○
今井参考人 おはようございます。
本日は、お招きいただきまして大変ありがとうございます。こういった機会を与えていただきましたので、精いっぱいお話をさせていただきたいと思います。
私が
参考人として求められているのは、
憲法技術や
憲法論理の解説ではないというふうに認識しております。諸外国の
国民投票であるとか
日本国内の各地の
住民投票の
現地取材をずっと重ねてきましたから、その事例について具体的に話をすることが私のきょうの役割だと思っておりますので、そのことを中心にお話をさせていただきます。
初めに、お手元に
意見陳述の要旨をお渡ししてありますので、それをごらんになっていただきたいと思うのです。
私は、最初に
ポーランドに行ったのが八一年なんですが、八二年には
ポーランドで戒厳令が布告されまして、私自身も二回ほど逮捕されまして、
国外退去処分になりました。それから八九年のベルリンの壁の崩壊まで、旧共産圏にはどこへも行けない状態が続いていましたが、八九年以降、
東ヨーロッパあるいはソ連の取材を再開させました。その中で、バルト三国、
ソビエト連邦、
ロシアなどが民主化の過程においてさまざまな
国民投票を実施しました。私と
国民投票の出会いはそこです。その後、日本に戻りましてから、新潟県巻町を皮切りに各地の
住民投票の取材を重ねてきました。
住民投票と
国民投票にはもちろん違いがあります。まして日本の場合は、
住民投票は
法的拘束力がありません。それは承知の上で、しかし、本質的なところは変わっていないと思います。それは何かといいますと、大事な問題を
主権者の直接投票で決めるということです。委員の
皆さん方はもうよく
御存じだと思いますが、改めて確認しておきますと、選挙というのは、それが
国会議員の選挙であれ、
首長選挙であれ、
町内会の
役員選挙であれ、皆、人を選ぶものです。
住民投票、
国民投票というのは、
主権者が直接事柄を決定することです。
例えば、
郵政法案でいいましたら、さきの総選挙は
国民投票的な総選挙というような言い方が一部マスコミからされましたが、最終的には、選ばれた
国会議員の
皆さんが
郵政法案についての可否を決めるということで、決して国民一人一人が
郵政法案について可否を決めたわけではありません。これが選挙と
国民投票、
住民投票との違いです。
そういう意味でいいましたら、私が取材をずっと続けてきました
日本各地の
住民投票と諸外国の
国民投票では、本質的には同じだというふうに考えています。
そこで、その二つの問題から入っていきたいと思います。
まず、最初に私が
国民投票と出会ったのは、九一年二月九日の
リトアニア、
ソ連邦から離脱するかどうかの
国民投票でした。そして、その翌月には
ラトビア、
エストニアで
国民投票がありました。
実は、この一年前に、
リトアニア、
ラトビア、
エストニアの三国は、十五共和国ある
ソ連邦から離脱すると宣言をしました。しかし、
ゴルバチョフはそれを許さなかった。仕方がないので、
自分たちはもう勝手に
国民投票をやって離脱を宣言するというふうに言ったわけですね。それに対して
ゴルバチョフは、だったら、
ソ連邦を解体するかどうかの
国民投票をやるから、その結論を受けてほしいというふうに言いました。これは、ソ連という国ができて一度もやったことがない
国民投票を、最後になって
ソ連邦を解体するかどうかという
国民投票にかけると言ったわけですね。
これは、
ソ連憲法の第五条、「全
人民討議、全
人民投票」という項目がありまして、こんなふうに書いてあります。「
国家生活の最も重要な問題は、全
人民討議にかけられ、また全
人民投票に付される。」
ゴルバチョフは、これによって連邦を解体するかどうかを決めたい、そして、
ソ連邦の人が解体すると言ったら君たちも自由じゃないか、独立できるじゃないかというふうに言ったわけですが、
ラトビア、
エストニア、
リトアニアの
人たちは、お断りするということでその
国民投票には参加しませんでした。そして、
自分たちが個別にやったのが、この
レジュメに書かれています、二月九日、三月三日、三月十七日でした。
