○松下新平君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題に上りました
平成十七年度
予算三案に対し、反対の立場から討論を行いたいと思います。
情報が飛び交い、過去に経験したことがない事態に遭遇することがしばしばある現在、私たちはつい目先の現象面だけに心を奪われ、判断を誤りがちです。しかし、混迷を深める現代であるからこそ、一見遠回りに思えるものの、原点に返るということが最も大切であるということ、私は改めて強く感じております。
山登りでは、ガスが発生して急激な天候
変化により登頂ルートが分からなくなった場合は、来た道を戻る、つまり原点に返ることが鉄則だと言われております。
政治であれ、企業経営であれ、私たちの人生であれ、迷走や遭難を回避するためには、その岐路に立ったときに、何のためなのか、何を目指しているのかと、原点に立ち戻り考えていくことが大切です。そしてその結果、必要ならばそれまでの考えを修正することこそが真の勇気ある判断だと考えます。
四年前は支持率八〇%という
国民の圧倒的な支持と大きな期待を背景に華々しくデビューした小泉
内閣でした。しかし、この四年間に小泉
内閣が行ってきたことは、
国民負担ばかりを増大させてきたのみならず、
政治に対する
信頼を失墜させるなど、
国民の期待をじゅうりんし、真の財政改革、社会保障改革にはほど遠いものでありました。
今の小泉
内閣の衰退を象徴する出来事の一つが、この
予算委員会でも度々
審議されました米国産牛肉の輸入再開問題です。今では
国民の多くが、頼みの小泉外交の姿勢に対しても
不信の声を上げております。イラクへの対応などに見られるように、小泉
総理は米国との親しい関係を特に強調されていますが、こうした小泉
内閣の対米追随姿勢に
国民の不安は増すばかりであります。
確かに日米関係は大切ですが、だからといって、日本の将来の子供たちの健康をないがしろにすることは断じて許されるものではございません。昨今、頻繁になされている米国からの有形無形の圧力に呼応するかのように小泉
内閣の閣僚も同調するような発言をしておりますが、これも許されるものではありません。
最近の先の見えない景気の低迷と将来不安の増大は、正にこうした小泉
内閣の無為無策、物事をすり替える無
責任な
政治姿勢に対する
国民の深い失望を端的に物語っていると断ぜざるを得ません。
以下、反対の主な理由を三つ申し述べます。
反対の第一の理由は、定率減税の、減税を盛り込んでいることであります。
定率減税は、所得税の最高税率の引下げや、法人税率の引下げと併せて期限の定めのない恒久的減税として
実施されてきたものであります。見直しを行うというものであれば、
個人のみならず、定率減税の根拠法にもあるとおり、法人税も含めた抜本的な見直しを行うべきでありますが、政府は、その在り方についての方向性を示すことすらせず、
個人所得税の定率減税の縮小だけを先行させようとしております。その上でのこの定率減税縮減による一・七兆円の
国民負担の増加は、消費を冷え込ませて景気の悪化を招き、我が国経済を再び不況に陥れることは火を見るよりも明らかであります。
反対の第二の理由は、財政健全化の取組が不十分であります。
平成十七年度の国債発行額は新規、借換えを合わせて百四十四兆八百五十七億円であり、国と地方の長期債務残高は同年度末に七百七十四兆円と、GDPの一・五倍にも達すると見込まれております。小泉
総理は十七年度の新規国債発行額を前年度よりも二兆二千億円減らしたと豪語されていますが、その要因は民間企業の努力を反映した増収によるものであり、決して政府の歳出削減努力によるものではありません。
反対の第三の理由は、地方への税源移譲について小手先の対応しか行われていないことであります。
地方向け補助金の見直し、地方への税源移譲は、
平成十五年度
予算の芽出し以来、三年を経過しました。しかし、本
予算においても国から地方への税源移譲は遅々として進まず、所得贈与税六千九百十億円や税源移譲予定特例交付金四千二百五十億円などの暫定的措置がとられているにすぎません。
以上、
平成十七年度
予算三案に対する主な理由を申し述べました。
本
予算は、改革を標榜しながらも、その実態は
国民に痛みのみを強いる政策不在、
国民不在の
予算にほかなりません。我が国を導く将来ビジョンもなく、名ばかりの改革を繕うためのつじつま合わせの
予算では、我が国の財政、経済は破綻への道を突き進むほかなく、将来の明るい展望を持つことは全くできないと言わざるを得ません。原点に返ることを忘れた、道を失って遭難した小泉
内閣には大切な日本を預けるわけにはまいりません。
このことを強く申し上げまして、反対討論といたします。(拍手)