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有村治子君 おはようございます。自由民主党の
有村治子です。
予算委員会で初めて
質問に立たせていただきます。
世耕議員の
外交防衛に関する
質問に関連して、教育に焦点を当てて、本日は教科書における北方
領土の記述について
質問をさせていただきます。
それには背景に、教育問題はすぐれて社会問題である、その社会問題の反映であるということの実感を持っておりますので、今日は北方
領土を取り上げますが、これは単に一
分野にとどまらず、私たち現代の
日本人が主権や
領土に対して、そういう問題に対していかに向き合っていくかということを考えるきっかけになれば有り難いとの思いで
質問に立たせていただきます。
本題に入ります。
総理、皆様、二月十四日はバレンタインの日ですが、その十四日から一週間前の二月七日は何の日だか御存じでしょうか。即答できる方、どのくらいいらっしゃいますでしょうか。(発言する者あり)北方
領土の日です。声が掛かって有り難いと思います。
百五十年前に日露通好
条約、つまり
日本とロシアが平和的に国境線を初めてつくった、そして北方
領土が
日本の
領土になったという、その下田で署名されたその二月七日を記念して北方
領土の日というのがあります。ここで毎年毎年この二月七日に北方
領土返還全国大会が行われますけれ
ども、
総理はたまたま今年は所用で御
出席されませんでした。私
自身も毎年のように心して参加させていただきますが、これは私たち自由民主党のみならず、公明党、民主党、社民党、共産党という
日本の政治に責任を負う全政党の幹部がともに
出席して、
日本の固有の
領土だ、この返還に全力を尽くしますということを勢いよくおっしゃいます。青年団体、女性団体、そして根室の地元活動組織、連合や日教組も含めた労働組合も応援をしてくださっている活動です。北方
領土は右だ左だ、与党だ野党だっていうイデオロギーで分かれるのではなく、
国民共有の課題だなっていうことを改めて認識し、勇気付けられます。
その今年の二月七日、全国大会に参加した制服姿の中学生の女の子が、伊計ちかさん、沖縄の小禄中学校の伊計さんが勇気を持って感想文を述べてくれました。彼女は沖縄から北海道の根室に行って、北方
領土の研修に参加したその感想です。北方
領土の重要性を全然知らなかった、この重要性、私たちの学校で学ぶ中学校の教科書には北方
領土の記述がたった七行しかありません、もっと北方
領土について知る機会を持っていただきたいですということを言ってくれました。
この言葉に触発されて、私は、小学校、中学校、高校の社会科の教科書、一応入手して確認できた五十七冊、小学校の社会科、地理、歴史、公民、現代社会、そして高校の政治・経済の教科書五十冊以上に目を通して北方
領土の記述を確認いたしました。約三百ページに上ります。その重立ったものを今日配付資料でお配りいたしました。
二ページ目をごらんになっていただきたいと思います。そして、今日テレビでごらんになっていただく方は、会場に配付しておりますこの資料は、私、
有村治子のホームページ、(
資料提示)こちらの方で掲載をしておりますので、今日、御関心を持っていただける方はホームページから印刷して入手していただきたいと存じます。
ここで、北方
領土の基本的な情報を確認させていただきたいと思います。
北方
領土の現在の状況を生んだのは、一九四五年、あともう少しで終戦だっていうときに、当時有効であった日ソ中立
条約をソ連が無視して対日参戦をして、そしてポツダム宣言を受諾して降伏した後二週間たってから武装したソ連軍が北方
領土に侵攻して急襲、その不法占拠が始まって今年でちょうど六十年になります。当時北方
領土には一万八千人近い
日本人の島民の方々が住んでいらっしゃいました。その半数は、厳しいソ連軍の監視の目をくぐって命からがら御先祖の遺影とともに本土に戻っていらっしゃいました。しかし、それ以外の島民の方々は、樺太などに抑留されて苦しい生活を強いられた後に、強制的に引揚げをされていらっしゃいます。
北方
領土で生まれ育った旧島民の多くは、大多数既に他界されています。不法占拠から六十年、存命の方々の平均年齢も七十二歳を超えています。今年の返還要求全国大会で、腰を曲げて髪の毛を白くして本当にしわを深く刻んだおばあちゃんが、旧島民の方が発言してくださいました。私たちが生きているうちに島に帰りたい、目の黒いうちに御先祖のお墓がある島に帰してください。本当に体を震わせて発言をされるその発言を聞いて、私
自身目頭が熱くなりました。
この二ページ目をごらんになっていただきたいと思います。
五十冊以上の小中高の社会科教科書に目を通してみて確認をして分かったのは、北方
領土の記述が一切ない教科書も複数あるということです。そして、実際に記述された教科書も、三ページ、今日の配付資料の三ページに実物をコピーいたしましたが、本文ではせいぜい一行、そして欄外の脚注で北方
領土に関して、まあ
日本とロシアの間で
領土問題があるというような、せいぜい二掛ける三センチの幅の記述しかありません。ここには北方
領土が何で起こってしまったのか、その背景や
日本固有の
領土であるということを教えていない教科書もたくさんあります。
また、二ページを御確認いただきたいんですが、事実に反した記述もあります。中学校の教科書、「第二次世界大戦の末期にソ連に占領され、その後、ロシア連邦がそのまま引き継いでいる。」という記述もあります。事実は終戦後二週間近くたってからソ連軍が急襲して不法占拠したというのが皆様承知のとおりの事実です。
また、四島返還をあくまで主張している
日本政府と違った見解の教科書記述も高校の教科書にあります。例えば、現在返還方法をめぐって、二島返還を優先させるのか、四島一括返還を求めるのか、意見が分かれているというような記述です。一体どこの国の教科書だろうというふうに首をかしげざるを得ないような教科書記述もあります。非常に悲しい話です。
今日、配付させていただいたこの一ページ目のこの中ぽつの項目は北方
領土の本質を理解するための本当に基本的な情報ですが、この記述をしている教科書は一冊もありません。
私は、若手の政治参加ということに非常に関心を持っていて、積極的に大学生のインターンを受け入れたり、あるいは大学で講演に行ったりします。そのときに、本当に優秀なまじめな今の学生さんが私に素朴なコメントを寄せてくれます。どういうふうに思っているか、是非お聞きください。
有村さん、北方
領土、ソ連に上げたんだから今更そんなにこだわらなくてもいいんじゃない。北方
領土って、おじいちゃん、おばあちゃんの時代のことだと思っていました。
有村議員のところにインターンに来るまで全然ぴんとこなかったんですよねって、昨日、北海道出身の現役の女子大生が私に言ってくれました。また、ある方は、ロシア人が現在住んでいるんだし、どうせ小さい島なんだから上げちゃっても
日本に痛みはないんじゃないということをおっしゃいます。
しかし、そういう方々は、北方
領土がすべて四島を合わせれば福岡県よりも、現在五百万人以上の人口がある福岡県よりも多い
領土であり、そしてロシアが時々主張するこの歯舞島、色丹島の二島返還というのは北方
領土全土のたった七%しかないという歴然とした事実ということを
国民の多くの皆様は知る機会がありません。
こういうことをごらんになって、
総理、
日本の未来を担う子供たちが学ぶ教科書、北方
領土の記述の実態をごらんになって率直な御感想をお聞かせいただきたいと思います。控え目な表現をしてもバランスを欠いているというか、いびつな表現も多々見受けられる現状です。いかがでしょうか。