しかし、その一週間前にソ連軍と
特殊部隊が、これは血の日曜日事件と言うんですが、一月十三日、十四人の人を
リトアニアで殺害しました。翌週の一月二十日には、
ラトビアで四人の人を殺害しました。そういった、おどしというよりも実際に人が殺される中で
国民投票が実施されたということです。
お手元の資料をちょっと見てください。わざわざカラーでつくっていただきました。この一—一というものですね。左の一番上、これは
リトアニアの国旗です。右が、これは
エストニアの国旗です。何が書いてあるかといったら、もう
皆さんおわかりのように、レファレンダム、一九九一年の三月三日にやりますと。
エストニアで
国民投票をやったときの
ポスターです。そして、左側の中段、これは
リトアニアの
最高会議に立てこもっている
若者たちです。一番下が、
ソ連邦を解体させるかどうかの
国民投票をやったときの
解体賛成派の
ポスター、そしてその二枚目、次は、
ソ連邦を売り渡すなという
反対派の
ポスターです。
一—一のこの左側の真ん中の写真、これは銃を持っているんですね。そして、土のうを積み上げている。なぜかというと、
命がけで
国民投票をやったということなんですね。いつソ連が入ってくるかもわからないけれども、
若者たちが、この四人は
皆さん税関職員です、
税関職員が
郷土防衛隊という組織に入って、みずからライフルを持って
国民投票をやったということです。
何が言いたいかといいますと、
命がけなんですね。
国民投票はゲームじゃありません。遊びじゃありません。国の一番大事なことを決めることですから、
皆さんこうやって真剣に
国民投票を実施されて、そして国の未来をつくってきたということです。そのことをまず御理解いただきたいと思います。
その後、
ロシア共和国では
エリツィン大統領を輩出するわけですが、その前に
ロシア共和国では、大統領を国民の直接投票で選ぶかどうかの
国民投票もやっています。その後、
エリツィンが実権を握ってからは、九三年四月二十五日に、この
レジュメに書いてありますとおり、四つの項目について
ロシアは
国民投票をやっています。この
国民投票では、ダー・ダー・ニエット・ダー、つまり、
イエス・
イエス・ノー・
イエスと答えてくれというふうに
エリツィンは言いました。
この結果が出たときに私は
現地モスクワにいたんですが、すぐに街頭に飛び出しまして、
モスクワ市民の
皆さんに、こんな結果が出たけれどもどうだというふうに聞きましたら、いや、これじゃ
エリツィンがのさばるとか、これじゃ共産党がまだまだ元気だからだめだとかいろいろな意見が出たんですが、その中の七十前後のおじいさんが一人、私にこう言ったんですね。結果はどうでもいい、大事なことは私たちに決めさせてくれたことなんだ、自分がこの国に生まれて七十年間、大事なことは勝手に党や政府が決めて責任をとらなかった、今度大事な問題を私
たち自身に決めさせてくれた、それが重要で、それがうれしい、だから結果は二の次なんだというふうに僕に言いました。私は、それを聞いたときに、ああ、やはり
国民投票というのはいいなと思ったんですね。それで、日本に帰ってからさまざまな問題を勉強して、
国民投票に関する本も出しました。ちょうどそのころから、新潟県巻町、岐阜県御嵩町で
住民投票運動が起こってきたということです。
その下、
日本各地の
住民投票を見てください。
レジュメの一枚目の下の方ですね。
九六年八月四日に
住民投票条例に基づく日本で最初の
住民投票が行われました。新潟県巻町です。
皆さんよく
御存じだと思います、
巻原発設置に関する問題。その翌年には、岐阜県御嵩町で
産廃処理施設の設置に関する
住民投票。そして沖縄県名護市、米軍の
ヘリ基地に関する
住民投票。九六年の八月四日から九九年末まで九
自治体で実施されました。その下、今度は二〇〇〇年から二〇〇二年末、この三年間の間には十一
自治体で実施されています。一番下、〇三年から〇五年九月末、つい最近までですけれども、何と三百四十一
自治体で実施されています。
