するため、これまで都市の区域外においても必要な土地利用規制を実施するなど、制度の充実を図ってきたところであり、今後とも、都市計画法建築基準法による適切な役割分担により、計画的な土地利用を実現してまいります。また、緑豊かで美しい景観を形成するため、昨年、景観緑三法を制定したところであります。今後は、これらを積極的に活用して、地域の自主性を尊重しつつ、安全で魅力あるまちづくりを推進してまいります。  日中、日韓関係を含むアジア外交でございますが、中国韓国を始めとするアジア諸国とは、ともに手を携えてアジア地域の平和と繁栄を実現していくことが重要であります。引き続き、これらの国々との間で意見が異なる個別の問題についても対話を深め、幅広い分野における協力と国民各層における交流を強化することを通じ、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を構築していく考えであります。  東シナ海における資源開発でございますが、東シナ海における中国による資源開発の問題については、中国側と協議を行い、中間線東側の資源に影響を及ぼし得る中国側開発について情報提供及び作業中止を求めるとともに、共同開発による問題解決の可能性を含め、率直な議論を行う予定であります。我が国の主権的権利を確保しつつ、東シナ海を協力の海とすべく努力する考えであります。  テロ特措法でございますが、諸外国の艦艇がインド洋上にて行っている海上阻止活動は、テロリストや関連物資の海上移動を阻止するものとして引き続き大きな意義を有しており、自衛隊支援に対しては各国から引き続き大きな期待が寄せられているものと認識しております。  米国同時多発テロによってもたらされたテロの脅威は依然として存在しており、我が国としても、これを除去するための国際社会の取組に引き続き積極的かつ主体的に寄与していく必要があることから、同法の延長が必要と判断したものであります。  自衛隊イラク派遣についてでございますが、サマーワの治安情勢はイラクの他の地域と比べれば依然として比較的安定していると考えており、これまでの情報を総合的に勘案して判断すれば、現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。  現在の基本計画における派遣期間終了後の対応については、国会での議論を踏まえ、国際協調の中で日本の果たすべき責任イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を見ながら日本国益を十分に勘案して判断すべきものと考えます。  在日米軍の再編でございますが、在日米軍の兵力構成見直しについては、在日米軍の抑止力を維持しつつ沖縄等地元の負担の軽減を図るとの観点につき日米間の認識は一致しており、これに基づく米国と協議を進めてきております。今後、可能な限り速やかに具体的な成果を出すべく政府一体となって取り組んでまいりますが、公表の時期、形式及び内容は現在まだ公表すべき段階ではございません。決定はしておりません。(拍手)
  5. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 円君から再質疑の申出があります。これを許します。円より子君。    〔円より子君登壇、拍手〕
  6. 円より子

    円より子君 改めまして、小泉総理に対し、郵政民営化法案ほか政治姿勢をお聞きしたいと思っております。  さきの総選挙におきまして、総理は郵政民営化賛成か反対かを国民に問われました。ただそれだけを争点になさったわけです。しかしながら、この郵政民営化の問題は国内問題ではありません。皆様御存じのように、アメリカからは数度にわたり年次報告書でこの郵政民営化をすべきだと書かれておりますし、またアメリカの通商部からもそうした報告が出ております。これは国内問題ではなく日米問題であることは確実です。ところが、総理は全く世界の情勢、その日米関係について国民に知らせることなく、単なる国内問題として賛成か反対かを、国会の審議でも、またさきの総選挙でもお問いになりました。  先ほど私は代表質問の中で度々申し上げましたが、一国の総理の言葉は大変重い。一国の総理が発するメッセージは世界の情勢を国民に知らせるものでなければなりません。ところが、そうしたことを一切なさらず、国内問題に郵政民営化を矮小化させてしまいました。この罪は大変大きい。  私は、この世界の情勢をどうとらえ、どのように日本があるべきか、そしてそうした様々な問題を国民にしっかりと示し、これからの社会をどう築いていくか、改革は手段であり、その先にあるものは何か、その問いに、郵政民営化についてもお答えになっておられません。そのことをしっかりとお答えいただきたいということを申し上げ、再質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  7. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再質問がございましたから、再度答弁いたします。  郵政民営化は、アメリカの問題から円議員は取り上げましたけれども、私はアメリカが郵政民営化の必要性を言うはるか前から郵政民営化の必要性を主張してまいりました。もちろん、郵政民営化は国内だけの問題ではありません。  今回の選挙の結果につきましても、郵政民営化は最大の争点でありましたけれども、それと同時に、四年余りの小泉内閣発足以来の改革を進めてきた成果と方針、これについても国民は審判を下されたと思っております。この声を厳粛に受け止めて、郵政民営化のみならず、これからももろもろの構造改革を断行していかなきゃならない。金融にしても物流にしても、国内だけを見ていいものではありません。国際社会対応できる、国際競争力に立派に対応できるような体制をつくっていかなきゃならないと思っております。(拍手)     ─────────────
  8. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 片山虎之助君。    〔片山虎之助君登壇、拍手〕
  9. 片山虎之助

    ○片山虎之助君 私は、自由民主党を代表して、小泉総理の所信に対し、総理に質問いたします。  まず、民主党が代表に新たに前原誠司議員を選任され、党全体としても、参議院においても、新体制が発足されましたことにお祝いを申し上げます。憲法改正や国の安全保障という基本問題において同じ土俵で議論ができるようになったこと、また構造改革についても既得権益への切り込みを示唆されていることなど、我が党と切磋琢磨できる党に変身されつつあることを心から歓迎いたします。  さて、炎天下、各党ともに熱い選挙が行われ、小泉総理を始め各党幹部は東奔西走、誠に御苦労さまでございましたが、結果は予想を上回る自民党の圧勝であり、公明党とともに与党で衆議院定数の三分の二を上回ることになりました。国民は、与党の郵政民営化改革推進を圧倒的に支持したのであります。  私は、今回の選挙のキーワードは三つあったと思います。一つは、総理の口癖と言っていい郵政民営化改革の本丸であり、次は、自民党ポスターのスローガンでもある改革を止めるなであり、三つ目は、総理の決意と報じられました、殺されてもやるであります。国民はこれらに共感し、これを熱く支持したのであります。  国民のこの期待に総理政府与党はしっかりとこたえていかなければなりません。勝ってかぶとの緒を締めて、謙虚に誠実に、国民のために郵政民営化改革推進に努め、小泉構造改革の総仕上げに掛かるべきだと考えますが、総理の決意をお伺いいたします。  しかし、また同時に、国民は心配しております。総理は、来年の自民党総裁の任期満了で内閣総理大臣を辞任するということを再三言明されております。国民は、あと任期一年の自民党総裁としての小泉総理でなく、あと任期四年を持つ内閣総理大臣としての小泉総理を圧倒的に支持し、国政を託したからであります。任期があと一年しかないことを念頭に置いた国民は私は少なかったのではないかと思います。そこに、自民党総裁としての任期の延長論が出てくるゆえんであります。  そこで、総理にお伺いします。  国民に圧倒的に支持された者として、あと一年で総理を辞任するとすれば、この一年で山積する内外の諸課題に見通しを付けることができるのかどうか、見通しが付かないとすれば、辞任された後どのような道筋をお考えなのか、またそれについてどのような責任をお感じになっておるのか、はっきりと国民に分かるように御説明いただきたいと存じます。  次に、郵政民営化について質問します。  私は、さきの通常国会郵政民営化法案の審議が大詰めになった八月二日に、特別委員会で総括的質問に立ち、総理から丁寧かつ前向きの答弁をいただきました。衆議院の審議の際よりはるかに踏み込んだ答弁で、私はそれなりに納得いたしました。私の質問に対する総理答弁の主なものは次のとおりであります。  第一は、郵便局ネットワークを国民の資産としてしっかり維持し、国民安心、利便を守りながらこの資産を十分活用していく。郵便局は、あまねく全国において利用されるよう、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨として設置するよう法令上義務付けること。  二つ目は、郵便貯金、簡易生命保険の金融サービスについて、特に過疎地は民営化後も従来どおりのサービスが提供されるよう、社会地域貢献基金の設置や株式持ち合いによる一体的経営を可能とするようにしたこと。また、その確保を三年ごとの見直しの対象とすること。  三つ目は、民営化委員会による三年ごとの見直しには、経営形態の在り方を含めた郵政民営化に関するすべての事項を対象とすること。  これで郵政民営化に係る国民の不安と懸念は私は大部分解消したのではないかと考えましたし、その上、委員会採決では、陣内委員長を始め与野党理事の御努力で十五項目にわたる附帯決議がまとまり、答弁の実効性を担保して、法案共々可決されましたが、残念ながら法案は参議院本会議で否決されたのは御承知のとおりであります。  この特別国会において、郵政民営化法案は、スタートを半年間延ばすなどの修正をして再び提出されました。そこでお願いいたします。法案成立後、施行に当たっては、さきの通常国会の参議院での審議における政府答弁を遵守し、委員会採決時の附帯決議を最大限尊重していただきたいと考えますが、総理の御所見を賜りたいと思います。  さらに、次の点についても解釈、運用上、政府としても十分な検討をお願いしたいと考えます。特にコメントがあれば言っていただいても結構であります。  まず第一に、現在の郵便局ネットワークをかんがみますと、そのコストの四分の三は郵貯、簡保で賄っております。したがって、郵便局ネットワークを維持していくためには、郵貯、簡保を含む三事業一体の事業運営が必要であります。持ち株会社が郵貯銀行、保険会社の縦の株式の連続的保有が認められ、かつ郵便局会社のイコールフッティング認定後の横の株式保有が許されることは誠に結構ですが、これらは三事業一体のグループ経営が可能となるようなものでなければならないと、こう考えております。これが一つ。  二つ目は、民営化の過程において、万一、三事業一体のグループ経営が崩れて、郵便局のネットワークの維持が困難となり、利用者の利便が大幅に低下するような場合には、見直し条項をちゅうちょなく発動し、経営形態の修正などの適切な措置を講ずべきであると考えます。  三番目、次は税の問題であります。今回の民営化は、公社にとれば、法人税や預金保険等の負担の上に、分社化することにより、大きなコスト増になります。さらに、新たな税負担がある。委託に掛かる消費税については、国の政策による半ば強制的な分社化に伴うものであり、分社化されなければ元々生じないものであります。基金の積立てについても、本来、持ち株会社の収入であり、持ち株会社の判断により利用すべきものを半ば強制的に積み立てることとされています。これらの経過措置又は減免などの措置はどうするのか、与党としても税調等で十分論議を重ねますけれども、政府としても是非前向きの検討をお願いいたしたいと思います。  四番目、経営の自由度を高めて新規業務へ進出することは民営化の大きなメリットでありますが、そのためには民間とのイコールフッティングが達成されなければなりません。郵貯、簡保の株式の処分など、イコールフッティングをできるだけ速やかに行うこととともに、その見極めも早期に行い、例えば新規事業として既存の民間金融機関との協調融資、住宅ローンなどへ進出を認める必要があり、それには主務大臣も民営化委員会もできる限りの協力をすべきだと考えております。  以上であります。  次に、憲法改正についての動きが加速してまいりました。国民のこの問題についての認識も高まり、今や半数以上の国民が改憲に理解を示しています。自民党は、立党五十周年記念事業として、十一月下旬を目指し、憲法改正草案を作成中でありますし、民主党の前原代表も改憲に前向きな発言を繰り返しておられます。衆参の憲法調査会を憲法特別委員会に改組し、国民投票法案等の審議の場とすることも各党で協議中であります。改憲はタブーではありません。日本国憲法は平和憲法として世界じゅうから高く評価される一方で、現在の世界日本の情勢にそぐわなくなっていることが広く指摘されております。  日本国憲法の良い点は残しながら、全体を正していくことは、憲法の尊厳のためにも我が国の将来のためにも必須の課題であります。  憲法改正の発議は衆参両院で三分の二の賛成が必要であり、衆議院はともかく、参議院では自民党、公明党、民主党が共通した認識と意思を持たないと発議できません。政党間の垣根を乗り越え、腰を据えて、憲法改正に向かって、この国のありよう、今後の国の姿を真剣に議論していく必要があり、これこそが国会議員の責務だと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。  憲法改正に絡んで論議される主要なテーマの一つが二院制であります。今回、衆議院で可決された法案が参議院で否決され、衆議院が解散されたこと、その衆議院総選挙の結果、与党が三分の二を占めることになり、参議院で否決された法案も衆議院で再議決されるようになったこと、この一連の事実が、二院制の在り方、参議院の役割について、改めて国民の皆さんの前に問題提起をすることとなりました。  私は、参議院は、数や力に頼るのではなく、良識の府、再考の府として衆議院と異なる観点での質の高い審議を行い、衆議院に対して抑制と補完と均衡の機能を果たすことに存在意義があり、また二院制とは、重要な国の意思決定を一度で軽々には行わない、あらゆる角度から再考してみることに意味があると思っております。私は、衆議院で与党が三分の二を持った現在こそ、逆に参議院が本来の在り方を示す絶好のチャンスではないかと考えております。  現在の議会制民主主義は政党政治の上に成り立っています。政党政治では、党内の意思決定をしたときは国会での採決に党議拘束を掛けるのが通常です。そうなると、二院制と相入れない点が出てきます。両院に党議拘束が掛かり、その結果、両院が同じ議論、同じ結論になるからであります。  私は、生き生きとした二院制にするためには、党議拘束の在り方を変える必要があると思います。案件によって党議拘束の程度を変える、すなわち、両院全体に党議拘束を掛けるものと、衆参一院のみに党議拘束を掛けるものと、全く党議拘束を掛けないものの三分類があってよいと思います。特に参議院は、専門家も多く、議員個人の見識を重視してもよいのではないかと考えますが、自民党総裁としての総理に御理解をいただきながら、我々は今後党内で十分な議論をしてまいります。  小泉構造改革の残された重要課題の一つである三位一体の改革についてお伺いします。  三位一体の改革は、国庫補助金による集権型のシステムを改め、税源移譲により住民に身近な地方自治体に納める税金を増やし、地方が自らの責任で行政を行うという地方自治本来の姿を目指そうとするものであります。私は、三位一体改革の提案者であり、名付け親でありますが、三位一体改革を小泉構造改革の柱として地方分権推進の大きな流れにしたのは小泉総理であります。  この三位一体の改革はいよいよ正念場を迎えてまいりました。昨年秋の政府与党合意により二兆四千億円の税源移譲がまとまっていますが、この秋までに残り六千億円の税源移譲を決定し、三兆円規模の税源移譲を実現しなければなりません。この点について、総選挙前にまとめられた連立与党重点施策においても、残り六千億円の税源移譲を十八年度までに確実に実現することが盛り込まれており、政権与党国民に対する約束になっております。  既に地方六団体からは、残り六千億円の税源移譲のために具体的な一兆円近い国庫補助負担金改革案のリストが提示されております。  しかしながら、昨年末の状況を見るまでもなく、国庫補助負担金の廃止は、各省庁や与党の反発が強く、今後の取りまとめには強力な総理のリーダーシップが必要であります。残された課題を乗り越え、三兆円規模の税源移譲の実現に向けた総理の決意をお伺いします。  また、国から地方へとの改革はこれで終わることがあってはなりません。平成十九年度以降の地方分権推進のための第二期改革をどのように進めていくかも併せてお伺いします。  義務教育については、昨年の政府与党合意で、義務教育費国庫負担金が暫定として八千五百億円減額され、税源移譲されることとなりました。中央教育審議会の審議では、議論はやや平行線をたどっておりますが、私は、義務教育に関しては、教職員定数や給与は標準法や人材確保法、教育水準は教科書検定や学習指導要領などにより、国は全国レベルの水準を確保する責任を十分果たしていると考えます。国庫負担金の議論は、義務費である給与費に充てる国費の一部を地方費に振り替えるかどうかという言わば教育財源の内訳を変える議論であり、国が義務教育において果たす役割を変えよう、減じようというものではありません。到底そういうものではない。