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2005-10-26 第163回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年十月二十六日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員氏名     会 長         松田 岩夫君     理 事         山東 昭子君     理 事         世耕 弘成君     理 事         野上浩太郎君     理 事         直嶋 正行君     理 事         山根 隆治君     理 事         加藤 修一君                 大仁田 厚君                 岸  信夫君                 小林  温君                 末松 信介君                 中川 雅治君                 二之湯 智君                 水落 敏栄君                 脇  雅史君                 大石 正光君                 大江 康弘君                 大久保 勉君                 工藤堅太郎君                 佐藤 雄平君                 藤末 健三君                 前田 武志君                 浮島とも子君                 澤  雄二君                 大門実紀史君     ─────────────    委員異動  九月二十一日     辞任         補欠選任      脇  雅史君     田村耕太郎君  九月二十六日     辞任         補欠選任      大江 康弘君     郡司  彰君      大久保 勉君     木俣 佳丈君      直嶋 正行君     広野ただし君      藤末 健三君     富岡由紀夫君      山根 隆治君     大塚 耕平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         松田 岩夫君     理 事                 山東 昭子君                 世耕 弘成君                 野上浩太郎君                 大塚 耕平君                 佐藤 雄平君                 加藤 修一君     委 員                 大仁田 厚君                 岸  信夫君                 小林  温君                 末松 信介君                 田村耕太郎君                 中川 雅治君                 二之湯 智君                 水落 敏栄君                 大石 正光君                 木俣 佳丈君                 工藤堅太郎君                 郡司  彰君                 富岡由紀夫君                 広野ただし君                 前田 武志君                 浮島とも子君                 澤  雄二君                 大門実紀史君    事務局側        第一特別調査室        長        三田 廣行君    参考人        東洋学園大学人        文学部教授    朱  建栄君        早稲田大学大学        院アジア太平洋        研究科教授    天児  慧君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○国際問題に関する調査  (「多極化時代における新たな日本外交」のう  ち、日本アジア外交日中外交回顧と今後  の課題)について) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九月二十一日、脇雅史君が委員辞任され、その補欠として田村耕太郎君が選任されました。  また、去る九月二十六日、山根隆治君、直嶋正行君、大江康弘君、大久保勉君及び藤末健三君が委員辞任され、その補欠として大塚耕平君、広野ただし君、郡司彰君、木俣佳丈君及び富岡由紀夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事大塚耕平君及び佐藤雄平君を指名いたします。     ─────────────
  5. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際問題に関する調査のため、本日の調査会東洋学園大学人文学部教授朱建栄君及び早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授天児慧君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本アジア外交に関し、日中外交回顧と今後の課題について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本調査会では、日本アジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、日中外交回顧と今後の課題についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず朱参考人天児参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、朱参考人から御意見をお述べいただきます。朱参考人
  8. 朱建栄

    参考人朱建栄君) ありがとうございます。参議院国際問題に関する調査会にお呼びいただき、誠にありがとうございます。  私、今日ここでお話ししたいテーマですけれども、胡錦濤政権の対日政策日中関係展望についてでございます。  三十分という時間の制約がありますので、まず、この日中関係の全般の脈絡、それから中国の中で起きている変化及び今後の展望についてまず簡単にお話をいたしまして、その後、いろいろな具体的な御質問をいただいて、また討論を深めてまいりたいと思います。  まず一番目ですけれども、現在の日中関係をどう位置付けすればいいかという点でございます。  たくさんの問題が表面化し、互いに親近感好感度も低下しています。しかし、私は、問題がたくさん表面化していますけれども、それは日中関係は前進していると認識しております。現段階の様々な問題も、前進する過程における一中間段階に現れた現象ではないかと思います。  考えてみれば、二十年前まで日本において中国に対する親近感好感度のパーセンテージがかなり高かったんですけれども、しかし、当時の中国の実情について果たして日本で十分に理解があっての親近感だったのかと、私はそうではないと思います。十九年前に日本最初に参りましたけれども、二十年ぐらい前の中国国内政治は、ある意味で現在の北朝鮮に似たような引締めの極めて厳しいものだったんですね。外国人中国で自由に行動する、移動することもできず、中国人自身政治に関する発言もほとんどできなかったんですが、現在の中国においてはこれは大幅に変わりました。  にもかかわらず、なぜいろんな対立が表面化しているかと。それは、関係の急速の拡大に対して相互理解がはるかに追い付かないこと。また、歴史上、日中関係において、今まで片方が強い、片方が弱いというような非対等の関係が長年続いてきたんですけれども、今初めて東アジアにおいて両雄並立という時代になったからだと思います。しかし、双方ともこのような対等な関係に対してどのように扱えばいいのか、相手の今後の行方どうなるかという懸念もあって、今、それぞれで相手への見方が今揺れていると思います。  しかし一方、日中関係はこの二、三十年間の発展の結果、まず経済面で既に切っても切れないようなきずなが結ばれ、一種運命共同体になりつつあると言っても過言ではないと思います。日中両国間の貿易額世界の二国間貿易額において最大規模であり、中国日本にとって去年最大貿易相手国になりました。中国にとっても日本は三番目であります。  一方、貿易関係だけでなく、日中の経済関係双方経済構造にビルトインした、一つの組み込まれたものでもあると思います。日本にとってバブル崩壊後の国民所得が伸び悩む中で、中国からの安い製品が入ることによって日本生活水準は落ちずに保てたということも挙げられますし、ここ数年の日本経済が上向きに向かう景気、いずれも対外輸出、特に対中輸出拡大によってきっかけがつかんだということも言えるかと思います。  一方、中国にとって日本からの投資によって直接的、間接的に九百二十万人以上の雇用をつくり出していますし、中国対外輸出、特に電気製品などにおいては、その中の精密部品はほとんど日本からの輸入に頼っていますので、中国対外輸出が増えれば増えるほど日本からの輸入も増えるというような構造も言えるかと思います。  経済だけでなく、人的交流において、日中両国間に少なくとも二百二十組以上の地方自治体同士姉妹関係交流があります。中国駐在日本のビジネスマン、四、五万人を超えていますし、中国に行く観光客、毎年三百万人以上に上っています。一年以上のビザを有する中国への長期留学者日本人が今少なくとも一万五千人以上います。一方、三十三年前の国交樹立のときに日本にいた中国人華僑、合わせて五万人だったのに対し、現在、既に五十万人を超えています。日本の各大学における留学生の約六割から七割は中国からの留学生であります。  このような経済的、人的、そして文化交流ということはどんどんと進んでいるんですけれども、しかし相互理解が不十分であり、双方交流で密接化する中で利益の衝突も生じていると。それが現在、一方たくさんの問題点をつくり出しているからではないかと思います。  では、具体的に中国国内の事情について少し見てみたいと思います。  四月の反日デモが起きたとき、日本のマスコミの大体の見方は、かつて二十年前の中国に対する見方や旧ソ連に対する物差しで見て、一党支配中国において自由なデモは当然あり得ないわけですから、すべて共産党は裏でやらせたんではないかという見方が当初一般的だったわけですけれども、しかし実際はどうもそうではないということが徐々に明らかになりました。  実は、その背後に、トウ小平さんが始めた経済の改革・開放政策によって中国社会はもう一種地殻変動を起こし、もうかつてでは考えられないような変化社会構造において、国民意識において起きていると。その点、日本で十分に注目されていないというのが問題点ではないかなと思います。  市場経済中国に入ることは、当初は、現政権にとってそれは便宜的に経済活性化のためという意図だったかもしれませんけれども、しかし市場経済という魔物が入ったら、もう中国政治経済国民意識というのはすべて影響を受け、そしてこれから更に市場経済による影響を受けざるを得ない状況であります。  党の教育機関である中国共産党中央党校の副学長李君如さんがこの間訪日して、いみじくも市場経済による中国社会影響についてこう述べました。恐らく、市場経済の導入による中国社会への全面的な影響は、二千年前の儒教思想中国社会に定着した影響に匹敵するものがあると。それは経済にとどまらず、中国社会国民意識、さらに政治にも影響を及ぼしていくものだと。我々共産党も、それに対して拒否するんではなく順応していかざるを得ないというような発言をしています。  実際、経済発展によって中国で収入が全国民において相当増えました。経済構造が変わりました。もちろん、その中で貧富の格差地域格差など問題が生じています。その問題は、今後の中国において真剣に取り組まないと社会の安定に影響を及ぼすものになりかねないということは中国胡錦濤指導部も分かっていますが。  ただ、一方、中国対外行動などを見る上では、その貧困層、まだ中国の中でひとまず御飯が食べられるようになったその層、およそ八億人くらいですけれども、それを見る必要もありますけれども、それ以外の五億人、すなわち中国社会において、この千年、二千年においてかつてない中間層台頭ということを注目もっとしなければならないんではないかと思います。  二〇〇三年末の数字ですけれども、中国生活水準一定余裕、裕福のあるいわゆる中産階級の人数はおよそ人口の一九%で、二億二千万人くらいになったと試算されています。しかも毎年一%ずつ増えています。それ以外、実際の生活水準はそこまで至っていないんですが、もう周りの人に比べれば大分ましだと、かつてに比べれば大分良くなったと、そのような感覚、意識自分社会の中クラスに属する、いわゆる中流意識持ち主、それはほかのアンケート調査で更に二億五千万人ぐらいいるということが分かっています。  実際の生活水準の裏付けのある中産階級プラス意識上の中流意識持ち主、合わせて私は中間層と呼んでいますが、それがおよそ五億人近くに達しているわけですね。これが正に今の中国社会変動対外政策及び中国政治の今後を左右する、決定する一番の要素になっているんではないかと思います。  中間層拡大によって、まず、中国経済において初めていわゆる購買力を有する一つ市場として形成され始めたことになります。一部のお金持ちは、中国の中で本当の購買力、流行、ファッションを形成することはあり得ません。中国でいろんなブランドやいろんな日本製品が飛ぶように売れるというのは、やはりこの中間層が下支えであると思います。  そして、中間層は同時に権利意識に芽生えてきます。彼らは、現在、消費者としての権利を主張するだけでなく、やはり市民としての権利を主張し、そして社会における多くの不条理、理不尽なことに対しても文句を言うようになってきました。官僚、共産党幹部の汚職、腐敗に対する不満地方のいろんな政策に対する不満、それを立ち上がって闘うようになりました。この一、二年間、中国での抗争事件は五、六万件以上に上ると当局自身も発表していますが、それは日本で一部暴動と表現されていますけれども、私は、それはもう食べ物がないから絶望感からの暴動とは思いません。それは主に、彼らが権利意識に芽生えて、法律をもって自分権利を守るために闘い始めた現象だと思います。  もちろん、中国の多くの地方の役人、その対応は封建的で、前近代的なやり方で彼らを弾圧しようとし、結局摩擦ないし流血事件にもなっていますけれども、ただ、全般的にこのような権利意識の向上というのは私はいいことだと、中国社会の進歩の表れだと思います。もちろん、当局としてそれに順応できるかどうか。もし、今までどおりに抑えようとすれば逆効果で、本当に対立が取り返しの付かないものにもなりかねないと思います。  一方、中間層拡大対外的にナショナリズム台頭ということももたらしています。九〇年代半ばごろから、中国で特にアメリカなどに対して頭を下げたくないと、胸を張って対等に渡り合いたいというような意識が出てきました。中国におけるナショナリズム台頭最初のシンボルは、一九九六年、「ノーと言える中国」という一冊の本が出版され、ベストセラーになったことであります。「ノーと言える中国」という一冊の本、その内容の八割は反米でした。  九九年、中国ユーゴ駐在の大使館がアメリカのミサイルに爆撃され、それに対し、今回の反日デモの十倍以上の市民が町に出てアメリカ大使館に投石をし、アメリカ大使館ガラスというガラスが割れ、内陸部の成都にあるアメリカ総領事館市民によって乱入され、物も壊されました。これがナショナリズム台頭ですね。  そのナショナリズムのはけ口が、標的日本に向き始めた転換点は二〇〇一年ではないかと思います。米中間は、その年に起きた九・一一事件によって反テロという問題で協調関係に入ります。その代わり、小泉首相の登場で毎年靖国神社参拝するようになり、それが、このナショナリズムが靖国問題に象徴されるこの日本に向けることになりました。ナショナリズムというのは決して理性的なものではなく、しかも、主に今まで貧困外部のことをほとんど知らない人たち一定余裕を持って、そういう人たち一種行動パターンであるので、なおさらそれが非理性的の側面があるわけですね。  彼らにとっての靖国問題というのは、その本質はほとんど多分分からないと思います。ただ記号化して靖国問題、日本首相A級戦犯を合祀した靖国神社への参拝、イコール日本侵略戦争責任の否定、イコール反中というふうに短絡的に受け止められていると思います。それをもたらした中国サイド政府責任、当然ありますけれども、しかしそれはすべて政府責任というところでは、実は解せないものはあるわけですね。経済発展のある段階において、日本も六〇年代、韓国は八〇年代、いずれも経済発展に伴ってナショナリズム台頭し、反米、反安保というような動きが出ることと似ている現象が起きているわけですね。  江沢民主席が九八年訪日し、歴史問題を必要以上に繰り返し発言をし、それ以後、日本江沢民主席イコール反日というようなイメージが定着したわけですけれども、実際は江沢民主席も二〇〇〇年以降かなり軌道修正したんです。修正したにもかかわらず、日本の中では江沢民イコール反日というような記号化現象、今でもあるわけですので、そういう意味で、社会の中で当局がどうのこうのということだけでなく、ナショナリズム台頭そのものを直視して対策を考える必要がある問題だと思います。  それに翼を更に付けたのは情報化時代到来であります。一九九〇年、全中国電話回線はわずか一千万回線、すべて固定電話だったのに対し、この六月、中国電話回線電話数は七億を超え、そのうち携帯電話は三億七千万台、固定電話は三億三千万台、しかも毎月六百万台ずつ利用者が増えています。インターネット利用者は一九九六年、六十万人だったのが、この三月、一億人を超えています。この二、三年、いずれも二、三千万人ずつ増えています。  情報化時代到来で、かつての中国の中の権利意識ナショナリズムの表現のパターンを変えているわけですね。今回の反日デモ特徴も、それがどこか一つの中心となる組織はなく、無数の小さい組織携帯電話インターネットをもって互い連絡を取り合い、主に大都市で起きているという特徴があります。正に情報化時代ナショナリズムという新しい現象の現れだと思うんですね。それに対し共産党政権は、旧来のテレビや活字、新聞を抑えれば、もう国民はそういうようなデモとかそれもコントロールできると思っていたら、それも間違いだったわけですね。共産党統治手法そのものも後れ始めたし、その下部組織というのは今ほとんど役割果たせなくなっているという現象も見られると思います。  こういう中で、中国政府もかつてない民意というものの上昇に対してある程度対応せざるを得なくなっています。中国外交部日本の外務省に当たる外交部ですけれども、毎月、外交部のウエブサイトで不特定多数の国民との対話をやっています。国民から常に中国外交に対するいろんな疑問を出しているわけですけれども、それを外務大臣、次官、局長、あるいはイラク問題だったらイラク担当の大使がインターネットで不特定多数の市民に対する答えをすると、こういうようなことも中国は今取り入れ始めたわけですね。  内政の変化は同時に外交変化も一部もたらし始めています。ここではその新しい特徴として三点取り上げましたけれども、これまでの中国多国間の枠組みについて非常に警戒的でした。日本は二十世紀を通して、いい意味でも悪い意味でも国際的なゲームの中で生きてきました。日英同盟ワシントン体制などなどだったわけですけれども、中国はそのような国際的な枠組みで常に取り残され、あるいはだまされる、いじめられる対象だったということもあって、二国間の関係重視するんですけれども多国間の枠組みには入らないというのは、わずか十年前の中国外交パターンだったんです。  しかし、それに対し、最近はマルチ、多国間の枠組み重視する方向に急速にシフトしています。ASEANプラス3、六者協議中央アジア諸国との上海協力機構など、それに積極的にかかわり始めています。一方、今までは中国国内経済発展のみ重視するというトウ小平時代の方針からも、地域及び世界共通利益を強調する、人類の利益の強調という言葉も胡錦濤さんの口から出るようになりました。  さらに三番目に、今まではアメリカ、ロシアなどとの関係重視だったのに対し、ここ数年、明らかにアジア、特に東アジア重視にその力点を置いているということは言えるかと思います。その背景は何なのかと。  第一に、中国経済発展はもう既に世界から切り離してはできなくなったので、外部との関係協調をより重視せざるを得なくなったことが挙げられます。通商大国日本に比べても、GDPに対する輸出入の占める割合、いわゆる対外依存度というのは日本の三倍以上になり、中国GDPに対する輸出入のシェアというのはもう七五%から八割、日本はわずか二割ぐらいですね。言ってみれば、世界を無視して、抜きにして今の中国経済成り立たなくなっている。それが外交重視平和環境重視に向かわせた内的要因だと思います。  もう一つは、冷戦以後、唯一の超大国になったアメリカへの警戒感の裏返しだと言えます。中国から見れば、唯一の超大国になったアメリカの二十一世紀の戦略というのは、唯一の超大国の地位の維持で、そしていかなる挑戦者、チャレンジャーに対してもそれを、その芽を摘む、封じ込めるということではないかと。その中で、中国上昇は当然アメリカから警戒される。そのアメリカに対して、一方、対米関係拡大し、両国相互依存関係拡大しつつ、一方、アメリカから単独中国標的にするような対中包囲圏の構築ができないように外交の布陣をすると、それが中国外交の新しい重点になっているわけですね。  その中で、中国周辺地域多国間枠組みをつくるということは、すなわち、アメリカがもし単独中国を敵にしようとする場合、中国周りの国が共通利益を持つことによって中国だけを敵にすることができないようにすると、これが中国周辺地域重視のもう一つ外的要因ではないかと思います。その中で、胡錦濤主席の対日観、対日政策についても、もう一回ここで整理する必要があるかと思います。  小泉首相は、中国について、本当は中国経済は脅威ではないとかいろいろ、私は客観的な認識をされていると思いますけれども、少なくとも二点、私はちょっと中国認識は間違っているんではないかなと感じます。  一つは、靖国の問題が、自分が靖国に行かないからといって日中関係が良くなるわけじゃないということですけれども、しかし、やはり靖国ということを中国記号化されたということで、胡錦濤時代は前と違ってその記号化に対しての対応で、それがある程度乗り越えできれば胡錦濤主席自身の対日政策、戦略を遂行できるという意味で、それはやはり一つのキーポイントになっているかと思います。  もう一つは、今日の報道にもありましたが、小泉首相も、中国は歴史カードを使って日本にプレッシャーを掛けようとしているんではないかということですけれども、私もそれは違うんではないかと思います。  では、胡錦濤主席の対日観、どのような形成の背景があり、そして特徴があるかと、簡単に述べますと、第一、胡錦濤主席の生まれは江沢民主席と違います。江沢民さんは一九二六年生まれ、日中戦争中に少年時代を送ったので苦い少年記憶があったのに対し、胡錦濤、温家宝両指導者は、一九四二年生まれ、戦争の記憶はほとんどありません。  胡錦濤主席は、八〇年代前半、地方から北京に来たときに、当時の親日派の指導者の胡耀邦主席の薫陶を受け、そして当時最初に担当した大仕事は日本の三千人の若者の訪中の接待だったわけですね。彼の対日観は胡耀邦主席から受けたものがあると言えます。そして、現在の中国外交、全般においての日本を見るという視野が、かつてに比べれば、前の指導者に比べれば広げられたという点も挙げられます。  もう一つ政権の力学で見ていても、前任者は、江沢民主席の場合、経済の高度成長や対米、対ロ関係で軌道を付けたということで、今の胡錦濤主席が同じことをやっていても歴史的には評価されません。やはり、それを超える、それと違うものをやるというのが当然彼の特徴、特色になるわけですが、国内的には、現在、高度成長だけでなく、バランスの取れた社会、公害、福祉などの問題を重視する政策が打ち出されています。外交的には、正に前指導部のやり残した対日関係の改善というのは、実は胡錦濤主席が取り組もうとする課題ではないかと思います。  その特徴でいえば、私は三つの特徴、ここでは二つ挙げましたけれども、あるかと思いますが、江沢民時代は歴史問題を日中関係改善のための入口論的な扱い方だったのに対し、胡錦濤主席日中関係拡大の中で歴史問題乗り越えていくという発想、いわゆる出口論的なアプローチではないかと思います。もう一つは、日本との長期にわたるこの戦略関係重視という点も今の指導部の対日発言からも見られるかと思います。  この三月の前半、中国首脳部は内部で対日政策検討会議があり対日重視論を決定したと聞いていますけれども、そこで対日重視の三つの理由が挙げられたとも聞いています。第一、中国経済発展日本の技術、資金、対中投資を必要とすること。第二、中国の平和環境に日本との関係、友好関係が不可欠であること。何よりも三番目に、中国が内心一番警戒しているアメリカが対中包囲圏をつくるかどうか、そして台湾が独立を宣言するかどうか、それに対して日本をその方向に追いやるのは得策ではないという見方があるかと思います。  しかし、一方、現指導部の対日政策、いろんな制限要因も、制約要因も受けています。長老、保守派が存在し、特に民間のナショナリズム台頭ということへの配慮もせざるを得なくなっています。そして、残念ながら、日本側から胡錦濤主席がその対日改善に向かうきっかけはなかなか与えてくれないというような問題点もあるかと思います。具体的な問題については、後で御質問あればまたそれについて討論したいと思いますけれども。  最後に、日中関係の今後を考える上で私は三つの提言をいたしたいと思いますが、第一、日中関係中国にとって重要であるとともに日本にとっても重要であるということを再認識することです。近隣諸国との友好関係があって日本外交が初めて幅を持ち、世界でもっと発言力が強化されることになります。そして、日本外交の任務の一つである経済利益の確保ということを考えても、中国や韓国などとの関係の改善が必要ではないかと思います。当面において、特に中国の内部の地殻変動への理解が足りないので、今後様々な交流拡大、特に議員交流拡大していくことが重要ではないかと思います。  最後ですけれども、中国は急速に台頭しているのですけれども、ドルベースで見れば中国GDPはまだ日本の三分の一、日本GDPアジアの半分以上を占めています。もっと自信を持って、中国にやられるという、常に受け身的に対策を考えるのではなく、中国を変えていく、中国を取り込んでいくというような能動的な、主導的な対応で日本の国益、アジアの平和ということを考えていく必要もあるのではないかと思います。  時間になりましたので、取りあえずこれで終わらせていただきます。
  9. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  次に、天児参考人から御意見をお述べいただきます。天児参考人
  10. 天児慧

