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参考人(
和田章君)
和田と申します。
今日は三種類の資料を用意させていただきました。ニュートンというのは竹内先生という方が作られて、もう亡くなられましたけれ
ども、その後も続いている本でありまして、ちょうど今回、偶然にというか、これは地震の特集を計画されていて、巻頭の四ページから七ページにわたって今回の事件のことなど、この記者の方と一緒に書きました。ほかに地震
関係のいろいろ、津波のことですとか超高層ビルのことですとか分かりやすく書いてありますので、先生方にプレゼントということで持ってきました。
それからもう一つ、ブルーの表紙のは、我々、
建築技術
支援協会というNPOもやっているんですけれ
ども、去年の三月に福岡で大きな地震がありまして、それほど大地震ではなかったんですが、この三ページに写真があるように、
マンションの入口周りの壁がたくさんひびが入って部屋の中に手が突っ込めるような
状態、それからドアが開かなくなってしまうとか。それで、この住人の方が国交省に、これで今の基準なのかって、これできてまだ数年の新しい
建物なんですが、この
程度は今の日本の
建築基準法の最低基準は満たしていて、別にこれでいいんだというような御回答で、私も今のルール上はそうだと思って、国交省の言われていることに間違いはないと思うんですが。要するに、こういうことが市民にちゃんと伝わっていなかったということの方が問題だと思っているわけです。
ということで、我々の協会には、今、昭和二十五年に
建築基準法が制定されたということが
最初に
お話ありましたけれ
ども、そのときに国交省に入って、まだ御健在の八十幾つの方がいるんですけど、その方も我々のメンバーに入っていまして、こういうことは大事じゃないかということでお会いしてくれました。それで、要するに市民向けにこういう耐震というのはどうなっているかを書いたものです。ただ、偶然にこれを、十一月の十八日に、ある会場を借りて講習会やっていたんですが、やろうとして、そうしたら前の日にこのニュースが入ってきまして、NHKとかTBSとか取材も入って大勢人も集まったことになります。
こういうことをもっとやっていかないと、先ほ
ども住民の方の責任もないわけじゃないじゃないかという、確かにだれが
設計してどこが造ってちゃんと管理しているのか、どこが審査したのか、そういう前にまず耐震
設計ってどうなっているのかって、こういうことをだれも今までやってこなかったというのが不思議なぐらいです。
それで、今日、私が用意さしていただいたこの五ページの、これを朗読するつもりはないんですけれ
ども、タイトルとしては「現代文明社会と
建築構造物の
耐震性確保」ということで付けさしてもらいました。私、今は
東京工業大学におりますが、日本
建築学会に、
構造関係の鉄筋コンクリートや鉄骨
構造、いろいろな
委員がたくさんいる
委員会があるんですが、そこの
委員長を務めておりまして、その肩書二つ書かしてもらいました。
先ほど、始まる前に、この
委員会は事故の多い
委員会だなとかってどなたか先生がおっしゃっていましたけど、この現代文明を支えるのはやはり科学技術で、今回の
姉歯さんみたいな人が来ると、みんな便利な豊かな社会、ある高いポテンシャルの
状態にみんなで保っているわけですけど、そこに穴が空いたらぼろぼろこぼれちゃうわけですね。で、この豊かな便利な社会を守るには、やはりその技術も進めませんといけないですし、人の教育も、それから仕組みもしっかりしていないといけないと思うんです。
それで、余り前置きばっかりしてもいけないんですが、私の好きな言葉に、
建築には、二千年前の
建築家が言ったんですけ
ども、強、強さですね、用は使いやすい、美は美しい、この三つがなければ
建築じゃないと言っているわけです。強が、強くなければ、例えばこの今、会館が、これがみんな入ってきて床が落ちるようじゃこんな
委員会もできないわけですから、まず強くなければ用は足さない。で、強くて、よく使いにくい
建物ってあるんですね、入口入ったらどこがトイレだか分かんないとか、エレベーターがどこにあるか分かんない。強と用、要するに強くて使いやすくなければ、美しくたってただ形だけだっていう、だけ
ども美しくなければ
建築とは言わないということなんです。
それで、ですから、
建築基準法とか何かに事細かく書き過ぎだと私は思っているんですけ
ども、そのとおりやれば何かができるというような法律にはなってないわけです。もしそんな法律作ったら、共産主義みたいになってしまって、だれがやっても同じ
建物しかできない、そんな法律作っても意味ないわけです。
もう一つの難しい点は、例えば自動車産業に比べて
建築は後れていますねと、よくそういうことを言われるんですけど、自動車は買ってきて走らしてみればちゃんと走るかどうか分かるんですけど、耐震だけは、もし、この国会議事堂と関東地震、どっちが古いか分かりませんけど、まだこれが大丈夫かどうかは分かんないんですね、来てみないと。それを試しに揺すってみるっていったって、先週、六階建ての
