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2005-07-29 第162回国会 参議院 郵政民営化に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十七年七月二十九日(金曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  七月二十六日     辞任         補欠選任      大江 康弘君     渡辺 秀央君  七月二十七日     辞任         補欠選任      藤野 公孝君     二之湯 智君      齋藤  勁君     尾立 源幸君      櫻井  充君     広田  一君      水岡 俊一君     高橋 千秋君      峰崎 直樹君     津田弥太郎君      渕上 貞雄君     近藤 正道君  七月二十八日     辞任         補欠選任      二之湯 智君     藤野 公孝君      尾立 源幸君     水岡 俊一君      津田弥太郎君     峰崎 直樹君      広田  一君     内藤 正光君      大門実紀史君     吉川 春子君      近藤 正道君     又市 征治君  七月二十九日     辞任         補欠選任      高橋 千秋君     藤本 祐司君      峰崎 直樹君     富岡由紀夫君      又市 征治君     大田 昌秀君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         陣内 孝雄君     理 事                 市川 一朗君                 世耕 弘成君                 山崎  力君                 伊藤 基隆君                 平野 達男君                 山下洲夫君                 弘友 和夫君     委 員                 愛知 治郎君                 有村 治子君                 岩城 光英君                 小野 清子君                 小池 正勝君                 小泉 昭男君                 椎名 一保君                 関口 昌一君                 野上浩太郎君                 長谷川憲正君                 藤野 公孝君                 山下 英利君                 山本 順三君                 大塚 耕平君                 岡崎トミ子君                 高橋 千秋君                 富岡由紀夫君                 内藤 正光君                 藤本 祐司君                 水岡 俊一君                 峰崎 直樹君                 山根 隆治君                 若林 秀樹君                 渡辺 秀央君                 西田 実仁君                 山口那津男君                 山本 香苗君                 吉川 春子君                 大田 昌秀君    事務局側        常任委員会専門        員        鴫谷  潤君        常任委員会専門        員        高山 達郎君    参考人        横浜市長     中田  宏君        慶應義塾大学教        授        榊原 英資君        山口県議会議員        NPO法人森と        海の学校理事長  岡村 精二君        エコノミスト   紺谷 典子君        21世紀政策研究        所理事長     田中 直毅君        八千代町議会議        長        稲葉 常美君        日本経済研究セ        ンター理事長        慶應義塾大学商        学部教授     深尾 光洋君        泰阜村長     松島 貞治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○郵政民営化法案内閣提出衆議院送付) ○日本郵政株式会社法案内閣提出衆議院送付  ) ○郵便事業株式会社法案内閣提出衆議院送付  ) ○郵便局株式会社法案内閣提出衆議院送付) ○独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理機構  法案内閣提出衆議院送付) ○郵政民営化法等施行に伴う関係法律整備等  に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ただいまから郵政民営化に関する特別委員会を開会いたします。  郵政民営化法案日本郵政株式会社法案郵便事業株式会社法案郵便局株式会社法案独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等施行に伴う関係法律整備等に関する法律案、以上六案を一括して議題といたします。  本日午前は、横浜市長中田宏君、慶應義塾大学教授榊原英資君、山口県議会議員NPO法人森と海の学校理事長岡村精二君及びエコノミスト紺谷典子君、以上四名の参考人の御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、中田参考人榊原参考人岡村参考人紺谷参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず中田参考人からお願いいたします。中田参考人
  3. 中田宏

    参考人中田宏君) おはようございます。横浜市長中田宏でございます。  久しぶりに国会に参らせていただきました。十二年前に、平成五年に衆議院に初当選をさせていただいて、十四年の三月まで隣のハウスで働かせていただいていたわけでありますが、この参議院の第一委員会室党首討論で何度か、応援部隊というか傍聴というか参らせていただいておりましたけれども、それ以来ということでありますし、ましてやこの場で公式に発言をする機会を与えていただきまして、私なりにはまず先生方に感謝を申し上げたいというふうに思っております。大変良い機会だと思っておりますので、私も大変うれしく思っております。  さて、今日は、この郵政問題ということについて連日、先生方熱心な御議論をされているという場でありますので、私もそのことについての意見を申し上げたいと思って参りました。率直に申し上げて、私は、国会議員時代から、郵政事業についてはこのままでは国家の損失になってしまうというふうにかねがね思っておりました。そういう意味で、その改革を主張し続けてきた者の一人であります。  郵政事業について、単純に言えば、こういう声がよくあります。独立採算でやっているわけだし、税金を決して使っているわけではないわけで、何が問題なのかという言い方も聞きます。しかし、直接的な税金ということではない形で、様々に実は私は広い意味での税投入というのが郵政事業にはそれぞれなされているということを感じます。  百歩譲って、これまでの郵政事業というものを十分に評価をするということをいたしたとしても、今後の経営環境であるとか、まあそれはすなわち我が国金融状況、更には国際的な金融物流環境といったものを考えたりしますと、現在の公社のままではなかなか今後の経営というものは立ち行かないということが予想されるわけでありまして、その改革は必須であるというふうに考えます。  ちなみに、私は郵政のこれまでの三事業というものを否定をするつもりはありません。むしろ、そこは歴史的な意味に立ったときには肯定的にとらえている者の一人であります。  例えば、郵便が全国津々浦々に配達をされるということについて、これはどの地域も差別なく区別なく、そして同じ料金でということは早くから郵便事業として確立をできていた。これは諸外国よりもより高い信頼があったと思います。またさらには、銀行的業務郵貯でありますけれども、こちらの方も過疎地も含めてその評価というのは大変高いわけです。  時代をさかのぼってみれば、例えば簡保などは、設立当初は、生命保険というのが国民各層にはまだ十分にそれは行き渡っていない時代、むしろ、行き渡っていないというよりも高くて入れないという時代があったわけですね。高くて入れない時代国民が、庶民がと言った方がいいかも、分かりやすいかもしれませんけれども、庶民が手軽に入れるようにしようということで創設されたのが簡易保険でありますから、そういう意味では私は、これまでの日本の成長といったことに、国民生活面に特に資するといった意味において歴史的な意味は大変に大きなものがあった、そう思います。  加えて、その裏返しを申し上げれば、郵貯簡保で集めたお金が特に戦後のインフラの発展ということに資してきたということも大変に大きな効果があるというふうに思っておりまして、今日私たちが様々なインフラを享受できているということも、これは郵貯簡保というのがやはり財政投融資という形で第二の予算と呼ばれて国の中で適切にこれまで配分をされてきたと。まあ百歩譲って、そういう意味では歴史的な意味というものを否定をするというつもりは毛頭ないわけであります。  しかし、こうした歴史的な意義と財産というものを十分に私たちはかみしめて、そしてそれに立脚をして改革をしていくということが、仮に将来この事業を振り返ったときに、郵政の諸事業がその信用というものを高めた形で、また評価というものをより高めた形で後世振り返られることになると思います。  もしも、かつては意味があった事業だけれども、今はとても意味が成さないという事業に私たちは今この分岐点でしてはならないというふうに思うわけでありまして、私は今回、この郵政に関連する法案の審議に当たっては賛成をするという立場でここに参らせていただいたわけであります。  改革を進めるということは、その意味では民営化ということになります。もちろん民営化ということも、一口で言っていろんな民営化の形があるわけでありますから、それは何がベストなのかということについて、これは郵政の問題に限らず、ベストというものを今の段階で全員が聡明に選び出して、そしてそれを採決するということはなかなかできないわけであって、よりベストに近いと思われるものを議論をした結果として、最終的に国会という場で採決をするということにしか残念ながら方法はありません。  野党の皆さんの中にも、郵政民営化そのものについては賛成だけれども、しかし今回の法案では駄目だと、こういうような御意見もあろうかというふうに思いますけれども、しかし今申し上げたとおり、何がベストなのかということは、国会議論を尽くしていただいた上で、やはり今出てきている法案というのは、何よりも郵政のこれまで果たしてきた公共性というものを大切にし、多くの人が、民営化されたら公共的な郵便局じゃなくなっちゃうんじゃないだろうかということに不安を持っている、そこにこたえるようにやっている、それが今回の法案の様々な配慮の部分なんであって、結果として、ある意味では純粋な民営論者からすれば物足りないかもしれません。しかし、それは、これまでの公共性というものに立脚をしながらぎりぎりの案を作っていると私は思うわけでありまして、そうした意味においては、今回の法案というものを私は尊重すべきではないかというふうに思っております。  今国会議論されている郵政制度改革法案は、日本の将来に向けた構造改革の中核と言える重要課題でありますから、是非この国会で成立をさせていただきたいと私は思います。  さて、よく、郵政改革というのはかつての国鉄改革とよく比較をされるわけでありますけれども、どちらもいわゆる行政改革という、そうした点では比較しやすくもありますけれども、私はそもそも、両者経営状態とまた国民が接する運営、現象というものが違うというふうに思いますから、この二つの比較をすることは国民理解もしにくいものだというふうに逆に思います。  例えば、国鉄の場合は、国民の多くが経営状態巨額赤字を抱えているということを知っておりました。そして、それは、数字的には完全に頭に入っていなくても、感覚的にこれは大変な巨額赤字を抱えているということを十分に国民理解をしていたわけです、経営状態についてですね。  さらには、運営面国民の目に映る国鉄の現象的なものは何かというと、駅員の服装が乱れていたり、言葉遣いが乱暴であったり、あるいはお客様に対してありがとうございますということが言えていなかったりというようなことが日常茶飯事でありましたから、そういう意味では日々の利用の中で不愉快さを国民も感じていた。ですから、そうした感情が今度は、だから経営も悪くなっているんだというふうに気持ちとしてつながって、ひいては国鉄改革国民が一定の後押しをするということにも私はなったと思います。  ところが、これまでの郵政事業を同じような視点で見てみますと、決して郵便局の窓口の対応が悪いわけではないわけですね。もう頭を下げてありがとうございますと、もう自動ドアが開いた瞬間からいらっしゃいませと、こういうサービスが今もう既に達成をされておられます、達成をされていますから、そういう意味では国民からすれば悪感情を持つものではない。そして、先ほどもちらっと申し上げたように、税金を食い物にしているわけではないというような、そうした経営状況もありますから、国民的に見ても、果たして民営化を強力に求めようというような世論が生まれてくるかというと、生まれにくいという現状があります。  ただ、稚拙な例で恐縮ですけれども、例えば部屋、家の中が散らかっているとして、さんざん散らかっているから掃除をしようというのは大変分かりやすいわけですけれども、表面上散らかってなくとも、パイプの詰まりやら電設の系統やらというのは、しっかりと日ごろの点検と、そして詰まっているものをやはりかき出しておくということをこれはやらなければならない掃除もあるわけでありまして、部屋の中散らかっているから掃除しようというのが国鉄改革であるならば、見えないところのパイプが詰まっているからこれは掃除しようというのが私は郵政改革であるというような、まあ分かりやすく言えばそういう気がいたしています。  そういう意味で言うと、前者の方、部屋の中散らかっているから何とかしようというのはだれの目にも明らかで、政治家としてもやりやすいわけでありますけれども、後者のような目詰まり、なかなか表面では見えないというところについては、国民が一緒になって我々に、政治家にやれやれと、こういうふうに声が出てくるわけではないわけで、むしろ、こここそ政治家が先見の明に立ってしっかりと掃除をしなければならないというふうに思うところでありますので、是非、委員先生方の良識ある御判断をお願いしたいと思います。  今、国鉄お話もしましたけれども、国鉄の場合は、一九八七年に分割民営化した際、既に倒産状態にあったというふうに言えます。一九六四年に赤字転落して、一九八〇年からは毎年一兆円以上の赤字を計上しているわけでありますから、JRとして分割民営化のときに三十七兆一千億円という巨額長期債務が残っていました。これに対して郵政公社は、公社化されてこの二年間、三事業とも基本的には黒字であります。  これだけですと、今申し上げたように、公社の方については何も問題ないじゃないかというふうに思われる節もあるわけですが、郵政事業表面的には黒字を計上しているものの、見えない損失が生じているということが、これはいろんなところで指摘をされてきました。  例えば、郵貯簡保についてでありますけれども、郵便貯金は、二〇〇三年の四月に郵政公社化において、郵便貯金への無償の政府保証納税義務の免除、こうした民間金融機関との競争条件とは異なっている、官業ゆえ特典というものは残ったままになっています。ですから、民間推計でも、一九九三年から二〇〇二年度、これは一九九三年度から二〇〇二年度、この間の十年間で五兆三千億円のある意味ではこうした分の特典が発生をしているというふうに計算がなされています。また、同様に、簡易保険についても、同じように民間推計では、同じ十年間で二兆四千億円の特典があったということになります。こうしたことが、既に議論はなされていると思いますけれども、言わば隠れた税負担ということにもつながるということであります。  郵政民営化、これ、元をただせば財政投融資改革でありますけれども、これも多岐に、財投だけで話はいろいろなりますから、もう一部かいつまんでというお話にならざるを得ませんけれども、二〇〇四年度で財投資金が十六兆円、その約八割の十三兆円が特殊法人に流れています。これはもちろん国民から集めたお金です。国の予算からも四兆一千億円が支出されて事業利子補給などに充てられているわけですね。これは税金です。  すなわち、財投特殊法人お金を貸すということになる。しかし、その特殊法人はといえば、十分に経営状態がしっかりと成り立っていて、その結果借りたお金をきちっと戻せるという状態で借りているのかといえば、決してそうではない。例えば、道路公団が既に四十兆円という巨額債務を抱えているということは御案内のとおりであって、言わば破綻をしたと言ったら言い過ぎかもしれないが、そうした会社お金を貸し付けて財投は返済されている。そこの部分を埋めているのが四兆一千億、国の予算から利子補給事業費といった形で出ている。  簡単に言うならば、郵便貯金国民が期待をしているその利子の分というのは、これは国が税金で言わば付けているという構図がブラックボックスの中のごちゃごちゃの操作の結果として単純化して出てくる理屈になるわけであって、そうした意味において、私は、衆議院の、よくこの議論をするときに、先ほど申し上げたように、有権者の方から、でも郵便局サービス悪くないですよと言われると、私は、いや、そうでしょうねと、でもね、郵便局が悪いんじゃなくて、これ利子はどこから付いているかということをよく考えましょうと。変な話をするようだけれども、郵便貯金は全員持った方が得ですよと、皮肉なことだけれども、全員持たないと、あなたの税金からこれ金利付けているんですよ、ですからひとしく持った方がよろしいと思いますよと、時々こういうふうに冗談を言っていたこともありますけれども。  そうした基本的構造というものが公社化現状の中でもまだ引きずられた状態であるし、また公社化をされて、今後、金融も自由化される、また今の低金利がいつまでも続くわけではない、国際環境もある。こういったことを考えていったときに、今のような運用で私たちが引き続き郵便貯金利子国民に返していくということはできない環境にある。より国際的な、また我が国金融の中で、民間から、すなわち国民から得た資金というものを自らの頭でもう少し資金運用していくということのレパートリーを広げていくということをしていかなければ、公社自体もそれはもたないということになると思います。  仮に公社がどんなにこれから先、公社のままで頑張ろうというふうに思っても、それはやはり政府保証が付いた安全な運用しかできないという状態を枠としてはめられたままですから、結果としては同じような国債であるとか、国債も今のように発行し続けるという状態ならば、それは両者がある意味では持ち合うという力関係になるのかもしれませんけれども、そのことも長続きしないということまで思いを私はするわけであります。  さて、もう一つ、こちらの方がもう一つ分かりやすい話として私はよく言ってきたことであります。それは、ゆうパックあるいはクール宅急便といった、最近郵政の中でもコマーシャルなども非常に多い、こうしたサービス商品についてであります。  市場占有率だけを見ますと、ゆうパックは六%にすぎないわけでありますが、そういう中でまだまだ民間には追い付いていない、ある意味では民間に対する民業の圧迫にはなっていないという声も時々ありますが、例えばこれは、具体的には一番この分野で最大手のヤマト運輸ヤマト運輸山崎社長は、シェアが問題なのではないと、独占事業でもうけた利益、免税で得た利益、これを一般小包市場に投入して民間を圧迫するという不公平、不公正というのが問題なんだということを指摘をして、強調しておられます。すなわち、ヤマト運輸に言わせれば、独占郵便物、こちらの方で利益を得て、そしてシェアが低いのになぜ運営できるのといったら、それは──もう過ぎてますか。もう時間ですか。もう時間ですか。
  4. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) そろそろおまとめいただければと思います。
  5. 中田宏