    参考人天児慧君) ただいま御紹介いただきました早稲田大学天児でございます。  私と朱建栄さんというのは前からの非常に親しい友人関係なんですけれども、私も朱建栄さんも基本的に日中協調派といいますか、日中協調関係をつくる、これが非常に大事だという、そういう立場に関しては非常に共通しております。  ただ、私と朱建栄さんの一番大きな違いというのは、やはり私が日本人であって朱建栄さんは中国人であるということで、そういう意味では、私が議論するときに、やはり日本というのは日本にとって何であるのかと、日本をどうしたらいいのかと、こういうことがいつも頭の中にあるんですね。恐らく朱建栄さんの今日の話、最後は非常に日本へのメッセージといいますか、それもありましたが、やはりそれは中国人として、あるいは中国という国を考えたときに日本との関係をどうやっていい方向に向けるか、そのことが中国にとっても非常に大事だという問題意識がやはり前提にあるからだろうと思います。  私は、新聞でもいろいろたたかれたりとか、いろんなことを書かれたり、私も書いたりしておりますが、私は、例えば台湾問題について中国に行っていろいろ議論する、あるいは中国の軍事化について、軍事増強についていろいろ発言をする。そうすると、中国のある方は天児は台湾派かという意見をもらったことがあります。台湾に行って議論するときは、台湾の人は中国との関係をいかに良くするかというようなことを話をしていると、天児は親中派かという議論をされて、そして、そういう中で私は、天児天児だと、私は私派だということをいつも言っているんですが、やはりそれは大きな枠でいえば、日本東アジアの中でどういうスタンスであれるのか、あるべきなのか、これを自分の中でいつも考えているからだろうというふうに思います。  そういう前提の上で今日の御報告をさせていただきたいと思いますが、やはりアジア情勢と日本外交ということで、私は今、正直に申し上げますと、日本を取り巻くアジアの環境というのは決して良くない、厳しいというふうに認識すべきだろうという大きな前提的な認識がございます。これを二番目で少し話をしまして、そして三番目には、つまり二ページ目ですが、我々外交を考えるときに、少し長期的な見通しというもの、どういうふうに将来を、将来の環境を予測しながら、その下に立ってどういう我々は選択をすべきかという、そういう発想を持つべきだろうと思うんですね。そういう意味で、例えば二〇一〇年という、それほど遠くじゃないんですけれども、二〇一〇年代というその初頭の国際環境をどう読むかという、これはもちろん外れる方が多いと思います。天気予報以上に外れると思いますが、しかし、やはりそういう見通しを立てるということは大事だろうと思います。これを少し話したいと。そして最後に、日本外交戦略をどう立て直すかということをお話ししたいと思います。  その前に、問題の提起のところで少し触れておきましたが、私は日本外交戦略課題というのが今見えていないんじゃないかと。皆様方に私は、もう政治の第一線でしかも外交問題の御専門にされている方々ばかりですから、私はむしろお伺いしたい。日本外交的な戦略課題って何だということを明確にしていかなければいかぬ。例えば、国連安保理常任理事国入りを外交的な戦略課題にするのか、これに関しては非常に厳しい状況に置かれているわけですね。あるいはそれを通して政治大国になるのかと。そして、政治大国になり、あるいは平和貢献とか国際貢献とかこういうものを最大外交課題にするのか、あるいは例えば当面する問題として拉致問題を外交的な課題にするとか、そういうことは具体的に何だろうと。  例えば、常任理事国入りを外交課題にするならばそれなりのやり方があるわけですね。そのやり方の中では、実はアジアという問題は非常に重要であるにもかかわらず、アジアとの関係がよろしくないと。これなら常任理事国入りができないというのは、これはやはり支持をしていただかなければできないわけですから、非常に厳しくなるというのは当たり前のことであろう。しかし、そのことが実はうまくいっていないというようなことがあるわけです。そうすると、一体何だろうかという疑問があるわけですね。  そして二番目には、これはもう既に触れられたわけですが、感情的、対中国感情的反発論が非常に目立ってきていると。本屋に行きますと、中国関係のコーナーを見ますと、今や反中国物がもう圧倒的なわけですね。少し、数年前でありましたら朱建栄さんの本とか私の本が結構並んでいたんですが、今やもうそれがわきに置かれて、もうその中国批判の本がだあっと並んでいるという、そういう異常な状況が起こっております。しかもそれは、我々から見たらとても中国専門家とは言えるような人じゃない方々の本がだあっと並んでいるという、こういう状況ですね。それで、そのことが私は実は非常に外交オプションというものを狭めているという問題があると。  それから三番目のポイントとしては、我が日本はやはりアメリカとの関係が第一だと、これは当然のことなわけです。そして、日米同盟というのを基軸とせよと、これも非常に大事なことであるわけですが、じゃ、日米同盟だけを、アメリカとべったりしておればそれですべてうまくいくというふうに本当に考えていいのかどうかというのは、多分皆さんもそうは思っておられないだろうと思います。  非常に問題提起的な言い方をしますと、アメリカ日本にとって永遠のパートナーであり得るのかと。仮に、日本というこの国が国際的なプレゼンスを非常に減少していく、あるいはアメリカにとっての利用価値が弱まったときに日本というのをアメリカはどう見るのかという、このことを我々は考えなきゃいけないだろうと。  こういった問題提起の下に、少し、二番目の厳しくなった日本を取り巻く外交環境というのをお話ししたいと思います。  先ほども触れましたが、国連安保理常任理事国、これははっきり言って惨敗なわけですね。アジアの国から実は事実上の支持がなしと。ブータンと、私の記憶では、間違っているかもしれませんが、ブータンとネパールですか、あともう一つどこでしたかな、ちょっと忘れましたけれども、三か国、非常に小国がこのG4というのに支持しただけである。  最終段階に至ってアメリカがこのG4案を反対するというところまで行って、私は本当にこれを見たときに、一九七二年の米中接近におけるニクソンの対日頭越し外交という、つまり日本はもうニクソンが米中国交正常化に踏み込むなんて考えもしなかったわけですね。一切連絡もないままにこの米中接近が始まったわけです。それが田中角栄氏の対中国交正常化を追い立てるような形で進めた大きな背景にあったわけですけれども。これを思い出して、やはり、アメリカがなぜG4を反対したのかというのは、私はアメリカの論理でやったというふうに考えるしかないということであります。そういったこと。  それから、国連の拠出金が言うまでもなく第二位、世界の第二位。実質的な国際貢献、例えば緊急支援とかあるいは環境問題の、国際的な環境問題とか貧困への支援とか様々な支援を積極的にやっているにもかかわらず、これもその支持票になっていかない、こういった状況がある。これをやはりどう考えるかというのは、我々日本関係者としては極めて深刻な問題として受け止めるべきだろうということであります。  それから二番目は、先ほども少し触れられました、よく日中関係を政冷経熱という言葉で言われます。政治が非常に冷えてしまったと。対話がないと。私は、対話がないということは、これは対話がないということで済ませられない問題である。つまり、対話がないということが事実としてある、これ状況が進行しながら、その中で日中の首脳の対話がないということなわけですね。これは非常に大きな意味を持っているというふうに私は思います。  これはどういうことか。二国間関係で見れば、まず一つは国連安保理常任理事国入り、これは再対話の可能性を失ったということ。これは谷内外務次官が行かれた十月の十日過ぎだったと思いますが、そのときに中国側の李肇星外務大臣、外相がこの問題を実は指摘していたわけですね。靖国問題さえクリアすれば、国連安保理常任理事国入りあるいはエネルギー資源の問題を十分に対応できると、会話ができるという話をされたというふうに私は聞いておりますが、これができなくなってきている。  それから、政冷だけではなくて、これは経済に若干影響が起こるのではないか。つまり、この中国市場における経済チャンスというもの、これがしばしば欧米との競争に対して日本が不利になってくる。これは典型的な一つの例は新幹線の問題でありますが、この新幹線の入札に関して、中国の専門家は圧倒的に日本のこの新幹線の技術、これを高い評価をしておりまして、日本側とのこの政治的な問題さえなければもう踏み込めるという話というのはよく聞くわけですね。これは朱建栄さんの方がよく御存じだと思いますが、こういうことが踏み込めない。あるいは、先ほど言ったエネルギー資源云々の懸案事項に対する対話を失うと。  つまり、恐らく今の胡錦濤政権は、日本との関係において、重要議題に関しては今のままでは話に乗ってこないだろうと。そして、新たな今段階の日中協力というもの、あるいは日中協力枠組みをどうつくるかという機会を失っていくと。つまり、交流はする、話合いもする、部分的にはいろいろするわけですね。そして、ある意味では中国はその部分的な交流の中で取れるものは取っていくと、どんどんどんどん。しかし、大枠のところの大事なこの会議といいますか対話が進まないという状況が進んでいくことが、本当に日本にとってプラスなのかマイナスなのかということが問われているということだと思います。  これは実は国際社会に十分に関連することでありまして、アジアにおける日本のプレゼンスという問題、実はこれ、アジアの諸問題を日中で対話をし、そして日本の対中影響力というものを、日本中国に対する影響力というものを示すことによって、実は日本のプレゼンスを中国及びアジア各国へ、あるいは国際社会へアピールすることができるわけですね。それを拒否している、それができない。  そうすると、特に、これは後でも触れます東アジア共同体という非常に大きな課題が今アジア東アジアにおいてあるわけですけれども、こういう中で、ASEAN自身もこれは中国のプレゼンスというものに対するある種の不安もあるわけですね。そういうときに日本も頑張ってほしいと、日本のプレゼンスを示してほしいという気持ちがあるわけですが、対話そのものがない中で、中国とASEANとの関係がどんどん進んでいくとか、あるいは中国と韓国との関係が進んでいくということになれば、そこで日本のプレゼンスがそこへ示されない、そうすると彼らの失望感というものが出てくるという、こういう状況が生まれるだろうと。そして、対照的に、今申し上げた中国のプレゼンスの大きさというものがどんどん目に付く。これは、例えば六か国協議を見てもそうだろうと思います。あと、今の話に繰り返しになりますから省略いたします。  アジアにおけるこの日本のプレゼンスの大きさというものが継続されていくということが、実はアメリカの対日重視を継続させるかぎでもあるというとらえ方が必要だろうと私は思います。アジアに対して日本影響力を持つ、そういう影響力を持っておれば、アメリカ日本に対して、いろんな形で日本に頼んで、そしてアジアアメリカの意思をある程度日本を通して実現してもらえるという、そういう対日重視というものが維持できるわけですね。ところが、対話がなくて日本アジアの中でプレゼンスが低下していけば、もうこれは日本を頼ってもしようがないと。そうすると、今最もプレゼンスの高い中国と直接やるしかないという議論になっていくわけですね。その辺を我々は極めて深刻に受け止めるべきだろうというふうに思います。  それから、韓国を見てみますと、この間、韓流だとか、その前の二〇〇二年の、二〇〇一年ですか、違いますね、サッカーワールドカップですね、二〇〇二年ですか、失礼いたしました。こういった日韓関係が非常に好転してうまくいこうとしている、そういう動きがあったわけですが、やはり最近の動きを見ますと、対日傾斜から対中傾斜への加速的な転換が進んでいると。これは盧武鉉政権の特殊性という言い方もいろんなところでされておりますが、やはりこの歴史問題あるいは靖国問題において、このままの状況ではその話が本当に信頼関係を持ってできないという意識が非常に強いということは否定できないと思います。  私は、韓国の学者とも随分交流をしておりますが、つい最近、九月の末に、あるシンポジウムで、実は盧武鉉のブレーンの方と話をする機会があったんですが、彼は中国に最近行きまして、そして江沢民のブレーンと二人で、私は二時間ぐらいこのアジア情勢あるいは日中韓関係のことについて話をしたと非常に得意げに話をしておられましたが、相当やはり今、中韓の間で様々な問題についての突っ込んだ話が進んでいると。そういう中で、日中がなかなかそこへ進んでいかないということは、これは日本にとって決してプラスだとは言えないということであります。  韓国については、実は私はもっともっと重視しなければいけない、そういう相手であると。韓国は世界第十一位のGDPですね。そして、アジアにおいては日本に次ぐ民主主義の大国であると。まあ極端な言い方をすれば、韓国との同盟的な提携こそが日本の国際プレゼンスの維持にとって非常に大事だという認識を持つ必要があるだろうと。  三番目は、現在、昨年ぐらい辺りから非常に積極的に議論された東アジア共同体構築のイニシアチブを今日本は失っているというふうに言わざるを得ないだろうと。中国、韓国というのは、基本的に対日関係においては民間交流には力を入れると、やはり日中関係は大事だと、日韓関係は大事だと、そういうふうな認識があると思います。しかし、前向きの外交課題外交協力には消極的になっていかざるを得ない。  今回、潘基文先生ですね、外務大臣、韓国の、あさってですか、日本に来られます。私は、これは非常に大事な、アジア外交において非常に大事な一つのメルクマールだろうと思います。ここで何らかの日本が前向きの姿勢を示せば、この難局の打開の非常に重要なきっかけになるかもしれない。しかし、これが韓国側の期待に対してこたえられないということになれば、ますますこの今ここに書いたような状況が強まっていくというふうに読むしかないんじゃないかと思います。  あとは少し繰り返しになりますので、そういったことを踏まえて今の外交の厳しい状況というものがあるというとらえ方であります。  そして、三番目に、じゃ二〇一〇年初頭、二〇一〇年、二〇一二年、二〇一四年ぐらいまでを対象にしながらその国際環境をどう見るかということを若干話したいと思います。  中国をめぐる国際環境を見ますと、御存じのように、二〇〇八年に北京オリンピックがあり、二〇一〇年に上海万博があると。そして、二〇一二年に第十八回の共産党大会があって、ここで胡錦濤政権が多分大幅に交代すると。そして、新しい胡錦濤の次の世代が台頭してくるという状況が生まれるだろうと思います。そして、国家あるいは民族的なアピールは非常に高まる。さらに、国内の地域の貧富の格差とか様々な格差、腐敗という深刻な問題ははらみながらも、GDPで二〇一〇年にはほぼ間違いなく二兆ドルを超えるだろうと。世界第三位の経済大国になると。そして、軍事力も強化され、国際社会でも積極的な役割を果たしていくという状況があるだろうと。  そして、そういう中で中台関係中国、台湾の関係を見ますと、二〇〇七年に総統選挙があるわけですね。そして、今の陳水扁政権の非常に不人気な状況と経済政策がなかなかうまくいかない、その他もろもろの問題を考えていくと、私は民進党候補が敗れて国民党の馬英九候補の勝利の可能性というのは非常に大きいだろうと。そうすると、中国側との対話という問題が、具体的なその台湾問題をどうするかということについての政治的な対話が始まる可能性は十分あると思います。  しかも、二〇〇八年のオリンピックでは、台湾同胞に対する大歓迎セレモニーというものを私は多分中国はやるだろうと思いますね。そうすると、台湾を取り込んでいくという、こういう動きは相当出てくる。そして、国民党、馬英九さんなんかも言っている新台湾人という発想、こういうものを維持してでも、大枠で緩やかな中台統合というものが受け入れられる可能性というのは実は二〇一〇年代辺りに出てくる可能性はあると。もちろん、民進党が政権を維持する可能性もあるわけですが、そのときでも対中国対決というのは非常に困難になるという読み方が普通ではないのかなと。  かぎは、中国政府がどこまで譲歩するか、台湾に対してですね。私は、国民政権が復活すると、中国は大幅な譲歩をして、緩やかな枠組みで台湾統合というのを踏み込むんじゃないのかという予測を実はしております。間違いかももちろんしれません。もしそうなると、中台統合というのは、香港と合わせて強大な中華圏の形成ということを意味するわけですね。  二番目、それから中国とASEANとの関係。恐らくこれは二〇〇二年に朱鎔基前総理がASEANを訪問したときに宣言しました二〇一二年までに中国、ASEANの地域FTAを実現するという目標は、メンツを懸けても中国はやるだろうと。それまで日本がどこまでASEANとのFTAが進んでいるかどうか、これは非常に大事な問題になってくると思います。  その中で、例えばGMS会議、これは今年あったわけです。雲南の昆明であったわけですが、非常に積極的に中国はこれに、大メコン圏構想にコミットしているということが目立っております。  二番目、この朝鮮半島をめぐる国際情勢。  北の核問題というのは多分一件落着をして新たな段階をこれから入るわけですが、もちろん非常に厳しい問題が幾つもあるわけですが、しかし問題は、少しずつ北朝鮮のソフトランディングの問題になってくるかもしれない。そして、ソフトランディングの問題になってくると、当然日朝国交正常化の問題あるいは南北統合の問題が出てくると。  北朝鮮は、自らの金正日体制維持のためには、中国依存というのはますます強まっていくんじゃないのかと。中国アメリカとの関係悪化は断固回避をしたいと。しかし、北カードというのは非常に重視、使えるという判断を持つ可能性は高いだろうと。そして、韓国の中で北朝鮮脅威というものが交流が進み薄れていけば、北への経済支援あるいは共存の制度的枠組み構築というのは進むだろうと。  そうすると、日朝国交正常化交渉も、これは当然やっていかなければいけないわけで、歴史問題は改めてここで重要な問題になってくると。日本が恐らく歴史問題できちっと対応をしない限り、中韓連携というものが今進んでいるわけですね。一番この歴史問題で日本にとって打撃があったのは、やはり中韓連携が進んできたということだと思いますが、これが正に更に進み、これに北が加わるという、こういう構図が生まれ、日本は立ち往生状況になってしまうと。  三番目、米中関係をめぐる国際環境。  これは、現在も生きているトウ小平の二つの指示がある。二十四文字指示、二十四文字全部入れていませんが、一番大事なのはこの韜光養晦、絶対に、韜光養晦って三番目のフレーズですが、これは力を養うと、絶対に対決しない、頭に、先頭に立って対決をしないという考え方ですね。それから、十六文字指示で、信頼関係を増加し、煩わしいことを減少させて、協力発展させて、決して敵対関係を持たないというこの指示ですね。これは今も生きていると思います、米中関係において。ですから、台湾問題に関しての原則を維持しながら、しかし全体として米中の協調というものを示すだろうと。  アジアにおける問題は中国との対話が不可欠という、こういう流れを、そういう認識をアメリカが持てるような流れを恐らくつくっていくだろうと。そこで、かたくなに歴史を拒否して、歴史問題を拒否して、対米強化・依存のみで日本外交を乗り切ろうとすると、それは日本の孤立化というものを、不可避だろうということですね。  最後に、この日本外交戦略をどう立て直すかということで、三点ほど指摘したいと。  一番目は、局部的な国益論から総合的国益論の発想を持つ必要があるだろうと。恐らく政府指導部の考える国益のみが国益ではない、ナショナルインタレストというのは、いろんな形でナショナルインタレストはあるだろうと。そして、これほど日本経済が国際社会の中にコミットすることによって発展を維持する、こういう枠組みができたときに、海外での順調な企業展開というのは実は非常に重要な、日本そのものが生き残っていく重要な国益なんですね。  それから、国益というものを考えるときに、国益というのは、自分が得すれば相手が損するという考えじゃなくて、両方とも得をするという発想の国益を我々はこれから追求していかなきゃいかぬだろうと。つまり、狭い国家主義的なイデオロギーの固執から発展、安定、充実、安心社会を実現する。つまり、非常に大事なことは、魅力ある日本をどうやって将来実現するか、これが私は非常に大事だと。そして、それが可能になってくれば、私は日本というのが自信を回復していく。つまり、経済成長の早さとかGDPがどれだけなってくるかと、中国がどれだけなら日本はどうかという、こういうレベルの、つまり量の勝負はもう必要ないだろうと、私は。質の問題をこれから日本はしっかりと考えなきゃいけないということです。  そして二番目は、アジアにおけるパワーの移行が進んでいるというこの前提というものをしっかり認識した上で、外交戦略の組立てが問われているんだと。恐らく中国は全方位、積極外交を一層展開するだろうと。中国アジアだけに注目していないですね。世界的な形で、例えばEUとの関係、あるいはインドとの関係、ロシアとの関係アメリカとの関係、そういう中にアジア外交もある、対日外交があるわけですね。これは恐らくするだろうと。そして、したがってアジアの盟主争いというのは、僕は無意味であると。指導力とか指導的役割を分有していく、あるいは役割分担をしていくということが必要だと。そして、日中間の政冷経熱現象というのは、これは単に日中二国間の問題ではないと。これはもう先ほど申し上げたんで、繰り返しません。  大事なことは、中国との関係を改善するということは、この日米中の関係の中で言わばゼロサムじゃないんだと。日米VS中国でもなければ、日中が連携することによってVS米国でもないと。つまり、米国とのしっかりした関係を持っている日本中国と積極的に対話することで、日本の存在感もあるし、日米中のトライアングル関係がスムースにかつ効果的になるだろうという、そういうとらえ方が必要じゃないのかということを申し上げたいと思います。  それから、重要な外交手段としての経済援助外交、これを見直していかざるを得ないだろうと。外交カードとして今まである種、ある面では、もうばらまき的なODAの使い方があったと。これはよく言われていることでありますが、人材育成とか環境保護・改善とか緊急支援とか、こういったものに非常に具体的に見える外交をしていく、ODAの外交が必要であろうと。その場合に、これは政府がやるんだということだけじゃなくて、政府とNGOとか、あるいは、例えば日本のODAを使いながら中国の人民解放軍と日本の自衛隊が協力するとか、こういった言わば多極間協力のメカニズムをこういう中でつくっていくという、これは非常に大事じゃないのかというふうに思います。  それから、中国も実は経済的に深刻な弱点を実は持っているわけですね。恐らくこれは、先ほど言ったような二〇一〇年に向かって深刻化の部分も広がっていくだろうと。したがって、実は日本の高技術、高い技術あるいはノウハウというのは、中国経済発展を維持するためにも非常に必要なんですね。この支援というのが実は日中協力関係強化につながっていくし、日本のプレゼンスを高めていくことになるんだということです。  それから、日朝国交正常化の問題も恐らくこれから重要な問題になってくる。そういう中で、大きな視点から考えると、この過去の清算というものを、これやらざるを得ないわけですから、やることを通して、敵対的でない関係をどうやってつくっていくかという、こういうアプローチが必要だろうというふうに思います。  最後に、これは直接具体的な話じゃないんですけれども、一言。私は研究者ですので、歴史もやってきておりますので、思い出した言葉を紹介したいと思います。  つまり、外交的には毅然とした態度を取れば、国内世論というのは拍手喝采を受ける。しかし、結果的には極めて深刻な外交的失敗というものを被ったケースは歴史上あるわけですね。いろいろあるわけです。  例えば、日本の国際連盟脱退という、こういう事態が一九三三年だったと思いますが、あります。あるいは、日本を盟主とする大東亜共栄圏の建設、こういったものはその典型であったのではないのか。つまり、国連、国際連盟脱退のときに松岡洋右外務大臣はもう非常に格好良かったわけですね。そして、日本に戻ってきて、日本の民衆によって拍手喝采を受けるわけですね。ところが、それが実は日本の正に戦争への道というものにつながっていく非常に大きな外交的失敗のスタートになったということ。  そして逆に、例えば日露戦争のときのあの問題で日本は国力がなかったと、そしてこのまま日露戦争を継続していけばこれは日本も駄目になっていくと、そこのところを早いところ判断して早期の解決をやるしかないという決断をして、アメリカの仲介を頼ってポーツマス条約を結んだいわゆるこの小村寿太郎外交、これはその小村寿太郎が日本に戻ったときに、その得た収穫が余りにも少ないと、賠償金も取れなかったということで猛烈な反発を食らって、そしていわゆる日比谷焼き打ち事件まで起こったわけですね。しかし、長い目で見れば、極めて冷静な、適切な判断というふうに言えるだろうと思います。  こういったことを考えると、やはりこのまま靖国問題で中韓の要望に耳をかさないで毅然として自己主張を堅持するということが、結果的にはあらゆる重要議題に関しても対話の道を失い、ますます外交的孤立の道を歩むことになると。それはアジア及び国際社会における日本のプレゼンスそのものの低下にもつながりかねないし、その間に影響力を増す中国に大きな差をどんどん付けられていくことになると。私は、今こそ冷静沈着で包括的で柔軟な外交判断が日本のリーダーの中で求められているということを強調して、私の考えを終わらせていただきたいと思います。
  11. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者を定めず、質疑応答を行います。  できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。  また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  なお、理事会協議の結果でございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしますので、よろしくお願いをいたします。  山東昭子君。
  12. 山東昭子