最初は、いわゆる原発、基地、産廃と言われるこの三つの案件について
住民投票が多かったんですが、そのうち、
公共工事について、ダム問題であるとかそれからスタジアムの問題について
住民投票が行われるようになった。しかし、最近ではほとんど
自治体合併です。三百四十一
自治体というこの数は、数だけで言えば、今や日本は世界一の
住民投票活用国になっているということです。少し前まで世界で一番
住民投票を活用しなかった国が、わずか数年の間に、もう人類の歴史にないぐらい、三百四十一件という膨大な数の
住民投票が全国で行われているということを御認識いただければ幸いです。
こういったさまざまな
国民投票、
住民投票の現場を私が取材して何を学んだかということです。それは、
レジュメの次の
ページに書いてあります。よく学び、よく考え、よく話し合ったということです。それぞれ
賛否両派が
公開討論会を催したり、あるいは町営で
公開討論会を催したりして、よく
皆さんが話し合ってよく勉強されたということです。最初は
衆愚政治だとかいろいろなことを言われましたけれども、結局、
一つ一つの問題を
自分たちが責任を持って答えを出さなければいけないということで、町民の
皆さんが、それは原発であれ基地であれ産廃であれ、よく勉強されたということが事実だということを御報告申し上げたいと思います。
その二番目ですが、
住民投票、
国民投票はわだかまりや憎悪が残るんじゃないかと。わだかまりが残るといえば、
自治体合併でいえば、
住民投票をやった後も残っているところはあるでしょう。しかし、議会だけで決めたり首長だけで合併するかどうかを決めたら、もっとわだかまりが残ります。
住民投票をやることによってこのわだかまり度というのはかなり希薄化されるんじゃないかと私は思っています。
三つ目、
執行者に求められるもの。これは
国民投票でも
住民投票でも一緒ですが、
執行者は情報をきちっと提供して中立の立場であらなければいけないということです。そうしないと、
住民投票、
国民投票はひどいものになっていく。実際に、ここでは具体的な名前を出しませんが、
執行者である市長がどちらか片方に有利な動きをとったためにひどい
住民投票になったケースが幾つかあります。そういうことにならないように、今後、日本の
国民投票は注意をする必要があるんじゃないかと思っています。
二番に移ります。
スイスや
フランスではどんなふうな
国民投票が行われているのか。
スイスでは、春夏秋冬と
国民投票が行われていまして、今度も十一月二十七日にもう既に予定されていまして、後ほどそのお話はしますけれども、私たちが去年二月八日に取材に行ったのは、
自動車道路の建設と
賃借り法修正、性的・
暴力的凶悪犯に終身刑を科すかどうかの
国民投票でした。お手元の資料を見ていただけたらありがたいんですが、二—一というものです。
さまざまな人に会ってきました。
内閣法制局の
政治的権利部長、そして
政治経済有力紙の部長、そして
国営放送の
国内政治編成局長、この三氏の方々に、賛否を訴える
キャンペーン活動あるいは
マスメディアの
あり方、
投票方式について聞いてきました。ここに書いてあるとおりですが、簡単に言います。
まず、賛否を訴える
キャンペーン活動については、
賛否両派が
チラシ配布、
ポスター張りなどを行うことは原則として自由です。ただし、印刷費や人件費などについて、政府からの
資金的補助は一切ありません。また、大小にかかわらず集会や
勉強会を開催できるし、
戸別訪問も許されています。
公務員は、
公務員として活動したり勤務中に活動するのは禁じられているが、勤務時間外に個人として活動するのは認められています。
新聞への
意見広告は、広告の中身について
公平性が求められるが、
法的規制はありません。
新聞社はみずからの判断でそうした広告を載せたり拒んだりできます。資金力のあるなしで宣伝力に著しい差ができるのは不公平だという意見もありますが、
スイスでは自由な活動を優先させています。
ただし、
放送媒体については別の話になります。
スイスでは、
テレビや
