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尾立源幸君 様々な
会社の性格や、また
風土や
経営者の資質、
内部統制という
言葉が出てきましたけれども、そういったものをいろいろ勘案しながら
監査をやっていかなければいけないということだと思うんですが、その中で特に
内部統制の問題について少し議論を深めさせていただきたいと思います。
内部統制、それは何ですかとよく聞かれるわけでございますが、基本は
一つの
仕事を二人で
チェックすることであると、簡単に言えばそういうことだと思います。例を挙げるならば、例えば同窓会の会費を集めたと、その
お金の
管理、支出の
管理を一人でやるとどうも不安だなというときに、二人でそれをやり合うと。こういったことが初歩的な
内部統制といいますか、お互いの
仕事を
チェックし合うというのがこのことに当たると思いますが、そこで、
皆さんにちょっとお配りをしております
資料の一ページを見ていただきたいと思います。
実は、これは古い
内部統制、新しい
内部統制というような
言葉が出てきていると思いますが、左の方からちょっと簡単に
説明をさせていただきたいと思います。
御
承知のとおり、
経営者は大きな
企業、
会社をコントロールするのに隅々まで
自分ではもう見れないわけでございますよね。そこで、
企業組織の中に
内部統制、つまり自動的に不正や
過ちが
チェックできるような
システムを組み込むということを考えます。これが左側の図でございます。
しかしながら、
経営者自身が不正を行った場合は、この例えば
チェックシステムを
自分で簡単に破ることもできますし、正に
自分の不正を
チェックする
内部統制を組み込まないような場合もあろうかと思います。こういった
企業を
相手に
監査をすると、非常に
リスクがあるといいますか、適正な
監査ができないというふうに私は感じております。
そこで、今必要なことは、
経営者自身が行う不正までもきちっと自動的に
会社の中でコントロールできるような、牽制できるような、そんな
内部統制というものが今求められているんじゃないかと思っております。それが右の図でございます。
経営者までも含んでコントロールできるような、そんな
システムをこれからきちっとつくっていかなければならないのではないかと思っております。
例えて言いますと、
飛行機の
操縦を考えていただきたいんですけれども、原始的なセスナ機でございますと、
パイロットが隅から隅まで全部
自分で
チェックをして、
離陸から
着陸まで全部常に神経をとがらせておかないとこの
飛行機はうまく飛びませんが、例えば高度化されたハイテクの
ジャンボ機なんかは、まあ
離陸と
着陸のときだけ
パイロットが
操縦をすれば、後はほとんど自動で飛んでいくと。しかしながら、その
前提として、
パイロットは
ジャンボ機のことをよく知っていなきゃいけないと、多分こういうことになろうかと思います。こういうとき、もし
経営者に何かが起こっても
飛行機は飛び続けるわけでございますが、セスナの場合はすぐ墜落をしてしまうと、こんなふうに私は考えております。
そして、
監査人は、当然こういったいろんなタイプの
企業風土がございます、
内部管理体制がございます。その
相手相手によって
仕事の、
監査の仕方を変えていかなければならないというふうに思うのが下の図でございまして、ちょっと足し算みたいなのが書いてございますが、例えば左の図で、
内部統制が非常に悪くて、そして
監査人の時間、行う量、質ともに悪い場合は、有効な
監査が行われることはまずあり得ません。しかしながら、右のように、
内部統制が非常に良好でございまして、その
前提の上に
監査人が時間をある程度絞っても、
前提が非常にいいわけでございますから有効な
監査ができるんではないかなと、こんな私は
相関関係があるというふうに理解をしております。
しかしながら、今回の
カネボウの件は正にこの左のパターンでございまして、
経営者自身が自ら
粉飾に手を染めた、それで、これもまだ最終的には結論は出ておりませんが、それを
チェックすべき
監査人自身もこの不正に、
粉飾に手をかしたというふうな報道がなされております。
そこで、いかに
粉飾が行われたかを少し
皆さんと
事象別に取り上げて確認をしていきたいと思います。
今申し上げましたように、今回の
カネボウ事件の特徴は、
経営者と
監査人が共謀して
粉飾を行ったということでございますけれども、そういった意味で
監査人がこの
粉飾を見逃した
責任は大変重いと思っております。特に、
担当会計士のみならず、それを監督すべき
監査法人自体が、なぜ
自分たちの職員といいますか、
従業員がやった
監査を
チェックできなかったのかと、こういったところにも非常に問題があるわけでございます。
そこで、当時、
粉飾決算が明るみになったときに
中央青山の
内部調査がこのように言っております。
カネボウが単独で行ったという
報告をまずされましたけれども、その後、なぜかよく分からないんですが、五月二十日付けで同じ
中央監査法人から
金融庁に提出された
内部調査報告書では、
会計士が実はかかわっていたというような
報告がなされているというふうに聞いておりますが、
金融庁、いかがでございますでしょうか。