    山東昭子君 お二人の先生、ありがとうございました。  まず、朱教授にお伺いしたいんですけれども、中国はやはりアメリカへ心を移しているといいましょうか、非常にそちらに強く向いているという意識があるんですけれども、その中で、また経済重視ということが言われているんですけれども、最近、情報を聞きますと、何やらアメリカ中国から投資を引き揚げているというようなことを言われておりまして、そして国内に工場なんかも返す際に税率を非常に低くして帰りやすくしているというような傾向を聞きますと、どうしてアメリカがそういうことをしているのかというようなことを朱先生からちょっとお聞きしたいということ。  それから、台湾問題に関して、トップの話ではなしに、一般の中国国民というものがどういう意識を持っているのかということ。  それから、先ほど人的交流ということをおっしゃいましたけれども、大学生が日本に来られる数は多いんですけれども、もっと私どもは若年、中学とか高校生、このころからの交流というものが一番大切だと思うんですけれども、どうもほかのアジアの国に比べまして中国のそうした若年層の交流というのが余りないというような感じが強いんでございますけれども、その辺の何か背景、問題点があるのかということ。  それから、天児先生にお伺いしたいんでございますけれども、日本外交非常に下手だというようなことは日本人全体が感じているところでございますけれども、安保理常任理事国入りに関しましても根回しであるとかそのポイントを外しているというような傾向が強いんですけれども、先生からごらんになって、日本国民に対して安保理常任理事国入りの大きなメリットというもの、リスクはあってもこういうメリットがあるからというようなことをちょっとお知らせいただきたいということ。  それから、共通のお二人に対しての質問がございますけれども、いろいろお話を伺いましたけれども、私どもは中国人というのは非常に大人だというようなイメージを持っているんでございますけれども、しかし、実際にいろいろな角度から見ておりますと非常に繊細であるというような感じがあるんでございますが、後ろの国民の国に対しての不満、そういうものを意識しながら日本に対しての建前というもの、そして実はその本音での経済的ないろいろな要求というようなことを考えますと、これからの日中の外交において本当に重要なポイントというものは何なのかと、一つだけそれぞれの先生にお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  13. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) それでは、朱参考人からお願いします。
  14. 朱建栄