ただし、私自身は、義務教育においてももう少し地方の自主性を認める余地はあると考えております。  今回の総選挙では、与党において、三兆円規模の税源移譲を確実に実施することが公約に掲げられ、多くの国民の負託を受けました。また、総理は、総選挙前の党首討論で、地方に教育を任せても教育水準は確保されると発言されておられます。  また、先般、総理は、文部科学省の幹部を官邸に呼んで、義務教育費国庫負担金の一部の税源移譲の検討を直接指示されたとも報道されています。いずれにしても、総理の決断の時期は迫っていると考えますが、総理の御決意を伺います。  生活保護については、現在、地方代表、関係閣僚、学識経験者を構成員とする協議会で制度の在り方等について幅広く検討が進められていると聞いております。  生活保護に関し、保護率に大きな地域較差がある中で、国庫負担率を引き下げ、地方の負担を増やすことで給付費の抑制ができるのではないかと、こういう考え方があります。  しかしながら、協議会で分析作業が行われた結果、失業率などの経済雇用情勢、高齢化や離婚率などの社会的要因が保護率の地域較差に極めて大きな影響を及ぼしているという中間的取りまとめが行われ、これらの要因で地域較差の九割以上が説明できるとする分析結果が示されました。国側の論拠は、そういう問題提起は論拠が崩れたと思われます。  他方で、生活保護の適正運用のために地方自治体がしっかりとした実施体制を確保する必要があることは言うまでもありませんし、地方が独自に行う自立支援プログラムをより強力に推進することも必要です。  しかし、国の負担率を引き下げるなどの地方への負担転嫁では生活保護の根本問題は解決できません。必要なことは、国と地方の不信を増すことではなくて、生活保護制度そのものを抜本的に見直すことであります。例えば、基礎年金など他の社会保障制度との役割分担なども検討の余地があると思いますが、総理の御所見をお伺いします。  内外の難しい課題が山積している現在、国、地方の行政の在り方が従来とは比較にならないほど厳しく問われております。簡素で効率的な行政を実現するためには、行政運営の基盤である公務員制度改革が不可欠であります。  私は、一昨年の十一月から自民党行革本部の公務員制度改革委員長を務めておりますが、昨年六月には、採用試験区分や年次で一律の人事管理を改め、能力本位で適材適所の人事配置を行うこと、これが一つ。二つ目は、評価制度を整備し、能力に基づく昇進システムにするとともに、職務を基本に、実績を反映しためり張りのある給与処遇を実現すること。三つ目に、内閣は、営利企業、公益法人、独立行政法人等を通じて、これらへの天下りを一元的に管理し、チェックすることなどを内容とする今後の公務員制度改革の取組についてという法案大綱ともいうべき与党合意をまとめ、政府にもそれに従って公務員制度改革を進めるよう強く申入れをしたところであります。是非これを早急に実現していただきたい。総理の御見解をお伺いします。  また、我が国の厳しい財政状況を見るとき、小さくて効率的な政府を実現することが必要であり、こうした観点から、総人件費改革我が国歳出歳入改革の中でも避けて通れない重要な課題となっています。国、地方を問わず、事務、業務の抜本的な見直しを行い、大胆な定員の純減目標を設定するとともに、地域の民間給与水準のより適切な反映などのために、給与構造改革はもとより、給与決定の仕組み全体を見直しを行うなど、公的部門全体の総人件費改革に向けた取組を進めていく必要があると考えますが、総理の御所見を承りたいと思います。  小さな政府の実現は、入口の郵政改革と出口の政府系金融機関の改革が相まって成し遂げられるものであります。民間にできることは民間にの実現が小泉構造改革の核心であります。  民間金融機関もようやく不良債権比率が着実に低下してまいりました。この機に政府系金融機関の統廃合を一気に進め、民の補完としての位置付けを明らかにすべきであります。郵政民営化で資金面からの制約に見通しが付きましたので、次は機能面からの議論、省庁の天下り等の権益を守ろうとする構えにいかに対処していくかであります。この問題には総理が先頭に立って断固として行うという姿勢でなければ、従来のような数合わせに終わってしまいます。  具体的には、政府系金融機関を統合して一つないし二つの組織を目指す、公務員よりも高い給与や職員数を大幅にカットするなど、目に見えた再編をしなければ国民の期待を裏切ることになると思います。総理の御決意を伺います。  国民の関心の高い社会保障制度について、基本を何点かお伺いします。  少子高齢化が進み、人口減少への転向を目前に控える中で、社会保障制度改革を行うに当たっては、将来にわたって持続可能で安定した制度とすることが最も肝要です。このため、年金制度については昨年大改革をし、今年は介護保険制度改革を行ったところですが、更に来年は医療制度改革が控えております。  医療制度については、年末にかけて、政府として、新たな高齢者医療制度の創設などを行うとともに、十八年度診療報酬改定の枠組みをつくることとなります。医療制度改革についての総理の御所見をお伺いします。  少子高齢化が進む中で、医療費の適正化が必要なことは多くの意見が一致しております。しかし、患者を前にすれば、医師は必要な医療を施さなければなりません。したがって、一部で言われているように、GDPなどの経済指標を持ち込んできて医療費に総枠をはめるという案は、合理性もなく、大方の納得は得られないと思います。やはり健康づくりを推進し、高齢となってもできる限り健康でいられるようにする、治療期間を短縮するなど、医療の質を確保しながら効率化するなどの方策が王道ではないかと考えます。  間もなく始まる医療制度改革論議の中でも、医療費適正化方策は大きなテーマとなりますが、この取組について総理見解をお伺いします。  国民年金を含めた一元化は将来の望ましい姿ですが、よく言われるように、所得把握などの問題など難しい問題が、課題が多く、直ちに実現できるとは考えられません。  私は、国民年金改革に対する期待にこたえるためには、まず厚生年金と共済年金の一元化から早急に実現していくことが必要と考えます。総理は、選挙中、年金を政争の具にすべきでない、国民の関心の高い問題であり与野党でよく議論すべきだと主張されましたが、与野党協議再開についての総理の御所見を伺うとともに、被用者年金一元化実現に向けた決意をお伺いしたいと存じます。  我が国の経済は、今年の夏辺りから、踊り場を脱して再び拡大し始めたと観測されております。企業収益は大きく伸長し、設備投資も増加しつつあり、この連休明けには株価が四年三か月ぶりに一万三千三百円台を回復しました。企業部門の好調が家計部門にも及び、雇用の改善もあって個人消費も緩やかに増加しており、全体としては景気は回復基調にあります。しかし、多くの下請の中小企業や地方の企業は依然として厳しい状況にあるとも指摘されております。  そして、地方経済はまだら模様であります。地域で大きく状況が違う、都道府県間の格差はもとより、都道府県内格差が一向に縮まっていない、地方経済は概して低迷であります。一方、都心など大都市圏では地価上昇が伝えられておりますが、地方の地価はいまだ下がり続けております。  ところで、地方経済の多くは、良くも悪くも公共事業依存型であります。この何年かの公共事業カットが地方経済にボディーブローのようなダメージを与えてきたのは事実であります。それから脱却するためには地方経済の自立を促す施策やプロジェクトが何よりも必要でありますが、同時に、過渡的には地方経済てこ入れのため公共事業の配分を民間の設備投資の少ない地域に重点化することが望まれます。  また、地域経済活性化の観点から、国道に比べ立ち後れている地方道の整備のために、期間を限って、道路特定財源の国分を地方分に回して地方道整備を集中的に行うことも検討すべきだと考えますが、総理の御見解をお伺いします。  税制の在り方は、個人、法人を問わず、個々の経済社会活動に大きく影響を与えるものであり、その動向に対しては国民の関心も極めて高く、諸外国を見ても我が国でも常に重要な政治的争点として取り上げられています。東京都議選の際のサラリーマン増税騒動を見てもそれは明らかであります。小泉総理は今回の総選挙で得た国民の大きな信任を背景としていかなる税制改革を目指すか、注目されています。  それにつき、何点か総理に申し上げたいと存じます。  まず、平成十八年度税制改正において実現すべきは、既に述べたとおり、国から地方への税源移譲であります。具体的には、国税である所得税から地方税である個人住民税へ三兆円の税源移譲を行うことであり、その際、個人住民税の税率を一〇%にフラット化することであります。言うまでもなく、この税源移譲は、国税を減らした分だけ地方税を増やすため、両者を合わせた国民の税負担は変わりません。所信において、地方の意見を真摯に受け止め、来年度までに確実に実現と明言されたとおりの実行をお願いいたします。  十八年度税制改正で大きな論点の一つが、小渕内閣のときから特例措置として続いている定率減税の扱いであります。この定率減税は、平成十一年当時の極めて厳しい経済情勢の下で、個人消費を中心とした景気回復のために緊急避難的に導入されたものでありますが、現在の景気はあの当時に比べれば大きく好転していることは間違いありません。そのため、平成十七年度税制改正でこれを二分の一、元に戻すことにしました。  一方で、景気は回復基調で調子がいいといっても、生き物であり、景気は、慎重にその動向を見ていく必要があります。昨年の与党の税制改正大綱でも、景気動向によっては弾力的に対応すると明記しております。したがって、定率減税の最終的な取扱いは、以上のスタンスの下、年末の税制改正の場において政府与党として間違いのない判断を出さねばならないと考えます。  次に、平成十九年度以降の税制の基本的改革についてであります。今回の総選挙における自由民主党のマニフェストには、平成十九年度を目途に、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む抜本的な改革を実現するとあります。  一方、小泉総理はこれまで繰り返し自分の在任中には消費税を引き上げる考えはないと言っておられます。  今後の少子高齢化社会の進行に伴う社会保障支出の増加や、国、地方を通じた我が国財政の緊迫した状況をかんがみれば、国政に責任を持つ政府与党としては、いずれ消費税も視野に入れた議論をしなければならない時期が来ると考えます。しかしながら、徹底的に行政の無駄をなくし、国、地方を通じて目に見える形で、すなわち具体的な数字をもって国民に分かりやすい形で行財政改革の姿が示されなければ、国民が納得するはずはありません。  歳出歳入全般にわたる構造改革を強力に進める中で、郵政民営化はもとより、公務員人件費の削減、政府系金融機関や特殊法人の改革、さらには社会保障制度改革などにも道筋を付けた上で、国民の理解を得ながら税制の抜本改革に取り組むことが必要であります。  小泉総理は、消費税についても議論は大いに結構と言われておりますが、こうした税制改正の具体的な議論を始める大前提としての徹底した行財政改革こそ小泉総理に課せられた大きな使命であると考えております。これらについて総理はどのような決意と信念で臨まれるのか、お伺いします。  最後に、拉致問題を含む六者会合、国連改革、ODAの在り方等の外交問題、日本の将来を担う青少年の教育問題、自然環境に大きな影響を与える地球温暖化、そして国の存立の基になる農業問題など多くの課題がありますが、時間がありませんので、議論はまたの機会に譲ります。  国民は、小泉政権の今日までの実績すべてに満足して今回の総選挙の圧勝を与えたわけではありませんが、小泉総理のタブーへ果敢に挑戦する改革への揺るぎない姿勢と抜群の愛すべき個性を高く評価してこれだけの勝利を贈ったことは間違いありません。どうか小泉総理、山積する内外の諸課題に対し、恐れず、ひるまず、とらわれず、体当たりで小泉構造改革の総仕上げをされますことを衷心からお願いして、私の質問は終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  10. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 片山議員に答弁いたします。  激励を加えて、ともに協力していこうと、力強い御支持の声援と受け止めております。  総選挙の結果、そしてその結果を踏まえた今後の姿勢、さらに一年後はどうするのかという、含めた御質問だと思いますが、私は、今回の総選挙の結果、自民党、公明党合わせて過半数を超える議席国民が与えていただきました。この大きな御支援、大事にして、郵政民営化のみならず、今まで進めてきたもろもろの改革を後戻りさせることのないように、しっかりとした改革の軌道に乗せていくことが私の責任だと思っております。  また、一年後、残された任期、これにつきましては、私の後を継ぐ方は多士済々であります。しっかりとこの改革路線を進めていくことのできる方が私の後の総裁、総理を務めていただけるであろうと期待しております。  私は、残された一年の任期、総理大臣の職責をしっかりと果たすべく全力を尽くしていく、これが私の責任だと思っております。よろしく御指導、御協力をお願い申し上げます。  また、郵政民営化についていろいろ何点か御質問をいただきました。  今国会に提出した法案は、民営化の実施スケジュールを半年延期するなど、前回、参議院において御審議いただいた法案から若干の修正はありますが、骨格については変更はありません。したがって、さきの本院における政府側の答弁は今回の法案にもそのまま当てはまるものであり、当然これを遵守してまいりますし、附帯決議についても、国民懸念や不安を払拭するその趣旨を重く受け止めているところでありまして、法案を成立させていただいた暁には、その施行に当たり最大限尊重してまいります。  憲法改正についてでございますが、これは自民党が年内に案を提出いたします。民主党も近いうちに憲法改正案を出すと聞いております。そして、自民党、公明党、民主党、やはり憲法改正というのは一党だけではできませんし、国会の三分の二議員以上の賛成を必要としております。そういうことから、各党が立場を超えてこれからの国の在り方ということを考えるということを真剣に踏まえまして、私は単に自民党だけでやる気はございません。自民党、公明党の連立の安定した基盤を大事にする、そして民主党の改正案というものもよく見て、じっくりと時間を掛けて、国民的な議論を喚起しながら、国民の支持を得るような努力を最大限行っていきたいと思っております。  三位一体の改革でございますが、四兆円程度の補助金改革、三兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しのこの問題につきましては、一番詳しいのが片山幹事長だと思います。この地方の意見を真摯に受け止めて、来年度までに確実に実施する方針であります。  義務教育費の国庫負担金の取扱いについては、昨年末の政府与党合意に基づき行われている中央教育審議会の審議結果を踏まえつつ、この方針の下、本年じゅうに結論を出してまいります。  この地方分権推進のため、十九年度以降についてもお触れになりましたけれども、この十九年以降につきましては、地方の意見を尊重していくのは当然でありますが、具体的な取組については十八年度までの改革の成果を踏まえた上で判断していく必要があると考えております。  生活保護制度の在り方につきましては、昨年の政府与党合意により、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、本年秋までに結論を得ることとされており、これを踏まえ、本年四月に設置された生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会において、国と地方の役割分担や費用負担の在り方について幅広く議論が行われております。政府としては、三位一体改革の趣旨や年金、医療、介護等、他の社会保障制度との関係も考慮しながら生活保護制度の見直しを行ってまいります。  公務員制度改革につきましては、行政に対する国民信頼を確保し、職員の意欲と仕事の成果を引き出していくような能力・実績主義の人事管理を徹底していくことが必要であります。与党においても片山幹事長を中心に御尽力いただいておりますが、政府としても、与党申入れを踏まえ、新しい人事制度の構築に向け、人事評価の試行の取組状況等も見ながら粘り強く取り組んでまいります。  総人件費改革についてでございますが、政府の規模を大胆に縮減するとの観点から、国、地方を通じ、公務員の給与に関し、地域の民間の給与実態に合わせるなど給与体系の見直しを進めるとともに、公務員の定員の純減目標を設定し、削減を平成十八年度より行うこと等々により、公的部門全体の総人件費改革を進めてまいります。  政府系金融機関の改革、これは資金の入口の郵政民営化に続く重要な出口の改革であります。住宅金融公庫については、既に、民間で取り組んでいる直接融資を基本的に廃止するなど、民業補完に徹する形で改革を実現させております。  残る八機関については、経済財政諮問会議において、十一月をめどに、あるべき姿の実現に関する基本方針を取りまとめるため、政策金融の手法を用いて真に行うべきものを厳選し、統廃合、民営化等を含めてしっかりと議論していく考えであります。  医療制度改革ですが、患者本位の良質かつ効率的な医療提供体制を構築するとともに、高齢化等に伴う医療費の過大、不必要な伸びを抑制し、国民皆保険制度を将来にわたって持続可能なものとしていく必要があると考えております。  このため、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標の設定、公的保険給付の内容、範囲の見直し、高齢者の特性に応じ、世代間、保険者間の負担の公平化を図る新たな高齢者医療制度の創設、保険者機能の発揮を促す都道府県単位を軸とした保険者の再編統合、経済、財政とのバランスを踏まえるとともに、患者の選択や医療機関の機能を反映した診療報酬の見直しなどの改革案を年末までに取りまとめ、医療制度改革関連法案を次期通常国会に提出したいと考えております。  