    参考人中田宏君) はい、分かりました。  それではまとめますけれども、そういう意味ではそこが問題だということです。  特に、最後、済みません、一言申し上げますが、クール宅急便でありますけれども、これは一九八七年にクール宅急便サービスヤマト運輸が開始をしましたが、そのときヤマト運輸は百五十億円の設備投資をしているわけですね。クール宅急便、それは毛ガニもアイスクリームも、二十年前、三十年前はそんな簡単に送れる時代じゃなかったですよ。民間が考えたすごいこれはサービスですよ。一台一台の車に冷凍冷蔵庫をくっ付けて、途中の保管倉庫にも冷凍冷蔵庫をくっ付けて、更にまた配る先の車にも冷凍冷蔵庫をくっ付けて、そして走り回って解けないように届けるということをヤマトが始めたわけですね。そこに後からチルドゆうパックを出すというのは、シェアがどうであろうと、実にこれは民間に対して失礼な国になっているということは私たちよく自覚をしないと民間の活力ということにつなげていくことはできないような、その象徴的な事項だというふうに思います。  いろいろ申し上げたいことありますけれども、時間ということでありますからこの辺にしまして、後ほど御質問をいただければというふうに思っております。  ありがとうございました。
  6. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、榊原参考人にお願いいたします。榊原参考人
  7. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 榊原でございます。私の意見を言わせていただきます。  どうも郵政民営化問題というのは素人議論が大変多くて、きちっとポイントを押さえた議論をしなきゃいけないというふうに私は思っております。この法案を見せていただいて、大変分かりにくい、それから問題点を大変多く含んだ法案だと思っております。  これなぜかと申しますと、やはり何のために今この法案をこれだけ審議し、採決しなきゃいけないかということがはっきりしないんですね。郵政民営化、なぜ今しなきゃいけないかという目的がはっきりしないというのが一つ。  それから、実際この法案を通して郵便局がどうなるかと、法案読んでも分かんないですよ。四つ会社ができるというんですけれども、郵便局の中にいる人がみんな違う会社に属して一体何やるんだと。全くこの法案を読んでも、恐らく通達まで全部出ると分かるのかもしれません。政令、省令、通達まで全部出ると分かるのかもしれませんが、この法律を読んでも何のことだか何にも分からないと、こういう法律になっていると。  じゃ、この法案をサポートしておられる方、嫌々サポートされている方もたくさんおられるようでございますけれども、少なくともサポートしておられる方が、この法案民営化のメリットが二つあるとおっしゃるんですね、大きく言って二つあると。一つは、そのお金が官から民へ流れるんだということと、もう一つ民営化によって効率が促進するからだということですけれども、私はこの二つの論点とも間違いだというふうに思っております。  官から民へというのは、今、中田市長もおっしゃいましたけれども、よく財投の制度のことをおっしゃるんですけれども、もうもう、ここにいらっしゃる皆さんはもう御承知だと思いますけれども、財投改革法案というのは一九九九年に通って二〇〇二年からもう実行されているわけですね。移行期間が七年ありますけれども、二〇〇九年になれば完全に郵貯簡保公社公団から切れるわけですね。  よく、物の分からないエコノミストたちが、それでも国債運用しているじゃないかというようなことを言うんですけれども、資産運用として国債を買っているということと、制度として公社公団に行くというのは、これ全然別問題です。資産運用として国債を買っているんでしたら、それは民間生保はたくさん買っていますよね。民間銀行たくさん買っています。当然、民間金融機関だってこれはリスクは管理しなきゃいけませんから、リスクのない国債を大量に買うというのは、これは当然のことであります。民間が今やっているわけです。郵政民営化になっても同じことが起こると思います。ですから、この官から民へという議論は全くの誤解でございます。で、実は政府の人たちあるいは与党の方たちは分かっておられるんだけれども、それを言っておられる方がいるというのは私は大変不思議ですね。  それからもう一つ民営化をすると効率化になるというんですけれども、通常やっぱり官のものを民営化すると効率は良くなるんでございますけれども、なぜ効率が良くなるかというと、これは新たな競争が発生して極めて厳しい競争下に立たされるからこれは効率化するんですね。ところが、郵政事業についても、郵貯簡保についても、もう激しい競争しているんです。先ほどヤマト運輸なんかとの競争をおっしゃいましたけれども、郵便事業についても極めて激しい競争を民間としていると。それから郵貯簡保についてはもう何十年も前から銀行、保険会社と激烈な競争をやっているわけですね。ですから、新たに民営化して競争が生まれて、それで効率化するというチャネルはないんですよ。もう既に激烈な競争をしている。  だから、今、郵便局サービスがいいわけですよね。なぜいいかというと、競争に勝てないからです。民間との競争に勝てないから、大変効率化をしていると。民営化したらその競争が激しくなって効率化するという議論はここでは成立しないんですね。それが分かっておられない。原則論を言っておられます。こういうのを原理主義と言うんですね。市場原理主義というふうに言いますけれども、今いろいろ議論されている方は民営化原理主義と、民営化タリバンと言ってもいいんですけれどもね。そういうことではないかというふうに思っております。  それから、それじゃ今度は、郵政民営化して問題点が出るというところについて、いろいろカバーなさっているとおっしゃっているんですけれども、本当にそうかと。  まず、郵政民営化の最大の問題点は離島とか過疎地が切り捨てられるということですね。離島とか過疎地は、これは民間会社でできないです。利益上げることできません。ところが、日本というのは、例えばよくドイツ・ポストが民営化したと、成功したじゃないかと言うけれども、ドイツは大陸ですよ、あれ離島なんか一つもないんです。それから、あそこは森の国で、山の国じゃありませんからそんなに山間へき地もないんですね。そういうところは郵便事業民営化してもいいかもしれません。  しかし日本は、人の住んでいない島まで入れると六千八百五十二島なんです。人が住んでいる島でも四百以上あるんです。そのうち恐らく三百以上は離島ですよ、これ。ですから、民間サービスできないようなところです。それから、山間へき地がたくさんありますから、恐らく民間、純粋な民間企業がサービスできないような地域というのは四百から五百あるはずなんです。これは民営化したら、原則としてはサービスできないですね。  ですけれども、この法案で二兆円の基金を積んで何とかすると、こうおっしゃっているんですけれども、どういう形で何とかするか、法案を読んでも見えないですね。一体どうするんだと、そういうところ。これちゃんとやりますとおっしゃっていますけれども、二兆円の基金を積んでどうやるかというのが見えないと。それからまた、変な話ですよね、株式会社に二兆円の基金積んで、これで何か公的なことをやりなさいと。それなら公社でやればいいじゃないですか。これはもう本当にここの民営化というのはよく分からない。法律を読んでも、純粋な民営化になっていないですよね。一体これ何なんですかということですね。  それから、実は銀行業務と保険業務は、これは理論的には民営化できるはずです。というのは、実は民間の銀行もあるわけですし民間の保険もあるわけですから、当然のことながら理論的には民営化できるはずですけれども。これはもうしばしば言われていますけれども、郵貯簡保も巨大な金融機関ですね。郵便貯金というのは世界一の銀行です。メガバンク四つ集めたよりも資産が大きいわけです。簡保についても同様です、極めて大きい。世界一の巨大金融機関です。  これを今一挙に民営化したら、純粋な民営化を僕、言っているんですよ、純粋な民営化したらどうなるんだと。地方金融機関、ばたばたつぶれますよ。たださえ地方の金融機関は今苦しいんです。信組、信金あるいは第二地銀、そういうところは非常に今経営苦しいんですね。地方金融の再編成が行われると言っているんです。金融庁もそのために公的資金入れると言ったんです。そこに、郵貯に本当に民営化して何でもやりなさいと言ったら、これは金融機関、大混乱します。  それから、今度、郵貯の方が、郵貯簡保の方が、例えば国債等で運用するというようなことになりますと、今度は国債市場で巨大なプレーヤーになりますから、恐らく郵貯簡保国債市場を支配するようになると思います。今では短期の資金市場というのは農中が非常に強い力を持っていますね。ですけれども、郵貯簡保国債市場に入ってきますと、国債の価格をそれが売ったり買ったりするだけで支配するようになると。ですから、こんな巨大な金融機関を一挙に民営化するなんということは、これは理論的にできないことですね。巨象を小さな池に放つようなものです。  ですから、もしこの部分民営化するとすれば、これは郵貯簡保のサイズをうんと小さくして、例えば預け入れ限度額ってありますから、それをどんどんどんどん下げて、うんと小さくした上で民営化というのはあるかもしれません。理論的にはそれ可能です。簡保についても可能です。あるいは、郵便局でもう郵便貯金じゃなくて国債売ってもらって、国債の方が有利ですから、国債を例えば窓口で売ってもらって、郵貯はどんどん減らしていって、それで郵貯が非常に小さくなったところで民営化するということは、これは可能ですけれども、今の郵貯を純粋に民営化するということは、これはとてもできない。  ですから、もちろん法案見ても純粋な民営化になっていないですよね、いろんなところにかぎを掛けてありますから。それじゃ、民営化って何なんですかと僕は言いたいんです。民営化法案なんでしょうと。民営化しない民営化なんですよね、これ、両方とも。一体、一体どういう法案だかよく分からない。  そうすると、結果として一体こういう法律を通すと何が起こるのかということを私は考えてみたいと思うんですけれども、何が起こるかというと、結局、事実上の官営銀行、官営会社ができて、それが業務を拡大するということになるわけですよね。結果としてこれ民業圧迫です。ですから、例えば地域の金融機関なんかが、もし本格的に民営化されれば大変なことになるということでございますから、その官の、事実上の官のままその事業を拡大するという形になりますよということ。  それからもう一つは、これ余り議論されていないんですけれども、これ、巨大な利権です。三百数十兆の資産の運用というのは、これは巨大な利権です。これ、公社のうちはまだ国家公務員法が準用されますから贈収賄は起こらないです。民営化したら、これは贈収賄は適用になりませんから、巨大な腐敗が起こる可能性がある。  僕は腐敗が起こるとは言っていません、可能性として、巨大な腐敗が起こる可能性があると。道路公団も同じようなことですね、あれね。民になると、あれ、腐敗が更に深くなる可能性がありますけれども、この郵貯簡保の場合も、これだけ巨大な利権ですから、群がってくると思いますよ、投資信託とかファンドとか。特に外資系なんか、今こうやって待っていますから。ですから、そこでその腐敗が起こらないように。  それから、横領、背任というのはできますけれどもね、しかし、いろんなところで接待されて、いろんな天下りをしてそれでやるということは民はできますからね。腐敗がむしろ民営化によって増大するんじゃないかと。  ですから、この法案を通していいことはほとんどないと。まあ継続審議でも廃案でもいいですけれども、それは皆さんがお決めになることでございまして、こういう法案を今慌てて通すことは百害あって一利なしだというふうに考えております。  どうもありがとうございました。
  8. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、岡村参考人にお願いいたします。岡村参考人
  9. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 岡村でございます。  委員の皆様には、連日、猛暑の中、こうして議論をされているのをすばらしいことだと思いますし、尊敬もいたします。参考人として本当にこんなすばらしい歴史のある部屋で話をさせていただくことだけでも僕はもう幸せ一杯で、本当に今日わくわくしながら参りました。  皆さんのように僕は常に国を思い大きな視野で物事を考えてきたわけでもありません。法案の詳細について公聴会などの資料を見せていただきますと、私がお話ししたいような内容というのはもうほとんど出尽くしているような気がします。私個人としての思いや願いを主に述べさせていただきたいと思っています。  参考人としての依頼を受けたときに、なぜ榊原先生のような郵政の専門家でもない私に依頼が来たのかなとか、どうして神様は私に何か話をさせたいのかなとか、何を話させたいんだろうとか、そんな理由について考えてみました。偶然ではない必然性を感じたからです。  私は、昭和五十二年、二十四歳のとき、中学生のときからの夢だった手作りヨットによる単独太平洋横断に挑戦しました。何度か大きなしけに遭い、そのたびに生かされている自分という存在を感じました。それが私の生き方の原点になっています。  その後、建設会社に就職し、三十歳のとき、建築設計事務所として独立する準備をしていたときに、戸塚ヨットスクール事件や金属バットによる殺人事件など青少年問題が多発し、このままでは子供たちが駄目になってしまう、心豊かな冒険心あふれる子供たちを育てたい、命と家族のきずなの大切さを教えたいとの願いから、ヨット教室やキャンプなどの体験教育を行う塾を開校して、以来二十年間、子供たちと接してきました。  その中で感じたことは、教育は祈りと願い、そして何よりも子供たちを信じることの大切でした。川上がきれいになって川下がきれいになると言いますが、子供は時代の鏡です。社会環境が子供に与える影響は非常に大きく、政治家としての皆さんの役割の大切さを強く感じています。郵政民営化法案の審議も、これからの日本の在り方、子供の将来までも問われているような気がしてなりません。  戦後の日本は、欲望の充足イコール幸福、打算の論理イコール合理主義という考え方だけで急速な経済成長を遂げてきたように思います。日曜日と重なった祝日を月曜日に振り替え、土曜日と含めて三連休にしたのも一つの例です。観光の振興と連休が取れるという合理主義から生まれた法律ですが、体育の日は十月十日だから私は意味があると思っています。  先日、昭和の日が制定されましたが、大正の日や明治の日はありません。物事をとらえるとき、点でとらえて、線でしか見ないようになってしまったのも今の日本ではないでしょうか。その結果、過去の歴史を大切にし、そして未来に向けた考え方ではなく、難しいことは他人任せ、その場主義でしのいで先延ばしにするという考え方や手法が政治的にも定着してしまったように思えます。  欲望の充足イコール幸福、打算の論理イコール合理主義という両輪で走ってきた清算を、戦後六十年たった今、道路公団による談合事件、JR西日本による列車事故、年金、靖国、そして教育問題、また五百兆円を超える国債残高という形で課せられているような気がいたします。  いろいろな事件や問題が起こるには訳があります。欲望と打算の論理で両輪で歩いてきた日本に対する清算が一気に起こっているのが今の社会であり、郵政民営化もその一つだと私は思っています。  さて、小泉首相は宮澤内閣の時代郵政大臣を務められ、郵政の実態を自分の目で検証し経験された経験から、郵政は大変な問題を抱えている巨大組織だとの強い危機意識から、長年にわたり一貫して郵政民営化に向けた強い信念を持ち続け、行動されてきました。首相就任後も、郵政民営化こそ本格的な行財政改革の第一歩であり、小泉構造改革の本丸と位置付け、強硬に民営化を推し進めている政治家の姿勢を、政治家として私は尊敬しています。なぜなら、そこに私心が見えないからです。  郵政民営化には、自民党と友好関係にあったはずの特定郵便局局長会までが強く反発しています。自民党の総裁として、敵に回すことは当然選挙に不利になるとの覚悟をした上であえて郵政民営化を強行しているということは、ただそれだけで国を思う強い信念を感じます。郵政公社現状に危機感を抱き、長年そればかりを考えてきた人の意見を私は尊重するべきだと思います。  公社民営化は今始まったばかりではなく、一九八〇年代から日本電信電話公社日本専売公社日本国有鉄道の三公社が次々に民営化され、硬直したシステムは見直され、サービスの質や利便性は向上し、国民は全く不安を感じていません。民営化すればすべて良しとは限りませんが、法案が通らず、郵便、貯金、保険の三事業が続けられることになると、将来はだれもが難しいと思っています。公社経営陣にも郵政民営化や大胆な改革を望む声があると聞いています。将来、経営が破綻して税金がつぎ込まれる可能性も低くありません。巨額赤字国民負担にツケを回した国鉄のようになってからでは、強制的な人員削減を含め、激しい痛みを伴う民営化になってしまいます。  IT革命による電子メールの普及で毎年二%の割合で郵便取扱量が減少し、郵政公社民間企業と提携した事業を始めていますが、民業を圧迫しているのも事実です。また、郵便簡保は、規模が巨大過ぎるため、独占企業になりかねないなどの多くの問題点もあります。金融部門の完全民営化までには十年以上の年月を掛け、雇用や過疎地サービス維持も配慮していますが、いずれ、公社のままでは将来に展望はありません。当然、経営が悪化すればサービスの低下は免れません。  さきの総裁選挙で小泉首相は、郵政民営化を第一目標として掲げ、立候補し、再選されました。方法論と時期の食い違いはあるでしょうが、皆さんが選んだ首相がやろうとしているならやらせてあげればいいと私は思っています。今まで避けて通ってきた困難な課題に挑戦しようとする政治家はほかにいないじゃないですか。小泉首相のような強硬論者がいるとき、命懸けでやろうとする人がいるときにやらなければ、二度とチャンスは来ないかもしれません。  過去に中心の存在なくして繁栄した事実はありません。中心なくして組織は成り立ちません。だからこそ、特に自民党の議員の皆さんは、中心にいる人を立てなければなりません。多少の考え方の違いはあったとしても、私はそれが筋目だと思っています。  私心を捨て公にというのが私は天のメッセージではないかと考えています。民営化が確立するまでに十年以上も掛けるなら、今手を付けるべきです。先送りなどとんでもないことだと思っています。先送りすれば、また更に大きな問題が噴出してくるはずです。  花のほほ笑み、根の祈りという言葉があります。枝葉や花は毎年替わりますが、根っこは替わりません。根っことは、日本のためになるかどうかということ、まず郵政民営化という根を出させることが大切です。そして、その根が出たときどう育てるか、そこも大事です。三年ごとに総合的な検証と見直しを行うことになっています。今、必死で反対される方々、その検証こそが皆さんの役目だと思っています。見直し作業の中で、みんなでいい花を咲かせる努力をしていただきたい。まず根を出させることが大切なんではないですか。  国鉄民営化のときにも大きな反対がありました。地方路線は廃止しないという方針ではありましたが、時代の流れで、最近、広島駅から三段峡に向かう可部線のように廃止された事例もあります。離島や中山間地域の郵便局の存在は絶対必要ですし、それが担保されなければいけません。しかし、過疎化の中で存続不可能というときが来るかもしれません。そのときは、住民の立場に立った議論がなされることの方が私は大切だと思っています。可部線のときにもそれほど大きな住民反対も起こっておりません。  完璧な改革法案は最初からありません。だから、走りながら見直しを行えばいい、私は、皆さんそう思っていらっしゃるんじゃないかと私は思っています。議員の皆さんには、日本のためになるかならないか、天が喜ぶかどうか、その一点で検討をしていただきたいと願っています。  みんなの中の自分、自分の中のみんなという言葉があります。今の日本にはこの連帯感が希薄になってしまいました。人間の体は、すべての臓器が正常に働いて体が円滑に動き、命が守られています。一つの臓器が弱っていれば、体全体でそれを支えようとします。大きな財政赤字を抱え、再起不能と言われるほど日本の、日本という国の心臓が弱っているとき、小泉さんが選ばれ、心臓を強くしようとするのであれば、それをみんなで支えていただきたい。肺を強くしたければ、民主党が頑張るときかもしれません。与野党一緒になってまずやってみればいいと思います。小泉首相は万能でもなければ完璧でもありません。だからこそ、みんなが助けてあげればいいと願っております。  現在、アスベストの危険性が問題になっています。私も建築屋ですのでかなり使いました。でも、そのときはそれほど危険性というものが前面には出てきませんでした。ただ、危険性は分かっていたとしても、問題点を先送りにしてきた結果、今大きな被害をもたらしています。  郵政民営化法案が絶対正しい、永遠に正しいということは、私、ないと思っています。しかし、参議院の皆様には、問題を先送りするのではなく、これからの日本の姿を議論してほしい。今回の郵政民営化議論は、私はある意味では日本の在り方が問われているのではないかと思っております。  以上、御清聴ありがとうございました。
