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参考人(
緒方貞子君) 今日、阿部先生より、JICAを中心とした
日本が国際的にどういう貢献をしているかということについてお答えするようにというお招きいただきまして、ありがとうございます。
今先生がおっしゃいましたように、今の世界、出発点としては今の世界、グローバル化の進んだ世界というのは相互依存なしにはどの国もどこの人も生きていかれないと、そういう実態がひしひしと感じられてきているのが今日だろうと
思います。
その中で、それじゃ、
日本はどういう形で貢献してきたのかと。たくさんの面で貢献してきたと
思いますが、その中でも特にまた開発途上国に対する開発援助というのが非常に注目もされておりますし、そしてまた認められていると。ちょうど昨年はODA五十周年ということで、方々でそういうことを
考える機会があったと
思いますんですが、そういう中で一体どういう形で貢献してきたというその開発援助については、まず第一に、アジアにおいて
日本が集中的にそういう貢献をしてきたということもあって、実際アジアの経済は伸びてきましたし、人づくりも相当進んでおります。
ところが、それじゃ、これからはどういうところに行くかということになりますと、まだまだ進んでいない国がたくさんある、
地域がたくさんある。それが今お話もありましたように、開発途上国と先進国との差は伸びております。そしてまた、子供の状況につきましても、今アフリカにおいては一日六千人の子供が感染症その他で死んでいると言われているんです。これは先日も、津波の問題では非常に
日本が早く、立派な貢献を、
協力をしたということで認められているんですが、静かな津波というのが実は毎日毎日起こっているんじゃないかと。六千人もの子供がそういう状況で死んでいることを放置して二十一世紀に入っていけるのかと、こういう声が非常に強くなってきております。
それで、それもございまして、そういう子供、あるいは特に貧困の激しい
地域、アフリカというようなところにもっと集中した関心と
協力をしていくべきだというような声が広く言われておりまして、今年はサミットにおいてもアフリカというものが中心課題になると聞いておりますし、その静かな、見えざる津波と申しますか、そういうようなものへの対処ということが非常に強く言われているわけでございます。
日本におきましても、アジアにおいてあれだけやった、津波のときにおいてもあれだけできるということを認識されるにしましても、それじゃこの静かな津波に対する
日本の援助というものはどういうことなのかと、そういうことが、JICAにおります私にとっては直接の
責任ということもございまして、JICAの
仕事の在り方ももっとそういうものにこたえられるようにということを
考えまして、
現場主義と、私は別にこれ主義でやっているというよりも、
現場に人も、それからお金も、それから意思決定も移すことによってもっと効果的に動けるということを
考えまして、ここ一年半、
現場へのリソースを動かす努力をしてまいりました。
事実、かなり人員も動かしましたし、そしてまた、その結果どういうことができてきたかというと、
現場の必要、ニーズというものに対してもっと敏感にいろんな事業の案件をまとめることもできましたし、今年は確かに案件が早く
現場から出てくるんです。やはり、
現場において要請にこたえて、ニーズにこたえたものをつくっていかなきゃならないと、それにこたえつつあるという感じを私、実際、ここ二年目に入りまして感じております。
また、そういうことは上から、
政府を通して幾ら援助をするだけでは届かないので、一般の人々、そのニーズに合わせてどうやってこたえるかということ、相当工夫が要るわけでございます。社会開発と申しますか、インフラと社会と両方の開発を二本立てでやっていかなきゃならないと。その事業もだんだん緒に就いてきたというふうに
考えております。
今までJICAの方の人員はやはり東京が、
日本が中心で、七対三ぐらいの割合だったのが、この中期計画中には一対一ぐらいまでに持っていって、そしてその事業の進め方ももっともっと迅速にやることができると。そういうふうに
考えておりますのは、もういろんな緊急事態が起こっている世界の中で、少しでも早くいい方に向けていく努力をするのが
日本の務めでも、
責任でもあると、そういうふうに
考えているわけでございます。
まあ簡単な例を申し上げますと、
日本はアフリカにおいては農業、給水、それから医療、それ、また
教育というようなことを中心にやっておりますけれ
ども、それはそれぞれを別々にやってたんでは効果が上がらないで、それを横につなげるような形で事業をしております。
簡単な例が随分長い間やってきた給水の例なんでございますが、給水塔を随分方々で作りましたけど、それが効果が上がるためにはその給水塔の維持管理を村の人々ができる力を付けてこなきゃならない、こういうことはやってはきたんです。それで、二十年ぐらい掛かって効果はあるんですけど、これをもっと徹底させる。水があれば子供は学校に行くときに、こともできるわけです。ないと水くみを随分させられるわけですし、女性も水くみをして、妊婦が流産するというようなこともあるわけですから。水がきれいなら病気も減るわけなんですね。そういうような目に、非常に細かいことから、やはり道路、それから大きな、特にダムであるとか、それから電力であるとか、大きなインフラも確かにアフリカでは必要になってきております。
そういうこともございますので、先生の御期待に沿えられるか分かりませんが、ともかくそういう状況にあるということを国民に広く知っていただかなきゃならないんです。
どうしてこのごろアフリカに対する欧米諸国の関心、サミットにものってくることになったかというと、やはり一日に六千人もの子供を死なせてては済まないと、そういう人道的な
考え。あともう
一つは、実はもう少し安全保障につながってくるんですけれ
ども、そういうようなところを放置していくと危険であると、テロというようなものもそういうところと無
関係じゃないんじゃないかと、そういうような安全保障からきた意識からも、もう少し開発援助というものを力を入れていかなきゃならない、こういう発想が広がってまいりまして、私も是非そういう認識を広めていくのに
先生方の御
協力を得たいと思っております。
ありがとうございます。