    参考人朱建栄君) ありがとうございます。  まず、私自身への三つの御質問について簡単にお答えしたいと思いますが、中国外交やエリート層ですね、その目が特にアメリカに向いていると。これは、正直言ってそれは事実であります。両国とも大陸国家でおおらかなところがあって、割に話ししやすいという部分は確かにあります。それから、この百年の歴史において、アメリカは本当は自分の国策、国家戦略によるものだったんですけれども、中国の中で一種の親米感情をうまくつくったというのも事実であります。  そして、何よりもこの大きいアメリカと対決すべきではないと。これは中国エリート層今思っているし、天児先生が紹介したように、トウ小平さんがこれを中国の対米外交の基本としているわけですね。これからも絶対敵対はしないということでやっているので、今後も基本的にはアメリカからの圧力をかわしながらアメリカとの共通利益を増やしていくという方向に行くと思います。中国の首脳の子弟たち、子供たち、ほとんどアメリカ留学なんですね。アメリカといろいろパイプを持ち、そして国内に戻って政府経済、さらに軍のトップにもなっていると。その点は注目していく必要があります。  一方、おっしゃった、アメリカ中国に対して投資を引き揚げているという話は、私は余りちょっと聞いておりませんが、基本的には現在の米中経済貿易関係というのは、アメリカから見れば貿易関係極めて不均衡であって、アメリカ中国から大量に輸入しているのに対し中国へは輸出が少ないと。それをもって中国に対していろいろ要求をしている、これは事実です。一つは人民元の切上げの問題、さらに中国もっとアメリカから物を買えという要求ですね。  そういう中で、いろんな揺さぶりという意味でやっているのはありますけれども、しかしここ数年、対中投資、これはその中で日本よりもアメリカの対中投資が上であること。去年も今年もそうですけれども、米中貿易額はそれぞれ三割以上増えています。一方、日中は一割ちょっとですね。一割も大きいんですけれども、しかし米中、EUと中国は三割以上増えているわけですね。ですから、そこのところ、米中が経済面で、アメリカがそれが引き揚げているとは、私はちょっとそういう認識じゃないんですが。  ただ、おっしゃることで私が分かることで言えば、この間、ラムズフェルド国防長官が訪中して中国に再三いろいろプレッシャーも掛け、要求もしたわけですけれども、アメリカはやっぱりこの中国をどう見るか。対中戦略というのはアメリカ自身も今迷っている。もっと確かめて、圧力を加えながら、中国は一体どういう反応をするかを試している段階だと思うわけですね。アメリカにとって、敵でもない、友でもない大国台頭というのは恐らく歴史上初めての経験であるわけです。そして、中国は軍事力がある程度発展しているとはいえ、アメリカから見ればそれは全然歯が立たないもので、一方、経済的に猛烈に増え、そしてアジアへの影響拡大していると。そこのところ、一体この国はどうなるかと、今認識で迷い、そしてアメリカ国内で異論、分かれているんですね。そういうような現象はあるかと思います。  台湾問題について、中国国内、一般の国民はどう思っているかということですけれども、中国広いので一概には言えませんけれども、幾つかの特徴を挙げていえば、実は経済発展の後れたところほど、もう単純に台湾は我が国の領土で解放しないといけない、独立は絶対許さないという話にいきやすいんです。台湾との交流が深まるほど、例えば上海、特に福建省などは、もう十分経済利益は台湾との交流に依存している、絡んでいるということもあって、武力行使は絶対反対と。で、台湾はもうちょっと自由にやっていいんではないかというような議論も平気に言うようになったわけですね。  ただ、そういう中で、やはり中国の知識人層、大半の国民にとって、結局、近代という、屈辱的な近代から、このトラウマからはまだ完全に立ち直っていないので、台湾問題は中国から見れば、近代、国土、いろんな列強に取られたものの最後の象徴であるわけですね。その部分について、完全に台湾が独立するような形でいってしまうということには、恐らくこれは国民としてはそれは黙ってはいられない。当局としても、今の台湾の現状維持、台湾が自分の軍隊を持ち何かやるということは、もうこれでいいと。しかし、名目上、独立宣言されるとこれは困ると。  なぜなら、台湾が名目上、独立宣言すると、中国はどうすればいいんですか。武力行使するか。それは、台湾を制圧する力、本当にあるかどうかは専門家の間で分かれている。何よりも中国が一方的に武力行使すれば、当然アメリカは介入します。さらに、それによって中国アメリカ日本、EUとの、つまり経済にとって必要な大国との関係全部壊れてしまって、中国近代化がなくなる。そういう意味で、なかなか強硬手段には進んで出られないんですね。かといって、台湾、独立宣言されても、黙って、いや要らないよと。それはまたナショナリズム台頭や国内の状況の中で、それは当局政権そのものが倒されるおそれがある。  ですから、そういう状況の中で、わずか三、四年前まで中国は、台湾問題は我が国の内政であり外国の干渉は要らない、日本アメリカも口を出すなと言っていたのに対し、ここ二、三年の発言というのは、台湾海峡の平和、我々が望んでいる、それを壊しているのは台湾側だと。ですから、アメリカと一緒に、日本と一緒にこの台湾海峡の平和、この現状を維持しようと。  最近、十月中旬に胡錦濤主席が訪米して、ニューヨークでブッシュ大統領と会って驚くべき発言をしたんですが、米中ともに台湾海峡の平和をマネジメントしようと。つまり、今の中国にとって台湾を、軍事的に何かを取るということ、それが優先課題ではないので、その背景には、経済的に台湾の民間との交流、割にうまくいっているということもありますので、そこで、台湾は現状維持のまま、そしてそういう中で、天児先生がおっしゃったように、本当に究極的には、香港と同じように台湾は中国の一地方政権になる解決法は多分台湾は受け入れられないので、連邦制、緩やかな統合、私自身の言葉で言えば、もう透明に近いような共通の屋根を持って、その中で数十年間にわたって互いに平和関係を維持するという協定を結ぶと、その可能性は一番あり得るんではないかなと思います。  三番目に、人的交流ですけれども、おっしゃるこういう若年層、青少年の交流が足りない、それは私も全く同じ認識であります。  今まで中国は、やはり急速に経済成長しているとはいえ、貧富の格差、いろいろ問題もあって、対外交流は十分に環境整備ができていなかったと思うんですね。今はもう全中国に、日本だったらもう東北でも四国でも、もうこういうような対外交流に関して何ら経済的にあるいは情報とかそういう面で問題ないんですけれども、中国は、残念ながら、大半のところではまだそれは支える環境にはないわけですね。  そういう意味で、まず上海、北京、広東など、そういうところの小学校、中学校と互いに姉妹関係のようなことで互いに交流し合う、ホームステイをすると、中国はようやくその可能性が生まれ始めただけであって、これからは可能性はあるので、これから徐々に一部の地域から着手し拡大していく必要はあるんではないかと思います。
  15. 天児慧

    参考人天児慧君) 私への御質問は、一つは、日本が国連安保理常任理事国入りに関して、国民に対してどういうメリットがあるかをメッセージとして投げれるかというお話だと思うんですが、これも、我々日本外交的に何を目指すのかということと非常に関係してくると思うんですね。  これは、もう六〇年代の終わりだったかな、七〇年代ごろよく言われた、言わば日本外交三原則という、つまり、日米同盟と国連重視、そして三番目にアジアの一員という、この視点というものをもう一回思い起こす必要があると思うんですね。  もちろん、国連安保理常任理事国入りすると、それはそれだけで一つの国際社会におけるステータスになるだろうと思いますから、それはいいんですが、私は、むしろ日本が国連というものをどうするのか、国連というものを国際社会の中でどう位置付けるのか。これは、非常にやはり重要な、国際社会の問題を解決し、あるいは世界というものを全体にレベルアップさせていく、発展させる、あるいは安定させていく上で、国連というものが非常にキーになるという認識をもう一回しっかりと持ち直す必要があるだろうと。そういうふうに国連を位置付ける、そこの中に日本が安保理常任理事国入りとして積極的に入る、そうすることによって国連をより充実させるという、そういう関係として私はとらえるべきだろうと思うんですね。  これは、例えば中国が国連安保理常任理事国入りに反対するときに、今年の三月に明確に反対を示したわけですけれども、そのときに言われた言葉は、これは、今の日本は、まあ歴史の問題があるということは一つ言えますね。それと、もっと切実な問題は、要するところ、アメリカとべったりになり過ぎていて、アメリカを支持する一票を安保理常任理事国入りで増やすにすぎないじゃないかと、こういう日本を我々が支持することはできないというようなことが実は水面下で言われるわけですよね。  私は、そうじゃなくして、もちろんそれはケース・バイ・ケースで、やはりアメリカとの提携というのは非常に大事だと思うんですが、やはり国連そのものを本当に充実させ、そしてそれが国際社会の中で非常に重要な役割を果たす、そういうものにしていくために日本は常任理事国に入って積極的に主導的に担うんだというメッセージをやはりもっともっと強く打ち出すと。そうすれば日本の国際社会における役割というものを国民がもう一回認識し直すということで、非常に私は大事な、そこが大事なんじゃないかというふうに思います。  それから、中国人は見た目は非常に大人というイメージだけれども非常に繊細じゃないのかというようなお話がありましたが、やはり中国、先ほどちょっと話をした、非常に戦略的に長期のスパンで、あるいは幅広い枠組みで物を考えるという、これ、中国人ってみんながそうじゃなくて、やはり中国という社会は、やはりエリート社会とそれから庶民の世界というのはやっぱりかなり私は格差があるというふうに思うんですね。  エリートというのは、やはりそういう、昔からの士大夫意識といいますか、そういう部分がずっと伝統的にありますし、天下国家を常に語るというような、そういう人たちについて言えば、やはり非常に長期的なスパンを持ちながら割と細かく計算していくわけですね。その計算だけを見ると非常に緻密に見えると。でも、その緻密さというのは割と、何といいますか、大きなスパンで考えているから、私はアバウトな部分も結構あるんじゃないかなというふうに受け止めております。ただ、一般化はなかなか難しいかもしれないですね、これは。  それから、日中外交における重要な、最も重要なポイントって一体何なのかということですが、やはり、私はよく物を書いたりしゃべったりするときに言うんですが、実は日中関係というのは、よく相互理解を深めよというんだけれども、相互理解を深める前に大事なのは相互誤解を解消することだ、相互の誤解が余りにも多過ぎると。そして、その誤解に基づいて日本はこうだといって言うし、中国はこうだといって言い合うという、それがある意味関係をおかしくしているわけですね。そういう相互誤解をいかに解消するか。  それからもう一つは、やはり戦略的パートナーという問題を我々はこれから本当に考えていく必要があるだろうと。  つまり、御存じのとおり、一九九八年に江沢民国家主席が来て、そして小渕総理と日中対話をして首脳会談をやったときにこの共同宣言を出したわけですね。この共同宣言の中では友好協力のパートナーシップという言葉が使われているわけです、日中関係は友好協力のパートナーシップであると。この友好協力というのは非常にあいまいな表現だと思いますが、私は、むしろそれは戦略的パートナーという、これからの日中関係にこういうものをどうやって築いていくか、そのことが言わば日米同盟と併存していく、あるいは日米同盟と言わば相乗的なプラスの効果を持つようなフレームワークをどうやってつくるかという、そこにポイントがあるんだろうというふうに私は思います。  そのためには、やはり対話をしなきゃ駄目ですね。対話なくして構想だけが独り歩きしても何も意味がないわけですので、やはり対話というものの重要性を我々はもう一度認識すべきだというふうに思っています。
  16. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  富岡由紀夫君。
  17. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 民主党・新緑風会の富岡と申します。今日は、お忙しいところ、大変、両参考人おいでいただきましてありがとうございます。  お二方のお話を伺いまして、共通してお話の中で出てきたのが日中関係の大切さということだというふうに思うんですが、ちょっといろんな角度からお話ありましたけれども、例えば朱先生のお話の中で、中国日中関係というのは大切で、アメリカの対中包囲網から、何というんですか、の観点からも日中関係というのは壊すのは得策でないというお話だったので、これは非常にそのとおりだなというふうに思いまして。  あと、天児参考人からは、逆に、日本中国と親しく関係を、良好な関係にするとアジアにおけるプレゼンスが高まったと国際社会では認められて、アメリカからも日本の評価が高まって、アメリカとの関係もこれは評価するということで、アメリカにとっても中国にとっても、日本中国と親しくする、関係を良くするということは、日本にとっては、中国アメリカ両方を見た場合、どっちにもプラスになるんだというお話が今日聞けて非常に良かったなというふうに思っております。  そして、個別にいろいろお話しいただきまして大変参考になりました。とりわけ朱先生のお話の中で参考になったのは、今の反日感情、これがどういう理由で沸き起こってきたのかということが非常に整理できて、よく分かりました。  要するに、経済が豊かになってきて、いろんな権利を主張する人たちが出てきて、それが抗争という形で、進歩の表れという形でいろんなナショナリズム台頭に結び付いてきたのだというお話だったので、そういうことをやっぱり整理しておかないと、感情的になって、中国日本に対して敵対的な行動を取っているからけしからぬという、それだけで終わっちゃうような感じがするので、そういった動きの流れをしっかりと理解した上で、我々も反日運動についてしっかりと理解していかないといけないんじゃないかと、客観的に見ていかないといけないんじゃないかというふうに改めて思いました。  そして、両先生に是非お答えいただきたいと思っているんですが、それぞれ先ほど日中関係の大切さ、日中友好関係を築こうというお考えは共通しているということなんですけれども、日本人と中国人という違いがありますというお話だったので、是非、お二方に同じ質問をさせていただくんですが、日本人の天児先生と中国人である朱先生のそれぞれの立場で同じ質問についてお答えいただきたいというふうに思っております。  まず一つは、今これだけ中国経済力が非常に強まってきまして、さっき朱先生のお話だと五億人が中間層だと。これはもう大変な、消費の経済の面から見ても大変なこれ数だと思うんですが、そういった状況になってきています。  ただ、一方で、共産党という一党独裁体制でこれあるのは厳然たる事実でございまして、これがいろんな経済活動を通して民主化プロセスがどんどんどんどん進展していくわけでございますけれども、この共産党政権がいずれ私は個人的に東欧諸国みたいに転覆するんじゃないかと。そんな、でも血を見て転覆するんじゃなくて平穏なうちにいくんじゃないかと私は思っているんですが、その辺を両参考人はどういうふうにごらんになっているのか、教えていただきたいというのがまず第一点でございます。  あと、それと二つ目は、天児先生からお話ありました、日中関係を見るときには要するにアジア外交としてやっぱり見ない、そういう観点も必要だと。その中には、さっき言いましたように、日本中国がやるとアメリカ日本のプレゼンスを認めて日米関係にも影響するというお話がありました。  要は何が必要かというと、そういった外交戦略を持てというお話だったと思うんですが、その外交戦略というのは、日本外交戦略というのは、今言ったように我々が考えないといけない話だと思うんですけれども、一つ外交戦略というのは、さっきお話ありました、中国も、日本外交戦略についても天児先生お話ありましたけれども、要するに、どちらかというと一つ外交戦略の一番キーポイントになるのがこの経済的な発展というか、このお話聞きますと、海外で順調な企業展開が国益につながってくると、そして協調発展的国益論にしていかなきゃいけないというふうなお話であって、国の発展経済力の発展というのが主な外交戦略の一つの位置付けに御説明あったと思うんですが。  日本もそうなんですけれども、何で国連に入りたいのか、常任理事国入りしたいのかと。そのときは、一つ経済的な発展というか、国の、企業の発展というか、経済力の発展国民経済的豊かさがあるんですが、もう一つ、その先に国際平和とか国際環境とか、そういったところで何をしたいのかということをまず我々日本人は、我々政治家がまず考えなくちゃいけないと思うんですが、今集団安全保障とか国際安全保障という議論してますけれども、その前に、日本が国際貢献として平和の面で、軍事的な面でどういう活動を、展開を望んでいるのか、そういったことがまだ日本外交戦略の中で私は欠けていると思っているんですね。  国際平和を維持するために、ただ軍事力を使えばそれでいいのか。そうじゃなくて、非軍事的な活動という平和の活動もあると思うんですね。そういったことを、まず何をやりたいのかということを日本の中で、まず反省なんですけれども、我々もよく検討して、議論して、何を目指すのか。その上で、そのために国連の常任理事国に入らなくちゃいけないのかと、そういう私は順番だと思うんですが、まず常任理事国入りがあって、その後、後から考えるというような風潮というのはちょっとおかしいんじゃないかと私は思っているんですが。  そういう観点で、中国も、経済的な発展は分かりましたけれども、平和について若しくは環境について中国が持っている外交戦略というか、そういったものがないわけはないと思うんですけれども、そういったことがどういうふうに中国は今国連の中ででもやっているのかとか、これからどういうことを目指していくのか、その点をお二方のそれぞれの観点で、御見識の中で教えていただきたいというふうに思っております。  私からの質問は以上です。
  18. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) それでは、朱参考人からお願いします。
  19. 朱建栄