ラジオで政治的な宣伝を放送することは一切禁止されています。
インターネットに関する特別の規制はありません。うその情報を流してはいけないという一般的な法律が適用されるだけです。もし事実と異なる情報を流されたら、裁判に訴えることができるが、
発信者の特定が困難な
インターネットの規制は難しく、
法的規制は整っていません。
次に、
マスメディアの
あり方です。
テレビや
ラジオの、
公平性が保たれる
討論番組などで
出演者はみずからの意見を自由に述べていいが、
ニュース番組などで社の姿勢や
キャスター個人の主張を一方的に押し出すことは許されていません。
次に、新聞に関しては、放送と違い、前記のような制限は一切ありません。社としても
記者個人としても
政治的見解を主張できます。
新聞社は、公平を期すためと称してみずからの主張をあいまいにしてはいけないとなっています。各紙がはっきりと主張を打ち出すことによって、読者は問題の本質をつかみ、確信を持って賛否の判断を下すことができるからです。
次に、基本的に
メディアは政府や議会から完全に独立した存在で、新聞も、国営、民間の
放送媒体も、
現行法の遵守は求められるが、政府と議会の干渉は一切受けないということになっています。
メディア規制のことが今当
委員会でも議論されていますが、
スイスではそういうことだということを御理解ください。
それから、同じくこの資料の百二十
ページに
投票用紙の写しがあります。そこにも書いていますが、
投票用紙は
有権者あてに
選挙人証明を兼ねた封筒に入れて送られてきます。封筒には、
投票テーマについての中立的な解説と、
テーマに対する政府と
発議委員会の意見が併記された小冊子が入っています。
有権者は
テーマごとに賛成か反対かを記入します。これがその封筒です。本物です。
投票用紙は
有権者あてに、
皆さんのお手元にもコピーが行っていると思います、こんなふうに裏表になっていまして、投票時間も書いてあります。あけると
投票用紙が入っています。
ドイツ語だけのものと、そして
フランス語圏に住んでいる人のために
ドイツ語、
フランス語両方が書いてある
投票用紙があります。一、二、三とそれぞれ
ミシン線が入っていまして、ばらばらに投票します。
これがその
マニフェストというか解説書です。議会はどんなふうに投票してほしいかがこの一番最後に書いてあります。このときは、
高速道路については
イエス、そして
賃借り法についても
イエス、
刑法改正についてはノー、
三枚目についてはノーと答えてほしいというふうに議会と政府は国民に求めています。しかし、中身については中立公平に、
賛成派が勝ったらどうなって
反対派が勝ったらどうなるかということを細かくここに記してあります。それが、一世帯ずつじゃなくて、全
有権者のところに個別に郵便で配付されます。
投票については
郵便投票が主流です。
投票所に行って投票するのは少数になっています。駅の待合室にも
投票箱を設置しています。ここでも私が感じたのは、非常に
皆さんがよく考えていらっしゃるということです。そしてよく話し合われているということです。
続いて、五月二十九日に
フランスで実施された
国民投票について。これは、
中山太郎議員、
保岡議員、
皆さん方が
フランスの方にもう調査に行かれていまして、その報告もされていますので、簡単に言います。
私は、
向こう側におられる官僚の方に会ってさまざまな話を聞いてきました。
保岡議員や
中山議員が報告されたとおりで、さまざまな規制があります。それは、
意見広告を
選挙期間中は出してはいけないとか、それから
テレビの放送については、合計百四十分の枠があって、それについてさまざまな、政党の大きさとか団体の大きさによって放送時間が割り当てられるとか、そういうことについてはもう既に
皆さん方報告を受けていらっしゃると思いますので、きょうは割愛させていただきます。
ただ、せっかく資料をつくっていただきましたので、二—四aというのを開いてください。今申し上げましたように、政党とか団体には公設の
掲示板に
ポスターを張る権利があります。二—四aで見ていただいたらわかりますように、公設の
