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仙谷委員 民主党の
仙谷由人でございます。
今度の総選挙の結果を受けまして、民主党は執行部を交代いたしました。前原誠司さん四十三歳が代表になる画期的な代表選出でございましたが、この執行
体制において次の
内閣の
厚生労働担当を指名されましたので、私なりに、現在の日本の
社会が抱えている問題、これを
社会政策、
社会保障政策、あるいは現在の
厚生労働省の守備範囲の中でどのように考えていったらいいのか考えてみたい、こんなふうに思っております。
大臣も感慨深いと思うのでありますが、前国会からのテーマ、そしてこれからの予想されるこの
厚生労働委員会の守備範囲ということを考えてみますと、いわば高齢者
医療保険制度といいましょうか、高齢者
医療をめぐるさまざまな問題は、私が一九九六年に国会に復帰しましてからちょうど高齢者の一部薬剤費
負担が
議論をされ、翌年、自社さ政権の内部で抜本
改革を二年後に行うという協定を結ばれて高齢者に対する一部薬剤費
負担が
導入をされたわけでありますが、老人保健
制度といいましょうか、あえて言いますと
制度ではないこの老人保健
制度、そして高齢者
医療の問題というものも、私に言わせれば、完全にネグられた、放置された。その中でいろいろな事態が日本では進行する。
昨年は年金法案がかかったわけですが、これもびほう策と先送り。ことしは介護
保険制度が提起をされたわけですが、この最も根幹の改正を要する点とされた適用拡大の問題が、これも棚上げにされてそのまま通ってきた、こういう事態が進んでいるわけであります。
そして、さらにそれに、今度は反対の極からといいましょうか、後から統計上振り返れば、ああ、二〇〇五年がその年だったというふうに多分皆さん思われると思うのでありますが、人口減少がついに、
厚生労働省の予測に、人口問題研究所の予測に反して二年早く、二〇〇五年に、つまりことしピークを打っておるのではないか、こういうのが常識的な判断といいましょうか感覚になっておるわけであります。ピークが二〇〇五年であろうと二〇〇六年であろうとほとんど変わらないといえば変わらないわけでありますが、ついに戦後日本といいましょうか、あるいは明治維新以降の日本で人口減少が始まる、こういう大変大きな構造的な変化が始まっているわけであります。
そして、さらに、日本を取り巻く
状況は、皆様方御承知のように、二極化、リスク化と言われますけれ
ども、その最も基本のところにある事態の転換といいましょうか変わり方というのは、もちろんグローバリゼーションとIT革命が推し進めているということであります。
私は、この間の郵政民営化騒ぎを拝見しておりまして、ああ、こんなことで日本が何とかなるのかなと、ある
意味で寒々としたものを感じながらこの郵政民営化騒動を見ておったわけでございます。といいますのは、このグローバリゼーションとIT革命がもたらした二極化とリスク化というのは、当然のことながら人間集団の中にもそういうものを持ち込んでおりますが、日本の場合には、従来からあった集中と過疎、都市と農村山間部、これも見事に切り裂きつつあるわけでございまして、これを都市部の現役世代の方々の税収や
保険料で全国あまねくばらまいていく、とりわけここ十年は借金をしながら公共
事業をばらまいたわけでありますが、ここから先はそうはいかない。しかし、にもかかわらず、
社会保障あるいは町づくりという面では、本来的には相当程度の分配をしていかなければ、
地域社会は多分今よりももっとひどい
状況に陥っていくということは間違いがないと
思います。
したがいまして、東京あるいは愛知県を
中心にお住まいになる方は、これはまあそこそこの
生活をできるのかもわかりませんが、多分四国あるいは北海道、九州、そしてまた、そこも四国の中の都市部ではないところ、あるいは九州の中の中山間地というようなところは、絶対的な貧困になるかどうか、あるいはグローバルなレベルで見て絶対的な額として貧困な
生活になるかどうかは別にして、心理の面では極めて疎外をされ、排除をされ、みずからは貧困だというふうな感覚に陥っていくことは間違いがないと
思います。
そこで、この問題を
尾辻大臣に少々御感想をお伺いしておきたいわけでありますが、二〇〇四年のOECDのレポートで、日本が貧困率が第五位でございましたか、十年前の貧困率に比べて、日本が一五・三になった。貧困率というのは平均
所得以下の人たちの階層が他の人に比べてどのぐらいのパーセンテージを占めるか、そういう率で示すわけでありますが、日本が二〇〇四年のレポートでは一五・三になった。先進国と言われているところ、OECD加盟国ではメキシコ、アメリカ、トルコ、アイルランド、日本でありますから、比べ得るところとしては一番なのか二番なのかわかりませんけれ
ども、そういう貧困率になった。
現に、改めてそれに付随する日本の各資料をちょっと当たってみますと、日本は六十歳以上の無職世帯というのが二〇〇〇年から二〇〇四年まで一九・一%から二三・二%にふえている。この六十歳以上の無職世帯の貯蓄率はマイナス一六・一%からマイナス二九・二%になっている。貯蓄率が約マイナス三〇%になっているわけであります。つまり、そのぐらい取り崩さないと、当然のことながら六十歳以上の無職世帯の方々は生きていけない、こういう事態に追い込まれているということであります。それから、ちなみに六十歳以上の勤労者世帯の貯蓄率というのは一〇・五%というふうに言われておりますので、無職世帯と勤労者世帯では約三倍、このぐらい貯蓄率の減り方が激しいということになります。
それから、
生活保護のレベルで見ましても、御承知のように、ついに
平成十六年度では
生活保護を受ける世帯がどうも百万を超して、さらに徐々にふえつつある。そのうち約五〇%近く、これが六十五歳以上の高齢者世帯である。人員にしましても、
平成十六年でいいますと百四十二万三千三百八十五名、これは全員の
生活保護を受けている人々の数でございますが、六十五歳以上は、まだ去年の数は出ていないようでありますが、
平成十五年でも四十八万九千八百四十三名、実に三七・九%の数、全体の、全体というのは
生活保護を受けている人々の約三八%の方々が六十五歳以上であるということであります。
生活保護の中身を見てみますと、この六十五歳以上の
生活保護と言われておるものは、金額でいいましても五千八百九十六億円、つまり
医療扶助が総額で一兆二千三百六十一億円、そのうち六十五歳以上の方が五千八百九十六億円、四七・七%を使っている。こういう事態が今我々の足元で起こっているわけであります。
この貧困の問題あるいは二極化の問題というものについて、労働
大臣は、この間のいろいろな諸
施策に携わってこられたと思うわけでありますが、どういう御
所見をお持ちでございましょうか。