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阿部(知)
議員 社会民主党・市民連合の
阿部知子です。
冒頭、きょうは
坂口議員がアリとキリギリスのお話でしたので、私は、古来
日本で言われております、はえば立て、立てば歩めの親心という言葉がございます。
子供は、本来歩く能力を持っております。そして、その歩く能力を最大限引き出すために、大きな、温かな支えが必要である。そのことが逆に本来の
自助の能力ももっともっと高めていくという
意味で、私は、これは、
日本という国が抱えた非常に大切な文化であり、
考え方であると思っています。
過剰に
自助が強調されれば、もちろん
坂口議員のことをそうとらえたのではなくて、私は大変尊敬しておりますから、今の財政諮問
会議などで
自助、
自助、
自助と言われると、本当のみずからの力を出してもらうためのセーフティーネット、受け皿なしでサーカスをやらされるような
自助ではみんな墜落死してしまいます。今、
社会保障のここの場で話されることは、
公助、共助の
仕組みをもう一度どうやってつくって、多くの
国民、私は必ずしも、今の若者たちがサボってぐだぐだしていて、その結果働かないんだというふうには思っておりません。
子供たちが自尊心をはぐくまれない、セルフコンフィデンス、自己確信が持てない
状態に
社会全体が追い込んでいる側面もあると思いますので、冒頭申し添えたいと思います。
そして、その上に立って、私は、この
年金合同会議、
各党の御尽力で回を重ねて、このたび一回の区切りは迎えると思いますが、この場に
生活保護と
年金という問題が取り上げられ、皆さんで論議されたということを高く評価したいと思います。
実は、厚生労働省の中でも、
生活保護の
見直しという形で言われても、本当に
年金問題と現状をリンクさせて話されることはなかったし、ほかの場で、政治の土壌でこの問題が話されることがなかったと思います。少子
高齢化という未曾有の時代に急速に突入していく
我が国において、皆さんの熱心な論議がここに
一つのこのテーマを持てたということに、この会の
会長初め皆さんにも私はお礼を申し上げたいと思います。
そうした上で、そもそも
年金制度と
生活保護制度は、先ほど
佐々木憲昭議員がお述べになりましたように、趣旨、目的が異なるものでございます。
生活保護は、
最低限度の
生活費に不足する場合に限ってその
部分のみを補てんするという、いわば補足性の原理というものに乗って成り立っており、また、そのゆえに、
生活保護の
給付に際しては、その方が預貯金や保険、不動産などがないというミーンズテスト、
資産調査を受けねばならないとなっております。これに対して、
基礎年金の
給付に対してはもちろんミーンズテストはないし、また、その方の財産、
所得とは無
関係に、
加入年限によって
給付が
権利として生じてくるというものでございます。
しかし、これらの
原則は、現状において大きく形を変えてきてしまっています。なぜなら、
昭和六十年以降減少傾向にあった
生活保護の
給付世帯は、
平成七年以降非常なスピードで急増しておりまして、各
議員お述べですが、
平成十六年十一月現在で百四十三万五千人余り、百万
世帯を超えておりますし、その中の四十七万四千二百四十
世帯、四六・五%、現状では五〇%になるかもしれません、の方々は六十五歳以上の
高齢世帯。
高齢者数にしても五十二万五千百三十一人で、三八・二%となっております。
また、
給付のありようにおいては、
医療扶助と
介護扶助がかなりの
ウエートを占めております。
医療扶助百十六万人、
介護扶助十五万人で、その
医療や
介護のために
生活保護の
給付をしている額が、約二兆円以上の
生活保護給付の半分を上回っております。
このことは、
一つには、
高齢者年金制度が不備であり、
高齢者がみんな
生活保護になだれ込む、あるいは
医療保険
制度で、せんだっても申しましたが、国保などのいわゆる
保険料の
未納問題から、最終的には
生活保護でその
医療給付部分を出さざるを得ないという方がふえてきてしまっておる。この悪循環をどこで断ち切るかというのが、この場の論議の成果であると私は願っております。
さて、この
会議の当初の目的でありまして、また、我が党が主張してまいりました
基礎年金と言われるものが果たしてどのくらいの額であれば暮らし
保障年金になるかということで、それを
生活保護の
給付水準と比べた場合に、その積算根拠からして非常に問題になると思います。
先日も御紹介しましたが、八五年当時、
基礎年金部分の一元化ということを目指しました折に、厚生省が基礎的
支出としてそのときに参考にしたものは、食料費、住居費、光熱費、被服費でございました。この八五年段階の
年金給付の基礎的
支出に含まれていないものは、教養娯楽費、交通通信費、保健
医療費、交際費などになります。
このうち特に私がここで申し述べたいのは、
医療保険の
保険料も払っておられる
高齢者の現状と、さらには、
介護保険が
平成十二年度から導入されて、
介護保険の
保険料も納入しておられるわけです。すなわち、八五年の積算根拠はこれらのことが考慮されていないゆえに
生活保護の基礎
給付費よりも低く算定され、それが一貫して改善されてきていないという現状があります。また、交通費に至っても、やはりどこに行くにもお足の問題がございます。これも
生活調査で、十六年のものを見ますと、一万二千二百五十円でございます。
これらを総計しますと、都市部においては八万円の後半が基礎的暮らし
年金の
保障額でないと、今言った
最低限度の項目が賄えないというふうになっております。全国
平均で、我が党は八万円と試算いたしました。
ところが、厚生労働省の試算等々は、
高齢者単身世帯で考えた場合には、
基礎年金給付の
満額を上回ってこの
生活保護基準があるから、逆さにそれを下げようと本末転倒の論議を展開し、先ほど
佐々木憲昭議員が御指摘になったような事態が生じてきてしまいます。
まずは、
年金制度をきっちりさせないと、あるいは
医療保険
制度の空洞化を阻止しないと、
生活保護に本当に過重な
負担がかかり、そこで削減が当たり前のように行われてきてしまうという悲しい現実を生むと思います。
さらに、今国会で審議されている障害者
自立支援法でも、繰り返し申し述べましたように、自己
負担を求めるものであります。であるならば、その前に、きちんとした
所得保障の問題は、いずれの年代においても最大限、
我が国の
社会保障政策の中できっちりと論じられるべきだと思います。
我が党がこの
年金問題について
財源といたすべきところは先回申し述べましたので、企業の総人件費に対してかける
社会保障税を繰り込むべきだということと考えていただければ結構です。
そして、今後、若者たちの今の働き方だと、
年金の
保険料を納めていない、あるいはパートなどの働き方で非常に不安定な
収入で、将来の低
年金、無
年金問題が大きく
社会に影を落としてくると思います。
私は、先ほど
坂口議員の御提案で、スウェーデン方式をみんなで検討しようという非常に前向きな、さすが
坂口先生と思って聞いておりましたが、もう
一つお願いは、パートの
加入問題というところを早急に、それぞれ何を第一とするかの思いはおありでしょうが、論じていただきたいと思います。また、ILOなどで
年金の
あり方ということも、これは企業
負担の問題も含めて指摘が多々あるところでありますから、それもあわせて今後の課題として、皆さんでお知恵を寄せていただければと思います。
ありがとうございます。