今後の医療費適正化に向けた取組につきましては、我が国の医療については、糖尿病等の生活習慣病患者の増加、また他の先進諸国に比べ入院期間が長期にわたるといった特徴が見られるところでございます。したがって、御指摘のように、生活習慣病の予防の充実、医療機能の分化・連携による治療期間の短縮化などの医療の質の向上と効率化を進めることが重要であると考えています。  このような取組と併せ、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標の設定や保険給付の内容、範囲の見直しなどについて、年内に結論を得て医療制度改革を断行してまいります。  年金制度についてでございますが、長期的な視野に立って改革を進める必要があり、与野党が胸襟を開いて協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠であります。私としては、早急に両院合同会議における議論が再開されることを期待しております。  また、年金制度の一元化につきまして、私はこれまでも、まずは厚生年金と共済年金の一元化が先に来るのではないかと申し上げております。既に被用者年金の一元化に向け、制度間における給付や負担の水準の相違等、被用者年金の一元化を進めるに当たって検討すべき様々な課題について幅広く議論し、その処理方針をできる限り早く取りまとめるよう指示しているところでございます。  地方経済の現状とその対応でございますが、我が国経済は企業部門と家計部門ともに改善し、全体としては緩やかに回復しておりますが、地方経済については、北海道や東北でやや弱含みとなるなど依然としてばらつきが見られます。こうした認識の下に、政府としては五百四十八件に及ぶ構造改革特区の認定、稚内から石垣までをモットーとする都市再生、地域再生法等による支援、一地域一観光の方針の下で観光振興による地域経済の活性化の促進など、改革の成果を地域にも浸透させてきております。今後とも、更に民間需要主導の経済成長を図る中で、地域の再生に積極的に取り組む方針でございます。  特定財源についてでございますが、受益と負担の関係を明確にできるなどの意義がある一方、近年、硬直化して無駄な支出が行われているのではないか等の問題が指摘されております。このため、私は、道路等の特定財源について暫定増税をしている税制との関係、また、使い道の在り方の見直しなどの基本方針について年内に検討するよう指示しております。その際には、御指摘の点も含めて検討したいと考えております。  今後、行財政改革をしっかりしろと、しっかりやれという力強い激励並びに提言でありますが、私は、在任中消費税を引き上げないということは、まず消費税ありきではないと、残された任期に消費税を上げる環境にないと思っているから言っているわけであります。そして、行財政改革、これに懸命に取り組むためにも、まず足らないところを増税で補うという観点から無駄な部分を徹底的に排除していく。そして、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にという、これを最大限詰める。それでも足らざるところはあとどうするかということにつきましては、議論を制約しているわけではございません。そういう点につきましては、将来、税制改正の中で幅広く、所得課税、資産課税さらには消費課税、法人課税含めて、全般的な総合的な見直しは必要だと思っています。私の任期の間については、行財政改革に専念してやっていくことが私の役割だと考えております。(拍手)
  11. 扇千景

    ○議長(扇千景君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十二分休憩      ─────・─────    午後一時一分開議
  12. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。浜四津敏子君。    〔浜四津敏子君登壇、拍手〕
  13. 浜四津敏子

    ○浜四津敏子君 私は、ただいま議題になりました小泉総理所信表明演説に対し、公明党を代表し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  さきの総選挙では、自民、公明の与党が衆議院議席の三分の二を上回る三百二十七議席を占める結果となりました。  改革を前へと訴えて戦った公明党は、比例区の総得票数を前回より二十五万票伸ばし、過去最高の八百九十八万票をいただきました。政策実現政党、生活与党公明党として信任をいただいたものと思っております。  改革断行へのこの圧倒的な支持は何を示しているのでしょうか。それは、我が国では長い間、お上という言葉に象徴されるように、官尊民卑の意識が根強くはびこり、許認可、規制、行政指導、護送船団方式などと呼ばれる官主導体制の下で、政官業癒着、談合、天下り、官民格差、税金の無駄遣いなどの問題が指摘されながらも、打たれた手は十分と言えず、まだまだ見過ごされてきました。そのために、日本社会全体が行き詰まり、閉塞感に包まれてきたと言っても過言ではありません。今回の結果は、今度こそ徹底した改革の断行でこれを変えてほしいとの明確な意思表示と感じられてなりません。  国民皆様が、どれほど公正な希望あふれる社会を、より良い安心の未来を切望しておられるか、そのことを示した選挙結果でした。その熱い思い、強い願いと期待に、国政に携わる私どもはしっかりとこたえていく責任があることを改めて肝に銘じなければならないと思います。  公明党は、この責任を果たすため、これからも間断なき改革の推進役として、行財政改革、公務員改革社会保障改革などの改革一つ一つ着実に前進させてまいります。そして、改革の先に、日本を真の平和先進国、福祉、環境、人権、人道、教育、文化芸術などの先進国として、人々の笑顔あふれる、誇りの持てる国にしたい、これが公明党のビジョンです。  そこで、総理は、今回の総選挙の結果をどのように受け止めておられるのか。そしてそれを踏まえて、今後どのような覚悟で政権を担っていかれるのか。また、郵政民営化法案成立の後、重点的に取り組まれる課題は何かをまずお伺いいたします。  次に、景気・経済問題について伺います。  先日発表された本年四ないし六月期のGDP改定値は、実質成長率が年率一・一%から三・三%へと大幅に上方修正されました。これは設備投資や消費の伸びによるものと言われています。金融機関の不良債権も三年間で半分以下に減少し、雇用や失業も改善の方向に向かっており、企業倒産の減少、株価の上昇など明るい指標も増えております。これらは景気が踊り場を脱却して着実に回復していることを裏付けるものと言えます。  しかし、一方で、こうした景気の回復、経済の改善が地方や中小企業には十分に波及しておりません。また、各家庭においても実質収入が目減りするなど、景気が改善していることを実感できる状況にはありません。  自民党、公明党が連立を組み、安定した政権の中で、大きな目標としてきた景気回復は今が正に正念場です。地方の活性化及び中小企業支援策を、また各家庭が景気回復を実感できるようなきめ細やかな施策を講ずる必要がありますが、どのような対策をお考えか、総理に伺います。  また、小泉政権が進める三位一体改革で、財政難の地域が抱える問題や地域間格差にどのように配慮し、是正されることになるのか、併せて伺います。  次に、行政の効率化並びに税金の無駄遣い排除についてお尋ねします。  我が国は、膨大な財政赤字を抱えており、公務員改革を始めとする行政改革を成し遂げ、税金の無駄遣いをなくすことが緊急の重要課題です。  これまで国が行ってきた歳出削減のやり方は、必要な事業と不要な事業を分けることなく、全体的に、例えば一割カットなどと一律に削減するものでした。しかし、このやり方では必要な事業の予算を削り、一方で不要な事業が存続されることになり、無駄を省くことにはなりません。  そこで公明党は、従来のやり方ではなく、事業仕分作戦による削減を主張しております。真に必要な事業には十分に予算を使い、無駄な事業はなくしてめり張りを付けていく方法です。  それは、具体的には、国が行っているすべての事業を四つに仕分するものです。その四つとは、一、不要な事業は廃止する、二、複数の省庁が同じような事業をしているのを統合する、三、民間ができる事業は民間に委託する、四、地方ができる事業地方に移管するというものです。その仕分は、国と地方自治体の担当者、そして民間の専門家が協力して行います。  こうした行政事業の仕分は、従来型の予算の枠組みに直接切り込むことになり、公務員の数の削減にもつながりますから、多くの抵抗と反発があることは間違いありません。しかし、既得権益に切り込まずして改革はできません。そのためには総理の強力なリーダーシップが必要です。総理に先頭に立っていただき、この事業仕分作戦を展開することによって徹底的に行政の効率化を図り、税金の無駄遣いをなくしていくというのが公明党の提案です。  この事業仕分こそ行財政構造改革の次の本丸ではないかと考えますが、総理のお考えを伺います。  小泉内閣におけるアジア外交は、よく言われるように、必ずしも円滑にいっているとは言えません。中国韓国、北朝鮮の国々とは、いずれも問題を抱えており、ぎくしゃくした関係が続いています。今後、アジア外交にどう取り組まれるのか、総理に伺います。  また、小泉総理が訪朝されて日朝平壌宣言に署名されてからこの九月で三年になりますが、拉致問題は依然進展を見ておりません。一日も早く、被害者、御家族、関係者の方々の笑顔が見られることを全国民が強く待ち望んでおります。今後、拉致問題を含む北朝鮮問題にどのように対処していかれるのか、総理答弁を求めます。  次に、基地問題について伺います。  米軍再編問題に関連して、今後、在日米軍基地の在り方についての日米交渉が本格化すると思われます。この日米交渉では、殊に在日米軍基地の七五%が集中する沖縄の皆様の声を真摯に受け止め、その負担軽減の実現のために最大限配慮されるよう総理に求めます。今後の日米交渉への取組について総理の御見解を伺います。  以下、各地で寄せられた国民皆様の生の声を中心に、身近な課題につき順次質問をいたします。それは、改革といっても、スローガンやパフォーマンスでなく、目前の課題を一つ一つ具体的に解決していく中で前進していくと思うからです。  まず、多くの国民皆様が高い関心と不安を持っておられる年金問題について伺います。  年金制度については、昨年、抜本改革の第一弾が行われました。それは、年金制度を将来にわたり断じて破綻させることなく維持し、存続させることを大目的とした改革でした。その内容は、これ以上保険料は上げないという保険料の上限を定めるとともに、年金の額は将来にわたりこの額を維持しますという給付水準を明確にするものでした。  昨年の改革に加え、今後更に信頼性の高い安心年金制度とするために、次のような課題に早急に取り組む必要があります。  それは、一、国民年金の未納・未加入問題の解決、二、厚生年金と共済年金の統合、三、社会保険庁には無駄遣いが多く非効率的と指摘されていますが、その社会保険庁を抜本改革すること、四、パート労働者の厚生年金加入拡大を始めとする女性と年金の問題、五、フリーター対策、六、そして何より、足下の議員年金制度は現行制度を廃止して抜本的に見直すことなどです。これらの点につき、どのように取り組まれるのかを含め、年金改革に懸ける総理の御決意を伺います。  今回の衆議院選挙では、現行年金制度がすぐにでも破綻するかのような極めて偏った、国民皆様の不安をあおるような主張や、年金制度を一元化さえすればあらゆる年金問題は一気に解決できるかのごとき無責任な主張が繰り返されました。  しかし、公務員などが加入する共済年金とサラリーマンが加入する厚生年金はいずれも被用者年金で、その仕組みも共通する点が多い制度にもかかわらず、この二つの統合も決して簡単とは言えません。まして、この二つの年金と、その制度、仕組み、成り立ちが全く異なる国民年金を統合するのには乗り越えなくてはならない課題が余りに多いと言わざるを得ません。これらを一気に乱暴に一元化することはかえって大混乱と不公正を生み、年金制度そのものの破綻にもつながる結果となりかねません。一つ一つ問題点を解決しながら、将来的に一元化の方向に進め、真に公正で盤石な年金制度にして国民皆様安心していただきたいと考えますが、年金制度を一元化するにはどのような問題があり、問題克服のために何が必要なのか、総理並びに厚生労働大臣に御説明を求めます。  次に、子育て支援についてお尋ねします。  日本は本年末にも人口減少社会に入ると言われ、少子化に歯止めが掛かっておりません。  そこで、公明党は、本年を少子社会元年と位置付け、待ったなしで子育て支援に取り組むことを決めました。そのために、まず、少子社会総合対策本部を立ち上げ、幅広く関係者の御意見を伺い、アンケート調査やタウンミーティングの開催など、精力的に活動してまいりました。  若い世代を対象に我が党が実施したアンケート調査の結果を見ると、子供は欲しい、理想の子供の人数は二人か三人という答えが大半を占めています。にもかかわらず、現実には子供を産まない人、産めない人、産むのをためらっておられる方々がたくさんおられます。  その理由は大きく二つに集約できます。一つは、子育て、教育にお金が掛かる、二つ目には、仕事と子育ての両立ができないという声です。この二つの声にこたえ、安心して子供を産み育てられるよう、支援の手を差し伸べることは明らかに国の責任です。  まず、経済的負担の問題です。  現行の児童手当は小学三年生までですが、まずは来年度から小学六年生までに拡充し、所得制限も一千万円までに緩和すべきです。この緩和により、九七%の子育て世帯が児童手当を受け取れるようになります。そして、可能な限り近い将来、更に中学三年生まで支給対象を拡充し、支給額も現在の二倍に増額すべきと考えます。  また、現在、出産育児一時金として三十万円が支給されています。しかし、これでは出産の際の病院の支払にも足りないと指摘されています。出産に伴う費用の現状に即して、出産育児一時金を五十万円に増額すべきと思います。児童手当の拡充と併せ、総理の前向きな御答弁を求めます。  日本では、八十四兆円に上る社会保障給付の中で、子供関係予算はわずか三兆円、三・八%にすぎません。先進諸国の中で極端に少ないと指摘されています。  教育費の負担が大きい高校生、大学生を抱える家庭への支援も強力に進めるべきですし、公立の小中学校の教室に冷暖房設備を設置してほしいとの切実な声にもこたえるべきです。また、校舎のバリアフリー化の推進や、校庭を芝生に替えるなど、子供たちの学ぶ環境を整えることにも積極的に取り組むべきです。こうした対策をきめ細かく幅広く実現させるためにも、子供関係予算を大幅に増額することを求めます。行政改革によってその財源を出すことができるはずです。  公明党は、子供社会の宝、未来の宝との意識を年齢も性別も立場も超えて社会全体で共有し、皆が子育て応援団になるよう、税金の使い方を始め、社会の構造、システム、国の在り方そのものを変えるチャイルドファースト社会を実現したいと考えています。  そのために、いつでもだれでも利用できる保育サービスの拡充や、育児休業取得や育児のための短時間労働を導入する中小企業への助成、事業内託児施設の設置及び運営に対する助成の拡大、子育て支援に積極的に取り組む企業への支援策など、社会地域、職場で子育てを支える様々な支援の拡充が求められています。  また、先般のOECD調査によれば、日本は先進二十四か国の中で仕事と子育ての両立が最も困難な国との報告がなされました。大変残念なことで、早急な是正が求められます。まずは、父親の育児参加を促すため、育児休業を父親が必ず何日か取得するパパクオータ制の導入や、子育てを終えた女性の再就職を支援する相談体制の整備、再雇用制度の導入を実現すべきです。  また、真の男女共同参画を実現しなければ、いかに制度を整えても少子化に歯止めが掛からないことは一部の国で実証済みです。  日本のどの地域にあっても、目を輝かせた子供たちが、慈愛あふれる大人たちに見守られて、伸び伸びと、はつらつと、元気一杯に遊び、学び、育ち行く、そういう社会にしていこうではありませんか。子育て支援に取り組む総理の御決意を伺います。  次に、がん対策についてお尋ねします。  現在、我が国では、国民皆様の二人に一人はがんにかかり、三人に一人はがんで亡くなられています。がんによる死亡率、罹患率はともに上昇を続けています。これに対し、欧米諸国では死亡率、罹患率ともに減少に転じております。どこに違いがあり、日本では何が問題なのでしょうか。  日本では、患者さんの置かれている厳しい状況をがん難民と呼ぶ方までいます。こうした状況を生む原因として、関係者が指摘する主な点だけでも次の八点に上ります。  一、どこに住んでいるか、どの病院に掛かるかによって受けられるがん治療の内容、レベルに大きな差異があること。すなわち地域間、病院間格差です。その結果、多くの患者さんがごく標準的ながん治療すら受けられないまま亡くなっておられます。  二、海外で承認されている治療薬や遺伝子治療、免疫治療などの先進治療が日本では受けられないこと。  三、がん治療の専門医師が不足していること。  四、欧米では、外科医、内科医、麻酔科医、精神科医、看護師などがチームを組んでがん治療に当たっています。このチーム医療も日本ではほとんど行われていないため、患者さんにとって最適の治療を受けられる体制になっていないこと。  五、患者さんが安心して相談できる窓口が不十分なこと。  六、がん治療には何よりも早期発見、早期治療が不可欠ですが、検診体制が不十分で、受診率が日本では一〇%から二〇%と極めて低いこと。