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参考人(
土生修一君) 読売新聞国際部の
土生と申します。よろしくお願いします。
私、先月初めに四年四か月のロンドンの勤務を終えて戻ってまいりました。九〇年代の真ん中にローマに三年少しおりましたので、都合七年半ほど
ヨーロッパ大陸とイギリスにおりました。
それで、今日のテーマの
EU憲法なんですが、今年の五月のパリの
投票結果が発表されたときには、その前後パリにおりました。びっくりしたのは、テレビをつけると毎日討論会をやっていて、賛成派と
反対派がパンフレットを持ってちょうちょうはっしやっていると。町へ出るとウイとノンのポスターがべたべた張ってあって、結果が決まった日、たしかバスチーユ広場でしたかね、若い
人たちが、恐らくいわゆる左の
人たちだと思うんですが、もう大騒ぎをしていると。
要するに、長い間
ヨーロッパで
EUの取材をしていますと、取材の現場というのがほとんど
会議場、年に四回
EUの
首脳会議というのがあるんですが、大体そこで物が決まる。僕ら取材する側も、昔はまだ場所が転々としていたんですが、今はもう
ブリュッセルであって、
ブリュッセルの
EU本部の地下で何かパンをかじりながら取材をするのが大体普通の
EU取材というふうになっているんですが、これだけ普通の
人たちが
EUの問題で熱狂しているというところを少なくとも私は初めて見ました。
やっぱりこれは、
憲法そのものに対する関心というよりも、これまで
自分たちがよく分からないままに、例えばイギリス人、イギリスは別ですね、
ドイツ人とイタリア人がもう財布を開ければ同じ
お金を使っているわけですよね。それだけ変化が起きたのに、それが何か、その変化を
自分たちがつくった手ごたえがないまま来ていると。そういう長年のやっぱり一種の
不満が背景に
一つあったような気がします。その
不満を爆発させる装置になったのが
国民投票ということは言えると思います。
いかに関心が低いかという例で、先ほど
大野さんが、二〇〇二年十月の
ニース条約の
国民投票、つまり同じ問題で一年前に
ノーだったものが一年たったらイエスになったあの
選挙なんですが、私もそのときダブリンに行っていて、終わった後にプレスルームにいると、地元の
アイルランドタイムズだか何か、地元の新聞記者が来て、何人だと。
日本人だと言うと、
日本人が何でこういう問題に関心があるんだと聞くので、ロンドンに駐在していて、
EUも
日本にとっては関心があるんだというふうに言いました。じゃ、
ニース条約についてどう思うかというふうに聞かれて、こっちもよくちゃんと読んでいなかったので、あなた方、当事者の
国民自体がよく知らないものを私もよく分からないと、そう
答えたら、次の日の新聞を見て、見出しを見てびっくりしたんですが、有権者の無知に、たしか、驚き、外国人記者語るみたいな形で載っていて、いや、そういうつもりで言ったわけじゃないんですが、つまり、やっぱりそこにいる
人たち、そこにいる新聞記者も、どうも分かっていないまま
投票しているんじゃないかというような気が聞く側にあったので、私の
答えがそういう形で新聞に載っていると。
今年の二月、スペインで
国民投票があって、これはイエスだったんですが、この直前の世論
調査は五人中四人が見たことないと、読んだことないと。これはどうやってそれでイエス、
ノーが分かるのかよく分からないんですが、それから比べると、
フランスはもちろんそういう経験があったので、大量のパンフレットを作ってこういうことですよというふうに周知徹底させました。
今度は関心が高いから、じゃ理解されたかということになると、これはちょっとクエスチョンマークで、つまり、何で
反対したかという理由の一番たしか
フランスで多かったのは、つまり仕事がなくなるということですね。あのときたしかはやっていたのは、工場を移転、それからポーランドの水道工というか配管工でしたかね、というのが一種の流行語になっていて、どういうことかというと、つまり
EUが
憲法の結果、
統合が進むと、東欧の、
東ヨーロッパの
人たちの労賃が安いので
フランスにある工場がみんなあっちに行ってしまうと。そうすると、今
フランスで働いている
人たちは職を失う、その代わりに今度はポーランドに
代表される東にいる安い労働力の
人たちが一斉にパリにやってきて、今度は単に工場がなくなるだけではなくて、そういう仕事を今度は奪ってしまうと、ゆえに
反対だと、こういうのが一番
反対の理由で多かったんです。
ところが、この
EU憲法というのはこれまでの