掲示板に、一番はどこどこ、二番はどこどこ、三番はどこどこというふうに決まっていまして、それぞれ
賛成派、
反対派がこのように非常に派手な
ポスターを
町じゅうに張っております。その一方で、その次の
ページを見てください、
公設掲示板ではないところにも張っています。カフェの横であるとかあるいは大学の会館の入り口のところとか、こんなふうに張っています。しかし、
逮捕者は出ていないそうです。
この問題は、今後私たちが
国民投票をするときにも、一般の選挙であれば、公設の決められた
掲示板のところ以外に張ったらすぐに
公職選挙法違反で捕まっちゃうわけですけれども、これをどうするかということについても、
皆さんで今後御討議いただければというふうに思っています。
それから、よく考え話し合うということについて、一つだけ御報告させてください。
それは、パリの人々もよく考えました、現地の人々も。しかし、私が一番驚いたのは、京都で、私の友人で
アンヌ・ゴノンさんという人が同志社大学の教員をやっているんですが、
フランス語と社会学を教えています。この
アンヌ・ゴノンさんは、
京阪神在住の
フランス人、友達、いつもいろいろな政治的な問題を話し合っていますが、今回は全く意見が
皆さん錯綜した、合わなかったと。京都で
投票日の一週間前に六人の人が集まって、
EU憲法の批准に賛成するか反対するか大いに議論をして、その上で領事館に投票しに行ったということです。つまり、
フランス国内の人だけじゃなくて、
海外在住の人もこの
国民投票について真剣に議論を交わしたということです。もしこれが
国民投票に付されないで政府や議会の決定だけだったら、彼女たちはここまで真剣には考えなかったと言っています。
アンヌ・ゴノンさんは実は批准に賛成と投票しました。彼女は批准に賛成すべきだというふうに
友達たちにも訴えたんですが、結果は、
御存じのように反対の結果になりました。これが
投票日翌日の号外の新聞です。フィガロです。ノンというふうに、
御存じのように反対が五四・八七%、賛成は四五・一三%。
投票率はほぼ七〇%です。自分が投票した結果とは違う結果になったんだけれども、アンヌさんは、この問題の
最終決着を
国民投票にかけたことについては、私は今でも異議はないというふうにおっしゃっています。
ここが大事なことだと思っています。みんなが納得をするということです。政府や議会だけで決めたら、それと違う意見を持っている人はなかなか納得できないけれども、こういった重要問題を
国民投票にかける法的な義務がなかったにもかかわらず政府や議会がかけたことについて、彼女はよかったんじゃないかというふうに言っています。そういうことです。
それから三番、
国民投票マニフェストについて入りたいと思います。
皆さん、お手元に資料があって、その一番後ろの方から
三枚目、三—一を見てください。現在、憲法九条について言えば、自衛隊の実態と、あるいは防衛の実態と言ってもいいですが、憲法九条の本旨との間には著しい乖離があります。それは、この場にお集まりの委員の皆様も、それから小泉首相も同じ御認識をお持ちだというふうに思っています。こんなふうに、一九四六年に第九条がほかの憲法と同じように制定されたときに乖離はゼロでした。しかし、警察予備隊、保安隊、自衛隊となってずっと来て、もう今やこれ以上解釈改憲では無理だということで、この際もうはっきり決着をつけた方がいいんじゃないかというふうな状況になっていると思います。
二つの考え方がありますね。一つは、もう著しく実態が九条から乖離しているから、九条を改正して実態に合わせたらいいんじゃないか、これが九条改憲案、これを通したいという方々の主張です。そうすると、
国民投票でそれが認められると乖離はゼロになります。それはそうですね、九条が変わって日本軍を保持とか交戦権を認めるというふうになったら、乖離はなくなります。私は、それが認められた場合には乖離がゼロになるけれども、認められなかった場合も今の解釈改憲状態が是正されるように、ぜひ各委員の
皆さんにお考えになっていただきたい。