ちなみに欧米では八〇%、九〇%にも達しております。  七、日本ではがん登録制度がないため、日本全体のがん罹患率、五年生存率などの正確なデータがありません。国として的確ながん対策に取り組むためには、がんに関する詳細なデータを整備する必要があります。  八、終末期医療及び緩和ケアがいまだ十分でないこと。これには医学教育の在り方の見直しも必要です。  アメリカでは約三十年前より国を挙げてがん対策に取り組み、現在では既にがん制圧に成功を収めていると言われています。我が国でも、まずはがん対策法(仮称)を制定し、予算を増額し、今挙げた八つの原因の解決に当たるなど、国を挙げて総合的ながん対策に早急に取り組むべきです。そして、だれもが、仮にがんになったとしても、いつでもどこでも的確で安心の治療が受けられる、がん治療先進国に日本をしていこうではありませんか。総理の御見解を伺います。  次に、アスベスト問題について質問をいたします。  アスベストは、火に強く、電気を絶縁し、摩耗に耐え、柔軟性、防音性などに優れ、長持ちするという特性があります。そのため、日本でも長年、理想的な建築材として、多くの住宅、ビル、工場を始め、学校、駅、体育施設などの公共施設においても、天井、壁、屋根などあらゆるところに広く使われてきています。また、電化製品を始めとする多くの家庭用品や車両にこれまで使われてきており、現在も使われているものが少なくありません。  ところが、その後、アスベストは強い毒性があることが判明しました。アスベストを吸い込むと、二十年から四十年と言われる長い潜伏期間を経て、中皮腫と呼ばれるがんやアスベスト肺がんなどを発症すると言われています。今から三十年以上前の一九七二年にILO、国際労働機関及びWHO、世界保健機関がそれを指摘しました。しかし、その指摘にもかかわらず、我が国ではアスベストの深刻な毒性についての問題意識が非常に希薄でした。そのため、国の対策は余りに遅く、また不十分なものでした。その結果、アスベストは使われ続け、知らぬ間にアスベストを吸い込んだ方々が中皮腫や肺がんを発症する例が増え続けています。  公明党は、この深刻な事態に真正面から取り組むため、本年七月にアスベスト対策本部を設置し、以来、メーカーからの聞き取り調査や全国各地の学校の調査、患者さんや御家族の方々からの被害状況の調査などを精力的に実施してきました。そして、その調査によって浮かび上がった問題点を取りまとめ、七月二十五日、総理並びに関係省庁に対し早急の対策を要請いたしました。  政府は、この公明党の要請にこたえる形で、八月の関係閣僚会議で新法を制定する方針を決定しました。その内容として、現行の労災保険による補償の対象外となるアスベスト被害者やその遺族の救済を図るとされていますが、法案の主な内容法案の提出時期について伺います。  また、公明党は、政府新法の内容である被害者、遺族の救済に加え、建物を解体するときや増改築、災害のときにアスベストが飛散することを防止するための対策の徹底や、アスベストの使用全面禁止時期を前倒しすること、実態調査と国民皆様への情報提供、アスベスト除去及び封じ込め対策、中皮腫やアスベスト肺がんの診断及び治療法の開発並びに健康被害の相談窓口の充実を始め、アスベストから国民皆様の生命と健康を守る施策を盛り込んだ総合的な対策法の制定へ向けた作業を現在党内で行っています。  今後、政府としてどのような対策を取られるのか、また、国民皆様の不安の声をしっかりと受け止め、被害の拡大防止及び救済のためにどのような対策を取られるのか、総理にお尋ねします。  次に、薬物汚染対策について伺います。  覚せい剤や麻薬、また麻薬と同じような幻覚作用を持つ脱法ドラッグなど、薬物汚染が市民生活や子供たちの間にまで広く蔓延し、大変深刻な問題になっています。薬物がインターネット上で安易に売買されたり、子供たちが集まる繁華街で脱法ドラッグが販売されるなど野放し状態で、いつ、だれが薬物に手を染めてもおかしくないとまで言われています。有害性が確認されたものや有害性が指摘されている脱法ドラッグを国として速やかに規制して取り締まるなど、薬物対策を更に強化することが必要です。  また、一度薬物に手を染めた人が薬物依存から立ち直り、社会復帰できるよう支援する体制を整備することも不可欠です。薬物汚染対策について、厚生労働大臣に伺います。  次に、アレルギー対策について伺います。  公明党の強い主張で国のアレルギー対策は確実に進んできました。しかし、現場にはまだまだ取り組むべき課題が残されています。主なものを挙げれば、次の四点です。  一、食物アレルギーを持つ患者さんがどの食品でアレルギーを引き起こすのかを調べる食物負荷試験等に対して医療保険を適用すること。  二、アレルギー治療にとって不可欠な患者さんへのアレルギー教育を医療制度の中で位置付けること。  三、本年三月、ようやく食物等によるショックから命を守るエピネフリンの自己注射が承認されました。学校でこれを適正に使用できるよう環境整備をし、また救急救命士等による使用を早急に認めること。  四、現在でも年間約三千人もの人がぜんそくによって死亡しています。正しい治療を受ければぜんそく死は防ぐことができます。そのために具体的な取組を進めることなどです。  アレルギーに悩む多くの方々が不安なく日々の生活を送れるように、また、いざというときにも安心できる体制を一日も早く整備したいと思います。これらの課題及びアレルギー対策の更なる推進につき、厚生労働大臣に伺います。  次に、地震及び水害対策について伺います。  我が国は地震大国で、いつ、どこで大地震が起きてもおかしくありません。地震対策においては、被害を最小限に食い止める減災が大事です。そのためには、すべての建物の耐震性を高める必要があります。国は災害時に避難所となる学校や公共の建物の耐震化を進めていますが、まだ十分とは言えません。また、国民皆様から、我が家の耐震診断を受け、耐震改修をしたいけれども費用がないという声が上がっています。万一かなりの大地震があっても、我が家も職場も近隣の家々もすぐに倒れることはないとの確信が持てるようになれば、どれほど国民皆様の不安が払拭されるでしょうか。建物の耐震化を更に進めるために国は具体的にどのような取組をされるのか、国土交通大臣に伺います。  また、近年、台風や異常な集中豪雨により浸水などの被害が多発しています。河川の計画水位の見直しや、想定される雨量などの防災基準の見直しなどが急務です。この点についても国土交通大臣に伺います。  最後に、このたびの総選挙与党の勝利をもたらした要因の一つが、解散直後に総理が自ら国民皆様に向かって率直に真摯に語り掛けられたことと言われております。  今後の改革に当たっても、総理自らが御自分の言葉で真摯に国民皆様に語り掛け、国民皆様のお声を真剣に受け止めることが強く求められております。  かつて、オーストラリアのある女性市長が次のように語っておられました。私たちの地元では、政治家は選ばれたときに誓いを述べます。それは、市民の生活を幸福にしよう、市民に奉仕していこうとの誓いですと。  どこの国であれ、政治に携わる者は、負託された権力を私利私欲のためでなく、ひたすら民衆の幸福のために用いる公僕としての使命と責任があります。その使命感及び責任感なくして政治改革もすべての改革の前進もありません。覚せい剤に手を染めるなどは問題外です。正に政治家改革がすべての改革の大前提です。共々に、何のために政治に携わっているのかを深く自覚し合って、常に国民の側に立ち、日本を真に平和で安全で、質の高い、誇りの持てる社会にするため、日々挑戦してまいりたいと思います。  今後の総理政治に懸ける姿勢、御決意を最後に伺い、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  14. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 浜四津議員にお答えいたします。  激励を兼ねた御質問、提言、ありがとうございます。  今回の総選挙の結果の受け止め方、また郵政法案成立後の課題についてでございますが、今回の選挙の勝利は、これは公明党、自民党との協力が極めて緊密に行われたこと、それを多くの国民が支持してくれたこと、そして過去四年余にわたる小泉内閣が進めてきた改革路線、郵政民営化も含めてしっかりやれという激励だと受け止めております。この国民の声を厳粛に受け止めて、郵政民営化法案始め、これまで進めてきた構造改革を公明党、自由民主党、この安定した連立政権を基盤にして進めていきたいと思いますので、今後ともよろしく御指導、御協力お願い申し上げます。  地方の活性化、中小企業支援策等でございますが、我が国経済は企業部門と家計部門がともに改善して失業率が低下するなど、全体としては緩やかに回復しておりますが、地方経済については北海道や東北でやや弱含みとなるなど、依然としてばらつきが見られております。また、中小企業については持ち直しの基調にあるものの、大企業に比べては厳しい環境にあります。  こうした認識の下に、政府としては五百四十八件に及ぶ構造改革特区の認定、そして稚内から石垣までをモットーとする都市再生、地域再生法等による支援、一地域一観光の方針の下で観光振興による地域経済の活性化の促進、中小企業者への円滑な資金供給や新事業への挑戦支援など、改革の成果を地域や中小企業にも浸透させてきております。また、フリーター削減等の雇用対策も進めております。  今後とも構造改革の取組を拡大し、引き続き民間主導の持続的な経済成長を図ってまいります。  三位一体の改革における地域間格差の是正についてでございますが、各地方が自由に使える財源を増やすことで、自らの創意工夫と責任政策を決められる幅が拡大する、これが三位一体の改革を進める上で大事なことであります。その際、個人住民税の税率をフラット化すること等により税源の偏在を縮小するとともに、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額を確保して、交付税の算定を通じて財政力格差が拡大しないよう適切に対応していきたいと思います。  事業仕分についてですが、公明党がこれまで無駄ゼロ、行政効率化に積極的に取り組まれたことを高く評価しております。今回の御提案も、不要な仕事や民間ができる仕事がないかどうかを厳しく検証して歳出削減につなげようとするものと理解しておりますが、その趣旨については私も同感であります。  政府としては、同様の考え方に立って、これまで官が行ってきた事業について官と民が競争してサービスの効率化を進める市場化テスト法、いわゆるお役所仕事改革法の策定などに取り組むこととしており、いずれにせよ、十八年度予算編成に当たっても、歳出の無駄をできる限り見直していくとの公明党の提案の趣旨に沿って、歳出見直しを徹底して行う考えであります。  アジア外交でございますが、安定して繁栄するアジア太平洋地域の実現は、我が国の安全と繁栄に不可欠であります。中国韓国との関係、ともに歩みともに進むパートナーであるASEAN諸国等アジア諸国との関係の強化が重要であると考えます。同時に、この地域の平和と安定のためには、日米安保条約を基礎とする日米同盟関係が不可欠であります。  我が国は、このような認識の下に、日米同盟と国際協調を外交の基本方針とし、我が国国益を確保すべく、アジア諸国との二国間協力関係を強化するとともに、これら諸国との地域協力の推進にも積極的に貢献していく考えであります。  北朝鮮につきましては、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、日朝国交正常化を実現するとの我が国の方針は一貫して変わりません。我が国としては、引き続き、日朝政府間対話、六者会合等あらゆる機会をとらえて、北朝鮮側に対して拉致問題を含む諸懸案の包括的解決に向けた迅速かつ納得のいく対応を強く求めていく考えであります。  在日米再編でございますが、在日米軍の兵力構成見直しについては、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄等地元の負担の軽減を図る観点から、現在、米国と協議を進めてきております。今後とも、政府一体となってこの問題にしっかり取り組んでまいります。  年金問題でございますが、国民年金の未納・未加入問題への対応年金制度への信頼にかかわる重要課題であり、既に、保険料を納付しやすい環境づくり、強制徴収の実施や免除制度の適用など、的確な対策を強力に推進しているところでございます。  あわせて、社会保険庁については、国民信頼を回復するため、予算執行の無駄を徹底的に排除するなど様々な業務改革を進めるとともに、抜本的な組織の改革を実現していきたいと思います。  また、厚生年金と共済年金の被用者年金の一元化についても、政府としての具体的な処理方針をできる限り早く取りまとめるべく指示をしているところでございます。  さらに、女性と年金の問題については、昨年の年金改革年金分割の制度の導入などを行いましたが、引き続き女性を始めとする個人の生き方、働き方の多様化対応していく必要があり、いわゆるフリーターへの対応と併せ、短時間労働者の厚生年金の適用拡大等について検討を進めてまいります。  いずれにせよ、早急に両院合同会議における議論が再開されることを期待しており、そこでの議論も踏まえつつ、御指摘の諸課題についても改革に向けて迅速に取り組んでいきたいと思います。  国会議員の年金でございますが、議員年金改革については、公明党は廃止を主張されております。また、自民党としても廃止を前提に取り組む必要があると考えておりまして、早急に両党で、自公両党で案を取りまとめたいと考えております。そして、各党各会派において十分議論していただき、国民から理解と信頼を得られる制度とすることを期待しております。  年金一元化についてでございますが、私は、国民全体を対象とする年金の一元化を展望する上で、まずは厚生年金と共済年金の一元化が先に来るのではないかと申し上げております。既に被用者年金の一元化に向け、様々な課題についての処理方針を取りまとめるよう指示しておりますが、また国民年金を含めた一元化について、事業主負担をどうするか、所得の正確な捕捉をどうするか、納税者番号制度などの条件をどうするか、このような問題等について検討する必要があると考えております。  年金制度は長期的な視野に立って改革を進める必要があり、与野党が胸襟を開いて協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠であります。早急に両院合同会議における議論が再開されることを期待しております。  児童手当及び出産育児一時金でございますが、児童手当については、公明党の御尽力もあり、平成十六年四月一日より、支給対象年齢を小学校就学前から小学校第三学年修了前まで引き上げたところでございます。  児童手当を含む経済的支援については、昨年末策定した子ども・子育て応援プランを踏まえ、地域や家庭の多様な子育て支援、働き方にかかわる施策と併せて、総合的かつ効率的な視点に立ってその在り方等を財源も含め積極的に検討してまいります。  出産育児一時金については、医療機関における分娩料の実態、厳しい保険財政状況も考慮しつつ、平成十八年の医療保険制度改革に向けて検討してまいります。  子供関係予算でございますが、教育への投資は我が国発展に欠かすことのできない未来への先行投資であります。新しい時代を切り開く心豊かでたくましい人材を育てる教育を実現するよう積極的に取り組みたいと考えております。  子供社会の宝、国の宝であるとの観点に立って、次代を担う子供たちの学ぶ環境の整備に努めてまいります。  子育て支援につきましては、昨年末に、待機児童ゼロ作戦、多様な保育サービスのより一層の充実などの施策と、平成二十一年度までの五年間に達成する目標などを盛り込んだ子ども・子育て応援プランを策定したところであり、この実現に全力で取り組んでおります。  特に、企業における仕事と子育ての両立支援につきましては、育児休業制度など子育て期の労働者が仕事と子育てを両立しやすい制度の定着や、企業における次世代育成支援対策のための行動計画の策定、実施を推進することとしており、これらの取組により、働きながら安心して子育てができる社会の実現に努力してまいります。  がん対策については、我が国の死亡原因の第一位をがんが占めておりまして、国民の健康にとって重大な脅威となっております。がんの罹患率と死亡率の激減を目指していくことが極めて重要であると考えております。  このため、関係省庁の連携の下に、一昨年七月に策定いたしました第三次対がん十か年総合戦略に基づき、全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるよう、地域における拠点病院の整備や専門医の育成等に取り組むとともに、有効ながん検診の普及等のがんの早期発見、革新的な治療法の開発等の医療技術の開発振興など、患者・国民の視点に立った総合的ながん対策に取り組んでまいります。  がん対策法の制定につきましては、将来的な検討課題と考えております。  アスベスト問題につきましては、公明党の要請も踏まえ、既存の法律で救済できない被害者を救済するため、新法を次期通常国会に提出することとしております。  この法案においては、アスベストによる健康被害者やその遺族のうち、労災補償を受けずに死亡した者や家族、周辺住民等既存の制度の対象にならない者を対象に、医療費や遺族一時金等を給付することなどの救済措置を講ずることを検討しております。  政府のアスベスト問題への対策、今後の対策でございますが、関係閣僚会議を開催いたしまして、政府としては、関係省庁の緊密な連携の下に対応を進めていかなきゃならぬと思っております。  救済のための新たな法的措置に加え、御指摘の建築物の解体時等の対策、早期のアスベスト全面禁止、使用実態についての調査や国民への情報提供、アスベスト除去、健康被害の相談窓口の充実等はいずれも重要な課題であると考えておりまして、関係省庁の緊密な連携の下に対応していかなきゃならぬと思っております。  今後の私の姿勢、決意についてでございますが、この国民の大きな支持、信任を厳粛に受け止めまして、郵政民営化法案を始め、構造改革の実現に更に任期一杯精一杯の努力をしていきたいと思いますので、今後ともよろしく御協力、御支援のほどお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣尾辻秀久君登壇、拍手〕