条約の集大成で、今までゼロだったものを
EU憲法作ったわけではなくて、今まであった基本
条約の上に、つまりプラス付けて出したんです。職がなくなるという、いわゆる
市場を自由化して人と物を交流させるというのは、もう九二年のマーストリヒト
条約のときに
条約の中に入っているわけです。つまり、雇用不安を抱える
人たちが今回の
憲法に
ノーを言っても、その雇用が、労働力が動いていくという流れはもう既に決まったことなので、この
憲法に
ノーを言えばそれが止まるかというと、それとはちょっと別の問題なような気がします。
じゃ、この
憲法の中で一番重要だった、一番問題になったのはどこかというと、先ほど
大野さんもおっしゃいましたように、持ち票というのが決まっていて、要するに理事会で
決定をするときにそれぞれの国が何票持っているかというところが一番ポイントで、
ニース条約、
一つ前の基本
条約ですけれども、このときにポーランドとスペインに少しおまけをして票を上げたんですね。で、これでちょっと決まらなくなるので、この票を少し
EU憲法で下げてあります。当然、スペインとポーランドからすれば
自分たちの
意見が通りにくくなるわけですから、これに
反対します。
だから、元々この
EU憲法をなぜ作ったかというと、十五が二十五になって
多数決、要するにそれまでの原則が全会一致だった、全会一致ではとても決まらないので、その
多数決をやる分野を広げて、なおかつ決めやすいようにしましょうと、こういうことです。ただし、それをやると今までの発言力が増える国と減る国がある。減る国が
反対する、ここが一番もめたところで、作る側として。
二〇〇三年でしたかね、十二月の
首脳会談でちょうどイタリアが議長国で、そのときにひょっとしたら
EU憲法決まるかなというときに、ポーランドがもちろん大
反対したんです。そのとき、たしか一週間前にポーランドの首相がヘリコプターの事故か何かで大けがしたんですが、ここで黙っていると通されてしまうというんで、たしか車いすに乗ったまま
ブリュッセルに来て、それで絶対
反対だといって、そのときはたしか合意ができないまま流れてしまいました。それほど作る
人たちの大きな関心はどうして
決定するかというところだったんですが、実際にかけてみると、そこは
余り争点にならなくて、もう既に決まっている中身についての
不満だったわけです。
だから、よく言われるのは、ゆえに、今回の
ノー、ノンというのは、
憲法それ自体ではなくて、これまで
EUが歩んできた
統合そのものに関して不安がある、このまま行くんじゃないかと、そういう形での
ノーであったということをまず押さえていただきたいというのが現地にいた感想です。
それで、これはちょっと話が外れるようなあれなんですが、まあ一種の名称問題というそのことですが、そういう
意味では、今回の
憲法も、別に
憲法という名前を付けなくて、
条約で早い話がよかったわけです。
じゃ、なぜ
憲法という名前を付けたかというと、それは、やっぱり二十一世紀になって、元々この
EUというのが
フランスとドイツをもう二度とけんかさせないということで始まったのが
一つの大きな目的で、それはもうほぼ達成したと。
経済統合という理由からももう
ユーロができたと。だから、ある程度所期の
EU統合の目的が達成されて、じゃ次は何かと。これも先ほど
大野さん御指摘のように、これから先は
政治統合に向かうと。そのためには、単に新しい
条約ですと、議事進行のための新しい
条約を作りましょうというだけではなくて、
憲法という名前にして
一つの
意思といいますか、これから
政治統合に向かうという
欧州全体の決意表明のような象徴的な
意味を込めて
憲法と付けた。もちろん、これはドイツが
主張して、イギリスはかなり抵抗していましたけど、それで
憲法という名前を付けたと。
これも、もし
条約という名前であのまま行っていればそのまま決まったかもしれません。だから、それだけやっぱり
憲法という名前に重みを置いて付けたんですが、逆に、これが選ぶ側からすると、中身は
条約なんですが、包み紙が
憲法という包み紙になっているので、恐らく実態以上に何か大きなものが決まっていくという
イメージが
一つあったような気がします。
これは、
EU憲法というのはコンスティチューショナルトリーティーで、あくまでも
日本語で言うと
憲法的
条約で、もう
条約なわけですから、いわゆる僕らが思う
憲法、
憲法というのは国を前提にして統治機構等々を規制する法ですが、
EUにはそんな単一の
国民も、いわゆる従来の
意味での
国民も領土もないわけですから、そういう
意味では厳密に言うと