  10. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、紺谷参考人にお願いいたします。紺谷参考人
  11. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 経済を専門としておりますエコノミスト紺谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。必死に反対している一人でございます。  小泉さんは、大変有り難いことに、改革ということに命懸けでおやりくだすっているようなんですけれども、私、不思議だなと思うことがあるんですね。どういうことか。改革政権が出てくるたびに国民生活が悪化するんです。細川改革しかり、橋本行革しかり、小泉改革に至っては物すごく悪化したということでございますね。何よりの証拠が株価でございます。  国民は、改革改革と旗を振られますと、いやあ改革やってくれているんだなと。橋本行革のころには七割の方が郵政民営化に反対でしたけれども、現在は民営化賛成という人の方が増えてきていると、だから国民の気持ちはそこにあるんだと総理もおっしゃっていますね。本当だろうかと私は思うんですけれども。国民はだませても株価はだませないと思っております。  株価を見ますと、小泉政権の発足時一万四千円前後だったんですね。今一万一千円。昨日何か瞬間的に二千円を超えたらしいですけれども。だけれども、ずうっと株価が一度も発足時を超えないというのは一体どういうことなんだろうか。改革が始まってからもう四年数か月たっているわけですね。痛みを伴っても改革と言われてじいっと我慢していたら大増税案が出てきたということもありまして、一体いつまで国民は痛むのかなという思いがあるわけでございます。  株価が下がったということはとても不思議なことなんですよ。どうしてか。今現在痛みがあったとしても、将来に明るい展望が開けているんでしたらば、株価というのは先読みするものでございますから、今現在は不調でも将来が明るいと思えば株価は上がるんです。株式市場というのは世界じゅうの経済の専門家が売買しているところでありまして、株価の動きというのはそうした専門家の日本経済に対する見方なんですね。日本の将来に対する見方なんです。それが四年数か月もたってまだ上がっていないと。上がった上がったとおっしゃったこともありましたけれども、それは御自身が半値に下げたその大底から上がったというだけのことでありまして、いまだに発足時を超えていないと。改革が進んできたはずなのに、本当に進んだかどうかは御異論はあるかと思いますが、進めば進むほど株価は悪化する、下がる。国民生活は悪化する。本当に不思議だなと。つまり、国民のための改革ではなかったんじゃないのかなという思いがあるわけでございます。  改革というからには、国民に安全と安心を与えてくださる、豊かで明るい将来展望を与えてくださると、法治国家なんですから法のルールを守っていただくと、民主主義を貫徹してくださるということだと思うんですけれども、どうも分かりづらいなと思うのは、中央省庁改革法という法が全く無視されていたりとか、民主主義国家とは到底思えないような強権的なルール無視が次から次へと繰り出されるこの改革というのは、やり方見ていたって改革じゃないなという感じがしてしまうわけでございますね。  行財政改革の本丸と総理は度々おっしゃっております。どうして郵政民営化が行財政改革の本丸なのかということはいまだに分かりません。何でなんでしょうか。お分かりの方がいたら教えていただきたいなと思うぐらいでございますけれども。そもそも、郵便局民間に転売して株式の収入で財政赤字を埋めようとか、民間企業にして増税して、それで財政赤字を埋めようとか、そういう発想もあるかのようにお聞きしておりますけれども、そもそも巨額の財政赤字はどうしてこんなに巨額になったのかという原因分析ができているんでしょうか。  よく公共事業だとか景気対策のせいだとか言われますけれども、公共事業は九八年以降激減しております。一方、財政赤字はそれ以降激増しているということでありまして、少なくとも公共事業が第一の犯人じゃないということはデータからも明らかでございます。第二に、景気対策なのかと。景気対策は一九九〇年以降全部で百三十兆ほど行われておりますけれども、いわゆる国庫支出のあった真水の部分というのはせいぜいが六十兆というのがほとんどのシンクタンクの推測でございます、推計でございます。  ところが、九〇年以降どれだけ国債が増えたのかというと、三百数十兆増えちゃっているわけですね。じゃ、残りの三百兆は何に使ったんですかということでございますね。何に使ったんでしょうか。税収不足を補うために使ってきたということですね。九〇年代の初め、日本の税収は六十兆を超えておりました。今四十兆台なんですね。森政権までの政権が十一年掛けて減税も含めて十兆減らしたんですよ。小泉政権は、当初のたった二年間でまた十兆減らしちゃったということなんですね。税収不足が赤字国債のここまで巨額に膨れてしまった原因であると。  じゃ、税収不足は何で起きたのか。法人税収が落ちたのはなぜでしょうか。景気が悪くて赤字企業ばっかり増えたからではありませんか。所得税収が、増えたのはどうしてでしょうか。国民所得が低下してきているからではありませんか。消費税収が落ちたのはなぜでしょうか。物が売れなくなったからではないですか。景気が悪いから財政赤字が大きくなってきたんです。景気が悪いから税収がどんどんどんどんおっこって財政赤字が大きくなってきたんですね。その問題は郵政民営化すれば消せるんでしょうか。私はそうは思いません。根本的な原因が解決されていない。  行政改革であるという考えもありますね。本当に行政改革なんだろうか。  そもそも、この赤字をつくった原因は何なのかということさえ明らかじゃないわけですよ。特殊法人改革財投改革だとおっしゃるんですけれども、一番効率的な財投改革特殊法人改革は、財投機関そのもの、特殊法人そのものを見直していくということなんですね。まずはきちんと会計報告をさせるということではないですか。それで不公正とか非効率の原因を探っていくと。多くの方たちは、天下り、ファミリー企業の問題ではないかというふうにおっしゃっているわけですね。そこを手付かずのまま本当に行政改革なんかできるのかと。  そもそも、橋本行革も間違っていたと私は思うんですけれども、何でもかんでも民に任せれば改革というわけにはいかないと思うんですね。行革会議自体が行革に反すると。なぜならば、政治復権とおっしゃっていたからです。政治が国家の運営に責任を持つと。そうであるにもかかわらず、たった十人か数人の有識者を集めて、公開もされない議論で二十一世紀の日本の行政の枠組みを決めてしまったわけでございます。  しかも、国会議員を蚊帳の外に置いてやったと。国会議員がそれに対して反論すると、いや、国会議員は黙っていろ、族議員は黙っていろと。国会議員って何なんだろうかなと私はあのときから思ったんです。国民が選んだ代表者ではないんだろうかというふうに思うわけでございます。  行政責任ということからいいますと、例えば金融不安が起きましたね。財政赤字も大きくなりましたね。税収も不足しましたね。景気もこんなに悪化してきております。その責任をどなたか行政はお取りになったんですか。  景気という観点からいいますと、実はこの十五年間、九〇年からの十五年間、日本のGDPはほぼ横ばいでございます。一・一倍にしかなっていないんですね。その間、アメリカは二・四倍になっているわけでございます。年率に引き直しますと、アメリカはほぼ毎年六%のスピードで成長してきた、日本はほぼゼロ成長であったということなんです。これはデータから明らかでございます。  一体日本とアメリカのどっちが異常だったのかと思ってほかの先進主要国を調べてみますと、何とアメリカが先進主要国の平均値だったということが分かったんです。つまり、日本は横ばい状態でずっと世界の流れから後れを取ってきたということですね。  先ごろの石税調会長の論点整理の中にも澄まして財務省はお書きになっているんですけれども、小泉政権発足時の二〇〇一年、日本の課税最低限は世界の中で最高であった、先進主要国の中で最高であったと。つまり、ほかの国だったらば税を払っている人たち日本では払っていないんだと。ところが、実はもう昨年、日本の課税最低限は先進主要国の中で最低になっているんです。ほかの国なら税を取られていない人が取られているわけですよ。しかももっと増税するという案が出てきていると。  なぜこんなことになったのかと。簡単ですね。先ほど申し上げたように、日本国民の所得、GDPは横ばいなのに、ほかの国は二・四倍になったからでございます。そういう行政、財政の失敗の責任はだれがお取りくださるのかと。どなたもお取りいただいていないわけですね。金融不安に関して大蔵省は責任を取ったんですか。財政赤字、税収不足に関して大蔵省は責任を取ったんですか。全然お取りになっていないわけでございます。本当の原因というのをきちんと究明せずに表面的なところだけいじって、原因分析もしないのに対策を先に決めて、民営化が自己目的としか思えないような民営化論議をずっと続けてきたわけですね。  何で民営化が自己目的化しているかと、思うかといいますと、民営化の理由というのがころころころころ変わるんですよ。当初と全く逆のことまでおっしゃっているわけです。当初はこのままだと郵政は肥大化していくとおっしゃっていたのが、今はしぼんでいくから今のうちに手を打たなくてはと、全く逆のことをおっしゃっているわけですね。  そもそも郵便局が果たしてきた役割ということを考えなくてはいけないと思うんですよね。国民生活の基盤となるインフラとしてずっと地方を支えてきたり、あるいは小口低所得者の金融活動を支えてきたりしたわけでございます。その役割はもう終わったのか終わらないのかと。民にできることは民にという小泉総理のおっしゃっていることは非常に正しいと思います。しかし、民にできることは確かにあるんですけれども、そういったら政府がおやりになっていることの大体は民にできるんですよ。軍隊だって民間会社がありますね。刑務所だって民営化されていますね。何で郵政だけ先になさるのかということが私には見えないんです。分からないんです。しかも、郵政民営化してどこが良くなるか、なお分からないということですから、ちっとも賛成したいという気持ちに残念ながらなれないんですね。  橋本行革のときからずっと間違ってきたのは、ともかく民間の判断は正しいということなんですよ。ですから、財投に関しても、先ほど榊原参考人からお話がありましたけれども、財投機関債、財投債というようなものに転換することによって、これをもって改革とおっしゃったんですね。それで、市場で債券を発行できるような特殊法人は残してもいいと。それは事業として成り立つからだ、採算が取れるからだというお話だったんですけれども、そういう財投機関こそ民営化すべきなんですよ。市場ベースで採算が取れるんですから、それこそ民に任せていただきたいですね。  市場ベースでは採算は取れないんだけれども、国民生活を守るために必要なことが国の仕事でございます。だからこそ国民は税を払っているんではありませんか。国民が税を払うというのは、採算の取れないことでも必要なことはやってくださいねという意味なんですよ。採算、採算という点では道路もそうでしたけれども、採算が取れるところは造るけれども、取れないところは造らないと。じゃ、道路のネットワークがぶつ切り状態でよろしいんですかという話になるわけですね。  財投機関債を市場で発行してって言いますけれども、債券投資をする投資家は、自分が出したお金が無事戻ってくるかどうか、負担したリスクにふさわしい金利が付いてくるかどうかしか考えないんですよ。これが国民生活を守るために必要なのかどうかとか、公的事業として必要なのかどうかなんて知ったことかというのが投資家でございます。そこに公的事業の判断をゆだねるということ自体がまさしく大間違いというふうに私は思うんですね。  何でもかんでも民に任せようということで民間委員会がやたらめたらできるんでございますけれども、本業でお忙しい方たちが御苦労なことだとは思いますけれども、しかし、どのぐらいの頻度か、それぞれによって違うと思いますけれど、たまに会議に出てきて、道路のドの字も知らないような方が御議論なさって日本の道路網決めちゃうのかなと、それは大変不安でございます。国会軽視もいいところでございます。何のために国会議員がおいでなんですか。しかも、国会議員が物を言うと族議員がといっておとしめる。  しかし、族議員がいなかったらば政治なんか成り立ちません。無色透明、公正中立な国民なんかどこにもいないからです。みんな男であったり、女であったり、年取っていたり、若かったり、都会にいたり、地方にいたり、社長だったり、従業員だったり、様々なんですね。そういう方たちの様々なグループ、様々な地域の利害得失を一か所に集めて、どういうような改革を行えば最大多数の最大幸福を求められるのかという御議論をしていただかなければならないときに、様々なグループの利害を代表して意見を言う方たちを族議員だとおとしめて意見を聞かないんです。マスコミは、反対派は、自民党の反対派は特定郵便局長会の票が欲しいんだとおっしゃる。野党は郵政の労働組合の票が欲しいんだとおっしゃる。それは正しいのかもしれません。正しいのかもしれませんけれど、それはそれとして反対派の意見にきちんと耳を傾けるということでなければ、改革なんかできないんですね。  そもそも改革というのは、さっきも申し上げましたように、人により、立場により、違うんですよ。それを、私の改革に反対する者は抵抗勢力だと決め付けて、人の言うことには耳をかさないということであってよろしいんでしょうか。本当に改革を目指すならば、まずは自分と異なる意見に耳を傾けるということが第一歩であるはずですね。  マスコミもおかしいなと思うのは、古巣の跡目相続争いに敗れた方が古巣を守旧派と呼んだら、一緒になって守旧派と呼ぶと。小泉さんが御自身の改革に反対する人を抵抗勢力と呼ぶと、一緒になって抵抗勢力と呼ぶと。今回は、反対票を投じた人、欠席した人を造反議員と呼んでいるということでありまして、一体ジャーナリズムの中正公立というのは一体どこに行っちゃったのかなというふうに思うわけでございます。そういう見方ではなくて、きちんと国民の立場から立ってどうなのかということをお考えいただきたいと思うんですね。  郵政が果たしてきた役割は幾つかありますけれども、一つは、地方や小口や、そういうところの生活基盤となってきたと。今や、その生活基盤を壊すだけでなくて、日本の民主主義も破壊されつつあるなというふうに感じているわけでございますけれども、公的資金の提供者でもあったわけですね。今後、日本はもう公的資金は要らないんですか。郵政お金を返す、年金にお金を返すというふうに言っておりますけれども、しかし、返すお金の半分は、大蔵省が厚労省とそれから総務省に話を付けて財投債半分買わせているわけでございます。それから大量の国債も持ってもらっているわけですね。そういう公的資金ニーズはどうなったんだろうか。  私は、郵便貯金というのは第二国債であると思っております。証券投資が嫌いな日本において出し入れ自由な貯金という形を取った国債だと思うんですね。出し入れ自由な分だけ金利は低くてもいいと。どんな過疎地でも小口でもサービスしているという点で更にその金利は低くてもいいということでありまして、そういう資金調達のルートというのをあっさり捨ててしまってよろしいんですか。  肥大化ということをよく言いますけれども、銀行に比べて肥大している、保険会社に比べて肥大化していると言うのは国民の視点に立っておりません。単なるもうけ仕事をしたい営利企業の立場に立っているということでありまして、国民の観点、国家の観点から見たらば、必要とする公的資金の需要からいって、郵便貯金のあるいは簡保お金が集まり過ぎであるということかどうかでもってしか肥大化かどうかということは判定できないはずなんですね。それが肥大しているということであれば、金利を下げていけばよろしいというふうに私は思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、改革というのは何らかの目標が明示されていなくてはなりません。現状分析がきちんとされていなくてはいけません。現状のどこが問題なのか、行政、財政のどこが問題なのかという問題点を明らかにしないまま、いきなり対策が出てきたということをもって非常に不思議な議論になっているなと思うわけでございます。  理由がはっきりしないというその一点だけをもっても郵政民営化に反対したいと。国民の生活インフラを壊すという点でも反対したいなと思っておりましたけれども、このところの議論の成り行きを見ておりますと、国民の生活インフラだけではなくて日本の民主主義さえ破壊され掛かっているということで、強く強く反対させていただきたいと思っております。  どうも大変失礼いたしました。
  12. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 関口昌一