    参考人朱建栄君) 中国政治の行方についてですけれども、私は、ソ連、東欧モデルをもってそれを予測の根拠とするのではなく、韓国、台湾など東アジアの国と地域がたどってきた道、それが中国政治の行方を見る上でかなり参考になるんではないかなと思います。  ソ連、東欧は、何といっても、やはり中国と実際に同じ共産主義であっても中身は全然違ったわけですね。一番最大の、一番大きいものは、やっぱり中国は、北朝鮮、ベトナムないしミャンマー、インドネシアなどが一時期掲げた社会主義と同じように、正直言って、マルクス主義などはそれは便宜的に使うものであって、イデオロギーと心中する民族でも思想でもないんではないかなと思うんですね。  ですから、現在、あくまでも中国経済発展が最優先で、そのための中国社会主義というふうに、社会主義と称して社会主義的市場経済とか、それはもうまくら言葉で、本当の中身というのはもうマルクスから全然離れて、どこにつながりがあるかすらちょっと分からないぐらいで、言葉だけつないでいて、中身はもう現実論で、中国経済発展し、国民豊かになるとか、そういうことをそれは一番重視していると。  そこで考えれば、中国政治の行方で、韓国、台湾の例で見ていても、実はいずれも最初は軍人や厳しい一党独裁だったわけですね。そこで、アメリカの圧力や当時の国際環境の中で、それぞれまず経済の自由化に着手する。朴正熙時代、台湾の蒋経国時代あるいは蒋介石時代の末期でですね。つまり、いわゆる開発独裁をやるわけですけれども、政治は独裁、経済は自由化。それは現在の中国がやっていることですね。  その中で中間層拡大してきます。台湾と韓国はいずれもその中間層経済発展の中で、その分配の再分配で、富の再分配とかある程度進み、その中で中間層がどんどんどんどん拡大した中でその民主化を要求していく動きがますます強くなっていく。それが、台湾でも韓国でも本当に複政党制導入したのはもう二十年未満なんです。台湾は八六年、韓国は八七年だったわけですね。中国はまだそこまで至ってないんですが、私は正にそのプロセスの中間にあるんではないかなと思います。  政治は一党支配、しかし経済は自由化、それはもう逆戻りはできません。しかも、今の世界の情勢が情報化時代どんどんと、それはみんな国民は知っている。中間層拡大し、中間層拡大、当初は必ずしも穏やかな動きではなく、今の中国の中で多くのあつれき、抗争にも表れているんですけれども、基本的に、中間層政治パターンというのは知る権利と参加する権利を求めるんです。それが、その行き先には正に政治の民主化ということですね。  今の中国で既に底辺で一部の民主化的なアプローチは始まっていると思います。それは例えば、まず村のレベルで、今は村長は全部直接選挙ですけれども、県、郷鎮の人民代表、すなわち地方議員も直接選挙にそれは十年前からなっているんですけれども、しかし、それは共産党の気持ちで民主化をしようとしているためかと、そうじゃないんです。共産党体制が市場経済の進行で現実に対応できなくなったから、その民主化を取り入れざるを得なくなったんです。  まず、村のレベルでいえば、共産党、もっとも、なぜ村レベルまでコントロールできたのか。一つはやはり富の分配。みんなにどれぐらい資金、化学肥料を与えるか。それは国が力を握っていたから村をコントロールできた。しかし、もう今の請負制、農村の自由化の中で、みんな上からそういうことを期待しない。かつては、政治的出世、ほかのところへの移動、全部上の幹部、役人が握っていた。それに対して、もう今は自由に関係なく出稼ぎには行けた。ということは、村のレベルでの共産党の実際の支配はもう十数年前から崩壊した。そこで、もうある意味で任せて直接選挙を導入することになったわけです。  二週間ぐらい前に温家宝首相がヨーロッパの記者に対し、中国は三、四年以内、郷鎮レベルでも直接選挙を導入する可能性があるということを初めて言ったわけですが、それもやはり底辺、村レベルはやはり千人、二千人単位ですけれども、郷鎮レベルはやはり四、五万人から七、八万人までの単位ですね、そこでももう近い将来それを取り入れざるを得ない。それも共産党の好意や慈善ではありません。それは、その底辺でもう多くの問題抱え、共産党、上から見せしめ的にだれかを捕まえても、それだけじゃ解決できない。むしろ、民衆からの直接選挙である程度、その民意の導入で汚職、腐敗を牽制すること、マスコミで言っている自由化で、スクープすることによって汚職、腐敗とかそれを牽制すること、そういうことをやらざるを得なくなったと思うんですね。  そこで考えれば、中国中間層、本当の中産階級が二〇一五年、二〇年の段階で、これは本当の中産階級ですけれども、四億から五億、中流意識持ち主を含めてやはり七、八億から十億ぐらいの人が自分は中流だというときには、恐らく一党支配はもう維持できないと思います。ただ、それは中国共産党と心中するという人は恐らく共産党内でも余りいないので、東欧のように別の勢力によって崩されるよりも、共産の中で二つ、三つに分かれるとか、それぞれの利益集団の代弁になるとか、そういうような可能性は大きいんじゃないかなと思います。  じゃ、もう一点もちょっと併せて申し上げておきますけれども、その前に、日本の国連常任理事国入りについての中国の態度について私ちょっと書きましたけれども、言う時間はなかったんですが、中国は専ら反対だというような一般的なイメージがあったんですけれども、正直言ってそうではなかったと思います。天児さんがたしかどこかにも書きましたけれども、九八年の江沢民主席の訪日の前にも、当時は日本への一種のお土産として日本の常任理事国入りを支持するかどうかで中国国内で相当真剣な議論がありました。二回目は去年の前半から今年の初めまでです。  中国の議論はこういうものです。第一、国連安保理の改革、中国何を一番重視するか。日本が入るかどうかよりも、アメリカという唯一の超大国をいかに牽制するかが中国の国連外交最大課題です。その延長で考えれば、アメリカにとってうるさいドイツやインドなどを入れることは中国にとってはそれは悪いことじゃないんです。これが優先に考慮する事項の一つです。  第二、日本との関係ですけれども、もう中国の中で率直な議論があって、新聞にすら出たんですけれども、中国が真っ向から反対票を投じるとすれば、もう日中関係が極めて大きいダメージを受けて中国にとって不利であると。じゃ、かといって棄権ということの選択はどうなのかと。棄権したって日本から何も感謝されない。だったら、発想を転換して賛成に回してもいいんですけれども、取引カードとして日本から何かを取り付けると。  確かに、春の自民党本部での交流で、松田会長、そのときもお見えになったときだと思うんですけれども、そのときでも中国側は本当は国連の問題で日本と取引する可能性をまだ模索していたと思うんです。しかし、靖国のことで何も譲歩しようとしない。日本中国に対して、実際、要するに外務省の当時の対応で見れば、明らかにもう計算の間違いの連続だったんですね。中国外交官から聞いたんですけれども、日本外務省はもう、今、国連の票数計算しておよそ百六十か国が日本を支持する、百三十か国以上は間違いなく支持する、だから中国反対、無用ですと。もう中国と対話して取引しようとする姿勢はなかったんです。  さらに一点言えば、去年の六月の朝日新聞に、東京大学から今国連大使になられた方がいますけれども、朝日新聞の取材に対して、日本の国連常任理事国入りの戦略をそのまま書いているんですね。それは、フランスとイギリスを共同提案国にしてもらう、アメリカ、ロシアは賛成に取り付ける、中国を押し切る。つまり、中国と実際にそれをやり取りするという、そういうような考えがなかったわけですね。  ですから、そのような中で、ほかの問題もいろいろまたたまって、それが最後に、今おっしゃったように、直接中国日本反対は今でも言わないんですけれども、G4反対とかいう理屈を付けて実質的に反対するように今なってしまった。中国外交というのは実は起伏があって、いかにそのタイミングをうまくつかむか、それも日本外交一つ課題ではないかなと思います。  最後ですけれども、中国世界平和について正直言ってまだそれほど考える余裕はない。ただ、今も一つの勉強のプロセスとして、世界のPKOには実は今諸大国の中で中国一番PKO要員を派遣しているんです。中国はそういうようなことを今までやったことないので、まあそれも一種の勉強としてやっていると。環境問題についても国際的にはまだ言う立場ではなく、中国国内その問題一杯抱えているので、今討議している十一次五か年計画では環境対策というのはもう最重点課題一つとしては掲げています。
  20. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  天児参考人
  21. 天児慧

    参考人天児慧君) あなたの話が長いから、自分が何をしゃべろうと、頭がぼやっとしてしまいましたが。ああ、そうそうそう、経済発展の後の一党独裁の話が一つありましたね。これは将来的に変わるということは恐らくあると思いますね。ただし、一党体制というものを維持させながら実態を変えていくというのが今のやり方ですよね、一党体制を維持しながら。  御存じだろうと思うんですが、二〇〇二年の共産党大会で、中国共産党は三つの代表だと言ったんですね。プロレタリアートの前衛であるというかつての共産党のテーゼというのが事実上空洞化しちゃったわけで、いわゆる国民政党化したわけですよ。三つの代表というのは、最も先進的な生産力の代表、最も先進的な文化の代表、そして最も広範な人民の利益の代表と、こう言ったわけですよ。これは中国流の一流の何かよく分かったような分からぬような言い方なんですが、しかし、それはつまるところ、一番目は、正に私企業の企業主というか資本家を党員にできるということを言っているわけですね。それから二番目は、IT産業だとか、最も先進的な言わばそういう文化レベルの専門家を積極的に党に入れるというようなそういう話で、正に非常に広範な人々をどんどん党の中に取り込んでいくということをやっているわけですね。  ですから、私は、朱さんは今さっき韓国、台湾モデルの話をされましたが、韓国モデルというのはちょっと違うと思うんですよ。韓国というのは、もう大韓民国ができて、最初には多党制で始まったわけですね。民主主義体制として始まって、それが六〇年の朴正熙のクーデターによって軍事独裁になるわけで、でも政党はその後もずっとあるわけですね。つまり、多党制をずっとベースにしてやっているわけです。台湾は結構やはり中国のモデルになるかもしれないです。国民政権下で一党体制でいったわけです。ただし、地方というものが台湾では非常に重要な役割を、地方における民主主義的訓練といいますか、国民党一党体制下の地方選挙とか、あるいは地方の代表の選出というのは、これはかなり大事なんですね。  私が一つ面白いのは、今年の三月に深センの大学で現代中国政治研究所というのが、中国唯一政治研究所というのができたんですね。そこでしゃべってくれということでしゃべったテーマが、何と日本の自民党についてしゃべってほしいという話なんですよ。何が聞きたいかというと、要するに自民党と利益集団の関係なんですね、インタレストグループの関係。私は自民党を専門に勉強していませんから弱ったなと思ったんですよ。急に、行ってから言われたんですね。  それで、インターネットで出せば結構情報入るわけですよ。非常に見事な利益集団との対抗関係といいますか、対抗というか対応した組織、自民党の中に持っているわけですね。いろんな利益をそこに吸収しながら、そして、これ政調会ですかね、何かつまりその政策を集約しながら決定するメカニズムを私はそれで勉強していて、こういうのをちょっと紹介したんですよ。そうしたら非常に面白がって、面白いって興味を持っておりましたね。  私は、中国は、やはり多党制にしたくないと思うんですね、まだしばらくは。なぜかというと、多党制にしちゃうと、あれほど大きな巨大な国ですから、ばらばらになってしまうというそういう意識があるわけです。ですから、とにかく緩やかでもいいから、中がぐじゃぐじゃでもいいから一党という枠を、つまりアンブレラをきちっと持っておいて、そのアンブレラの下で多元化を進めていくという、こういう方向をやはりしばらくの間私は追求するだろうと思うんですね。ですから、かつての五五年体制は社会党という野党があったわけですが、社会党なき自民党体制というのが実はしばらく中国がこれから目指す目標かもしれないというのが私の中にあるんです、実は仮説が。  それから、つまり中国はグラデュアルな体制移行を選択するという、基本的には。ラジカルな体制移行というのはソ連、東欧で実験したわけで、そして八九年の天安門事件までは中国はソ連を視野に入れていたんですね、ソ連を視野に。だけど、それをやっちゃうともう経済がむちゃくちゃになるということをトウ小平が感じて、とにかく安定が一切に優先するという有名なトウ小平の言葉が出されて、そしてもう安定、安定、安定という話ですね。でも、もう今さっき朱さんもおっしゃられた市場化というものがどんどんどんどん進んでいく、そして市場化は当然利益の多元化、多様化を生み出す、そして様々な利益集団を形成していく、階層の分化を生み出す、そして価値観の多様化も生み出すという、そういう中でどういう枠組みをつくるかという、そこへ来たわけですね。  ですから、そういう意味で、グラデュアルな政治改革を選択し、そのグラデュアルな一つのフレームワークというのは、今言った大きなアンブレラの下で多様化を取り込んでいくと。これがもうそのアンブレラが維持できなくなったときに多党化がいくだろうと。それはもうちょっと先じゃないですかね。私は、今の話は少なくとも二〇一二年の中国共産党の第十八回党大会、先ほど言いました胡錦濤政権の交代ですね、まあ胡錦濤政治的失敗をそれ以前にすると話は別ですけれども、一応オリンピックをうまく乗り切り、万博をうまく乗り切った胡錦濤が替わるのは二〇一二年だと思うんです。その後の話ですね。というのが私の見通しです。  それから、これは中国の目指している外交的戦略は何かというお話だったと思いますね。私は、中国が最近、国連安保理常任理事国入りのときも言っていた言葉ですけれども、つまり、発展途上国の声をもっと国連に反映させろということを言って、そしてその発展途上国を正に常任理事国入りへというような、そういう議論をしていたと思うんですが、元々三つの世界論という、そういう考えを持つ中国が戦略的にある世界の中でこういうのをバックにして自分影響力を増すというときに有効な一つのバックグラウンドは、やはり発展途上国の代表という考えであると思うんですね。これはもう七〇年代からそう言っているんですが、それが今復活してきていると思います。  もう一つは、やはりアジアにおけるリーダーというのは実は隠されてあるんじゃないかと僕は思います。表向き言っちゃうと、もう日本とリーダーシップ争いになっちゃうということになるんです。これはまずいと思っていますから、これは言葉には出さない。しかし、現実にいろんなケースの中で中国アジアにおけるイニシアチブをどんどん強くしていくという、こういう現実が今見えてきているわけですね。これはもう六か国協議がその典型だし、あるいはSCOという上海協力機構の、ここでの、これは中央アジアですね、中央アジアとの連携、それからASEANとの連携、こういう形でアジアにおける中国のイニシアチブというのは間違いなく増えている。  これは非常に僕は中国うまいやり方をしているなと思うのは、例えば、イラク戦争が始まる前に、既に朝鮮半島の問題を中国外交スケジュールに入れたわけですね。そして、二〇〇三年の三月の末にあのイラク戦争が起こるわけですけれども、その前の二月の終わりぐらいから言わば水面下で非公式に北朝鮮に行っているわけです、重要な政治家が、中国の。そして、アメリカに行っているわけです。アメリカと北に中国の要人が既に水面下で行って根回しを実はやっていて、イラク戦争が一件落着して、タイミングを計ってすぐにこの問題を提唱したわけですね。  そして、イラク戦争に関しては、中国は、アメリカに反対を一応はしながら、しかし決定的な対決は避けるという戦略を取りながら、北朝鮮問題に関してはうちがイニシアチブ握りますよというメッセージを投げていたわけですよ。それが北京で米朝二国会談、これをセットし、それがやがて六か国協議に行くわけですから、こういう形で、言わば事実上のそういうイニシアチブというものを高めていくという、これを私はやっていると思いますね。  ですから、私は先ほどリーダーシップの分有という言葉を使ったんですが、つまり日本は、日本のリーダーシップの役割は私はあると思います。全面的な、すべてにおいてリーダーを、すべての分野においてリーダーシップを争う必要はないわけで、むしろここの分野に関しては日本がリーダーシップを発揮する、ここの分は中国がリーダーシップを発揮すると、ここの分野はむしろASEANに任せようとか、そういう組合せができれば私は非常にハーモニーが取れていくんじゃないかなと。それは私は可能だろうと思うんです。可能だし、それを目指すべきだろうというふうに思いますね。  それで、そういう意味中国のねらいというのは、やはり今の二つだけじゃもちろんないと思います。だけども、それは全体的に言えば、国際社会においてやはりすべてがアメリカのお伺いを立てなければいけないような国際秩序でない、しかしアメリカとの協調関係も維持しながら、それなりの地域における独自性を持ったそういう秩序をそれぞれが併存していく。例えば、EUを中心とした秩序あるいは東アジア秩序、それからアメリカを中心とした秩序というような、そういうイメージを私は持っているんじゃないかなというのは思うんですけれどもね。  でも、これは中国の学者とお話を、多分朱さんも否定するかもしれないんだけど、中国の学者と話をすると、政権に近い学者であるほど、私の言っていることは否定します。
  22. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 加藤修一君。
  23. 加藤修一