  15. 尾辻秀久

    国務大臣(尾辻秀久君) 年金制度の一元化についてお尋ねがございました。  公的年金の一元化につきましては、どのように制度財政的な安定性や公平性を確保し、国民にとって真の信頼安心につながる制度を設計していくか、またどのように制度の運用を国民にとって身近で分かりやすいものへと改善していくかということが大切であると考えております。  国民年金を含めた一元化につきましては、総理よりもお答え申し上げましたけれども、まずは被用者年金の一元化に向け、制度間における給付や負担の水準の相違等、被用者年金の一元化を進めるに当たって検討すべき様々な課題について幅広く議論し、その処理方針をできるだけ早く取りまとめるよう指示されております。両院合同会議におきましても、被用者年金一元化をめぐる課題につきまして幾つかの具体的な論点が提示されております。国会与党、また関係者等の御理解、御協力をいただきながら、関係各省と協力して全力で取り組んでまいります。  薬物対策についてのお尋ねがございました。  御指摘のとおり、現在、覚せい剤やいわゆる脱法ドラッグなどの薬物乱用が深刻化しており、極めて憂慮すべき状況にあると認識いたしております。このため、厚生労働省といたしましても、徹底的な取締りを行いますとともに、薬物の危険性や乱用防止についての啓発活動、さらには薬物依存者の社会復帰支援に取り組んでいるところでございまして、引き続きこれらの対策を積極的に推進してまいります。  また、いわゆる脱法ドラッグについては、違法性が高く、現在、有識者による検討会において、その対策の在り方について法改正も視野に検討をいただいているところでございます。今後とも、厳しく取り締まりますとともに、検討結果も踏まえ、違法なドラッグの根絶に向けて全力で取り組んでまいります。  アレルギー対策についてのお尋ねがございました。  我が国のアレルギー疾患の患者は国民の約三割に上ると言われておりまして、非常に重要な問題と認識をしております。取り組むべき課題としての御指摘ありました一点目の食物負荷試験につきましては、既に関係学会から医療技術評価の希望書が提出されておりますので、専門的な組織の検討結果を踏まえ対処してまいります。  二点目のアレルギー教育につきましては、医療の提供の際に患者へのアレルギー教育が充実するよう教育資材の開発研究等を行います。  三点目の心肺停止状態の傷病者に対する救急救命士によるエピネフリンの使用については、必要な講習を修了した場合において、平成十八年四月より認めることとしております。  四点目のぜんそく死の予防につきましては、ぜんそく死ゼロを目指して、患者カード携帯による患者の自己管理の徹底、かかりつけ医における診療ガイドラインの普及など具体的な取組を進めてまいります。  また、アレルギー対策戦略的な推進を図るため、本年八月に厚生科学審議会のリウマチ・アレルギー対策委員会において、今後のアレルギー対策について報告書を取りまとめたところでございまして、今後、この報告書等を踏まえながら、都道府県や関係団体等とも連携し、アレルギー対策の更なる推進に努めてまいります。(拍手)    〔国務大臣北側一雄君登壇、拍手〕
  16. 北側一雄

    国務大臣(北側一雄君) 住宅・建築物の耐震化についてお尋ねがございました。  昨年の新潟県中越地震、また福岡県の西方沖地震など、近年地震が頻発をしております。我が国におきましては、地震はいつ、どこで発生してもおかしくない状況にございます。  本年六月には、国土交通省に設置しました住宅・建築物の地震防災推進会議におきまして、今後十年間で耐震化率を少なくとも九〇%に引き上げるという目標及び緊急に取り組むべき施策について取りまとめをいたしました。  さらに、九月二十七日の中央防災会議におきまして、建築物の耐震化緊急対策方針といたしまして、耐震改修を促進する制度の見直しに直ちに取り組むことが決定をされました。このため、地方公共団体が目標を定めて計画的に耐震化を促進するための仕組みの整備や、学校、老人ホーム等の建築物に対する指導等の強化を内容とする耐震改修促進法の改正について、今国会に提出することとしております。  こうした法制度の整備と併せ、地域住宅交付金及びまちづくり交付金の提案事業を活用して耐震改修の促進を図っておるところでございますが、さらに、平成十八年度予算要求におきまして、補助事業につきましては、緊急輸送道路沿道建築物に対する拡充や、また補助対象地域を限定する地域要件の緩和を図るとともに、税制につきましては、耐震改修に要した費用の一定割合を税額から控除する耐震改修促進税制の創設を要望しているところでございます。その実現に向け、全力で取り組んでまいりたいと考えております。  次に、水害対策についてお尋ねがございました。  昨年は十個の台風が上陸し、全国各地で甚大な豪雨災害が発生したことを踏まえ、豪雨災害対策緊急アクションプランを策定するとともに、ハザードマップの整備を義務化する水防法の改正を行いました。現在、これらの施策に鋭意取り組んでいるところでございます。  今年も時間雨量百ミリを超える首都圏集中豪雨や連続雨量一千ミリを超える台風十四号などにより、これまでに死者、行方不明者四十一名、床上・床下浸水棟数二万七千棟以上の甚大な被害が発生をいたしました。これまでの記録を大きく超える豪雨に対する堤防の安全性の確保、さらには半地下ビルの浸水や中山間地における迅速な避難に係る対策などの課題が明らかとなったところでございます。  このような従前の計画や想定を超える大規模な降雨は今後も発生する可能性があります。これまでの計画考え方や基準だけでなく、このような大規模な降雨もあり得るという前提で的確な水害・土砂災害対策を実施していく必要がございます。  このため直ちに、これまでの対策を総点検して、必要に応じ抜本的な見直しを図るよう指示したところでございます。新たに、大規模な降雨による災害対策やゼロメートル地帯の高潮対策を検討するための委員会を設置をいたします。年内を目途に提言をいただく予定にしているところでございます。気候変動を的確に踏まえた水害・土砂災害対策を展開し、国民の安全、安心の確保に万全を期してまいります。(拍手)     ─────────────
  17. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 直嶋正行君。    〔直嶋正行君登壇、拍手〕
  18. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 民主党・新緑風会の直嶋正行です。ただいま議題になりました小泉総理大臣の所信表明演説に対し、質問いたします。  総理はさきの所信表明演説において、本当に国民が郵政民営化は必要ないと判断しているのか、直接その意思を確認したいと思い、衆議院を解散したと述べられたように、本来、政権を選択する選挙を、郵政民営化法案に争点を絞り、国民投票的なものに意図的にお変えになりました。しかも、参議院での法案否決を理由に衆議院を解散したことは憲政上も疑義があると申し上げます。  選挙結果は、三分の二以上の議席を自公で獲得し、二院制の存立も危うくなりかねない事態となり、憲政の仕組みを大きく揺さぶることになりました。だれも予想しなかったほどの与党の圧勝となったわけですが、三分の二以上の圧倒的多数を占め、やろうと思えば何でもできる多数与党体制ができたことに対し、国民の中にも戸惑いや危惧の念が広がっています。  こうした状況をつくり上げてしまった小泉総理には国民に対する説明責任があると思いますが、さきの所信表明では一切このことに触れていません。何ら説明することのないまま、民意だ、改革だと称して、平気で国民に負担を強いるサラリーマン増税や消費税増税を進めてしまうのではないかとの危惧はぬぐい切れません。  巨大与党責任と今後の国会運営について、まず小泉総理考えをきちんと御説明いただきたい。  一方、総理がねらった国民投票として今回の選挙結果を見た場合、郵政民営化法案賛成を民意と言い切るにはいささか疑問を感じます。なぜならば、小選挙区で落選した議員の得票も紛れもない民意であるからです。  小選挙区の得票で比べると、自民、公明の与党の得票よりも非与党の得票、もっと言えば郵政民営化法案に反対した候補者の得票の方が若干上回っています。比例票ではそれが逆転しますが、いずれも僅差であり、フィフティー・フィフティーと申せます。  つまり、郵政民営化法案への国民投票結果は五分五分なんです。総理法案は、多くの有識者も欠陥法案だと指摘されているように、国民からも受け入れられないとの審判が約半数に及んだということです。必ずしも国民法案に賛成したとは言い切れない事実があります。総理の御所見をお伺いいたします。  選挙の結果は、三分の二以上の圧倒的多数を与党が獲得したわけですから、それは当然受け入れなければなりません。しかし、総理は郵政以外の政策は所信表明でもほとんど触れられず、また、自民党のマニフェストも具体性に欠け、総花的で、小泉さんでさえ郵政以外は何をやろうとしているのかよく分からない上に、次の自民党総裁を担う人の姿は全然見えてきません。次の総裁が今の与党議席を利用して政治を私することがないと言えますでしょうか。  後の三年間、だれが日本のかじ取りをするのか見えない中で、何でもやれるだけの議会構成はそのまま続きます。小泉総理責任を持てるのはわずか一年だけで、その後は先が見えない。私は、日本政治を危機におとしめる危険性を十分秘めていると思っています。総理の御所見をお伺いいたします。  次に、公務員改革についてお尋ねします。  自民党のマニフェストには、国家公務員の定員についても思い切った純減を実現し、総人件費を大幅に削減するとうたっています。これに対し、民主党は、財政再建一つとして三年間で十兆円の歳出削減を打ち出し、国家公務員の人件費総額は二割、約一兆円削減と具体的な数値目標を国民皆様にお示ししました。自民党と民主党のどちらがより説得力があるかどうか、言うまでもありません。  総理は所信表明で、国家公務員の定数の純減目標を設定し、総人件費の削減を実行すると言うだけに終わりました。小泉総理、本当にやる気があるのなら、なぜ具体的な数値と期限を私たちの前に明らかにされないのでしょうか。  昨日の衆議院の代表質問でも、公務員定数の純減目標を設定し、削減を平成十八年度から行っていくとかわし、削減対象となる範囲も数値目標も総理から踏み込んだ答弁はありませんでした。  また、平成十八年度の一般会計予算の概算要求では、省庁から減員要求が出るはずもなく、刑務所始め治安関係職員など五千九百五十二人の増員要求はしっかり出ています。各省庁の抵抗は根強いものがあり、総理の意向と政府動きは全くかみ合っていません。総人件費をいつまでに幾ら削減するのか、明確に答弁するよう求めます。  次に、社会保障改革について伺います。  総理は所信表明で、国民の将来に対する不安を解消していくためには、適正な給付と負担で持続可能な制度とすることが政治責任であると考えますと、こう述べられました。年金に関しては一元化にさえ触れておられず、次期通常国会の最大の焦点とされる医療制度改革については一言も言及されていません。これでは国民が期待する真の改革を断行できるのか、甚だ疑問であります。  そこで、小泉総理に、持続可能な社会保障制度にどのように取り組んでいくおつもりか、伺いたいと思います。  まず、年金改革について伺います。  私たちは、年金制度は危機に瀕していると認識しています。特に、国民年金制度は既に壊れています。昨年度は、三兆三千億円もの本来納付されるべき保険料が納付されず、実際に納付された保険料はわずか一兆九千億円でした。また、国民年金加入者二千二百万人のうち、完全に保険料を納めている加入者は半分の一千百万人にとどまっています。未納額が納付額を大きく上回り、きちんと保険料を納めている人が加入者の半分しかいない制度を百年安心などと言える自信は、私たちにはありません。  このような状況にある国民年金改革について、総理選挙中も明確には示しませんでした。自民党マニフェストにも国民年金の文字は全く見当たりません。しかし、国民年金制度は明らかに壊れています。総理はこの国民年金を放置するのか、改革する気持ちがあるのか、あるとすれば具体的にどのような改革をいつまでに行うのか、明確にしていただきたい。  また、納付率の向上は政府が長年言い続けてきましたが、悪化する一方で、アリバイづくりの空念仏にすぎません。小手先の対策や精神論では不可能です。本気で未納保険料を解消するというなら、抜本的かつ具体的な未納対策をお示しください。  総理が主張し、自民、公明両党がマニフェストで掲げた被用者年金の一元化は、国民を惑わす小泉総理一流の言葉のレトリックであることを指摘しておきます。広辞苑を引いてみてください。一元化とは、「多くの組織・機構を一つの本元に統一すること。」であります。つまり、国民年金を含めないものを一元化と言うべきではなく、被用者年金の統合と言うべきなのです。政府も以前は文書で再編成という言い方をしています。  民主党が繰り返し主張してきたすべての年金制度の一元化という困難ではあっても実現しなければならない課題を、最も危機にある国民年金を除いた被用者年金の一元化にすり替えることで、国民の間に浸透してきた年金一元化を矮小化しているにすぎません。  政府は、この二十年来、被用者年金の一元化、いや、統合を閣議決定しながら、一向に実現に踏み出そうとしていません。不渡手形をもう一度持ち出してくるとは時代後れも甚だしいと思われませんか。被用者年金統合の見通しはあるのか、その具体的な内容と時期はどうなのか、政府を代表する小泉総理、また与党自民党を代表する小泉総裁として明快な答弁をいただきたい。  また、政府与党の協議で、官民格差の象徴とも言われる共済年金独自の上乗せ制度である職域加算について、廃止するとの報道がありましたが、総理の御意見なのか否かを確認させていただきたい。  先週、政府が来年度に診療報酬を二から五%引き下げる方針との報道がありました。少子高齢化の時代においては、国民医療費の抑制は避けて通れないと思いますが、診療報酬の引下げだけではとても持続可能な制度にはなり得ません。  二〇〇二年度の医療制度改革は、総理が厚生大臣として九七年に、患者の本人負担を一割から二割に引き上げたときに公約した抜本改革の実施を全く無視したという点で、その責任は計り知れません。その公約違反に対し、総理は、三割負担にしないと抜本改革が進まないなどと、詭弁としか言いようがない答弁を繰り返されました。総理は、三割負担になった以上、抜本改革を進める準備を当然されていると思います。  次期通常国会の重要課題として医療制度改革が挙げられていますが、自民党のマニフェストの表現も、次期通常国会法案を提出すると表現するにとどまり、総理の所信表明にもその中身のかけらすら入っていません。  来年の医療制度改革について、政府は何を柱としようと考えているのか、その検討状況はどうなっているのか、窓口負担や保険料負担等々の見通しはどのようになっているのか、明らかにしていただきたい。  ここ数年の社会保障制度の改正法は、すべて給付と負担の財政調整に終始しています。国民医療費の増大を抑制するためには、いわゆる検査漬け、薬漬け医療をやめさせたり、診療報酬の適正化を図るなど、国民の負担増を求める前に打つべき手はたくさんあります。私は、財政措置を優先させる従来型の発想を転換する必要があると考えております。過去に二度も厚生大臣をやられた経験のある総理なら言わずもがなと思いますが、総理のお考えをお聞かせください。  現在の医療制度は、国民信頼感を高めること、不満を解消することからはほど遠い内容です。病院や診療所に掛かり、診察をしてもらったときに、その応対や診断内容に不満や不安を覚えることのない医療を実現することも、次の法改正の大きな柱になるはずです。にもかかわらず、その議論は全く外に聞こえてきません。是非ここで、医療の質の向上について、安心信頼の医療制度確立のために次期国会で何をするつもりであるのか、御答弁ください。  さらに、具体的に伺いたいと思います。  診療報酬の単価の改定だけでは、全体として診察の頻度が増えれば総枠の医療費を抑制することはできません。頻度に影響されない包括方式の方が診療の効率化が進むと思いますが、包括方式の本格導入を早期にすべきと考えますが、総理のお考えを伺いたい。  国民医療費の半分は医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの人件費に充てられており、その財源の大半は保険料と税金から成る国民負担です。公務員の人件費が抑制傾向にある中で、医療関係者の人件費だけを聖域化することは到底国民の納得は得られません。郵政民営化と同じぐらいの熱意を持って取り組んでいただきたいと思いますが、総理は自民党の支援団体である日本医師会を始めとした関係団体を敵に回し、診療報酬の引下げを断行していく決意がおありか、伺いたい。また、総枠でどのぐらいの額の削減を行うのか、お聞かせをいただきたい。  総理、あなたは、去る七月下旬に、日本歯科医師連盟から三千万円の献金を受けていながら収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反で告発されたものの不起訴処分になった山崎拓元自民党副総裁について、東京第二検察審査会が起訴相当の議決をしていたことが公表されましたことを御存じだと思います。