    ○関口昌一君 おはようございます。自由民主党の関口昌一です。  参考人の皆様方には、本当にいろいろ御予定のある中、こうして御出席をいただきまして貴重な御提言をいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  もう限られた時間での質問ということでございますので、まず中田参考人、今いろいろお話を聞かせていただきました。ちょっと私も聞きたいこともあるんですが、まず、横浜の市長さんという立場で、郵便局の果たす役割というのは非常に大きな地方行政とかかわりがあると思うんですが、そうしたことをちょっとお話をしていただければと思います。どんな役割を、かかわりをしているかということですね、郵便局とのかかわり。
  14. 中田宏

    参考人中田宏君) 地方行政と郵便局とのかかわりということについてでありますけれども、従来から、例えば地方行政における公金の出し入れといったことについては基本的には指定金融機関がいるわけですけれども、しかし、国民の側、我々からすると市民の側が例えば納税等を始めとしたそうした手段として郵便局を利用されるということについては、これまでもちろん大きなかかわりがあったというふうにも言えようかと思います。  最近は、横浜市などでは、郵政公社化されたことによってより積極的な営業展開をしていこうというふうにその方向性を出していますので、私どもと相談をして郵政公社で新たなサービス提供をお願いをしたケースがありました。例えばどういうことかといいますと、七十歳以上のお年寄りに敬老パスというものを横浜市では交通機関を利用する際のパスとして発給をしてきたわけですけれども、これを、従来は郵政郵便事業で送るという形でしたけれども、仕組みを改めまして、本人確認をしたり、それから納付手続をした上で、そこで、その場で発給をするというようなことですね、こうしたことを今郵政公社の皆さんにお願いをし、サービスはスタートすることになったわけでありまして、そういう意味では、公社化をしたことによって新しいサービス提供ということが以前に比べればしていただいているのかなというところを感じます。
  15. 関口昌一

