○五島
委員 救済の問題は当たり前なんですが、現在発生した、そういう
被害を受けられた方、お亡くなりになった方、そういう人たちに対する
対策をどうするかという問題につきましては、既に前
国会、民主党は
労災保険法の改正案として、
時効を過ぎた人についても
労災の
認定をしろという
法案を出しました。解散によって審議されないまま残念な結果になりましたが、その後の厚労省の
対応を見ていますと、大体その方向に行くのかなという状況でございます。
そういう
意味では、現在起こっているそういう問題につきましては早急な
対策をとらなければいけないことは当たり前でございますが、やはりこれからの問題を大きく分けますと、これから三十年間、仮に今日現在で
アスベストの使用を一切禁止しても、製造を禁止しても、向こう三十年間は間違いなく、四十年近い数字は
アスベストの
被害が続いていきます。それは製造と、そして製造の過程において御
家族や工場の塀を乗り越えて飛び出していったもの、あるいは、
アスベスト製材を使った結果、いわゆる公害として広がった
アスベストによる
被害、そういうものによって続いていくでしょう。したがって、これから向こう三十年、四十年という期間、この
被害者の
救済と、そして
被害者に対する
健康管理をどうしていくのか。
そして、三つ目の問題として、特に中
皮腫に対して医学は今まだ適切な
治療手段を持っておりません。外国の抗がん剤を使えば平均余命で三カ月ぐらいは延びると言われています。少しでも一日でも早く、せめてそれでも使えるようにしていただきたいと思っておりますが、まだ医学はこの中
皮腫に対してどういうふうに勝っていくかという技術開発ができていません。
あるいは、中
皮腫の発生の機序そのものも、
アスベストそのものが発がん物質としてなるのか、あるいは
アスベストの持っている性格そのものによって、例えばそれにウイルスが関与して中
皮腫になっていくのか、あるいはそういう自己免疫的な反応もあってなっていくのか、そこもまだはっきりしていない。
とすれば、三つ目の大事なことは、この
治療、
アスベストの病理的状況の解明と
治療の開発です。それをどういうふうにしていくのか、これが過去の
アスベスト対策に対する厚労省の最大の
責任なんです。
そして、もう一つ大きいことは、大体
アスベストの製材を使って、もうそれを廃棄しなければいけない時代に入ってきました。昭和四十年代につくられた建物の中には大量の
アスベスト含有建材が入っています。それは決して飛散性、非飛散性という言葉の魔術でもってだませるものではありません。今後、これの処理を一つ間違えますと、今度こそは公害としてこれは広がってまいります。公害だから環境省の問題だというふうな縦割りはもう許されない。
例えば、
厚生労働省は、この
アスベストの製品をつくる際、あるいは吹きつけ
作業をする際に対する環境基準を持っています。しかし、
アスベストを使っている建材を解体するときに、どれだけの繊維が出るか、粉じんが出ていくのか。測定によると、破砕の方法によって随分違います。破砕の方法によっては、非常に高濃度の
アスベストの飛散がある。さらには、これをどうするのか。まさか、例えばそこの建物を解体するときに、その現場で減量処理をするということをすれば、周辺に
アスベストは飛び散りますね。だからそれはさせられないんでしょう。そうしますと、それをそのまま最終処理場へ持っていって、全部減量しないまま埋め立てるのか、これも現実に合いません。
恐らく中間処理施設に運んで、そこで処理するのでしょう。では、中間処理施設の中における
作業基準はありますか。あるいは、
アスベスト廃材を運ぶ際のそういう
作業基準をお持ちですか。持っておられませんよね。そういう細かなところをどうしていって公害を防止するのかという問題をやはり労働の面からも厚労省はやっていかなければいけないはずです。公害防止のところの問題はいろいろとありますけれども、これは環境もかかわりますし、この前も環境
委員会で
質問をさせていただきましたのでこの辺ぐらいにしますが。
そして、三つ目の大きな問題は、トータルな
アスベスト対策に対するコストはどうするんですかという問題です。
労働者が職場において暴露された結果、それが明確な場合に
労災保険を使う、これは現在の
法律のシステムにおいて合理性があります。しかし、それ以外の、いわゆる
アスベスト作業に従事していないけれどもさまざまな
アスベストの環境のもとにおいて吸入した多くの
労働者、例えば、鉄骨構造や鉄筋構造の床は鉄板のデッキでつくられていて、その裏側には、後ほどこの辺についても申し上げますが、恐らく一九八八年ぐらいまでは、
アスベストの吹きつけ、ないしは
アスベスト含有ロックウールの吹きつけをやってきました。そして、その階と階の間の狭いところに配線や配管がされている、そこへ潜り込んで仕事をしたという
労働者もたくさんいる。しかし、常時そこで仕事をするわけではありません。そういうふうな環境で仕事をしたという方もあるでしょう。あるいは、
アスベストが吹きつけられた小屋の中で、吹きつけ
作業ではないさまざまな仕事をしたという方もおられるでしょう。
私は、飛散性
アスベストということを気にしたときに、後ほど経産省にもお伺いしますけれども、一番問題だと思っているのは、いわゆる波形スレートです。波形スレートというのは、去年までノンアスの波形スレートはJISの規格にのりませんでした。それまでは、JIS規格といえば全部
アスベストを入れていたわけです。それは新しい間は非飛散性です。ところが、多くは屋根や、そういうところにさらされて、しかも割と経年的な劣化が激しい。
きょう、多くの議員の皆さん方、皆さん方のお地元にも工場や、あるいは農村へ行けば、農協の出荷場、選果場、農業小屋、
作業小屋、ごらんになってください。波板でふいた小屋がたくさんあるはずです。その天井あるいは屋根の部分、見てください。けば立っているように、遠くから見たらまるで芝が生えたようになっている波板を見られたことがあると
思います。あれは全部劣化して、
アスベストが吹っ飛んでロックウールが立ち上がってなっているんですよ。飛散しているんです。そして、その波板の小屋の中でお仕事している人で、やはり現実に
アスベストの疑いを持たれている人がいる。
さまざまな経過の中でこれだけの時間、日本は
アスベストを使ってきました。
被害があります。そういう人々に対してどのように
補償していくのか。あるいは、先ほども御意見出ておりましたけれども、
アスベストを使ってきた、吹きつけてきた、そういうふうな建築基準法どおり建物をつくりました。そしてJISの規格の製品だけで建物を建ててきました。しかし、これはもう危ないですねと言われた。除去しましょう。膨大なお金が要ります。これはユーザーがすべて
負担するんですか、それに対してはどう処理するんですかということ。そういうことも含めて
考えると、膨大なお金がやはり必要になってきます。
今、アメリカでは、先ほどもおっしゃっておりましたが、約十五兆円のファンドをつくっています。アメリカは日本の三倍の
アスベストを使いました。そして日本より十五年早く使用のピークを迎えました。下手をすると、日本もあと十五年、二十年しますと、アメリカの使用量の三分の一ですから、三分の一、アメリカと同じような水準で
補償やそういうものをやっていくとすれば五兆円のファンドが必要になってくるんです。ちょっと
考えられないお金ですが、五兆円のファンドが必要になってくる。こういう問題についてどうするのかということを今
検討しておかなければいけない時期に入ってきていると
思います。その辺についてどうお
考えか、お伺いしたいと
思います。