山崎氏は、首相補佐官も務めたあなたの盟友です。今年一月には、やはり東京第二検察審査会が、日本歯科医師連盟のやみ献金事件に絡む橋本元総理の関与疑惑に対し、東京地検が不起訴処分にしたことは不当であるとの議決をしたのに続くものです。  巨額のやみ献金を受け取りながら、政治資金規正法に違反しても、収支報告もしなかったのに何のおとがめも受けないというのはおかしいと思うのが庶民感覚から見て至極当然ではありませんか。  橋本元総理に対しては、検察審査会の議決によりますと、会計責任者が有罪の判決を受けているのに代表者が嫌疑不十分では、国民の間では通用しないし、納得することはできないと、その理由を明言しております。総理、この点についてどのように受け止めておられるか、お伺いをいたします。  また、利害当事者からの多額の献金と医療制度改革の断行は相反するものではないかと思いますが、総理見解をお聞かせください。  あわせて、次期通常国会で医療制度議論する前に、これらのやみ献金問題をクリアにしておく必要があると思いますが、総裁としてどのように対処されるおつもりか、お伺いをいたします。  日本道路公団の橋梁建設工事をめぐる官製談合事件ほど国民をあきれ返らせた事件はありませんでした。よりによって、発注者である公団の副総裁が幹部職員の天下り先を確保するために談合に積極的に関与したもので、組織的な犯罪であります。  日本道路公団が過去五年間に発注した三億円以上の土木工事での平均落札率は九七・六%にもなるとの報道もあるなど、事件並みの不自然に高過ぎる落札率が常態化しており、今回の橋梁談合事件は氷山の一角と見るべきです。  必要悪と言われ、日本の慣習とまでなってしまった談合体質を抜本的に改革しなければ、総理の言う小さな政府はなし得ません。それには、談合する受注企業に焦点を当てていた今までのやり方ではなく、公共事業の発注側である官の体質に根本からメスを入れていく必要があると考えます。小泉総理の所見を伺います。  十月一日から道路関係四公団が民営化されます。談合事件を起こした当の公団や、監督官庁である国土交通省の首脳らが、分割・民営化される会社の最高幹部に天下りすることになっております。民主党は、前の国会で道路公団等天下り規制法案を提出しました。政府与党は、なぜ特殊法人や非公務員型の独立行政法人職員の天下りを規制しないのでしょうか。  長野県の入札改革では、談合ができない環境にすれば天下りが激減したという例もあるように、天下りが談合という汚職の必須条件となっています。もう天下り禁止は職業選択の自由を脅かすといった理屈は到底成り立たず、ましてや国民には理解されません。天下りに対する総理の御所見をお聞きいたします。  民主党は、さきの通常国会における独禁法の改正において、発注官庁職員の談合行為に対する内部告発を促す仕組みや官製談合防止法の見直しを明記した対案を提出しましたが、成立した政府案にはこの点が大きく抜け落ちていました。現在、民主党では、既に官製談合防止対策のための法律案をほぼまとめており、近いうちに国会に提出いたします。是非、与党も官製談合防止が本気で必要と考えるなら、民主党の法律案に賛成をしていただきたいと思います。官製談合の防止強化について、今後どのように取り組む予定か、総理に伺います。  今年の六月以来、アスベストが原因と見られる肺がんや中皮腫といった深刻な健康被害の実態が明らかになってまいりました。政府はこれまで、昭和四十七年からその危険性を認識していながら具体的な対策は取らず、家族や周辺住民へも被害が及ぶ可能性があるとする通達を出しただけで、それが有効に機能しているかどうか確認しておりませんでした。なぜアスベストの危険性を認識しながら迅速な対応を取らなかったのでしょうか。政府の怠慢が被害を拡大させたことは明白であります。この責任についてどう考えるのか、小泉総理大臣にお伺いをいたします。  政府は、アスベスト被害者の救済のための新法の次期通常国会への提出を目指し、来秋から被害者の認定受付を行うとしていますが、これでは事実上一年間の先送りであります。これだけ不安を抱える人がどんどん増え続けるという深刻な状況を前に、余りにも悠長な対応に驚きを禁じ得ません。  民主党は、現在、アスベスト使用の完全禁止、除去・回収の徹底等々を含む総合的なアスベスト対策法案の検討を進めるとともに、いまだ治療法も確立していない中で被害に苦しむ人々の救済を最優先にするべきであると考え、アスベスト被害者の救済に関する法律案の制定を先行する考えです。政府与党も、優先すべき被害者救済の部分だけでも今国会に提出できるよう最善を尽くすのは当然と思いますが、総理、いかがでしょうか。  小泉総理は、参議院での郵政法案の否決に対し衆議院を解散するという言わば禁じ手を使い、今回の衆議院選で自民党は二百九十六議席を獲得し、公明党と合わせると三百二十七議席と、衆院の三分の二を超える巨大与党になりましたが、内実は果たしてふさわしいものと言えるのか甚だ疑問であります。当選した議員の大半はその場限りの改革派を名のっているだけにすぎないのではありませんか。ワイドショーを始め報道を見聞きすると、その思いを強くいたします。自民党には真の改革はできない。小泉総理がお辞めになった後、元のもくあみになるのではないでしょうか。  私たち民主党は、勢力こそ減らしましたが、前原新代表の下、本物の改革を目指す政党集団として一致結束、次の選挙では必ずや国民の皆さんの信頼を回復し、政権を担当することをお約束し、総理答弁が不十分であれば再質問させていただくことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  19. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 直嶋議員に答弁いたします。  今回の選挙結果は国民が郵政民営化に賛成したことを示すものではないとの直嶋議員の御指摘でありますが、今回の総選挙は、郵政民営化、賛成か反対か、これが最大の争点であります。もとより、小泉内閣のこれまで進めてきた構造改革の成果や今後の方針も判断されての国民の投票だと考えますが、もし民営化に賛成でなかったらば、これほど大きな勝利を自民党、公明党に与えなかったと思います。私は、この国民の声を郵政民営化に賛成であると厳粛に受け止めて、郵政民営化はもとより、もろもろの構造改革を進めていきたいと思っております。  私の任期終了する来年秋以降どのような改革考えているかということでありますが、私は、郵政民営化実現後、三位一体の改革、また政府系金融機関の統廃合、国家公務員の総人件費の削減等、構造改革を進めていかなきゃならないと思いますし、だれが私の後を継がれようとも、後戻りすることのできない改革、これを本格的な軌道に乗せて、今後しっかりした方に私の後を継いでいただきたいと思っております。  公務員の総人件費についてでございますが、政府の規模を大胆に縮減するという観点に立って、国、地方を通じ、聖域を設けることなく見直しを行い、削減を実行いたします。  削減する国家公務員の対象範囲や総人件費削減の進め方につきましては、基本指針の策定に向けて、経済財政諮問会議で今後議論してまいります。  国民年金の未納対策でございますが、公的年金制度国民信頼の下に将来にわたってその役割を果たしていく上では、国民年金保険料の納付率の向上が急務であります。このため、昨年の年金制度改正において多段階免除制度の導入等の制度的な対応を講じたところであり、さらに、現在、保険料を納付しやすい環境づくりを進めるとともに、強制徴収の実施や免除制度の適用など、的確な対策を強力に推進しているところであります。  年金制度の一元化についてでございますが、国民全体を対象とする年金の一元化を展望する上で、まずは厚生年金と共済年金の一元化が先に来るのではないかと申し上げてまいりました。統合化というか一元化というのは、言葉はともかく、私は、被用者年金の一元化に向けまして、御指摘の職域加算の取扱いも含めて、制度間における給付や負担の水準の相違等、被用者年金の一元化を進めるに当たって検討すべき様々な課題について幅広く議論し、その処理方針をできるだけ早く取りまとめるよう、今指示しているところでございます。  医療制度につきましては、今後国民所得を上回る勢いで伸びていくことが見込まれる医療費の適正化を図り、国民負担を極力抑制するとともに、国民皆保険制度の持続可能性を確保していくことが早急に取り組むべき重要な課題であると思っております。  このため、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標の設定や公的保険給付の内容、範囲の見直し、高齢者の特性に応じ、世代間、保険者間の負担の公平化を図る新たな高齢者医療制度の創設、保険者機能の発揮を促す都道府県単位を軸とした保険者の再編統合などの改革案を年末までに取りまとめ、医療制度改革関連法案を次期通常国会に提出したいと考えております。  医療費抑制のための取組についてでございますが、医療費の増大が見込まれる中で、国民負担を極力抑制して国民皆保険制度の持続可能性を確保するためにも、医療が無駄なく効率的に提供されるようにすることが重要であると考えております。  これまでも、不必要な検査、過剰投薬等を防止するための診療報酬の包括化、医療機関に対する指導監査の充実、老人医療における受診回数の適正化等に取り組んでまいりました。今後も、経済、財政とのバランスを踏まえつつ、包括評価の推進や医療機関の機能を反映した診療報酬の見直しなど、更に医療の効率化に取り組んでまいります。  医療の質の向上でございますが、患者の視点に立った患者本位の医療提供体制を構築することが重要であります。  このため、疾病ごとに地域での医療の連携体制を構築し、治療期間の短縮化を図るための医療計画制度の見直し、患者・国民の選択に資するための医療に関する積極的な情報提供の推進、医療安全対策の充実等の医療提供体制改革案を年末までに取りまとめ、次期通常国会関係法案を提出したいと考えております。  診療報酬の包括方式及び引下げでございますが、診療報酬の包括払い方式は、過剰な診療を防止し、医療の効率化にもつながると思います。これまでも、慢性期の入院医療で既に本格導入しているほか、大学病院等における急性期の入院医療でも出来高払いとの適切な組合せの下に実施しており、引き続き拡大を図ってまいります。  また、診療報酬は、診療の対価として保険から支払われるものであり、医療機関の費用のうち医療従事者の人件費が約半分を占めています。今後、近年の賃金、物価の動向や経済、財政とのバランス等を踏まえつつ、報酬の改定を検討してまいります。  検察審査会の議決についてでございますが、検察審査会の決定につきましては、検察当局においてこの決定を踏まえて必要な対応を取られるものと考えております。  献金と医療制度改革関係政治と金の問題についてでございますが、医療制度改革は、患者本位の医療提供体制を構築するとともに、国民安心の基礎を成す国民皆保険制度の持続的可能性を確保していくために断行するものであり、特定の利害関係者のために行うものではありません。  また、政治と金の問題につきましては、政治家一人一人が常に襟を正して当たらなければならない問題であり、政治家政治資金を受け取る際には、政治資金規正法にのっとって適正に処理されなければならないのは言うまでもありません。  いずれにしても、今後とも、政治資金の適正な処理と透明性を確保し、政治に対する国民信頼を得られるよう努力してまいります。  談合体質についてでございますが、いわゆる官製談合はあってはならないことであり、発注者の職員による入札談合への関与行為が認められた場合には、公正取引委員会において、官製談合防止法に基づき発注者に対し改善措置要求を行ってきております。また、今般の日本道路公団に係る入札談合事件については、発注者である同公団の役員を独占禁止法違反で刑事告発したところであります。  今後とも、政府として独占禁止法及び官製談合防止法を引き続き適切に運用してまいりたいと考えます。  また、官製談合防止法については、その強化について、各党において検討が行われていると承知しておりますが、政府としても今後検討していくべきものと考えております。  特殊法人や非公務員型の独立行政法人職員の天下りについてでございますが、幹部が談合行為で逮捕されるという事件を起こした日本道路公団においては、幹部職員について一定の場合に再就職を禁止する措置を自主的に講じたと聞いております。しかし、すべての特殊法人、非公務員型の独立行政法人の役職員に対して営利企業への就職の制限を課することは、職業選択の自由との関係も考慮しつつ、なお検討すべきものと考えます。  いずれにしても、特殊法人、独立行政法人の業務運営の適正性や効率性を確保し、国民信頼を得ることは必要であります。  アスベスト問題でございますが、この問題について政府として、関係閣僚会合においてアスベスト問題についての政府の過去の対応について検証したところであり、政府としては、それぞれの時点において当時の科学的知見に応じて関係省庁が必要な対応を取ってきたところではありますが、過去において関係省庁間の連携に必ずしも十分でなかった面があるなど、反省すべき点もあったと考えております。  アスベスト被害者救済のための新法についてでございますが、既存の法律で救済できない被害者を救済するため、現在、関係省庁の緊密な協力の下に新法の検討作業を進めております。  法案の取りまとめには被害の実態把握を始めとして多くの課題があり、法案は次期通常国会にできるだけ早く提案したいと考えておりますが、法案の検討作業と並行して、被害の拡大防止や国民の不安に対する措置などについて適切な対応をするよう努力してまいります。(拍手)
  20. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 直嶋君から再質疑の申出があります。これを許します。直嶋正行君。    〔直嶋正行君登壇、拍手〕
  21. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 総理に再度質問をさせていただきます。  先ほどの私の質問の中で、先般の衆議院選挙与党が衆議院の三分の二を超える議席を確保したことについて、今お触れになりませんでした。今朝ほど来、総理の御答弁を伺っていますと、自公で過半数を超える議席をいただいたという言い方をされていまして、どうも三分の二というのをお話ししたくないのかなという感もいたしますが、事実は事実であります。したがって、この三分の二について総理の受け止めを率直に聞かしていただきたいと思うんです。  もう私がここで憲法五十九条を引き合いに出す必要もないと思います。是非、三分の二以上の議席を得たことについて小泉総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。また、そのことによって今後の国会運営をどう考えておられるのかも併せてお示しをいただきたい。再度申し上げさしていただきます。  それから、二つ目は年金の問題であります。  国民年金改革について、先ほど御答弁の中で被用者年金の統合についてはお話をされました。しかし、国民年金改革とか国民年金の現状についての御認識は明確に示されていらっしゃいません。未納対策を今お触れになっただけであります。しかし、今実は起こっている事態を率直に申し上げますと、被用者年金の保険料負担が年々上がってまいりましたのでその影響もあるかと思いますが、そのことが非正規雇用、つまり短期的な雇用とかあるいは失業者の増加につながっていることは間違いないと思います。こうした傾向は、これから向こう十二年間厚生年金の保険料は上がるわけでありますから、私はますます続くんではないかと思います。これが更に国民年金の空洞化を加速する、このことを私どもは最も危惧しているわけであります。  したがって、年金は今、国民年金は実質破綻をしていると思いますが、それだけではなくて、いわゆる被用者年金厚生年金の方も徐々に空洞化しつつあるというのが実態でございまして、この実態を総理は御認識されているのかどうか。そして、そのことを踏まえて私どもは国民年金を含めた年金の一元化が必要である、これは、国民年金を立て直さなければ厚生年金までおかしくなる、この危機感から申し上げているわけでございます。  あと一分あるので、もう少しお話しさしていただきます。  それから、未納対策は確かに、私は政府が努力をされてないとは申し上げません、いろいろ努力されています。しかし、残念ながら、いろいろ努力されていますが、実態は悪化する一方であります。したがって、このことは実は国民年金の支払に厚生年金の方からお金が流れているということであります。
  22. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 直嶋君、時間が経過しております。簡単に願います。
  23. 直嶋正行