    ○関口昌一君 ありがとうございました。  よくこういう議論がされるんですね。首都圏、都市部の方々はこの民営化については賛成であって、田舎の方に行くと反対が多いというふうな意見を聞くんですが、私は、実際埼玉県でございますけれども、埼玉でも一番こういう田舎の方の秩父、しかもその秩父の郡の方の町の出身でございます。私も、この郵政民営化の問題でいろいろ議論される中で、やっぱり過疎地域において、これはもう都市部の郵便局も同じであるんですが、ちゃんとしっかり郵便局が担保されるかどうかという不安をみんな持っている。  しかし、私は、衆議院の中によって修正というのは、国会の修正というのは非常に大きな役割を持っているし、民営化でありながらやっぱり抑制された民営化であると今回私も考えておりまして、そうした中で、中田市長さんは、首都圏、政令市の市長さんということでございますが、立場を変えて、過疎地の村長さんとしたらどんなお考えでしょうか。
  16. 中田宏

    参考人中田宏君) 今回の法案は、正に榊原先生が先ほどおっしゃっておられたとおり、本当の意味での民営化ということをやれば懸念をされるではないかということについての様々な策を講じた制度設計になっていると思います。  そういう意味では、逆にその点をとらえて今度はこれが民営化なのかという議論が始まってしまうわけですけれども、しかし、それはこれまで公共性というものを、非常に郵便局郵政事業が信頼をされていた部分をどうやって民営化の中で担保をしていくのかという中で制度設計がなされたわけであって、これはある意味では、反対する方々の憂いというものに対してやはりこたえる形の制度設計なんだということをむしろ理解をする必要があると思うんですね。  今御質問の過疎地等を始めとした地方ということについては、正にそうした対策は講じられているわけであって、まず郵便局の配置については、法律の中で、あまねくこれは配置をしなければいけない、そしてそのあまねくというのは、今ある状態を基本的には肯定をした約束事に既にこの議案の審議の中で明らかになっておりますですよね。そういう意味では、今のネットワークというものを活用するということにまずインフラとしてはなる。  さらには、これまでの三事業のそれぞれの相互的な効果ということを考えたときには、やはり今のネットワークをそのまま利用していくというのが最も効果的で、当然経営判断としてはそこを中心に、中心というよりも、はっきり言ったら私はそれしかないと思いますね。すなわち、安定的な長期契約をする対象として、例えばじゃセブンイレブンとやるかということになれば、セブンイレブンのネットワークはそこまでには至らないし、また今までの業務を引き継ぐに当たっては、最初からセブンイレブンのアルバイトさんでやるのかということを考えたら、とてもできる話じゃないわけであって、ということになれば、これまでの郵便局のネットワークを利用してやるということが、もうこれはほぼ、ほぼというか、間違いなく確実な状態になっているということになります。  さらに、それでも駄目な場合はということになると、ここも榊原先生に先ほどおっしゃった御意見参考にすれば、基金が設けられていて、まあ意味が分からないということになるわけですけれども、それもまた、これ言わば過疎から郵便局がなくなってしまったらどうするんだということに対するある意味でのセーフティーネットとして、これは地域・社会貢献基金というものを設けるという、二重、三重というそうしたものがこれで制度設計としてなされているというふうに思っています。  最後に付け加えますけれども、仮に郵便局の統廃合ということになれば、私はこれ、地方の皆さんに、特に過疎の皆さんに誤解をしていただきたくないのは、都市部も大変だと思います。銀行が再編をする中で、支店が減ったのは都市部なんですね。駅前に幾つも同じような競合相手がいて、それが合併をすることによって都市部の銀行はどんどんどんどん減りました。そういう意味では、これは郵便局ということを考えたときに、都市部ではかなり駅の南口、北口で郵便局がそれぞれ一つずつあるというような場所はたくさんあります。そういう意味では、この議論も単純ではないというふうに申し述べたいと思います。
  17. 関口昌一