憲法じゃないわけですが、そういう一種の象徴的な
意味での
憲法という名前を付けた。それが逆に裏目に出て、何か実態以上な
イメージをみんなで与えてしまったというところが
一つの今回の
ノーの裏側にあるような気がします。
ついでに言うと、なかなか
EUというのは複雑なんで、僕ら
日本のメディアも報道するのに苦労するんですが、用語で
EU大統領と、
EU憲法ができると今度は
欧州大統領というのができるんだということで、これは割に分かりやすいので、テレビ、新聞などによく
EU大統領などを
内容とする
EU憲法がという書き方がされていますけど、この
EU大統領というのは何だろうと思ってよく見ると、これはプレジデント、
欧州理事会の議長のことなんです。つまり、
欧州理事会というのは今の
首脳会議、これは半年ごとにぐるぐる回って、今はイギリスのブレアがやっていますけど、要するに、今までは
首脳会議のホスト国の
首脳が半年間議長を務めて、また次というふうに輪番制で回っていくものを、それをやめて、
首脳会議で議長を選んで、その議長は二年半ずっとそこにいると。
権限自体はほとんど変わりません。
つまり、任期を二年半に、五倍に延ばして
首脳会議が選出するということで、別に今まで全くなかったのが
EU大統領というふうになったわけじゃなくて、英語的には両方ともプレジデントなので、このことについては、
日本の新聞見ると、大統領が新設されると、いや、これは本当に
欧州合衆国ができるのかなという
イメージがありますが、このこと自体は、先ほどの争点からいくと現地ではほとんど争点になっていません。だから、そういうことはやっぱり、まあこれは僕らのあれですが、翻訳ということが
日本の側で読むときに現地と違う
イメージができてくる
一つのあれだと思います。
ちょっと手前みそですが、読売は議長とまだ孤軍奮闘で使っているんですが、これも将来、これは分かりにくいと、何度も、僕らも向こうで書いていて、東京本社から、いや、これは大統領の方が分かりやすいと言われたんですが、でも、確かに分かりやすいんですが、そして将来確かにそれが大統領的な
権限を、つまり同じ人が二年半やる、再選も可能で五年やる、五年やると今半年ですから二倍の十倍ですか、十倍延びるわけですから、そうすると、当然、今紙の上の
権限が同じでも、だんだんその人が力を持ってくる可能性もあります。だから、将来的には大統領的なものに変化するかもしれませんけれども、現時点ではあくまでも議長であるという認識の方が実態に近いような私は気がしています。
次に、この名称から離れて
内容なんですが、この
内容というのも、この
EU憲法がなぜ否決されたかというときによく言われるのは、つまり
EUが
一つの国のようになってしまうと、それぞれの主権国家のつまり主権の部分がなくなると。
雇用と同じように、例えば
オランダの例は、移民をこれ以上増やしたくない、それから、
オランダは
フランスやドイツに比べれば小さな国なので、
欧州が
一つの国のようになってしまうと
自分がのみ込まれてしまうと、だから主権を譲り渡したくないというのが
一つの
オランダでの
反対理由だったんですが。
これもこの
EU憲法をよく読んでみると、最初の方に、ちょっと今手元にあれなんですが、基本的には、
加盟国が
自分たちで解決できない問題があったときに初めて
EUがそこに乗り出してくると。だから、原則は主権国家がやりますよと、でもそれぞれがやってもうまくいかない分野がありますねと、じゃその場合には
EUがやりましょうと。そのときに決めた
EUの法律はそれぞれの国の法律よりも上ですよと。ただし、適用される分野はそれぞれの
加盟国ができないところですよと。
これ、普通に素直に読めば、やっぱり基本は主権国家というのがベースで、いわゆる
欧州統合には、常に、連邦派、つまり
欧州合衆国を目指そうという
人たちと、いや、主権国家の連合でいいと、国家連合の方がいいという国家連合派と連邦派の二つがあるんですが。
一般的に
EU憲法と言われたときに、それが
欧州連合への道ゆえに
反対という
人たちもいるんですけれども、ここの
憲法自体をよく読んでみると、どうも少なくとも最初の方に書いてあることは、主権国家の方の尊重の方が強いような気がします。
あのときに、合意が成立したときにブレアの記者会見というのが
首脳会談の後にやって、そこ見ていたんですけれども、ブレアは非常に御機嫌で、なぜ御機嫌かといえば、イギリスというのは特に主権を大陸に譲るというのに非常に敏感ですから、当然
反対も、当時はまだ
国民投票をする予定でしたから、そこには非常に敏感になっていました。なぜ御機嫌かというと、要するに、今度の