    ○直嶋正行君(続) サラリーマンの立場からすると、大変大きな不公平になっております。したがって、このことについても、未納対策がこれでは駄目だということについて総理の御所見を承れれば有り難いと思います。  以上でございます。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  24. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 直嶋議員の年金問題と三分の二の議席のことについての再質問でございますが、年金の問題につきましては、まず国民年金収納率の向上、これが急務であります。  それと、国民年金の一元化もありますが、私は民主党の皆さんに是非考えていただきたいのは、与野党が合意して衆参両院の協議会が院にできているわけです。これについて民主党は、国民年金を含めた厚生、共済一元化を提案しております。ならば、私は案を出していただきたいと思います。政府に案を出せ出せと言いながら、自分だけは勝手に主張して案も出さない。  具体的に言えば、国民年金統合するんだったらば、給付の方は厚生年金に合わせるのか、保険料負担は国民年金に合わせるのか、どっちなのか、これ問題一つ取っても大問題なんです。  消費税年金目的消費税を三%と言っておりますが、本当にこれで足りるのかどうかと。年金だけの目的税をつくった場合に医療とか介護等はどうなるのか。そういう点についても、私は、民主党はせっかく与野党で協議会を設けたんですから案を出して、それを基に与野党で協議すればいいじゃないですか。  また、今回の選挙の結果、三分の二以上の議席を確保したことについて私が触れてないということでありますが、過半数以上の議席を得たということは三分の二も含んでいるんですよ。そうでしょう。これは確かに二分の一よりも三分の二の方が大きな支持であり、力強い支持であると思っております。これを厳粛に受け止めて、丁寧に穏やかな国会運営をしていきたいと思います。(拍手)     ─────────────
  25. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 橋本聖子君。    〔橋本聖子君登壇、拍手〕
  26. 橋本聖子

    ○橋本聖子君 私は、自由民主党を代表して、所信表明演説に対し、質問をいたします。  戦後六十年、日本は目をみはるような経済復興を遂げ、経済的に世界で第二位の地位を占めるところまで来ました。しかし、失うものもかなりあったと思います。社会の仕組みは公に対する貢献よりも個人に重きを置くようになり、教育においては、しつけや礼節より自由がもてはやされる傾向がありました。日本人としての誇り、日本の良き伝統や文化も自虐的に否定されてきたように思います。  私は、今、日本人として道徳、倫理観を見詰め直し、アイデンティティーを再構築する必要性を肌で感じております。それには、憲法の見直し、安心できる社会保障制度の構築、将来の日本を託す子供たちの教育問題に真っ正面から取り組む必要性があると思っております。先進国中ずば抜けて悪い財政年金制度に対する不安、そして医療費の増大の問題など多くの課題を抱え、もう先送りにできない、しかし今なら再生できるのではないかという国民の危機意識が小泉改革の支持につながったものと思います。  今回の選挙で自民党は大変大きな勢力になり、ともすれば強引な政治手法を取るのではないかと危惧する向きもあります。しかし、国民の期待が大きい分だけ責任は重いということを申し上げて、質問に入りたいと思います。  まず、郵政民営化についてお尋ねをいたします。  今回の総選挙で我が自民党は歴史的大勝利を得ることができましたが、北海道と沖縄におきましては大変厳しい結果となりました。  景気も徐々に回復の兆しを見せ、中央から地方へと少しずつその実感が広がっていく中、北海道や沖縄ではまだそうした実感が得られる状況ではありません。失業率が高かったり、過疎地の多い地域では、将来的に郵政民営化が必要だと感じている人の中でも、地方が切り捨てられる、日々の生活に大きな悪影響が出るのではないかという不安感がぬぐえなかったのではないかと感じております。  私の生まれ故郷は北海道ですが、北海道に暮らす特にお年寄りにとって、手紙や小包などの郵便は、遠くに住む子供や孫や、そういったきずなをはぐくむ身近な手段であり、郵便局が故郷の温かさを届けてくれる窓口になっております。手塩に掛けて育てた子供たちが遠方に住んでいる、また住まざるを得ないという北海道の現実を目の当たりにしてきました。さらに、郵便局は万が一のときのためにとらの子を預かってもらえる銀行であり、人生最後のステージに備えた保険会社でもあります。  近所の子供たち成長を見守り、時には夫婦げんかの仲裁まで買って出る特定郵便局長さんが民営化になってどうなるのか、郵便局がなくなるのではないか、自分たちの貯金はどうなるのか、郵便物は届くのかといった素朴な疑問を、不安を持った多くの方の声に接してきました。  民間にできることは民間でやるのが当たり前です。しかし、北海道の郵政事業は民間にできない、公社で残してほしいということが、北海道における自民党議席一つ減らしてしまったという結果につながったのではないかと分析をしております。民営化イエスかノーかという問いに、北海道民は明らかにノーの意思表示を示した形となりました。  そこで、総理から、過疎地でも郵便局はなくならない、貯金も保険も大丈夫ということを、特に、心もとないお年寄りに対しましてもう一度しっかり説明をしていただきたいと思います。  北方領土問題についてお尋ねをいたします。  日露通好条約の調印から百五十年の歴史的な年に、プーチン・ロシア大統領が十一月下旬に来日の予定と聞いております。日ロは経済関係エネルギー問題で関係強化が図られてきましたが、大統領の来日をただ手放しで喜ぶわけにはいかないという事実もあります。今回の来日を、我が国の長年の悲願である北方領土問題から、解決のための大きな一歩としなければならないと私は考えております。  御案内のとおり、我が国が一貫して、東京宣言に従い北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきと求めてきたことに対し、ロシア側は日ソ共同宣言に基づく二島返還を主張し続けております。このように、両国間の北方領土への見解には非常に大きな隔たりが存在をしております。  北方四島を自分のふるさととする人たちの思いに、政府は熱意を持ってこたえていただきたいのです。領土問題は、遠い北国の問題だけではなくして、日本国民全体の悲願であり、この解決なしには真の友好関係が日ロの間に醸成されないことをロシア政府にメッセージとして確実に伝えていただきたいと思います。  今回のプーチン大統領来日を機に、四島返還に対する熱意が燎原の火のように日本全国に広がり、一定の前進があることを期待しております。領土問題の打開への道筋を付けることの覚悟をお尋ねいたします。  次に、イラク問題についてお尋ねをいたします。  現在、多くの自衛官がイラク派遣されており、国際貢献に大きな役割を果たし、各方面から大変評価をされております。まず、危険と隣り合わせのイラクにおいて日々任務を果たされ、自衛官の皆様方に敬意を表し、その御苦労に感謝の念をささげたいと思います。  イラク自衛隊派遣され、既に二年近くが経過いたしました。当初の復興支援の中心で、給水、医療支援、土木工事も大きな効果を上げてイラク国民から感謝をされておりますが、イラクが復興していく過程で支援内容を変えていく必要があるのではないでしょうか。イラク政府の意向、国際社会の動向を踏まえ、さらにODAの活用、民間による復興支援をどのように取り込めるかなど、多様な支援を行っていく必要があると思います。  今後の支援の在り方と、十二月十四日に期限切れを迎える派遣についてのお考えも併せてお尋ねをいたします。  また、自衛隊インド洋で他国の艦艇に油の補給活動をするテロ特措法が十一月一日には期限切れとなり、延長問題が出てきております。既に四年間、活動を通じて十分日本としての責任を果たしてきたと思いますが、これまでの実績と評価について、さらに国際テロ活動の状況、それに対しての現在どのような対応をしているのか、派遣延長の問題と併せてお尋ねをいたします。  次に、社会保障についてであります。  私は、若い世代の親が命を育てる喜びを感じてほしいと考え安心して子供を産み育てられる日本を目指して活動をしてきました。国会においても、小さな子供を持つお母さんが気軽に訪れることができ、そしてだれでもが自由に傍聴ができる、子育てをしながら働ける環境を整えようと、国会保育室の設置に取り組んでまいりました。その実現まで数年を要するものの、おかげさまで新しい議員会館が建設される際に保育室を設置できる運びとなりました。  こういった視点から見て、社会保障に関して幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  将来の日本を支えてくれるのは子供たちにほかなりません。その子供たちがどんどん少なくなり、日本の経済活力、ひいては国際競争力が低下するのではないかと心配をされております。少子化対策は、二十一世紀を通じて、正に与野党を問わず、我が国に生きているだれもが強く認識をし、進めていかなければいけない根本的な政策と言えます。  我が自由民主党は、さきの総選挙国民に約束した政権公約の中で、育児休業取得の促進、待機児童ゼロ作戦の継続、子育て支援税制の検討など、社会子供を育てる子育て支援策の打ち出しをしました。こうした政策を着実に行い、実効を上げることを約束いたしますが、更に必要な子育て支援は今後とも創意工夫をして打ち出していかなければならないと思っております。そのために必要な資金はしっかりと手当てをしていく必要があります。  ところが、少子化、そして子育てのために使われているお金は相対的に極めて小規模にとどまっているのが現状であります。先般、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表したところによりますと、二〇〇三年度の社会保障給付費に占める児童手当など子供・家庭関係の給付費は三・八%にすぎません。一方、年金やまた医療、介護など高齢者向け給付費は七〇・四%の高率にあります。もちろん高齢者を冷遇すべきではありませんが、余りにもこの大きな不均衡を是正し、子育て・少子化対策への財政支援を大幅に充実させる必要があると考えます。  子育て対策、少子化対策というのは一時しのぎではなく、社会構造にまで踏み込み、かつ早急に取り組まなければならないはずですが、ここ数年、我が国の少子化には歯止めが掛からず、それどころか加速傾向にあることに焦燥感を覚えます。例えば、国会保育室設置につきましても、もっと早い段階で実現することができれば、国として子育て支援に対する意気込みを国民に示せたのではないかというふうに思いますが、総理はいかがお思いでしょうか。  政府として、今後、子育て支援をどのように拡充させていくお考えなのか、そして社会保障給付費における世代間の大幅な不均衡をどのように改善されるのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。  少子化対策とともに高齢者対策も進めなければなりません。しかも、予算の掛からない対策を工夫していく必要があると思います。私が常々思っていることは、我が国には高齢者を弱者として扱うとか救済をするための仕組みというのはありますが、生きる力をはぐくんだり、現役時代のように活躍できる場を提供するシステムには大変乏しいのではないかということです。  第一線を退いた方にはそれなりの機会しか与えていない社会にはなっていないかということを心配をしています。地域社会の中で、経験豊富な高齢者に自治会活動や学校教育の現場に積極的に参加をしてもらい、生きがいを見いだしてもらえるようにしたいものです。また、老人ホームと保育所等の一体経営などが今一部で行われておりますが、こうした試みを積極的に全国展開するような措置がとれないものでしょうか。  高齢者が生きがいを持って暮らせる社会づくり、それによって健康寿命を高めるような政策を進めていただくようお願いするとともに、こうした政策に関する御認識をお聞かせをいただきたいと思います。  介護保険制度については、さきの通常国会で法改正が行われ、要介護状態になることを回避する予防重視型システムへの転換、食費など施設給付の見直し、介護サービスの質の向上などが図られました。同時に、財政状況を勘案しながら、給付の効率化、重点化が進められるのも承知をいたしております。ただ、少子高齢化が急激に進む我が国においては、介護保険制度は、国民の声を聞きながら常にチェックと見直しを行っていかなければならないと思っております。  介護保険の保険料を支払う者の範囲拡大と保険給付を受ける者の範囲拡大も検討課題ですが、高齢者の健康増進に資する政策を充実させつつも、手を尽くした結果、それでも介護が必要となった高齢者については手厚い介護を行わなければならないと思います。介護保険の更なる見直しについて、御認識をお聞かせいただきます。  次に、教育の問題についてお伺いをいたします。  子供たちを取り巻く教育環境として、まず家庭があり、学校があり、そして地域社会、この三つがあります。この三つの機能が有効に機能し合ってこそ健全な教育環境の基盤が形作られるものと私は思っております。  しかし、現在、学校だけにその教育を任せてしまっているような風潮があります。学校が家庭や地域から教育を奪ったのか、それとも家庭や地域の教育力が低下したから学校に教育を押し付けているのか、あるいはその両方かもしれません。いずれにしろ、教育のすべてを学校だけに任せようというのは根本的な誤りであり、その誤解が学校の現状を混迷化させている一因ではないかと考えます。  子供たちは、地域の大人に指導されることが少なくなり、違う年代の子供と遊ぶことも少なくなりました。そのため、目上の人に対する礼儀や年下の子供に対するいたわりといった社会性を学ぶ機会が減少しております。  教育基本法の見直しが、自民党と公明党の教育基本法改正に関する検討会などで議論されてきました。ここでの議論について、仄聞するところでは、次の通常国会に教育基本法の改正案が提出されるところまでまとまってきたと聞いております。改正の内容に関して特に私は重要だと考えるのは、自分自身を愛し、そして人を愛する心、そして国を愛する心をいかにはぐくんでいくかということにあると思います。  教育基本法改正についてどのようなお考え総理は臨まれるのか、またこの国を愛する心についてどのような御認識なのかを聞かせていただきたいと思います。  鉄は熱いうちに打てと申しますが、人生において熱いうちというのは、正に幼児から児童にかけての期間であるということから、私は特に初等教育、中でも幼児教育を重視してきました。これまでも幼児教育の振興、幼稚園の就園奨励費の充実、学校や家庭における食育の推進に取り組み、弊害が目立ち始めたゆとり教育からの転換を主張してまいりましたが、心身ともにたくましい子供をはぐくむための環境整備は早急に進めなければならないと考えております。  子供の体力の低下は、学力の低下よりも深刻な問題だとの意見もあります。学力と体力を関連付けてみますと、両者は同じようなカーブを描いて下がってきているとの見方もできるのではないでしょうか。  私たちが育った時代、それは、社会環境が自然とたくましい子供を育ててきたところがありました。ところが、今やそうした社会環境がなく、スポーツなど体を使う活動を強化することをしなければならないと思います。子供の体力増強を図らない限り、将来大変なことになるという危機感を持っております。  人間の基本を形成する上で最も大切な時期の教育、つまり幼児教育、初等教育の重要性をどのように認識しておられるのか、そしてスポーツ、体育を通じ、心身ともにたくましい子供を育成していくためにどのような政策をしていくお考えなのか、お伺いをいたします。  最後になりますが、私は、スポーツを通じ、夢を持って努力すれば必ず報いられるということを学んできました。中国の古典、後漢書に、「志は易きを求めず、事は難きを避けず」、この名句があります。いったん志を立てたなら簡単に妥協せず、また何か事を起こそうと決意したら困難を避けずぶつかっていくという意味であります。  夢が持てない、全く夢が持てない、そんな時代と言われておりますけれども、私は、この二十一世紀の時代こそが、だれもが夢を持って生き生きと暮らし、優しさと真心が社会の隅々まで行き渡る国づくりを目指すことをお誓いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  27. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 橋本議員にお答えいたします。  過疎地の郵便局及び貯金・保険サービスの維持についてでございますが、国民の間に、過疎地の郵便局がなくなるのではないか、また郵便局で貯金や保険が扱われなくなるのではないかという不安が存在しているのは私も承知しております。  これらの点について、法案においては、まず、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務付け、さらに省令において、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定することとしております。また、代理店契約の義務付けや基金の設置、さらには株式持ち合いによる一体的経営を可能とすることなど、民営化後も郵便局において貯金、保険のサービスがしっかりと続くよう、実効性のある仕組みをつくっております。  これらにより、国民の貴重な資産である郵便局ネットワークをしっかり維持するとともに、郵便局における金融サービスの提供を確保し、万が一にも国民の利便に支障が生じないようにいたします。  北方領土問題につきましては、日ロ関係における最大の課題であります。  政府としては、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結するとの基本方針の下に粘り強く交渉を進めるとともに、日ロ行動計画に基づき幅広い分野で両国間の協力を進め、プーチン大統領の訪日及びその後の交渉につなげていきたいと考えております。  イラク支援の在り方についてですが、今後のイラク支援につきましては、民間の活動が可能となる環境の醸成も視野に入れ、資金協力、自衛隊による支援等を適切に組み合わせながら、日本にふさわしい活動をしてまいります。  現在の基本計画における派遣期間終了後の自衛隊対応につきましては、国際協調の中で日本の果たすべき責任イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を踏まえ、日本国益を十分に勘案して判断すべきものと考えます。  