    ○関口昌一君 いろいろ御発言いただきまして、ありがとうございました。  特に過疎地域の郵便局というと、金融機関がないんで金融機関の役割を果たしているということであります。私もしっかり、こういうことはいろいろな不安を払拭することによって、民営化といっても法の仕組みにおいては抑制の利いた民営化である。それはやっぱり国民の、利用者側の不安を解消するため、また経営を安定するためにこうしたいろいろな修正が行われたと思っておりますし、国会議員の責務として、しっかりとその設置義務が果たされるかどうか、また監視もして行動もしていきたいと思っております。いろいろありがとうございました。  榊原先生、いろいろお話聞かせていただきましたりよく本も読ませていただきます。民営化は、立場ではっきり、今御意見をいただきました。  やっぱり、昨日地方公聴会行ってまいりました。ちょうど盛岡の方だったんですが、経済の代表の方々、それから郵便局関係の方々賛成、反対、意見ございましたけれども、賛成の方でもやっぱり不安をされていることはございました。先ほどお話が、御発言いただきました、巨大なマーケットになって民業を圧迫するんじゃないかという心配もされております。私もそれは心配をしております。  榊原参考人、非常に私、印象にあったのは、万が一民営化を考えるとすると、郵貯簡保のこの、何というんですか、サイズを小さくするというようなお話をちょっと触れられたんですが、その辺をちょっとまたお話をいただければと思うんですが。
  18. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 郵便局というのは非常に公的なインフラになっていて、これを民営化するということは望ましくないんですけれども、実は郵貯とか簡保は、例えば今郵便貯金郵便貯金の定額預金というのがあるわけですね。実は定額預金よりは個人向け国債の方が有利なんですよね。ですから、郵便局で例えば定額預金を個人向け国債に振り替えてくださいというような勧め方をすれば、恐らく相当の方が定額預金から個人向け国債に移ってくると思うんですね。個人向け国債というのは実は定額預金をモデルにしてつくったんですよ、あれ。ですから、それで移ってくると郵貯の残高は自然に減ってくるわけでございますよね。簡保についても、簡保などはやはり民間の保険会社にこれを移していくと。ただ、窓口業務は郵便局でやっていいと思うんですよ。窓口業務は郵便局でやるということで、次第に今の簡保とか郵貯国債に移す、あるいは民間に移すということをやっていくと、それでずっと小さくするというのがまず第一歩でございますよね。本当に小さくなったときにその業務について民営化するということは可能だと思います。  ですから、まずやることは、例えば限度額の引下げとか、積極的な個人向け国債の販売とか、あるいは場合によると投資信託を郵便局で売るとか、そういうことで、それが本当に投資信託を売るとなれば、これは官から民への資金の移動ですよね。あるいは簡保民間保険に移すということであれば官から民への移動でございますね。そういうことをやるのが本来の筋ではないかと。  ですから、三十年前に例えば郵貯民営化ということを言われたわけですね。小泉総理はそのころから言われているわけですけれども。そのときは小さかったんですよ、郵貯簡保も。ですから、小さいときはそれはある程度民営化してイコールフッティングにした方が望ましいということを民間の方も考えておられた。今はもう巨大になり過ぎちゃっていますから、民営化するんなら一度小さくして、あるいは資金を移して、いろんなところに、それで民営化をすると。ただ、郵便局は窓口業務を続けると。そういうことが一つのオルタナティブというか選択肢、今の法案のオルタナティブな選択肢ではないかというふうに私は考えております。
  19. 関口昌一

    ○関口昌一君 ありがとうございます。もっと聞きたいんですが、二十分という限られた時間でございますんで、あとお二方また参考人もいらっしゃいますんで。  次、岡村参考人ですね、県会議員ということでございます。私も、地元の埼玉県で三期八年有余県会しておりました。経歴を拝見させていただきますと、非常にいろいろな活動をされた流れの中で県会で今活動されているということであります。  先ほど、ちょっとお話今聞かせていただいたんですけど、この民営化法案の審議の在り方も、日本の将来、これまた子供の将来も考えて問われているような気がしてならないというような、ちょっと御発言ございました。それ、どのような、この点をどのように考えているか、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  20. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 今回、今回ある意味では本当久々に何か全国民が注目をしている法案のような気がいたします。子供たちですら、先生、民営化とかどうなのとか私らにやっぱり聞くわけです、子供たちが。  今、子供たちをずっと見ていますと、最近本当に夢が持てない、持たない、何か持つことが難しい時代に子供たちなってきました。その場しのぎの子供たちがすごく多いんですね、今さえ良ければって。ニートであるとかフリーターであるとか、そんな子供たちというのは、結果的にはその場しのぎ、今さえ良ければという考え方なんです。  で、もう戦後ずっと日本という国がそういう形を歩んできたんじゃないか。何かそのことをすごく感じてならないんです。それが結果的には五百兆円を超える国債残高になってみたりとか、そういう形で現れたんじゃないか。ますます借金も増えていくんだろうし、それをどうするのかとか思うときに、またこれを先延ばししてしまうような結果が出たとき、ああ、子供たちは、やっぱりそれが今の日本の行き方なんだというような見方をしてしまいかねないんじゃないかと思うんです。  やはり子供たちが先を見据えて次から次へと頑張っていこうという考え方持たせるためには、今、私は六十年の、戦後六十年の節目をつくるべきじゃないかなと。今回これをうまく民営化することによって、何か子供たち自身の心の活性化につながっていくんではないかというふうに思えてならない。だから、ある意味では子供たちの夢を育てていただきたい、そのためにも是非とも私は制定して、成立してほしいなと心から願っています。
  21. 関口昌一

    ○関口昌一君 ありがとうございました。  もう六分になりましたんで、紺谷参考人、非常にはっきりした意見賛成、反対であってもはっきり述べるというのは、私もそういう政治姿勢をいつも持って行動しております。もう民営化の問題が出てきたときは、もうはっきり、いろいろリスクは大きいですけど、やっぱりこれは民営化は必要だということをはっきり地元でもうたっております。  その流れの中で、民営化は反対だということでございます。経済的に考えてもということをいろいろ含めてということがあるかと思います。ただ、経済を考える場合、この今現況においての反対、また中期において、また長い目で考えた場合、いろいろあるかと思うんですが、長い目でとらえた場合、長期にとらえた場合でもやっぱりこの民営、民営化郵政に限って民営化というのは、やっぱり反対というか、考えない方がいい、方がよろしいでしょうか。ちょっとまたお話しいただければと思いますが。
  22. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 少なくとも、今現在、民営化した方がよろしいという事情は私には見えていないんです。全国二万四千七百ある郵便局、それから三十数万人もおいでの郵便局員、地元に愛情を持って地元の事情に通暁しているこの国家的な財産が、民営化されたらば崩れてしまうんではないかという懸念を持っているんですね。百三十年も掛けて築いてきたネットワークを民営化の名の下に崩してしまっていいのか。どこの国でも、民営化したところはどんどんどんどん郵便局郵便局員も減っているわけでございます。  このせっかくつくり上げたシステムをもっと国民のために活用するという在り方があるということで幾つか提言させていただいているんですけれども、一つはボランティア拠点です。様々な災害のときに全国からボランティアが集まるんですけれども、役所もひっくり返っておりますので、どこへ行ったらどんな人手が必要なのかということも分からない。どこへ行ったら民泊させてもらえるのか、どこへ行ったらお弁当食べさせてもらえるのか、どこに銭湯があるのかということさえ分からない。取りあえず郵便局に行けばそういうことを教えてもらえる。そうすれば、あのオイルの流出事件のときに、被害が最も大きかった珠洲市にはほとんど人が行かないで、三国にばっかり集中するということはなかったんではないのかなということが一つ。  それから、私は公的介護保険のときからずっと反対させていただいているんですけれども、郵便局でボランティア貯金をやってほしいと。今やっているようなその金利を一部寄附するというのではなくて、ボランティアを本当に献血手帳のように貯金していく仕組みなんですね。そうすると何がいいかというと、エコマネーの、地域マネーの全国ネットができるということなんです。そうすれば、都会に出ていった若者が、都会のお年寄りの世話をした分でふるさとの両親がそのボランティア貯金を下ろして御近所からお世話を受けることができると。そういう助け合いのネットワークをつくっていくということも大変大事なことだと思うんですね。  ほかにも申し上げたいことはあるんですけれども、時間のようなのでやめさせていただきます。
  23. 関口昌一

    ○関口昌一君 現時点で長期に、例えば長く考えた場合、やっぱり民営化というのは考えられないでしょうか。ちょっとその辺、簡潔に。
  24. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 今のところでは考えられません。  もう一つ言いたかったことは、公的資金需要でございます。多額の国債発行があるというふうにおっしゃっているじゃないですか。しかも、郵貯簡保、年金のお金は返すと言いながら、実は財投債に振り替えて、それをまた郵貯簡保、年金に持たせているという現実があるわけでございます。しかも、民営化されても持ってほしいと。  公的資金需要がある限り、それを最も低いコストで調達する方法は何なのかと。しかも、国民のニーズに合わせて調達する方法は何なのかと。さっき申し上げたように、より低い金利で資金調達できる第二国債のようなものが郵便貯金だと私は思っておりますので、巨額な公的資金が需要がある限り、この方法として、まずは政府は、国債発行のコストと郵便貯金を維持するコストとお考えいただきたいと思うんです。  そもそも、国民は三百四十兆のお金を政府に強制されて持っていっているわけじゃないですよ。自ら選択してそこへ持っていっているんだと。金融不安があるからだし、それから過疎地金融機関がないからだし、そういう現状をまずは政府にお考えいただきたいと。公的資金需要としての側面も是非是非お考えいただきたいということでございます。
  25. 関口昌一

    ○関口昌一君 まだまだ、特に中田参考人にもいろいろ聞きたかったんですけれども、もう一分になってしまいました。本当にいろいろ、それぞれのお立場からいろいろ御意見をいただきまして、参考にさせていただければと思っております。  国債の問題もちょっと聞きたかったんですけれども、今、官の資金国債を購入している、これは悪いとも申しませんが、やっぱり国民国債を買うようなシステムの運用というのは、これからやっぱりこれがもう必要になってくるんではないかなと思っております。  本当に今日は早朝からいろいろ、こうして貴重な御意見を聞かせていただきまして、重ねて御礼を申し上げまして質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  26. 高橋千秋

    高橋千秋君 民主党・新緑風会の高橋千秋でございます。  今日は朝早くからありがとうございます。特に、賛成派の参考人を探すのに大変苦労されたというふうに聞いておりますので、その中で貴重な方々でございます。遠いところをそれぞれ来ていただきましてありがとうございます。  既にいろんな論議が行われておりますが、榊原参考人にまずお伺いをしたいんですけれども、私もこの論議ずっと聞かさせていただいて、衆議院の議事録も全部目を通させていただいたんですが、私自身もいまだに何のためにこれは民営化をやるのか、よく分からないんですね。先ほどのお話の中にもありましたが、省令やいろんなことで決めていくんだろうというお話がございましたけれども、竹中さんの答弁を聞くと、必ず出てくるのが、想定をされるというのと、省令の中で決めていく、だけどまだそれはできていない、それからあとは、経営者の御判断に任せますという、そういうことが出てまいりまして、我々の郵便局を信頼している側からすると、今の段階で、そんな状況の中でこの郵政民営化法案を通してしまうのは非常に私も不安に思っておるんですが、先ほどの補足も含めて、榊原参考人の御意見があればお伺いをしたいと思います。
  27. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 基本的に、どうして今の法案あるいは国会答弁があいまいなものになってしまうかということを考えますと、理論的に無理なことをやっているんだというふうに私は思います。  過疎地の問題とか離島の問題というのを考えますと、郵便局というのは国民に必要な公的なインフラストラクチャーになっているんですね。これ、道路と同じようなものなんですね。これ経済学的に言いますと、公的インフラストラクチャーは公共財といいますから、これは民営化できないんですよ。これは官が公共財を提供するというのは、これ経済理論でございますから。  そうすると、実はこの政府は公共財を二つ民営化しているんですね。一つまず道路をやっちゃったと、それから今度は郵貯だということですから、皆さん真剣に御審議なさればなさるほど、やっぱり公的性格があるから純粋な民営化はできないという議論になるわけですね。そうすると、そこのところをどんどんどんどん修正していくと。そうすると何が何だか分かんなくなると。  つまり、理論的に民営化できないものを、だれかが民営化しろと言うもんですから、しようがないからやろうということで政府の方も与党の方もやっておられるということですから、基本的に無理なことを今やっておられるんじゃないかと。もちろん、郵貯とか簡保は理論的にできないことはないんですね、小さくすれば。ですけれども、今の郵便サービスというのは、日本のような地理的条件の国ではこれ公共サービスなんですよね。ですから、これを民営化するということ自体が無理なんです。だから、名ばかりの民営化で実質は民営化じゃないと、こういう法案に事実上なっちゃっているわけでございますから、これどう法律読んでもよく分からないと。  で、実際にこれどう執行していくのかということになると、実は頭抱えている人たくさんいると思うんですよ。それじゃ、省令とか通達でどういう省令、通達が出るのかと。  少なくとも、国会法律を見てどういう枠組みになるのかという分からない法律を出すというのは無責任ですよね。最後、省令だ、通達で決めますと、これ役人が決めるということですよ。国会議員関与できないわけですよ。そんなばかなことないですよね、細かいことは全部役人が決めますと。私も役人でしたけど。ですけれども、別にそういう法律というのは僕はほとんど聞いたことがないですね。  やっぱりきちっと節目になるものは法律の中にお書きになるということですし、それから、最終的に民営化するんでも民営化の枠組みというのはあるわけですよね、法律の枠組みというのは。それはきちっと決めるということですけれども、基本的に無理なことをなさっている。で、基本的に国会議員の大部分が反対だというようなことを無理やり法律で通そうとするからこういうことになるんだろうと。  本当に、私はどちらかというと専門家ですけれども、私が読んでも分からないですね。そうしたら、一般の国民の方が読んだら何が何だか分かんないですよ、これ。一体どうなっているんだということですから。  やはり、基本的にもっと自分の頭で物を考えて、無理なことは無理だと、公共財になっているものは無理だと。過疎地とか離島で郵便局というのは公的役割を果たしているわけですよ。だから、それを否定するような法案民営化というのは理論的にはそれ否定するわけですから、それを否定するような民営化をやるということ自体が、少なくとも郵便事業についてはおかしいんじゃないかと思います。
  28. 高橋千秋