建物を震動台で揺するのをやりましたけど、日本には七十階建てのビルが建っているんですから、それを試しに揺すってみて、ああ、やっぱり大丈夫だから造ってみようというわけにいかないわけですね。そこの、今日はここは
国土交通委員会ですから賛成してくださると思うんですけど、元通産省のグループなんかだったら、何
建築やっているんだというふうなことを言われてしまうかもしれないと思うんです。
そういうことで、じゃ計算で何でもできるか。今、
榊原先生もそんなことないんだって。法隆寺ですとか東大寺とか、そんなコンピューターのない時代に造ったものがちゃんともっているわけです。ですから、まず造る人、今でいえば
建築家、
構造設計士、そういう人が、地震が来たときどうなるか、そういうことをイマジネーションを働かせて、それで
図面をかいて、で計算は、まあ計算してみたらやっぱり大丈夫でしたぐらいの位置付けで考えていただきたいんです。
それで、じゃ、人によって答えが変わるのはなぜかってテレビでもさんざん聞かれたりあるんですけど、税金の計算で来年から特別控除がなくなるからといえばみんなぴたっとなくなるんですけど、そういうような数字だけの話をやっているんじゃなくて、
建築というのは、触ればそこに物体がある、そういうものをやっているわけですし、もし長年もてば文化にもなるような、そういうものをやっているわけですから、帳簿を付けるようにいかないのかということだけはやめてほしいと思うんです。
それで、耐震
設計というのはプログラムを使えばできると思っていらっしゃる方が多いかもしれませんが、そう簡単なものではなくて、一九二三年に関東地震がありました。それで、その次の年に市街地
建築物法というのができまして、これは、東大を卒業されてその後早稲田大学に行かれた内藤多仲先生という方が関東地震の次の年に書いた耐震
構造論ということですが、こういうふうに八十年ぐらいの歴史がある学問なんですけど、そうだれでも簡単にできるものではないわけです。
それで、河野一郎
建設大臣のころに三十一メーターの制限が外されて超高層ビルができるようになったんです。そのときもうコンピューターは非常に高いものでしたから、あるハイレベルな人たちだけがやっていた仕事なわけです。
それで、八一年に新耐震
設計法というのができまして、この法律が変わったのは、一九六八年と七八年に東北地方を襲った地震で
建物がいろいろ壊れたからということです。
それで、一応その法律のところで、六十メートルまでは普通の一級
建築士で特別な審査を受けなくても普通の確認申請でいいという法律になったんですけど、急に三十メーターまでの制限だったのを六十にして、ほっといたら危ないということで、日本
建築センターとかいうのが
東京、それから日本
建築総合試験所というのが大阪にあって、三十メーター、まあ場合によっては四十五メーターを超える
建物は、先ほど
榊原先生が紹介になったような
専門家の
委員会の席で
図面を広げて、こういう
構造をやりましたと、じゃ君、ここはどうなっているんだと、そういうことをやって物を建てたわけです。もし今回も三十メーター以上の
建物にそういうことがちゃんとされていれば、国が五十億円もの出費をしないで済んだんだと思うんです。
それで、問題は、そういうこの先端だとかできる人たち、それと、本ができたりマニュアルができたりプログラムができたりしますと、そこまで厳密な審査しなくても僕たちにもやらせてほしいということで、だれにでもできるようにすそ野に技術を広めちゃったわけですね。それで、できない人がやって、分かっていない人が審査するということが蔓延してしまって、
構造設計はコンピューターがしてくれるものだと、計算結果は国が認めたプログラムだからいいんだろうということでだれも見ない。この先ほどの
榊原先生の指摘に同感なんですけど、もうそろそろプログラムの認定はやめたらどうかと思っています。
それで、ピアチェックという言葉は、我々NPOでも、それからいろいろテレビの放送でも、いろいろなところでアピールさせていただいているんですが、実は、さっき言いましたように、八一年に法律が変わって六十メーターまでが普通にやっていいとなったときに、もう既にそのようなことはやっていましたし、今でも六十メーター以上の超高層ビルは特別な審査を受けてやっています。ですから、私の
提案としては、二十メーターぐらいまではまあ今までのやり方である
程度事務的にやっても仕方がないかなと。二十メーターから六十メーターは、その八一年に新耐震ができたころにやっていたように、やはり
専門家のいるところに持っていって
図面広げて、どういうつもりでこれを
設計したのかというようなことを議論する場をつくったらいいと思うんです。それから、六十メーター以上、まあ今は三百メーター近い超高層が建っていますが、それは今までどおり、大学の先生や
民間の中でもできる人が集まった
委員会でやったらいいと思うんです。
そういうことにしますと、今、先生方御存じだと思うんですが、
建築基準法施行令、それから告示、そういうのを全部集めた本が二分冊で出ているんですけど、この本の幅と高さが同じぐらいあるんですね。もうそれを買われる方全部理解して、ああそのとおりやっていますかなんてとても言えない。