テロ特措法延長につきましては、これまで我が国テロ特措法に基づき自衛隊の艦船による補給等を実施してきており、各国から高く評価されております。米国同時多発テロによってもたらされたテロの脅威は依然として存在しており、我が国としてもこれを除去するための国際社会の取組に引き続き積極的かつ主体的に寄与していく必要があることから、同法の延長が必要と判断したものであります。  子育て支援についてでございますが、橋本議員は、現在、幼いお子さんを抱えながら国会活動を展開されておりまして、敬意を表します。子育て真っ最中、子育て支援については正に最も切実な関心の強い問題であると承知しております。  昨年末に、若者の自立、働き方の見直し、地域のきめ細かな子育て支援など幅広い分野で施策内容や目標を提示した子ども・子育て応援プランを策定したところであり、これに基づいた取組を積極的に進めてまいります。  あわせて、プラン等に示されたとおり、社会保障給付について大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図ることは重要であり、現在進められている社会保障制度全般についての一体的な見直しにおいても更に検討を進めてまいります。  高齢社会対策でございますが、高齢者が生きがいを持てる社会をつくるために、他の世代とともに社会の重要な一員として社会参加をもっと考えるべきだと、同感であります。これは、今後ますます長生きできるような時代にしていかなきゃならない、さらに高齢者の経験なり見識を生かしていく、そういう社会参加ができるような環境をつくることが重要だと思っております。  国民が健康で自立して暮らすことができる健康寿命の延伸を目指し、平成十七年度から健康フロンティア戦略を重点的に推進しております。  介護保険の見直しでございますが、今回の制度改正においては、今後の高齢化が進んだ社会においても、介護保険制度が将来にわたり持続可能なものとなるように、思い切った給付の効率化、重点化を行うとともに、介護予防や認知症への対応を図るため、新たなサービス体系を構築することとしたものであります。  まずは、制度改正の着実な実施に努めるとともに、今後とも、高齢者の生活の実態、高齢者を取り巻く地域状況国民の声を踏まえつつ、必要な見直しを行ってまいります。  教育基本法についてでございますが、教育について様々な課題が生じていますが、教育基本法に関しても、根本にまでさかのぼった見直しが求められていると考えております。また、個人の尊厳などの普遍的な理念は今後とも大切にするとともに、自らの国や地域の伝統・文化について理解を深め、尊重し、郷土や国を愛する心をはぐくむことは重要であると考えております。  教育基本法の改正につきましては、中央教育審議会答申や与党における議論を踏まえ、国民的な議論も深めつつ、積極的に取り組んでまいります。  幼児教育、初等教育についてでございますが、これは単に学校、幼稚園、保育園にとどまらないと思っております。一番大事な家庭、親子との関係、学校、地域、そして勉強するだけが教育じゃありません。よく学びよく遊べという昔からの言葉がありますように、地域や家族や学校や、全体で子供成長を祝い、願う、こういう環境を全体でつくっていく必要があると思います。  また、体力の低下を心配されておりますが、これについては食事の重要さ、これについてもしっかり日ごろから家庭でも学校でも、食事の楽しさと同時に、食事が体力をつくるという、食育、この重要性も十分に考えていかなきゃならない問題だと思います。  一番幸せは家族そろって食事をする、これをやっぱり子供だけでなく親も子も考えていく必要があるのではないかと思っております。幼児教育は同時に親の教育でもあると私は考えております。(拍手)     ─────────────
  28. 扇千景

    ○議長(扇千景君) 神本美恵子君。    〔神本美恵子君登壇、拍手〕
  29. 神本美恵子

    ○神本美恵子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、総理及び関係大臣に質問をいたします。  私は議員になる前、長年、小学校の教員を務めておりました。そこでつくづく感じてきましたことは、政府子供と学校現場の現実を余りにも知らないということです。総理は米百俵の話を好んでされますが、この四年間、郵政民営化を始めとする行財政改革にかまけて総理が教育に力を入れてきたとはとても思えません。所信演説でも、教育のキの字もありませんでした。  今、教育現場が抱える困難は多岐にわたり、深刻化しています。先般公表された昨年度の全国公立小学校における校内暴力は、過去最悪の千八百九十件に上りました。また、教育現場のみならず、子供虐待、少年犯罪、子供買春などの社会的な問題、約二百十三万人を超えるフリーター、約六十四万人のいわゆるニートの問題など、子供一人一人が抱える問題の背景には、子供を取り巻く環境の激変、社会構造や生活形態の変化があります。  親の生活や価値観多様化する中、昔と比べて地域社会と家庭との関係は希薄になり、例えば担任教師が、朝子供を迎えに行き、朝食をつくって食べさせて学校に連れてくるなど、今まで家庭や地域で解決してきた課題が学校に持ち込まれています。その根底には、国民の暮らしを無視し、生活不安、将来不安を増大させてきた小泉構造改革があります。これが本当の改革と言えるでしょうか。  まずは、直接子供と向き合っている保護者や教職員が心にゆとりを持って一人一人に向き合い、このような困難にきめ細かく丁寧にかかわり、充実した教育ができるような環境整備が政治の使命ではないでしょうか。総理はこういった現状をどのように認識し、どう対応しようとお考えか、お聞かせください。  次に、教育基本法についてです。  今述べたような子供や教育の現状に対して、子供が事件を起こすのは戦後教育が間違っていたからだ、そのもとになっている教育基本法を変えなければならないと、事件が起こるたびに乱暴で極めて政治的な自民党議員の発言もあります。民主党は、教育基本法については国家百年の大計に備える大事であると考えます。  教育基本法は、その前文に日本国憲法の理想の実現は教育の力にまつべきものであるとうたわれているとおり、個人の尊厳を基本とする人権の尊重、平和と民主主義を担う主権者の育成を柱とする憲法と密接不可分の法律です。  日本PTA全国協議会のアンケート調査では、八八・八%の保護者が教育基本法についてよく知らないと回答しています。また、四七・六%の保護者が議論した上で改正すべきかどうか考えるとも回答しています。日本の教育の在り方の根本を決める教育基本法について、更にその改正が必要か否かを検討するに当たって、中央教育審議会や与党による協議のみでなく、公開の場で国民的な論議を行う必要があることはこのアンケート結果からも明らかです。  憲法と密接な関係にある法律ですから、例えば国会に教育基本法調査会を設置して、公開の場で様々な角度から論議すべきであると考えますが、総理見解をお尋ねします。  戦後の日本社会の復興と発展を支えてきたのは、我が国の教育システムであることは紛れもない事実であります。とりわけ、人生の早い段階で人間形成の基礎を培うことになる義務教育については、日本全国、どんな家庭に生まれても、どんな地域に育っても等しく無償の教育が受けられるという日本の義務教育制度が果たした役割は重要です。  一方、社会構造の変化に伴う様々な問題に直面している学校教育に対し、国民信頼が低下していることも否めない事実です。問題が起こるたびにくるくる猫の目のように変わる教育改革ではなく、今こそ国民信頼を回復し、直面する課題解決に向けた抜本的な義務教育改革に取り掛かるべきではないでしょうか。  昨年末の政府与党合意では、義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとされ、現在、中央教育審議会において議論されており、秋には答申が出されることになっていると聞いています。  そこで、総理にお聞きします。教育、とりわけ我が国の土台を築く義務教育の在り方全般について、今後どのような方向で改革を進めることとなさっているのか、そのお考えを改めてお聞きいたします。  OECDの調査によると、初等中等教育における日本の教育機関への公財政支出・対GDP比は、OECD平均の三・五%を下回るわずか二・七%にとどまっています。このデータを見る限りにおいては、日本の教育、とりわけ初等中等教育への財政投資は世界的にも決して高いものではありません。日本がGDP比率で教育への公財政支出が低いのは日本のGDPが極めて高いからだなどという意見も聞かれますけれども、それは間違った認識だと思います。GDPが高ければ高いなりに教育への公財政支出を上げればよいことではありませんか。より一層の財政支出を行うことにより、一層の個性豊かな人間の育成と社会発展が期待できるのではないでしょうか。  国際化する未来社会において日本子供たちがたくましくともに生きる力をはぐくむため、教育、とりわけ義務教育への投資を惜しんではならないと考えますが、文部科学大臣の見解をお聞かせください。  次に、男女共同参画と少子化対策についてお尋ねします。  一部で声高に、女が外で働くから子供が生まれなくなったと言われた時期がありました。先日、内閣府から少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較の報告が出されました。これによると、日本は他の先進国に比べ仕事と子育てが両立しにくい社会環境にあるという結果が出ています。特に、日本の男性の家事、育児の関与などがOECD二十四か国中最も低く、家庭責任の負担が女性に著しく偏っているというものです。少子化対策や子育て支援というのであれば、保育所の充実や子育てサポート事業ももちろん必要ですが、何よりも男性は仕事、女性は家庭などの固定化している性別役割を社会全体で払拭する男女共同参画の推進が不可欠であると考えます。  男女どちらもが仕事も家庭責任も果たせるような、つまり男性の長時間労働解消、育児・介護休業の取得促進、女性の安定雇用の確立、男女の賃金格差是正など、ジェンダー平等の視点での働き方の見直しや多様な家族の在り方を認める制度を整えていかなければ、日本の少子化に歯止めは掛からないでしょう。  また、国連開発計画が発表するジェンダー・エンパワーメント指数でも日本は大きな後れを取っています。国際的共通課題となっているジェンダー平等の推進も重要な課題です。  このような日本の国際的に恥ずかしい状況をどうとらえ、少子化対策に不可欠な男女共同参画社会推進にどう取り組まれるのか、総理見解をお聞かせください。  二十一世紀は人権の世紀と言われ、あらゆる差別の撤廃とすべての人の人権確立の努力が続けられています。しかし、我が国では、刑務所や入国管理施設における公権力の濫用、同和問題を始めとする差別や子供虐待、女性への暴力などの人権侵害が後を絶ちません。  しかも、人権侵害被害者が迅速に安心して救済を受けられる制度が確立していないため、多くの被害者が泣き寝入りを余儀なくされています。例えば、セクシュアルハラスメントの被害者は、強姦、強制わいせつといった犯罪の被害者であるにもかかわらず、訴えることができず退職に追い込まれています。DV被害者は、警察の統計によれば、三日に一人の女性が夫によって殺害されているという状況にあります。(発言する者あり)夫によってです。こうした実態は、女性に対する暴力が人権侵害であることすら認められていないからではないでしょうか。人権侵害救済機関の設置は喫緊の課題であります。  これについて日本は、七年も前の一九九八年に国連国際人権自由権規約委員会から、独立性を確保した人権侵害救済機関を設置するよう勧告を受けているのです。  にもかかわらず、さきの通常国会も、自民党内の反対意見により小泉総理は指導力を発揮しないまま法案提出が見送られてしまいました。自民党のマニフェストでも本気さは全く感じられません。人の命と人間の尊厳が踏みにじられているのです。  民主党は、かねてより国内人権侵害救済機関の設置について積極的に取り組んでおり、さきの通常国会に人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案を提出しました。法案は実効性と独立性を確保した救済機関の設置などを定めるものです。早急にこの法案を成立させなければなりません。  政府与党は、いつまでにどのような人権侵害救済機関をつくる考えなのか、小泉総理見解を伺います。  以上、教育を中心に質問をさせていただきました。  私たち大人のだれもが願っていること、とりわけ保護者、保育者、教職員、施設やNPOなどで子供と直接向き合ってサポートしている人々が求めているのは、子供たちが笑顔を輝かせながら自らの力で未来を切り開いていってくれることです。そのために政治は何をしなければいけないのか、また何をしてはいけないのか。  現在の子供たち状況は、大人による子供への支配強化や伝統・文化の押し付け、国家意識の高揚などで乗り切れる事態ではありませんし、やってはいけないことです。虐待、子供買春など大人社会のひずみの中で子供の人間としての尊厳がいかに傷付けられているか、なぜ独りぼっちで見捨てられているのか、健やかな成長が阻まれているこの現実を真剣に見詰め、すべての子供が大切にされる社会をつくることこそが政治の役割ではないでしょうか。  子供たちを大切にするということは、子供たちを育てる人たちをサポートすることでもあります。子育ても教育も、子供の力を信じ、大人の権威を振りかざすことなく、大人自身も子供からエネルギーを受けながらともに成長していく信頼関係が必要です。  民主党は、米百俵や子供社会の宝、国の宝などお題目を唱えるのではなく、子供の育ちと教育を社会の中心課題に据え、すべての施策に子供を最優先するいわゆるチルドレンファーストで最善の環境づくりに全力を尽くしてまいります。  最後に、子供たち、いわゆるチルドレンは決して権力に支配される存在でもなく、やゆの対象でもないということをあえて総理に申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
  30. 小泉純一郎

    内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神本議員に答弁いたします。  教育の現状認識とその対応でございますが、現在、学力の低下や校内暴力の発生といった我が国の教育の現状、これは憂うべきものであると思っております。深刻に受け止めなきゃいけないと思っております。  今日の日本発展、これは教育に負うところが多いと思います。資源のない日本がなぜこのように発展してきたか。これは教育を重視してきたからだと思っております。わけても、これから将来を担う子供たち、正に社会の、国の宝であります。これからも充実した教育環境の整備に引き続き精力的に取り組んでまいります。  教育基本法についてでございますが、これは根本にまでさかのぼった見直しが求められていると考えておりますが、国民的な議論も必要であります。  この教育基本法について国会でどのような調査会を設置するかということでございますが、国会でどういう調査会を設置しなきゃならないかということについては、各党で十分協議をしていただきたいと思っております。その国会の判断を尊重したいと思います。  義務教育改革の方向でございますが、国は教育というものに対して常に国政上の最重要課題と位置付けております。全国的な教育の水準確保、そして機会均等についての責務をしっかりと担っていかなきゃならない問題であります。地域や学校、この創意工夫を生かせるように、教育の地方分権を進めて、市町村や学校の裁量を拡大することも重要ではないかと考えております。  現在、中央教育審議会において、義務教育の在り方全般について国民各層の幅広い意見を聞きながら審議が進められておりまして、本年秋に得られる結論に基づき、義務教育改革に精力的に取り組んでまいります。  少子対策と男女共同参画の推進でございますが、これまでも我が国においては少子化対策に取り組んできたものの、いまだ子育てと仕事の両立には多くの困難がある状況だと認識しております。男女共同参画の推進、少子化対策と軌を一にするものでありまして、今後ともこの問題について積極的に進めてまいります。  人権救済制度でございますが、自民党は今回の総選挙に際し、政権公約において、簡易・迅速・柔軟な救済を行う人権救済制度の確立を公約しております。政府与党内で更に検討を進めまして、人権侵害被害者の実効的な救済を図ることを目的とする人権擁護法案をできるだけ早期に提出できるように努めてまいります。  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中山成彬君登壇、拍手〕
  31. 中山成彬

    国務大臣(中山成彬君) 義務教育への投資についてのお尋ねであります。  教育に対する公財政支出につきましては、諸外国の状況を十分踏まえて検討していくことが必要でありますが、単純な比較は困難な面もあると考えております。  いずれにいたしましても、教育は国家社会存立の基盤であり、特に義務教育につきましては、国が責任を持って充実を図ることが極めて重要であると考えております。  来年度概算要求に当たりましては、全国的な学力調査の実施、学校評価システムの構築、第八次教職員定数改善計画の策定、実施など、義務教育改革を推進するための各般の施策を盛り込んでおるところでございます。  今後とも、必要な教育予算の確保と義務教育改革の推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)
  32. 扇千景

    ○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十分散会