    高橋千秋君 中田市長にお伺いをしたいと思うんですが、中田市長とは私はちょうど一年ぐらいしか重なっていないんで余りお話をさしていただいたことがないんですが、民主党の、参議院の方の無所属で、ずっと所属が同じような立場でいたんですが。  市長になられていろいろ改革を進められて、行政の中でもいわゆる経営者的な感覚というのは当然必要だろうなというふうに思うんですが、その経営者的な感覚でやっていくということと、実際民営化になっていくということはやっぱり随分違いがあると思うんですね。どうしてもやっぱり行政でなければできないこと。  で、よく小泉さんが言われるのは、官から民へ、民にできることは民にというお話がありますが、民がやれば良くなることはやはり民にやればいいと思うんですが、私は何でもかんでも民に持っていくというのは、私はこれは正しい方向ではないというふうに考えておるんですけども、先ほどの中田市長のいろんなお話を聞かさしていただいたときに、いろいろな、先ほどこの今回の法案の中に地域・社会貢献基金が創設されているからまあその辺はいいとか、そういうお話がありますが、本当に民間会社にするんであれば、私はそういうものをむしろすべきではないというふうに思うんですよね。民間会社ということであれば、それをすること自体が国営の大民間企業をつくってしまうというふうに考えるんですけども、中田さん、参考人はその辺どうお考えでございましょうか。
  29. 中田宏

    参考人中田宏君) これは、やはり時代の中で、また現状の中でいろんな議論が成り立つもちろんものだと思います。そういう意味では、正にある意味の学術的な側面からそれをとらえればどうするかということと、一方では現実の社会の中でどうするかということの中には、答えもそれぞれ違ってくることもたくさんあると思います。  例えば、横浜市でも今民営化ということをできる分野について進めておりますけれども、これまで公、行政がやってきたという分野とそれから民間がやってきた分野とが競合している分野がたくさんありました。例えば、保育園の運営がそうです。(発言する者あり)市バスもそうですね。これも公営と一方では民営と、というのが競合してきた分野になります。これらについては、やはり民間もそれぞれの中で企業努力をしつつ、一方で公共サービスというものを自覚しながらやっているという一面があります。  例えば、特に典型的なのは、電力だとかガスだとかというのは公共料金とか公共サービスというふうに言われていますけれども、いずれも純然と民間会社として今サービスを提供しているわけです。しかし、じゃ防災訓練だといったときには、すぐにそれは損得抜きに私たちと一緒になってその活動をしてくれるし、情報提供網などもそれはきちっと整備をするということをやっているわけです。  市営の地下鉄とかバスなども、私は例えば地下鉄などが一番分かりやすいと思いますけれども、横浜のような例えば大都市でありますと、新たに交通機関を整備していくということは、もはや地上に線路を引くことは無理でありますし、地下鉄を有効に活用していくというのは、これは交通体系を整備していく上で重要な視点だと思います。しかし、それを整備していこうとするときにだれができるかといったら、これは行政じゃないとできないという分野です。なぜならば、地下を掘ってというこの地下鉄は、民間の方が地上に線路を延長するというのとはけたの違う金額が掛かってきます。ですから、整備をすること自体はこれは市がやるということで私は整理ができます。  しかし、そこから先の運営については、果たして、その運営についてもそのまま公がやるべきなのかどうなのかということになれば、これは議論が分かれるだろうし、私の現の判断ではこれは民間でも十分にできるということであります。  そういう意味では、この郵政の問題も、地下鉄と一緒とは言いませんけれども、インフラが一方で整備をされて、そのインフラを活用しながらより効率的に、効果的に今後国民サービスをより多様化していく、このことを考えたときに、十分に考えられ得る民営化だというふうに整理ができると思います。
  30. 高橋千秋

    高橋千秋君 紺谷参考人にお伺いをしたいと思います。  随分審議は進んではきたんですが、この反対、賛成いろいろありまして、反対の中にもいろいろの理由で反対があるんですね。法案がそもそもおかしいという反対と、それから元々もう民営化自体が考えられないという反対、それから会派の中の意見を聞かなきゃいけないというそういう反対、それと小泉さんが嫌いだという反対とか、いろいろあるんですね。  そういう中で、さっき紺谷さんが、参考人が言われた、この民営化が自己目的化をしていると。私も非常にそれを痛切に思うんですね。まず民営、榊原参考人もおっしゃいましたけど、まず民営化があって、後で一生懸命こう張り付けているというような、そんなこの法案のような感じがしてならないんですね。その意味で私は、この法案自体がおかしいという意味で私はもう是非反対をしていきたいというふうに思っているんですけれども。  それと、そのことをお伺いしたいのと、それからもう一つ紺谷参考人もおっしゃいましたけど、特殊法人の問題ですね。  私は参議院の決算委員会にも所属をしていて、今年もいろんな特殊法人の問題にも指摘を皆がしたんですけれども、どうも財投の問題で、中田参考人が一番最初にお述べになりましたけれども、財投が、まあ財投改革はこれは既に終わっているわけで、郵便局が金をどんどん出すから特殊法人が勝手に金を使うと。だから、出す方が悪いんで、出す方を締めろというのが今回の小泉さんの案だというふうに思うんですけれども、私はこれは逆だと思っているんですよ。まず、使う方が締めるというのがまず最初のことではないかなというふうに思っておるんですけれども、その二点についてお伺いをしたいんですが、いかがでしょうか。
  31. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) そのとおりと思います。  第一の御質問と第二の御質問は非常に密接に結び付いていると思うんですけれども、そもそも行財政改革をなさるというんでしたらば、現状のどこが問題なんだと、原因分析先にありきなんですね。その原因分析をする前に、どんな問題かというためには将来ビジョンがなくてはなりません。どんな国民生活を設計するのか、どんな日本の国づくりを行うのか。それに照らして、現状はここが違う、あそこが違うと、その問題の原因は何なのかと、それで初めて対策が立つんですね。初めに民営化ありきですから訳が分からなくなっているということだろうと思うんですね。  じゃ、行財政のどこに問題があるのかっていいますと、先ほども申し上げさせていただきましたけれども、結果責任を負わない官僚組織に任せ過ぎなんです。だから、大蔵であれ厚生省であれ、ずっと結果責任を負わないで先送り、先送り、先送りとしてきたわけですね。しかも、国会が情報を求めても守秘義務を盾にして情報さえ出さないと。秘密会でできるわけですから、ゴールドマン・サックスの件やなんかもせいぜいおやりいただきたいと思うんですけれども、そういう行財政の本当の問題は何なのか、結果責任を負わない人たちが壟断しているということでございます。  予算のシーズンになると、国会議員が大蔵省に陳情に行くと言われたと、大臣折衝がなぜ大蔵省で行われるのかとか、いろんな問題がありますね。さらに、財投ということにかんがみますと、だれが資金分配をしてきたのか。郵便局郵政省が資金分配をしてきたのか。そうではありません。財務省理財局が行ってきたわけです。その権限を持ってほかの省庁の公益法人にまで、特殊法人にまで天下ってきたという問題があるからこそ、道路公団で天下り役人が汚職というと、財務担当の大蔵から来た方だと。建設省じゃなくて財務省から来たお役人の問題だったと。しかも、大新聞でさえ、天下りとは書いても、大蔵省出身と書けないほどに大蔵省の権限が大きい。  当然でございます。予算を握り、国税を握り、国税審査権を持ち、金融検査権を持ち、公取まで押さえ、巨額の罰金を取ろうというような計画まで立て、さらには予算を持っているということによって検察まで押さえ、だからいろんな問題を起こした大蔵省の幹部が全然捕まらないんですよ。絵をもらっても返したからと言うんだったら、警察は要りませんね。で、今度、JTの会長におなりになったと。そういういろんな問題を起こした方が、局長だからといって権限が広いから特定できなかった。権限が広いということは、通常、責任も重いと。それが、何か西武と関係なさってインサイダー取引のことも間違って進言したというニュースが流れておりましたけれども、そういう結果責任を負わないという問題があるわけでございます。  現に、中島主計局次長の問題なんか非常に大きかったと思いますのは、収賄をして脱税をしてインサイダー取引をして、さらには借名口座まで行って、もうありとあらゆる、補てん要求疑惑とか、大蔵省が監督するマターに関してありとあらゆる違反を犯したにもかかわらず、一切その罪を問われないと。その権限を持って他省庁まで支配し、金融不安を引き起こし、税収不足を引き起こし、それでだれも責任を取っていないと。その問題こそが行政の最大の問題ではありませんか。その行政の問題を正すために郵便局民営化するとどんな効果があるんですか。  私は逆だと思います。これまで財投の分配してきた権限の結果責任をうやむやにしてしまう。民営化することによってこれまでの財投の分配がどれほどいい加減であいまいだったかということをあいまいにしてしまう。その権限を持って御自分たちの天下り先を増やしてきたということがあいまいになってしまう。それどころか、巨大な銀行と巨大な保険会社をつくることによって金融庁の巨大な天下り先をつくるということでもあるわけですよ。  さらに、その財投債とか財投機関債をいろいろコントロールするという権限まで与えてしまったと。最大の責任者に多くの権限を与えると、盗人に追い銭みたいな、これが行革であるわけがありません。本当の意味での政治復権をおやりいただきたいんですね。国会に情報も出さないような、そんな行政組織はおかしいじゃありませんか。国会の中で委員会を開いてくださいというのはそういうことです。専門的な意見が必要だったらば専門家を呼ぶ、公聴会開いて専門家呼べばいいんですね。それを、各省庁に世渡り男や世渡り女を集めて審議会を持つと。それを省庁の隠れみのにしてだれも責任を負わないというような、その構造を打ち砕くことこそが本当の行政改革であると思っています。  更に申し上げれば、小渕政権の後、それから去年というふうに税収が改善しているんですね。なぜか。小渕政権はきちんと景気対策をやったからこそ、きちんと財政支出をしたからこそ財政が改善されたんです。余りにも小泉政権は何にもしないんで、神様がかわいそうにと思って海外への輸出を増やしてくれた結果、国民が若干景気が良くなって、それでその税収が増えたということですね。目の前でもうそういう現実があるんです。きちんと景気対策をやると、そのことによって財政が改善されていくというルートをお取りいただきたいんですね。  ほかの先進国並みに日本が六%の成長をしていれば、GDPは千百兆、二百兆になったっておかしくないんですよ。税収は百数十兆になったっておかしくないんですよ。それを不況の最中に緊縮財政、増税で国民を痛め付けてきて、なお物が買えないような、なお物が作れないような状況をつくり、金融不安をつくり、更に実際は黒字であるところの医療保険や年金まで大赤字だと大うそをついて不況の最中に国民負担を増やしたのみならず、社会保障の削減ということまでおやりになっているわけですね。  本当の行財政改革とは何ですかと、そのことについてお答えいただかない限り、郵政民営化には断固反対させていただきたいと思っております。
  32. 高橋千秋