    加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  今日はお二人の参考人、御多忙の中おいでをいただきまして、誠にありがとうございます。  お二人に同じ質問、一つだけさせていただきたいと思います。  先ほど、朱参考人は、現在五億人近い中間層がいるという話がありまして、これ、私前々から、数字の件は分かりませんでしたが、非常に気になっていたわけなんでありまして、単なる暴動ではないと、権利意識に芽生えた動きであると、あるいは社会進歩の表れであると、こんなふうに述べられたと思っておりますが、これを踏まえてお聞きしたいと思います。  アジアの平和、安定をつくり上げる上にはやはり日中間の相互理解は欠かせない。先ほど天児先生は相互誤解を解消させるべきだと、それがまず最初だという、そういう表現をされたわけでありますけれども、私はやはり一つには民民の信頼感の醸成、これは極めて重要な点でないかなと、そう思っております。日本としては、先ほども朱先生の方から出ましたように、情報化、そういう時代であると。日本はやはり日本行動とか姿勢を国際社会に、もちろんこれは中国も含めてでありますけれども、向かって繰り返し繰り返し発信をしなければいけない。そこが非常に私はまだまだ不足しているんではないかなと、そう思います。  そういう中国における中間層は、そういった中で、中長期的には、私は、民の力ですか、民の力を無視することはできないなと、そういうふうにとらえておりまして、実は、二〇〇二年のときにヨハネスブルクで地球サミットがありました。そのとき中国から来ている方に何人か面談いたしました。その中にNGOの方がいたわけですね。私は中国にはNGOとかNPOというのは存在しないだろうというふうに勝手に理解していたわけでありますけれども、非常に私はNGOがいるということに対して驚きました。  また、最近、中国から来たある方は、実はNPOを中国で初めてつくりたいんだと、中国の国内では今NPO法ですね、そういう法律を法制化しようと、そういう中にあって、まずその第一番目に自分たちの組織がNPOになりたいんだと、そんなふうなことを実は言っていたわけなんですね。  こういった中国における、私は非常に変わり始めているなというふうにとらえざるを得ないわけでありますけれども、こういう事態を考えますと、しかも中間層拡大という流れがある中で、この中国のNPOあるいはNGO、こういった種々のアクター、こういった面とのどういうパートナーシップを考えるかというのは極めて私は重要な中の一つではないかと、そんなふうに思っております。  例えば、環境にかかわる、その保全をどうするかという意味でのパートナーシップも当然考えられますし、あるいは再生可能エネルギーといった、そういった面についても当然考えられる、あるいは国連の持続可能な開発のための教育の十年、すなわち持続性をしっかりと考えていく人をいかに多くつくるかということが極めてこれからの地球環境にとっては非常に大事だと。それにかかわるそういうパートナーシップでありますけれども、そういう形成というのは、実に私は、相互誤解の解消、更に相互理解を深めるという意味では極めて重要なアプローチではないかなと、こんなふうに実はとらえておりまして、こういった面については、両参考人の方々は、こういう動き、将来的な展開、方向性、こういった面についてはどういう御見解をお持ちか、これが一つの質問で、これで終了でございますが、よろしくお願いをしたいと思います。
  24. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) それじゃ、今度は天児参考人からいきますか。
  25. 天児慧

    参考人天児慧君) 全く同感でございます、一言で言えばね。  私は、例えば日米関係が非常にいいということを、日米ですね、そのときにやはり民間レベルの非常に長い、幅広い交流というものがやはり日米関係の基盤をつくっているというふうに思うんですね。決して、政治家あるいは政府のレベルだけの交流ではなくて、その下にというか、民間の交流というのが非常に幅広い交流を長いこと蓄積してきたという、そういう土台がしっかりしていけば、やはり少々上で波風が立っても、やはりその下できちっといろんなものが処理されていくという、こういうメカニズムができると思うんですね。  中国との関係でいえば、やはり中国の体制というものがやはり非常にがっちりした体制があったわけで、なかなか民間レベルの交流というのはできなかったわけですよ、実は。だから、向こうで民間交流だといって、例えば中日友好協会とか何かいうのがあって、それは民の団体だといって来ても、それはもう元の国務大臣だった人だとか、いろんな、要するに政府から天下りした人たちばっかりでもう全然民ではないわけですね、純粋な意味で。そういうものが今変わり始めてきていますね。  先ほどおっしゃられた言わばNGOの団体という、NGOとかNPOといってもまだまだ、まだまだ規制が非常に厳しいことは事実です。私の友人で今、清華大学のNGOセンターの主任をしている人は、これは正にNGO問題の草分け的な存在なんですけれども、彼なんかと話をしても、なかなかやはり厳しいことは厳しいし、私は実は日中学生会議という、日本で正に民間でやっている学生組織の顧問を長いことしているんですが、中国側でとにかくそれにカウンターパートとしての中日学生会議をつくろうと思っていろいろ動くんですが、もうなかなかできないです。日本のように簡単にはできないですね。ですから、特に環境問題とかあるいは、そうですね、貧困支援とか、こういった分野のNGOは割としやすいんですが、中日学生会議といったらひょっとしたら政治化するかもしれないという話が、可能性があればもう全部つぶしてきますからね、まだまだ。  ですから、なかなか民間団体というのは厳しいことは確かですが、昔に比べると大きく変わったし、まあ五年とか十年というそういう流れで物を考えていくと、やはり確実に大きく変わっていくというふうに思いますね。ですから、そこのところをどうやってきちっと関係をつくっていくか、パイプをつくっていくかというのは大変重要なものだと思います。  それで、私は朱さんほど中間層に関しては楽天主義じゃなくて、やはり中国が今一兆六千億ドルという非常に大きなGDPの、グロスでですね、日本の約三分の一までもう来たわけですが、しかし、一人当たりのGDPでいえばまだ一千ドルのちょっと過ぎたところですね。一千ドルというのは、まあテークオフしていく非常に大事な初歩の段階に入ってくるというのは、ある程度の準備期間をこれから経てですけれども、そこに来ていることは確かですけれども、しかし、日本がその三万五千ドル規模の一人当たりのGDPを持っているのに比べてまだまだ一千ドルですね。しかも非常に格差の激しい大きな国という、大きなそういう今問題を抱えていることを考えれば、貧困層というか、貧しい人々というのは大量にいるというのは私はむしろ事実だろうと思うんですね。  ですから、中間層が、正に要するに経済発展市民社会を形成し、中間層を形成し、それが民主化を、民主化プロセスをつくり出していくという、これは一般的な要するに経済政治のそのインターアクションによる体制移行の基本的なモデルなんですが、確かにそれは歩いている、その道を歩んでいることは事実だけれども、かなりやっぱり長い時間がそこには必要だというのが私は思うんですね。  ちょっと話がそれましたけれども、そういう中で、私は、大事なのは民の関係をどうするかというところで、今、私個人は非常に注目しているのは、自分の立場もありますから、やはり大学間ネットワークをつくるということ。  大学人というのは割にやはりそういう意味行動が自由なわけですね。これは、日本はかなり市民階層が相当それ自身が自立的な影響力を持てるようになっておりますが、アジアのほかの国においてはなかなかやはり市民が主体的にある影響力をつくっていくというのは難しいですね。そういう意味では、例えば中国大学ですね、主な大学、あるいは香港とか台湾とか、台湾大学とかあるいはチュラロンコンだとかタマサートとか、こういったかなり影響力のある、そういう影響力を持ちながら、そしてそれは政府にも影響力を持ち、同時に民間の様々な問題を吸収できる、そういうところとのネットワークをしっかりつくりながらやはりこの民の力を強化していきたいというふうに考え、実際にその行動をしているわけです、ささやかながらし始めているんですが。  やはり民は民である種の戦略を立ててこのアジアの力を結集すると、それが将来的な東アジア共同体の私は非常に大事な支える基盤になっていくということを考えております。
  26. 朱建栄

    参考人朱建栄君) 三つの側面からコメントをいたしたいと思います。  NPO、NGOというのは先進国ではそれは当たり前のように思いますけれども、世界的視野で見れば、それは大半の国において、そもそもその生まれ、その拡大というのは、常に政府、官と争いながら自分権利を主張していく、そのプロセスだと思うんですね。ですから、中国はそのプロセスは始まったばかりで、環境、自然保護、公害問題、福祉というようなところでは始まっているんですけれども、政治と絡むところではまだかなり制限を受けていると。こういうようなところで、始まったばかりですけれども、これからは常に自己主張をしていくプロセスだと思います。  二点目、中間層中国発展貧困との関係ですけれども、私は中国を見る上で、その両者、両側面同時に見る必要があるということを主張したいわけです。  今までの日本の対中分析は、どちらかというとただ格差の問題、貧困の問題、汚職、腐敗に対する民衆の反発、反抗の問題だけ強調してきた。その問題は私は、当然無視はできない。ただ、対外交流ではむしろ中間層ということがもっと大きな役割を果たしているということをもっと注目するようにと言いたいわけですね。  例えば、去年アジア・カップが内陸部の重慶でサッカーをやって激しいブーイングを受けたわけですけれども、それについても日本の中では、どうも内陸部はもう失業とかいろんな問題があるので、もうみんな国内では発散できないので、日本チームに対してブーイングをして発散したという分析が結構あったように思いますけれども、しかし、細かく見ますと、中国のサッカーの国際試合、それは入場券だけで百元以上掛かるんですね。百元というのは中国内陸部の収入でいえばもう月収の五分の一か六分の一ですね。内陸部の人で、もう月収の五分の一を使って入場してビールを飲みながら何か発散すると、これは正直言ってその図式は成り立たないわけですね。  実際は、やっぱりその中、一定余裕があった人がその中で、すなわち中間層、それは本当の生活水準そこまでなっていないとしても、意識上、中流意識持ち主ですね、そういう人たちが今、いろんな国内の権利の主張及びナショナリズムの主張をやっていると、その側面を注視する必要があるという点です。  先ほど天児さんがおっしゃった中国貧困問題、それは今後も注視すべき点であることは間違いありません。中国自身の基準では、本当の貧困層、すなわち食事すらままにならない層はまだ千数百万人いると、中国の中で自動車も電気も通らないところに住んでいる人はまだ二千万人近くいると、これは当局も認めているわけですね。一方、国際的基準で見てみれば、一億人以上が本当の貧困層に属しているという数字も出ているわけです。  その一面、これからの中国課題でもあるわけですが、ただ、社会政治への影響で考えれば、中国政治協商会議の主席賈慶林さんが四月に反日デモの直後に海南島で開かれたフォーラムでいみじくも話したんですけれども、全世界で見ていても、一人当たりの国民所得は一千ドルから三千ドルまでの間は社会構造変化が最も激しい、そして矛盾が一番集中する時期です、中国はどうやってこの時期で経済発展しながら社会的な矛盾をうまく整理して吸収していくかと、これがこれからの政権課題であるということですね。ですから、中国を見る上でこの両側面併せて見ていくという必要を申し上げたいと思います。  最後ですけれども、やはり中国を見る上で、ちょっと余談になりますけれども、私はやっぱり相互誤解を解くというところから始まるというのは確かに重要だと思います。何が誤解か整理すれば、それは双方のそもそも相手を見る目、その出発点が違うと思うんです。  何が違うか。第一、それは近代史の歴史的体験が違う。日本は列強としてやってきました。中国はずっと侵略を受け、弱小国として受けてきた。その中の一種のゆがんだ被害者意識、いまだに消していないと思います。  二番目に、現在の発展段階の違い。日本世界でも有数な平等が実現された国、その平等が実現された国から見る中国の不平等というのは余計強く見える。ですけれども、しかし考えてみれば、全世界の途上国、途上国の典型的特徴というのは正に不平等の存在、中国もそのプロセスにあるということですね。  三番目に、やはり大陸民族の中国日本との違い。それはちょっと小さい例えで言えば、本当にいろんな表現でも違うんですね。日本人は、十ということについて、一から十まで、十までの自信がなく八までしか把握できなければ、日本人は、いや、そのことはどうなるか分かりませんがというような言い方をするんですけれども、中国は、十のことでもう六分かればもう自信を持って言うという部分と、それから、五を直すのに八、十を言うという、要するに、もう度過ぎたことを言ってそれを直すというような表現で、大陸のおおらかなそういうようなところを日本からはなかなか理解しにくいので、きちょうめんな日本人が字面でそれを取って、中国人はこんなに日本を見ている、こんなに何か言っていると。まあそれは一部表現だけでは意味がないと。  最後にもう一つは、やっぱり同じ漢字を使っている、しかし漢字による誤解があります。同じ漢字でも実は千年、二千年の発展の中でそれぞれかなり微妙な違いを持たせてきたわけですね。その中で、例えば、現在の日中関係について言えば、一つは例えば謝罪という言葉。日本語はその意味イコールおわびということですけれども、中国語のシエツイ、謝罪という言葉は極めて重い意味があるんですね。もうひざまずいて涙を流しながら、もう絶対そのことは二度とないと誓うと、それが謝罪となるわけですね。  それで、例えばここの大使、王毅大使がどうも奥田経団連会長にそれを説明したんですけれども、経団連側から聞きましたが。四月のデモで、一回目の北京のデモのときに中国は、すぐ夜、外務次官が日本側に対しておわびをしたんですね、再発防止。ところが、上海でもう一回起き、そしてその間、日中の政治的な対立どんどんと高まった中で、四月十七日の町村大臣の訪中に対して中国側は謝罪を拒否したわけですね。日本から見れば、悪いことをしたのになぜ謝罪しないのかと。  で、この大使はこう言ったんです。その時点で我々は、例えば弁償という意味で、それは大使館に損害を与えた、これは我々が意図的にやったわけじゃないんですけれども結果的に中国側に責任があって、それは悪かったと、それは弁償はすると。その後、中国側は原状回復という表現、イコール日本語の弁償ということで言うんですね。しかし、日本が求めるのは賠償。賠償というのは、それは主体として政府責任を持って意図的にやらせて、そういう罪があると、それは受けられない。  しかし、日本がそれを求めたことに中国が、日本が言う弁償というところにもう謝罪したとします。本当は別の表現だったかもしれないですが、次の日、日本の新聞では中国が謝罪と書くでしょうと。しかし、この漢字の謝罪ということが中国に伝わると、もう中国政府日本の前でひざまずいて頭を下げたと。こういう当時のデリケートな中で、中国民衆が一方反日、一方反政府の大きな動きがある中で、それすぐ次に反政府に向かうんじゃないかと、それを中国もまた逆に恐れるわけですね。  ですから、そういうようなところの、日中で本当に相互理解というのは、まずどこが違うか、ところからのいろんな交流も必要ではないかなと思います。
  27. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) ありがとうございました。  大門実紀史君。
  28. 大門実紀史