といいますのも、法技術的には、例えば、九条改憲案が軍隊保持ということで提出されて、それが
国民投票で認められたら軍隊保持になるわけですけれども、では、認められなかった場合、
国民投票で否決された場合は現状ということになるわけですね。現状ということは、この著しい乖離が残ったままでそのまままたもとへ戻るということだけだと思う。そういう
国民投票でいいのかどうかということをもう一度改めて考えていただけないか、そして、法技術的には無理でも、何か手を施していただけないかということをぜひお考えいただきたいと思います。
それから、
マニフェストということでいいますと、さっきも申し上げたみたいに、
スイスではもう既に次の
国民投票に向けて
マニフェストができています。十一月二十七日、遺伝子組み換えの問題、それから、駅や空港で日曜日に店を開いていいかどうか、これが
国民投票にかけられます。もう既に
マニフェストができています。これがもう各家庭あるいは各
有権者に配られているということです。
我々、日本で
国民投票をやるときも、改憲派が勝ったらどうなって負けたらどうなるのかということをはっきりと事前に明示し、約束する必要があるというふうに思っています。
最後に、このお配りした資料の後ろから二枚目をごらんになってください。これは、朝日新聞とNHKの調査を記してあります。円グラフです。日本では、今、諮問型の
国民投票しかできません、やろうと思っても。憲法改正以外の、九十六条に基づく
国民投票以外で重要な課題について、例えば
郵政法案とかイラク派兵とかについて
国民投票で聞こうと思っても、それは助言型、諮問型の
国民投票しかできません。
ここでは、NHKと朝日が、重要な問題について
国民投票にかけることについて聞いています。憲法を改正して重要な問題は
国民投票で決めたいという人が五三%もいます。左側、憲法改正はしなくていいけれども、重要な課題については国会や政府に尊重させるという
国民投票をやった方がいいというのは二七、合わせて八〇%です。NHKも大体同じような数字です。これは、日本の国民が、重要な課題については
国民投票で決めたいというふうに考えている人が八割いるということをよく御理解いただきたいということです。
一方、その次の
ページを開いてください。であるにもかかわらず、憲法改正の手続についてどれだけの
有権者、
主権者が理解をしているのかという調査です。
一九五二年、憲法が制定されて間もなく朝日新聞が行った調査では、憲法改正の手続について知っていると答えた人が一八%、知らないが八二%、知っていると答えた中で本当に知っていた人は六%です。私たちが二年前にやった調査では、知っていると答えた人が三三%で、本当に知っていた人は七・五%。そして、つい最近の調査、これは憲法
委員会が立ち上がってからの調査ですが、知っていると答えた人が三四・七ですが、本当に知っている人が一六・三と、一気に二年前に比べて倍になっています。倍になっているといっても一六・三です。
では、どんなふうに間違っているのかといったら、議会の三分の二の賛成で憲法が改正できると答えている人がすごく多いんですね。つまり、三分の二、三分の二と
メディアが言いました。自民と民主の、例えば前原さんなんかも含めてそうだと思いますけれども、改憲派が三分の二を超した、もう憲法は改正できるんだ。できるのは憲法改正の発議だけなんですが。それを乱暴な報道の仕方をするものですから、三分の二、三分の二と自信を持って答えているんですね。
これまでもずっと当
委員会は国民への理解を広めるために努力をしてくださっています。先週の日曜日も、私たちが主催した
公開討論会に、中山さん、枝野さん、赤松さん、保岡さん、そして笠井さん、辻元さんと御登壇いただきました。こういうふうに努力を重ねてくださっていますが、今後、この一六・三%という数字をせめて五〇%に持っていくためにどういうふうな努力ができるのかということをお互いに意見を交換し合いながら相談して、何か協力してできることがあればいいなというふうに考えています。
時間が来ましたので、以上です。(拍手)