憲法はこれでつまり今後の
統合に対するブレーキなんだと、要するに、ようやくこれでブレーキが掛かると。ところが、
一般的にはそれはアクセルだというふうに思われているんだけれども、ブレアとしては、これはブレーキだからこれで安心してイギリスでもオーケーもらえるというような言い方をしていました。つまりそれほど、同じ
EU憲法、中身は一緒なんですが、ある人、あるいはある解釈からするとそれがアクセルに見えるし、ある立場から見るとそれがブレーキに見えると。それぞれ誤解しているかというと、確かにお互いにそういう部分があって、それは本当にそれこそ運用次第みたいなところがあります。
これは極めて分かりにくい。だからここもやっぱり、単に今まで偉い
人たちだけが決めていたので分かりにくいという要素だけではなくて、この
EU憲法それ自体にその二つの要素が一緒に入っていて、一種のあいまいさがあるのでなかなか普通の人は付いていけないと。そうすると、
自分にとって不利なところに反応して、そこで態度を決めてしまうということがやっぱりこの
EU憲法の中に入っているような気がします。
あともう
一つ付け加えると、さっきの主権国家というところからいくと、つまりさっきの大統領と言われる
欧州理事会ですが、これはいわゆる
各国の
首脳がつくるところで、よく言われるのは、
ブリュッセルに
EU官僚、
EU本部があって、一番
EUに対する反発は、
自分たちのことを
ブリュッセルにいる官僚が決めていると、そこに対する反発で、
EU憲法も要するにそういう
ブリュッセルの
人たちがまた強くなるんだろうというのがまたこれも
一般的な
イメージです。
ところが、これはもう
EU憲法をよく見てみると、先ほど言いましたように、議長を常任化する、
権限自体は強くないけれども、実態として強くなる可能性を秘めているわけですね。あと何か補助金か何かの予算の
権限をいわゆる
欧州委員会、つまり行
政府から
欧州理事会、
首脳会議の方に移すということも
憲法の中に書いてあります。
ということは、
首脳会議の力を今よりも少し強めてあります。相対的に言うと
ブリュッセルの力がちょっと落ちているわけで、そういう
意味からも、
一般的に言われる
EU憲法を作るということが、必ずしも
EUが強くなってそれぞれの
加盟国の主権が落ちるということには必ずこれもつながりません。それもまた裏返しがあるので、じゃ逆だというふうに言い切れないところが難しさなんですけれども、事ほどさように、相反するものが
一つの
憲法と言われる
条約の中に入っているという複雑さを御理解いただければ、今後の何かの折に参考になるんではと思っております。
それであと、今後の見通しというふうに触れたいと思いますが、これで一通り、今もうだれかが言っていましたけれども、これでいわゆる
EU憲法自体はもう冷凍庫の中に入っていると。終わっては、死んではいないけれども、あのまま要するに冷凍庫の中に今保管してある。だから、どこかの時点で解凍するか、あるいはまた違うものを作るか、ここがこれからのどうなるかですが、当面
フランスで、
フランスというのは、ジスカールデスタンが起草したわけですから、
代表になって。起草した
代表者がいる国が
ノーと言ったわけですから、これはちょっとすぐというわけにはいきません。二〇〇七年に
フランスの大統領
選挙がありますので、少なくともそこまではちょっと動きようがないです。だから、そこまではもう冷凍庫のドアは閉まったままで、動くとしたら二〇〇七年以降と、こうなります。
フランス自体の世論
調査を見ると、
EUに
憲法は必要かという問いに対しては、七割ぐらいの人がイエスだと言っていますので、しかも、さっき言いましたように、
反対の一番大きな理由が仕事がなくなるということなわけですよね。そうすると、
経済的な条件が好転して、
EU憲法に投じても
自分の職が大丈夫だということになれば、これはまた違う結果が出るような気がします。だから、大統領が替わる、
経済状況が変わるというような条件が重なれば、二〇〇七年以降ですが、今度はイエスになる可能性も高くなるような気がします。
そのときにどこが問題になるかというと、やはりイギリスです。
本来は、今回もイギリスが、僕はロンドンにいたので毎日イギリスの新聞を読んでいますけれども、そのときにワーストシナリオだと言われたのは、全部が賛成してイギリスだけが
ノーと言うと。そうすると、
EU憲法がつぶれたのはイギリスのせいだというふうに言われて、イギリスだけが悪者になる。
かつ、イギリスは
ユーロに入っていませんから、じゃ、そのときにどうするかと。今の