    大門実紀史君 今日はありがとうございます。  日本共産党の大門でございます。  同じ共産党でも中国とは随分違いますので、誤解のないようにお願いしたいと。  先ほど天児参考人言われた点で、私も去年中国へ行きまして、共産党幹部と話をしたら、我が党のことよりも自民党のことを詳しく聞かれました。要するに、一つの党が長い間政権を維持している仕組みは何なんだということを聞かれましたので、アンブレラという認識は私も一緒だということを先に申し上げておきたいと思います。  東アジア共同体について、時間が少なくなりましたけれども、簡潔にお聞きしたいというふうに思います。この中の、日本中国、そしてアメリカという関係の中でお聞きしたいと思います。本当はお二人に同じことをお聞きしたかったんですけれども、長くなりそうですので、それぞれ一つ一つ一つずつお伺いするようにしたいと思います。  先に朱参考人にお伺いした方がいいかなと思いますが、アメリカ東アジア共同体については不快感を示したり、非常に嫌がっております。  この理由は何かということですけれども、アーミテージさんがかなりきつく言っていたり、この間も発言がありますけれども、幾つか考えられると思うんですけれども、今東アジア共同体で先行している部分というのはやっぱり経済協力の部分、その中でも地域金融協力の部分ですね。これはもう政府間で合意すればどんどんやれますので、ある意味ではFTAよりも進むということになっております。この中で、チェンマイ・イニシアチブとかアジア債券市場とか、いろいろ仕組みができて、日本の財務省も積極的にやっているわけですけれども。  要するに、アジア共同体のきっかけといいますか、大きなインパクトになったのはやっぱり九七年のアジア通貨危機にあると。あのとらえ方もマレーシアなんかは、アメリカとIMFが結託したんじゃないかとか、マハティールさんとか、そういうのもありますし、アメリカとの関係はそれぞれASEANも強いですけれども、アメリカの通貨、ドルとか金融政策とか、これにはかなり懐疑的なところが、被害を受けたという印象があるんではないかと。それも先行して、チェンマイ・イニシアチブとかアジア債券市場がずっと先行していて、いずれは共同通貨もというようなビジョンも話されるように今なってきている、こういうレベルじゃないかと思います。  この仕組みは、簡単に言うと、アジアアメリカに輸出をしてドルを稼いで、そのドルで米国債を買うと。そのことによってお金がまたアメリカに戻ると。戻ったお金でアメリカは景気対策とか軍事費拡大とかやると。だから、このドルの還流システム、これはアメリカにとってはもう天国のようなサイクルになっているわけですよね。  一方、ドルの、日本もそうですけれども、米国債を持っている方は、こんな放漫経営がアメリカはいつまでも続くわけがないと。どこかでドルが下がるんじゃないかと。だから、できればドル、買わないと下がるから買うわけですけれども、脱却したいとどこかで思っているわけですが、ユーロなんかはそこを一線画し始めましたけれども、そういう流れがあるわけですね。  そうすると、アメリカが一番嫌がっているのは、東アジア共同体で経済協力進んで、通貨の問題とか、ドルからアジアが脱却、脱却といいますか、一定距離を置く問題、これはアメリカにとっては実は一番困る問題ではないかなと思ったりするわけですね。  その辺が、なぜアメリカがあんなに東アジア共同体を嫌がるのかと、私なんかはそれをちょっと思ったりするんですけれども、経済の面でアメリカが嫌がる理由について、朱参考人、分かる範囲で教えていただきたいと思います。  もう一つは、これは天児参考人にお聞きいたします。  要するに、東アジア共同体進んでほしいという立場ですけれども、いろいろ今申し上げたように進んでおりますけれども、経済協力関係は先行しておりますけれども、どこかで安全保障問題が絡んでくるという気もいたします。少し今絡み始めておりますけれども。  日本が今の日米同盟ならばまだ中国も別にいいんじゃないかというところがあったとしても、今度、中曽根元総理がアジア共同体評議会、日本側の窓口の責任者ですけれども、こんなことをおっしゃっています。憲法を変えて、つまり日米軍事協力を進めて、つまり自衛隊が海の外でアメリカ軍と一緒に行動を起こすことも可能になるように憲法を変えて、それプラス、東アジア共同体は経済協力機構としてやっていけばいいんだと。私、かなり思い切ったことを言われているなと思いますけれども、それだと、そういうことが出てくると、私も、話がかなり難しく、東アジア共同体のこれからに難しくなってしまうんではないかと思ったりもいたします。  中国中国で軍事費を、国防費を増やしております。アメリカはまた自衛隊と一緒に作戦展開をやれるようにと、トランスフォーメーションもありますけれども。この二つの、中国中国ですし、アメリカアメリカだと思いますけれども、そういう安全保障の問題と東アジア共同体がこれから、経済が先行していますけれども、どこかでどう絡み合うか、その辺のことを天児参考人にはお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  29. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) それでは、今度は朱参考人からお願いいたします。
  30. 朱建栄

    参考人朱建栄君) 今度は短くいたします。  アメリカがなぜ東アジアのいろいろな動きに対して不快感を持っているかと。私の理解するには、一つは、この地域世界で見ていても最も経済発展が活発な地域で、アメリカはここに一枚加わらなければ、やはり経済、技術、いろいろな意味でやはり取り残される、利益が得られないと、そのような懸念があって極力入りたいという一面があるんじゃないかなと。当然通貨とかいろいろな問題も当然ありますので、アメリカのそういう中で影響力持ちたいと。  それと同じように、政治、安保面でアメリカの力が全然及ばないような枠組みができ上がってしまうということを見たくないと思うんですね。自分世界で今唯一の圧倒的な力を持つ超大国と。したがって、全世界のどこに対しても発言権があり、アメリカの物差し、基準はすなわちグローバルスタンダードだと、そういうような自負を持つアメリカにとって、アメリカが呼ばれない東アジア・サミットとか、それは多分内心は穏やかな気持ちではないと思うんですね。その結果として、今アメリカは、最近の動きで見ると六者協議という動きに対して重視し始めたかのように感じられるんです。  いろいろなそういう具体的なことはさておき、やはり東アジア共同体の動きに対して直接呼ばれないので、六者協議という枠組みの中にアメリカはしっかりとした存在を見せて、その中で安全保障とかそういうところでアメリカのリーダーシップ、発言権というのを保っていくと、そういうような動きではないかなと思います。  以上です。
  31. 天児慧

    参考人天児慧君) 一番目の問題も関連しますのでちょっとだけ触れますと、アメリカ最初からこの東アジア共同体、最初というのは、マハティールが提唱したときじゃなくて、今日の、二十一世紀に入ってからですね、決して最初から反対していたわけじゃないんですね。  これはジェトロとそれからジョージ・ワシントン大学、ジョージ・ワシントンだったと思いますが、合同のシンポジウムをやったときに、たしかウィンストン・ロードだったと思うんですが、この問題を議論しているときに、アメリカ利益を損なわない東アジア共同体に関して我々は理解を示すということを言っているわけですね。ですから、そういう意味では、今年の初めに、今さっきの、ど忘れしちゃった、前国務副長官の非常に強い東アジア共同体への懸念という、これは一つのメッセージであることは事実ですが、それがすべてのアメリカの意思を反映した全体のメッセージかというと、必ずしもそうじゃないと思います。  私は、そこで大事なのが、先ほどから私自身の報告の中でしばしば言いましたが、やはりアメリカに、やはりこの東アジア共同体というのが別に閉鎖的なブロック的なそういう共同体ではあり得ないんですね、今の国際社会でいえば。例えば日本だって、中国との貿易が第一位になったといっても、アメリカとも一八・九%あるわけだし、中国だってアメリカとの貿易というのは世界第二位だし、第一位はEUですから、東アジアだけでやっているわけじゃないんですね。  ですから、この東アジア共同体の議論というのは、どんなに考えたって、非常に緩やかで開かれた、そういう外へ開かれた開放的な共同体でしかないわけですよ。私は、そのことをもっと日本、逆に言えば日本アメリカにメッセージをどんどんやっぱりすべきなんですね。  私は実は東アジア共同体の委員でもあったし、それから経産省のそういう共同体論の議論の中にも昨年一年半ほどいていろいろ議論したんですが、もう必ず我々、すぐアメリカはどうするという。つまり、どういう東アジア共同体をイメージするかという前に、アメリカとの関係をどうするかとか、中国との関係をどうするかとか、そういう話ばかりをやって、そして結局ファンクショナリズムでしかやるしかないなと。つまり、ファンクショナルに共同体とか協力のメカニズムをつくってそれを積み上げるしかないという、そういう議論で落ち着いちゃうんですね。  僕は、ファンクショナルな協力のメカニズムは共同体にはならないと、基本的には。そう思います。非常に今、例えば中国と台湾というのはもうお互い経済では、もうお互いを失えばお互いの存立が危うくなるぐらいな、特に台湾側は、それぐらいな相互依存の枠組みができちゃったわけですよね。だけれども、政治的な相互不信というのはずっとあるわけですから、そういう意味ではやはり相互信頼をつくり出すメカニズムはやっぱりつくっていくことが必要だということは私はずっと前から思っているんですが、そういうものをつくっていく必要性をもっともっと我々はまず一つ認識すべきだろうと思うんですね。  やはり近隣諸国と、しかも今経済利益というのが一番大きなこのアジアとの関係を何かいい関係にするということがいかにその地域で生きるそれぞれの国にとって大事かという、これはそれ自体が、いい関係をつくるということ自身が安全保障を良くするというか、安全保障にもなるわけですよ、実際には。警戒的な関係にすれば、これはもう警戒的な体制をつくらなきゃしようがないわけですからね。ですから、いい関係をつくるというのは非常に大きな意味を持つわけですね。  私は、そういう意味での東アジア共同体の基本というのをしっかりとつくりながら、アメリカにそれをきちっとメッセージで伝えていけば、アメリカはそんなに反対はしない。だから、アーミテージさんの話はそれはもちろんあるんですよね、それはね。それは、だから、アメリカにとって利益になり、あるいはアメリカに対して敵対的になるという、そういう懸念があるからそう言うわけですよね。だから、そうじゃないということをしっかりとメッセージで伝えるのは僕はむしろ日本の役割だろうと思うんですね。  それから、そういう中で、今の安全保障の議論というのは、それ自体はもう既にある程度僕は話をしたことになると思いますが、やはり大事なことは、まだ大きな枠組みをつくれていないわけで、その中で安全保障を含むか含まないかという議論は、これはある意味では机上の論理になってしまうわけですね。  事実として進んでいるのは、例えばARFがありますね、ASEANリージョナルフォーラムが一応対話組織として機能する。それから、今回、六か国協議がある程度対話として、そして問題解決メカニズムとして機能し始めていると。それをどうやって充実させていくか、しばらくですね。そして、それは常にアメリカ側の存在、私は安全保障においてアメリカの存在を抜きにして独自にやるなんて、そんな不可能な話ですから、私はアメリカをそこに組み込ませながらというのは非常に自然だろうと思います。  例えば、EUができていると。EU、EUにはアメリカは参加していないけれどもNATOにはアメリカはちゃんと入っているわけですね、安全保障のメカニズムとしては。ですから、そういう重層的な協力東アジアの中で想定すべきだろうというふうに思います。  ということで。
  32. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。  質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと思います。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いします。  田村耕太郎君。
  33. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 両先生に端的にお伺いします。  より効果的な長期的視野に立った議員交流の在り方に関して具体的なアドバイスをお願いしたいと思います。  議員交流と申しましても、リーダー層ですね、幹部議員の交流も大事なんですけれども、長期的視野に立って冷静にやるということでは、今リーダーじゃないけれども将来リーダーになる可能性があるリーダー候補生の交流が非常に大切だと思うんですね。しかし、ここにいらっしゃる先生方もいろんなネットワークでやられていると思うんですが、私個人もやってみて、また皆さんいろんな方からお聞きするのは、中国は難しいと。  ちょっと具体的な例えを出しますと、韓国というのは人口規模も国土面積も全然違うんですけれども、ソウルに一極集中していますので、今のリーダーも将来のリーダー候補生もコンパクトに非常にまとまっていますので議員交流はやりやすいと。しかし、中国というのはどこにリーダー候補生がいるのかという話があるわけですね。共産党の青年部にいるとか、共産党対外連絡部にいるとか、全青連にいるとか、いや、そんなところにいなくて今辺境の自治体の首長やらされているとか、それよりもシンクタンクや大学の先生の方がいいんじゃないかとか、いろんな声があります。  国土も広いし、人口も大きいし、リーダー候補生もいろんな育てられ方をしていると思うんですけれども、効果的な議員交流ですね、特にリーダー候補生に限った場合、例えばどこを窓口にしてどういう動きをすればいいのか、具体的な動き方ですね、是非アドバイスいただきたいと思います。  それだけでございます。
  34. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 両参考人ですね、両参考人
  35. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 両方です。
  36. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) はい。じゃ、朱参考人からいきますか。
  37. 朱建栄