専門家でも全部読んだ人はいないんじゃないかと思うぐらい。ですけど、この審査する方に専門の方が見るようにやっていけば、法律はもっと単純でいいわけですね。五十年に一度の地震にはひび入んないでくださいね、百年に一度はちょっとぐらいいいですよとか、それはやっぱりそういうふうにできてますね、いいですねということをやっていけばいいわけです。
そういうことをするためにも、やはり
構造の
専門家の方、まあ一級
建築士のうちの三%という
お話が
宮本先生からありましたけど、約一万人ぐらい、まあ今そういう方がやるもんだということを国家資格でもきちっとやっていただきたいと思うんです。今はパソコンで計算が、最近の話題になるようにできるようになっていますから、できる
建築家の方だったらアルバイトの学生連れてきてちょっとマニュアル読んだら形の上ではできちゃうわけです。そういうことができないようにすることが必要だと思うんです。
それから、私は今大学におりますから、教育の問題が大事だと思うんです。工業高校や大学、大学院でやるんですけど、そのたった四年間や六年間の教育で五十何歳までの将来の技術の発展、全部先に教えるわけにいきませんから、やはり
専門家をちゃんとやって、その何年ごとに講習や講義を聞いているかという継続研修が要るんですけれ
ども、それじゃ何か先生の話を聞いてきましたって判こもらって点数、それでいいかというとそうではなくて、やっぱり先輩の下に付いて、若い
構造設計者はおまえ何やってんだということで教育を受けて育ったり、先ほど言いましたピアチェック、私も今超高層の
委員やってんですけど、そんなちゃんとおまえやったのか、やったやつ連れてこいというぐらいな、窓口天皇になってはいけないんですけど、そういう場面でこんな甘い考えじゃ駄目だなといって本人が頑張って勉強したり先輩の
意見を聞いて学んでいく、そういうそれが一番いいと思うんです。
ただ、やり過ぎになって、あの先生は用もないことばっかり指摘するということがもし町で話題になったらその
委員を首にすればいいので、まあ私はかなりきつく言っている方ですけど、後でどうもありがとうございますって、まあおべんちゃらかもしれませんけど言われています。
ということで、プログラムの大認、大臣認定
制度、私はこの初期に
設計事務所におりまして、こういうプログラムを作りましたし、その後この認定の
委員もやりましたけど、もうそろそろやめたらいいと思うんです。皆さんそれぞれ
事務所に戻られたらカラープリンターとかいろいろ持っていらっしゃると思うので、昔僕らが作ったころは英文字と数字しか打てないプリンターで、それを主事さんのところへ持ってって見てくれというのはいかにも失礼なんで、で前もって大臣の認可を得て、中はちゃんとやってますよということで三十年前は機能したと思うんですけど、今、
姉歯さんたちが使っているソフトは僕らが三十年前に作ったのと同じスタイルなんですね。だけど、もっと今の色を使ったり漢字や平仮名使って、読んで分かる書類にすることは簡単にできると思うんです。逆に大臣の指定なんて要らないんですね。使いやすいソフトはちゃんと売れて使われていくと思いますから。
それで、再計算という話が話題になっていますけど、SF映画でサイボーグとかいろいろありますよね。コンピューターセンターのコンピューターが勝手に動き出して人々がおかしくなっちゃうというような。もし国に一本のプログラムを作って、あのプログラムに通んなきゃ建てちゃいけないなんていうことをやったら、そのプログラムもし作っている人が間違えたり、その作った人が交通事故で亡くなったりしたら、あそこのルーチンどうなってんだって解明するまでに、あのみずほの株の問題じゃないですけど、もし間違えたプログラムを十年ぐらい気が付かなかったら今回の五十億円じゃ済まないんですね。ですから、コンピューターに頼るということを国の方からやめようと言っていただきたいと思うんです。
それから、先ほどブルーのパンフレットをお見せしましたけど、耐震というのはどうなってるのかということをやっぱり市民に知らせる必要があると思うんです。それから、時々テレビでも話題になっていますけど、今回の〇・五しかない、〇・一五しかないというものを取り壊すことになったんですけど、七〇年以前の
設計で、特に壁の少ない、柱とはりだけでできているようなものでもっと危ないのがあります。そのことも忘れないでほしいと思うんです。
最後に、普通、もしそれぞれ今日の先生方、うち帰って家を建てようといったら、もうちょっと安くできないのか、基準法さえ守ってりゃいいよとか。ですけど、皆さんが、国民一人一人がもっと丈夫なものがいいなと思うような社会にしないと、そうしますと孫や子は、子や孫は家を建てないで済むわけですね。そしたらまた別のことにその資産は使えるわけです。
建築を消耗品のように、築何年、だからもう
土地だけの価値だと、そういうことではなくてストックとして考える時代。そして、地震で、中越地震で被害とかありましたけれ
ども、被害のない国をつくれば、みんなの利益、絶対なります。もし
東京に大きい地震来たら百十二兆円と言われているわけですから、是非、
耐震性を向上することによって丈夫な
建物の価値が高まっていくような社会になったらいいと思っています。
どうもありがとうございます。