EU憲法を見てみると、要するに一か国でも
ノーと言っても、
欧州理事会、
首脳会議を開いて、さあ、どうしようかと検討してオーケーをすることもできるというふうに条項があります。
フランスはさすがにさっき言ったように主人公ですから、主人公が
ノーと言ったものを、これをイエスと言うわけには、ちょっと無理ですけれども、イギリスの場合は
ユーロに入っていない。だから、そのときのシナリオは、イギリスは
ユーロに入っていないので
加盟国としては半人前だと、だからあなたのところだけ
ノーを言ったけれども、半人前のあなたのおかげで我々がストップするわけにはいかないと。イギリスだけ仲間外れにして前に行くと、こういうシナリオが流れていて、イギリス的にはこれが一番最悪だと言われていました。
そういう
意味では、イギリス・ブレアはもちろん残念だと言う。
フランスが
ノーと言った後にブレアは残念だと言っていましたが、本音のところは、これで少なくとも一番最悪の
自分だけが
統合を邪魔したという悪者にならなくて済んだと。しかも、もうこれで
国民投票も凍結してしまいましたから、そういう
意味では、これをラッキーと呼んでいいのかどうかはあれですが。
ただ、これがまた二〇〇七年以降に、さっき言ったように状況が変わって
フランスがイエスというふうになる時点になっても、イギリス自体の条件は変わりません。イギリスは幾ら景気が良くなろうが悪くなろうが、やはり
EU全体に入るって、その
EU憲法に入って今後
統合が進んでいくことについて、普通の
人たちは、イギリス人というのはやっぱり半分
ヨーロッパですけれども、そうじゃないところもありますから、これはいわゆる一年や二年、あるいは十年たってもそういう条件は変わりませんから、もう一度今度は
EU憲法の復活のプロセスになったときにやっぱりかぎを握るのはイギリスだというふうに思っております。
ただ、もう最後ですが、やっぱり
ヨーロッパは、この
ヨーロッパ統合というのは動きが遅くて、つまり僕らメディアからいくと、僕らのメディアのシャッタースピードというのは、新聞だと朝夕刊を出していますからシャッタースピードがかなり速いカメラで写しています。そうすると、
EU統合って遅いから、何度撮っても止まっているようにどうしても見えてしまう。動いているときはけんかをしているときだから、いつもけんかしているように見えるんですが。
ただ、長いスパンで見ると、そういうふうに、今やイタリア人と
ドイツ人と
フランス人は同じ
お金を使っているし、それから日常的ないろんな決まり事はほとんど
EUの法律で決まっているということで、なかなかメディアがその動きをとらえにくい現象のような気が実際に記事を書く側から見ての実感なんです。
やっぱりすごいなと思うのは、国力が同じ国が、主要国国力が同じで、独、仏、英、イタリアもほぼその人口とかいうところで同じ国力だと、だから昔はひょっとしたら、つまりけんかしてみないとどっちが勝つか分からない、だからもめたときにやっぱり戦争への誘惑というか、勝つかもしれないというところで戦争を何回もやった。
でも、同じ条件だから、逆に国力が同じだからこそ一緒になれると、一緒に組みやすいと。片一方が大き過ぎると小さな方はのみ込まれてしまいますから、いわゆる対等合併ができないわけですよね。だから、そういう戦争の原因になった、同じ国力が似ているということを、第二次大戦が終わって逆手に使って、今度は
統合のエンジンに変える。
その戦争の原因になった石炭、エネルギーの取り合いというのも、そういう戦争の原因になった、エネルギーが原因になったのだったらば、それを共同管理すればいいということになって、
EU統合の最初は石炭と鉄鉱を一緒に管理するということになったと。だから、戦争の原因をそのまま逆手に取って、しかもそれを五十年以上掛けて右に行ったり左に行ったりジグザグしながらも、気付いてみるとかなり前に行っているというのがやっぱり
ヨーロッパ的なすごさといいますか、見ていてそういうのが実感です。
その
ヨーロッパというのはなかなか複雑で、ニュース的にも小さいですし、戦争をやっているわけでもないですし、
日本に対する影響力も実態的なところはそんなに大きくないですが、複雑怪奇ゆえに取っ付きにくい。でも同時に、複雑怪奇ゆえに参考になるといいますか、付き合っても飽きない相手といいますか、そういう
意味では是非、地味な地域ではありますが、非常に栄養分が詰まっているような気がいたします。そういう
意味では、この複雑怪奇であるゆえの面白さみたいなのが少しでも伝わったら私としては非常にうれしいことです。
ありがとうございました。