    参考人朱建栄君) おっしゃるように、中国、これからのニューリーダーというのは様々なところから出てくる可能性がありますので、まあ欲張らずに、一網打尽は考えないで、取りあえずできるところから積み重ねていくということですね。  そこで、考えれば、一つは年齢層。中国は今大体年齢で決まっているので、選挙がない代わり、今人事交代のルールというのは三選禁止と年齢制限ですね。大臣級は六十五歳で引退、局長は五十五歳、下の市長、日本の市町村に相当する県知事は大体四十五歳以下で就任すると。こういうような中で、年齢かなり上の人、有能であってもまあ次はちょっと上には上がれないということはもう大体分かると思うんですね。  それから、やはり中国これからの課題というのは経済発展なので、国政レベルで今後リーダーシップを取っていくには、ただのシンクタンクや、これから青年団ですね、今まだ青年団にいる人が五年後、十年後にすぐトップになることは実は可能性極めて低い。むしろ各地方のトップ、地方の都市の市長、副市長、それ実績のあるところですね。例えば、江蘇省というところの経済発展、どんどんと発展している。そのトップの一人、李源潮という人がまだ四十代ですね。間違いなく二年後の党大会では政治委員ないし常務委員になるとか。蘇州という小さい町ですけれども、そのGDPはもうすごく高いもので、内陸部の大きい省よりも大きい。そういうところのトップは当然これからもまだ重視されるんですね。そこのところはちょっといろいろ見ていく必要があるかと思いますが。  おっしゃる議員交流についてむしろ特に申し上げたいんですけれども、中国はこれまで極めて交流難しかった、これは事実です。中国はようやくいろんな意味で開放に向かい始めたのはわずかこの数年なんですね。さっき言ったNPO、NGOもそうですし、ほかの交流もそうですので、議員交流で今までのやり方をもうちょっと変えてもいいんじゃないかなと思うんですね。どういうやり方を変えるかと。それは相手の要請を受けて通り一遍の訪中、それで招いての訪日、そういうような交流だけでは本当の相互理解、信頼関係は生まれてこないし、突っ込んだ議論にもならない。  考えてみれば、先進国同士、今はもう戦争があり得ないようになったと。それは、ただ民主主義、複政党制をやっているからとは思っていません。戦前でも多くの国、実際複政党制を取っていたんですけれども、いろんな状況の変化の中で戦争に走る可能性もあったわけですが、戦後、やはりいろんな利益の共存もあるんですけれども、実はOECDのような組織で、かなりヒントになるかと思うんですが、OECDという先進国のいろんな利益、摩擦を調整する組織というのは、それは年に一回、二回の会議ではなく、その中に数百の小委員会をつくって、日米、日欧、いろんなトラブルを細分化して、その中で討論しクリアしていく。言ってみれば、多くの問題をみんな細分化して個々で対応することによって、それがたまって大きい衝突にはならずに済むようになるという一面、少なくとも誤解を解くという段階においてはこれは重要ですね。  日中、そういう意味で、議員交流でも今後はただの訪問だけでなく、もう本当に互いに一定の人数を決めて、この人数で互いに往復して交流することとか、あるいはもう互いに幾つかの小委員会をつくって、環境問題とか、もちろん中国には制限があるので政治は後回しにしても、環境や公害や省エネとか教育、福祉、そういう小委員会で定期的に対話をするとか、その可能性は私は出てきたと思います。  一方、中国自身は、それは可能性は私出てきたと思うんですけれども、中国、進んで日本に呼び掛ける意識はまだないと思います。それはむしろ日本側から提案し、徐々に促進し、中国をそのようなネットワークに絡めてさせていくと、そのようなアプローチが重要ではないかと思います。
  38. 天児慧

    参考人天児慧君) いわゆる非対称的な関係ですよね。ですから、韓国辺りと交流をするというのとはやっぱり違うと思います。  しかし、議員交流ということになれば、やはりカウンターパートは全国人民代表大会、全人代になると思うんですね。で、全人代のその代表と会うというだけではなくて、恐らくこちら側で全人代を一応受入れ窓口にしながら、非常に政策に関して様々な、例えば外交政策とか安全保障政策とか、それから経済問題だとか環境問題だとか、そういう具体的な重要な政策課題に関連する重要な機関ですね、組織、これをやはり訪問していくと。そこの、何といいますか、若手の人と、しかも影響力のありそうな人と交流をしていくというような、それをやはり心掛けることが大事じゃないのかと。  例えば、胡錦濤体制の一番重要なそのブレーンの、支えているのは言うまでもなく党中央弁公庁ですね。党中央弁公庁の主任の人なんかは非常に大事な方だろうと思いますし、あるいは党中央の政策研究室、これは中国共産党の基本的な政策を決定するその文書を作る、つまりそういう方針を作っていく非常に大事なところですが、中央政策研究室がありますね、そこの主任とか副主任とか、こういう人と会うとか。あるいは、中央党校、中国には共産党の学校というのがあるわけですね。この中央党校にいろんなところから、これから中央なりあるいは地方のトップで活躍しそうな人が一回その招集を受けて、それで例えば何か月間、六か月間とか一年間とかそこで学習するわけです。つまり、そこに、中央党校に将来の本当に重要な幹部になる人たちが集まるわけですよね。  だから、そういう中央党校を正に、を訪問して、そこにいる若手の人たちと接触をするとか、あるいは外交部と話をする、まあ外務省ですけれども、外交部の重要な若手の人と話をするとか、そういう全国人民代表大会を受入れにしながらそういうものを企画して、そこで接触して、それで非常に面白そうな人をやはりチェックして、それから継続的な交流がそういう人とできるような、そういうものは可能性としては現実的なのかなというふうに思いますね。
  39. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 ありがとうございました。
  40. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) じゃ、お二方おられますが、お二方、時間が許せばお二方にあれですが。  じゃ、澤先生の方から。澤雄二君。
  41. 澤雄二

    ○澤雄二君 ありがとうございます。  公明党の澤雄二でございます。朱先生と天児先生、一問ずつと思っておりましたが、時間がなくなりましたので、天児先生に一つだけお伺いをいたします。  今日のお話の中で、問題提起として三番目に、仮に利用価値が弱まった日本を米国はどう見るかと、永遠のパートナーであり続けるのかという問題提起がございました。そのお話の中でアメリカの対中接近外交の話をされました。それは多分、七〇年、七一年にかけて行われたキッシンジャーの隠密外交のことだろうというふうに思います。  実は、その少し前の一九六九年の十月から七〇年の三月にかけて、アメリカは対中国に対して小さなカードを毎日送り続ける時期がございました。どういうカードかというと、例えば中国の卓球選手二人がアメリカに行く、その二人についてはビザは要りませんよというような、本当に小さなカードなんですが、毎日一枚、二枚、三枚、連日のように送り続ける時期がありました。  実は、これは一体何だろうかというのが私の卒論のテーマでございまして、七〇年の暮れにその卒論を出すんですが、当然それを考えるときに、その当時、アメリカの置かれている国際情勢、それからアメリカ東アジアにおける国家利益は何なんだ、そこから導き出される政策というのは一体何なんだと、こう展開していきます。そうすると、結論の一つとして、日本の頭を越えてアメリカ中国に接近する可能性がある、しかもその場合、日本中国対立関係に置いておいた方が最も効果的であるという結論が導き出されてくるんですよね。  ですから、この問題意識は、多分私だけじゃなくて皆さんの頭の中にずっとこれまであったんだと思うんですよ。あったんだと思うんですが、現実問題はそんなことを考えるような国際情勢になったことは一度もありませんでした。今、天児先生が三番で提起されたような問題提起ですね。というよりも、その問題意識があればあるほど、逆に日本アメリカ関係をどうすれば緊密にできるかというテーマの方が実際問題すごく重要な問題で、これまで展開をしてきました。  そこで質問なんですけれども、この先生の言われた永遠のパートナーであり得るかと、利用価値がなくなったときにアメリカ日本をどうするかという問題提起に対して、一体どのような国際情勢になればそういうことが起こり得るのかということを想定されているか。そのときに、具体的にアメリカ日本に対してどういう対応をするかというのをお聞かせ願いたいと思うんですけれども。  以上です。
  42. 天児慧

    参考人天児慧君) これは非常に難しい想定ですね。  私がそこで出した問題はある種の警鐘なんですね。ある種の警鐘であって、具体的にどういう状況を想定してアメリカ日本を無視するといいますか、あるいは日本とのパートナーというものを切るかという、そうではないんですね。つまり、日本が基本的に対米協調のメッセージ、あるいは対米協調というものを我々は堅持するんだと、少なくともそういうことを言い続け、実際にそうする限りにおいては、アメリカ日本に対して敵対的ではないですね。どういう国際情勢であってもそうだろうと思います。  ただ、問題は、非常にそれは、日本を非常に利用、利用というのは言葉は悪いですけれども、日本を何かの形で頼らなければこの問題は解決できないという形で日本というものを非常に重要なもの、重要視してその日米関係を通して何かを行うという、こういうことがやはりだんだんなくなってくるという話なんです。  これは必ずしも、例えばどういう状況というのが、例えば、そうですね、国際秩序というものが少し変わってくるというかな。今私は、今アメリカ一極の圧倒的支配の秩序と、言わば覇権的な秩序で、みんなバンドワゴンのような形でアメリカに乗っ掛かっているという状況だとは必ずしも思わないんですね。  もちろん、そういう状況はあったと思います。特にイラク戦争を展開しているときはそうだと思いますが、しかしアメリカもその強引さをやはりある種の、まあ検討することを通して国連というものの組織をやはり重視するとか、あるいは大国間の協調性というものを重視するとか、そういうものをやり始めてきて、戻ってきているわけですね。ですから、国際協調の流れというものは少し出てきていますから、そういう状況の中でやはりどこと話を付ければそのアメリカ利益というものがより反映できるかという、こういう発想は僕は持つと思うんですよね。  ですから、要は日本が、やはりそういう中で日本なりの、やはりアメリカとの、日米の同盟、日米協調というものは前提としながらも、しかしそれは常にアメリカの手足になって動きますよというんじゃなくて、アメリカ日本にとって、こういう例えば国際社会を将来つくっていけばそれはお互いにとってプラスになるし、それが全体として国際社会の繁栄に非常に役に立つというものを日本がメッセージとして伝えながらアメリカとある種のいい関係をつくっていくという、こういうことができれば、私は対日関係というのは非常に日本自身の発言力を聞くという構図ができるだろうと。  だから、状況の問題というよりも日本自身の戦略的な一つのとらえ方というか、そういうものとして理解していただければというふうに思います。
  43. 澤雄二

    ○澤雄二君 ありがとうございました。
  44. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 佐藤雄平君。
  45. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 民主党の佐藤雄平です。  一点だけ、朱さんにお伺いしたいと思います。  小泉総理の靖国参拝がありました。昨年は本当に反日抗争というもう大変な中国での、あったわけでありますが、いやに今度は、いわゆる人民、国民の皆さんは静かなんですね。さっき朱参考人から謝罪という言葉を聞いて、なるほど、これはその政府が謝罪することは国民の皆さんも謝罪して、大分これはその変化があったのかなと思う一方、その靖国参拝そのものは、ある意味では私は中国人民のナショナリズムを相当高揚さしたと思うんです。それがつい昨年と今年では違っておるわけですけれども、その辺の何か背景があるんであれば教えていただきたいなと思っています。
  46. 朱建栄

    参考人朱建栄君) 四月に大規模なデモ中国の複数の大都市で沸き起こったわけですけれども、今回の小泉首相の五回目の靖国神社参拝に、中国の中で、少なくとも日本から見れば予想以上に反応は静かだったということはそのとおりですけれども、またちょっと文化のことで余計なことを申し上げますけれども、日本中国に対して我々は何度も謝罪していると言うんですけれども、中国は、中国語で理解する謝罪というのはどれぐらいあるのかと、あるいは、もうまた行動でぶち壊しているのではないかということを言うんですが、中国はまた、外部に対して素直になかなか謝罪しようともしない、こういう状況も実際にあるんですね。  で、一方、中国は、じゃ内心でそういうことは分からないかと。それはまた分かっている部分もあるので、四月のデモの後、北京、上海などの日本の大使館、領事館、日系企業、日系レストラン、破壊受けたものの映像は、中国の各大学で学生に絶対全員見ないといけないという教育を受けたわけですね。あなたたちは愛国的な情熱でやったかもしれない、しかし結果として一部の悪い人に利用された、そして悪い結果をもたらしてしまったと、我が国のイメージダウンを招いてしまったと、そのようなことも実際、一部はそれは教育はあったと思うんです。  もう一つは、やっぱり中国自身も四月の、政府として対応をそこから学んだものがあって、今回はもう、どうも首相の靖国参拝はまたあり得るということを想定して、どうもやっぱりもうインターネットすらそういうようなところを、とにかく靖国のことですぐ反日デモを呼び掛けるというようなことはもう絶対駄目というようなことで、いろんなところで圧力などを掛けた、それが一つ。  もう一つは、恐らくまあ一種のガス抜きですけれども、中国政府は今度は割に強く日本に対して非難するわけですね。それも一方、五回目の参拝への不満ですけれども、一方、要するに国内向けに、もう我が政府はやっているんですから、学生諸君はそんなに町に出てやらなくても我々はちゃんとやっているというようなことを見せる一面もあったかと思いますね。  しかし、今回のこと、それは尾はかなり深いという部分で本当に心配していますけれども、これからの、来年九月の自民党の総裁で、その任期満了までどうなるかと。日中の首脳間の交流、これはもう停滞するということはほぼ間違いないんですけれども、なるべく日中関係の幅広いいろいろな交流に悪影響を及ぼさないようにすることと、それから、まあ逆説的ですけれども、首相は今回もう靖国にもう行っちゃったと、ということは、少なくとも年内、あるいは来年の初めまでは各マスコミが首相と会うたびに靖国に行くかどうか質問はしなくなるわけですね。  そういうような中で、もう少し次の政権でも、日本中国、韓国との関係で靖国のことがまた政治問題化しないようにやるという、今からで、行った後でもそれに取り組むということは私は遅くはないと思うんですね。ですから、そこのところを期待したいと思います。やはり、感情が更に互いに悪化するということは両国にとって悪いことですね。  もう一点だけ最後に申し上げたいんですけれども、中国はもう胡錦濤政権、決して、A級戦犯のことで日本が何か譲歩したら、すぐB級、C級でまた歴史カードで切ってくると、やってくることは、私は今の指導部、そういうことは絶対あり得ないと思っています。むしろ、口では言わないんですけれども、江沢民時代に、二回目の靖国参拝で江沢民主席がそれを政治問題化して首脳交流しないという条件にしてしまったということは、もしかすると今、内心で少し後悔しているかもしれません。少なくとも二度とはしたくない。いったんそれをやってしまったら、今度解くのが大変なんですね。  ですから、そこのところを考えれば、もうちょっとお互いの努力が必要だと。そして、それが完全に日本側が押し切られるような形で、少なくとも多くの人がそういう理解がない形での可能性も私はまだあると思うんですね。東洋人同士では、やはり東洋の知恵は幾らでもあるはずです。  台湾と大陸の間に、九二年、シンガポールで共同宣言に調印するわけですけれども、もう日付のところで引っ掛かってしまった。台湾が使うのは民国何年、中国が使うのは西暦何年、そのどっちかの表示をするんでは、もう相手に譲ってしまったと、押し切られるということでもめていたんですけれども、最後に考えたのは、それは年号を記入しない、四月十二日とのみ書くという形で方法を考えたわけですね。  まあ靖国のことでも、もしかすると、ある程度中国から見れば一応分祀か何かをした。で、神社側は、いや魂は分霊できない。首相としては、私は今までどおりに変わっていない。そういうようなことでも知恵を働けば、私は外交で言っている誠意、責任感を持ってやれば、私はそういうところも見付かると思いますね。双方の努力ということを期待したいと思います。
  47. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見を御開陳賜り、有意義な調査を進めることができました。心から厚く御礼を申し上げます。  お二方の今後ますますの御活躍を調査会一同御祈念申し上げまして、御礼のごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  48. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  49. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際問題に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 松田岩夫

    会長松田岩夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時散会