    高橋千秋君 ありがとうございます。  紺谷参考人に圧倒されながら、もうあと二分になってしまいました。  最後に、岡村参考人にお伺いをしたいと思います。ヨットマンのその雰囲気と郵政民営化がどうも結び付かなくて、私としては非常に意外で残念なんですが。  私は小泉さんを選んだわけではございませんので、その小泉さんがやろうとしていることを支えるという私は義務はないというふうに思っております一人なんですが、ただ、その選んだ人としても、私は改革の方向がもし間違った方向に行っているんであれば、私はそれは危険な方向にみんなが走っていることだろう。それは別に拙速に今やらなければならないということではないんではないか。  確かに、確実な方向に行く改革であれば早いにこしたことは私はないというふうに思います。この郵政の問題も、決して今のままでいいというふうには思いません。改革が必要だと思います。しかし、全然違った方向にもし行っていたとして、焦って今やらなければいけないんだということになってしまえば、不幸を得るのは国民だし、そして岡村参考人が大事にされている子供たちではないかなというふうに思うんですね。  私は、是非ともその辺を十分なこの委員会の中の審議でやらなきゃいけないというふうに思って、じっくりやりたいと思っているんですが、そのことについてどう思われるか、もう一分しかございませんので、一言お伺いをしたいと思います。
  33. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 私はやはり、先ほども申しましたけれども、宮澤内閣のときに郵政大臣までされて、その現場を見た人があれだけ熱意を持って今取り組もうとしているのであったら、私はそれを信じたいなと。私が知らない世界、たくさんあったと思いますよ、私たちの。だけれども、今あれだけ執念を燃やすというのはよほどのことがあるからだと、私たち一般はそういう見方をしますから、私は彼を信じて、とことん皆さんも成立に向けて努力をしていただきたいと思います。
  34. 高橋千秋

    高橋千秋君 多分その感覚は間違っているということを申し述べて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  35. 西田実仁

    ○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。  本日は、四人の皆様、大変にお忙しいところ、誠にありがとうございました。  私ども、昨日、岩手の盛岡の方に地方公聴会行かせていただきまして、私自身は埼玉の選挙区でございますが、先ほど冒頭立たれた関口先生と戦ったわけでございますけれども、その埼玉の中でおりますけれども、この岩手の盛岡の方、大変人の少ないところで郵便局を一生懸命やっておられる方の、職員の方からも様々お話をお聞きしました。  それで、まず最初に榊原先生に是非お聞きしたいと思っておりますが、先ほどお話ございましたが、いろんな論文で出されておりますので、その中で、例えば郵便事業公社の形でできる限り効率化していくべきであると。そして、郵貯簡保については、先ほどもお話ございましたが、次第に縮小していって、最終的には廃止すべきであると。なぜならば歴史的役割はなくなった、こういうふうにいろんなところで言われておられます。  ここで、大変に素人論理で素朴でお聞きして恐縮でございますが、やはり金融のユニバーサルサービスということを大変に、今審議している郵政民営化法案郵便の方はそれが義務付けられている中で、金融のユニバーサルサービスは義務付けられていないじゃないかと、実態的に大丈夫だといっても本当に大丈夫なのかという、こういう議論が繰り返しなされているわけで、実際に現地に行くとそのことを大変に心配しておられる方もいらっしゃいます。  そうすると、先生が唱えておられるこの縮小論、そしてやがて廃止をしていくべきだという廃止論とこの金融のユニバーサルサービス、ここはどういうふうに先生はお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  36. 榊原英資

    参考人榊原英資君) おっしゃることは非常に論理的でございまして、郵貯簡保を次第に縮小して廃止するか民営化するか、そういうことになった場合には、それじゃ過疎地とか離島の金融のユニバーサルサービスどうするんだという御質問だと思います。  私は、私のビジョンを言わせていただければ、郵便局は窓口として金融機関の委託業務をやるということが可能でございますよね。ですから、例えば民間銀行の預金の代理業務をやるということは可能でございますよね。あるいは保険をそこで売るということも可能ですし、投資信託を売るということも可能ですね。ですから、私は、郵貯そのものが金融商品を持たなくても郵便局金融商品を提供することはできると、あるいは国債を売ることもできますね。国債の、個人向け国債を売ることもできるということでございますから、民間金融機関と通じて、それで窓口業務をやることによってユニバーサルサービスが確保できると思うんですね。それからまた、雇用の問題、郵便局の雇用の問題についてもそれで確保できると思うんですね。つまり、私の言っているのは、官が固有の形であれだけ巨大の資産を持つ必要はもう国民経済的になくなったということなんですね。これは本当に官から民へお金を流す方が、これはいいわけですね。  今度の民営化法案は官から民へと言っているんですが、これは僕は違うと思うんですけれどもね。本当に流すんであれば、次第に縮小していって民にお金を持っていくと。その代わり、過疎地とか離島では代理業務をやると、窓口あるわけですから。そこで様々な決済業務もできますし、貯金あるいは国債、株、投資信託、そういうものも売ることができると。そういう業務をやっていけばいいんではないかというふうに私は思っております。  いろいろやり方はあるかと思いますけれども、小さくしてそのまま残しておくということももちろんできると思います。できると思いますけれども、私はその形が理想型としては一番いいんではないかというふうに思っております。
  37. 西田実仁

    ○西田実仁君 その場合には代理、そもそも過疎地でありますので、民間金融機関がそこに窓口として本当に置いて成り立つかという問題はあると思いますけれども……
  38. 榊原英資

    参考人榊原英資君) いや、それは。
  39. 西田実仁

    ○西田実仁君 まあそれは、じゃ、ともかくとして、まあ、これだけやっていてもこれで終わってしまいますので。  実際に、現場ではこういうふうに職員の方がおっしゃっていました。  つまり、基本的にはまず郵便で村民や町民の方々はつながっているわけだと思います。そのときに、例えば年金の給付を受けに来られたり、ほかの郵便貯金また保険のお仕事も一緒に、一体になってもらってくると。郵便だけではとても、その手数料では簡単に言えば飯が食っていけないと。こういうことを実感としてというか、実際にそういう経営状況になっていて、ですから、郵便だけで、金融の方が切り離されて縮小ないし廃止というふうになっていった場合は、そもそもこの事業が成り立たなくなってしまうと。だけれども、やはりそうはいっても、仮にそうした場合に、そうはいっても、この郵便のユニバーサルサービスを維持していこうと思えば、当然何らかの財政的なバックアップというものがそこに生じなければそのネットワークが維持できないと。  こういうふうになると思うんですけれども、ちょっと繰り返しで恐縮ですが、もう一度お聞きしたいと思います。
  40. 榊原英資

    参考人榊原英資君) これは、今いろんなところで、金融機関で窓販ということをやっておりますよね。ですから、郵便局民間金融機関の委託を受けてその商品を売るということはできるわけですね。手数料を取ることはできるわけですね、それで。  つまり、民間は自らの支店を出すことはできないわけですから、自らのコストでそこに人を配置することはできないわけですから。郵便局はそういうネットワークは持っているわけですよね。ですから、ネットワークを持って民間の代理業務をやって、それで手数料を取ればいいわけですね。であれば、当然、収支は成り立っていくと思うんですね。今と同じような手数料は取れるはずですよね。  ですから、窓販をいろんな形でやると。それは広げてっていいと思うんですよ。投資信託まで売ってもいいと思うんですね。当然、今までそういう業務をやっておられるんですから、保険を売っておられる、今まで貯金を売っておられるということですから、当然できるんですね。今と同じ業務をやって、それが、ただ商品としては民間の商品であると。これで手数料を取れば十分私は、きちっとした計算はしておりません、きちっとしたその収支計算を今、私が持っているというわけじゃございませんけど、原理的にはそれで成り立つんではないかというふうに考えております。
  41. 西田実仁

    ○西田実仁君 紺谷先生の方にお聞きしたいと思います。  先ほど最後のところで、郵貯肥大論ということにつきまして、この財投資金民間金融機関と比べても意味がないじゃないかと、第二の予算として必要な金額を上回っているかどうかで肥大化しているかどうかを判断すべきであると、こういうお話がございました。  具体的に申し上げた方が分かりやすいので、例えば、今日、新聞に出ておりましたけれども、〇四年度、二兆円ほどの例えば財投の使い残しがあると、これまでピークのときは十兆円とか超えてたときもあったわけですけども。仮に、先生がおっしゃるような必要な額を上回って使い残してしまった部分が前年度に二兆円あったと。そうすると、先生の理論によりますと、そういう多過ぎる場合は郵便貯金の金利や簡保の予定利率を引き下げるべきであると、そして必要以上に集まらないようにすればいいだけなんだと、こういうふうに論を展開されておられました。  そうすると、具体的には、〇四年度二兆円余りましたと、それをどういうふうに金利引下げ等に反映させて、調和させていくというか、使い残しが出ないように、必要以上にお金が集まらないようにすべきであるということなんですが、ちょっともしお考えがありましたら、お教え願えればと思います。
  42. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) それ以前に、国がやるべき事業はもう十分なのかどうかと、現在の財投機関の行っている仕事で十分なのかどうかと。  例えば、道路公団民営化の論議が、借金返済が目的になったということが非常に疑問でございます。道路というのは、単に生活の便利とか、あるいは産業誘致のためばかりではなくて、万々が一の災害のときの避難路でもあり、救援路でもあるんですね。だから、例えば東海、東南海、南海と連動して起こると言われております大地震で大津波がやってきたときに、沿岸の方たちが逃げるだけの道路は十分あるんですかということでございます。  そういう観点からいきますと、今こそ公共事業なんですね。日本はほかの先進国に比べて後れて公共事業を始めたと。しかも、高度成長のおかげで世界一、人件費と地価が高くなったと。さらに、地震大国ですから、地震の手当てだけでも公共事業費は高くなると。だから、予算の中でもあるいはGDPの中でも公共事業費の割合が高いというのは当たり前のことなんですね。ただただその公共事業を削ればいい、やめればいいということではなくて、本当に必要な社会資本整備はもう終わったのかどうかという議論こそおやりいただきたいんですね。私は全然終わっていないと。  大地震対策一つ終わっていないわけです。道路を拡幅すれば、それだけで延焼率が下がって犠牲者が減るというにもかかわらず、これだけ金利が低く、これだけ地価が下がり、これだけ失業者が町にあふれているときに逆に公共事業を削減するというのは、真っ向からの大反対ということなんですね。いつか必ずやらなくてはいけない社会資本整備を今前倒ししてやるだけだったらば、将来の財政支出が減るんですから、本当に必要なものかどうかを見極めるということこそが必要なんですよ。それをやってなくて、やたらめったら減らせばよろしい、借金返せばよろしいというのは大間違いではないですか。  だから、まずは、国として行わねばならない公的な事業というのがどれほどあるのかということの洗い出しをしていただきたいんですね。今のいい加減な財投機関が予算が余ったの余らないのなんというのは瑣末な話でございます。仮に余ったって、それは先送りしていけばいいんだし、徐々に金利で調整していくということも可能です。私はそういうふうに思っております。
  43. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございました。  中田市長にお聞きしたいと思います。  市長もいろんなところでいろんな御発言をされて、幾つか論文等を読ませていただきました。先ほどのお話もございましたけれども、市長はあるところでこういう雑誌に書かれておりました。私は、何も郵便局の人間が嫌いだからとか彼らの仕事ぶりが旧国鉄の職員のように怠慢だからということで、先ほどお話がございました、民営化が必要だと言っているのではありませんと、存続させることが国として大きな損失になっているからですと、こういうふうにおっしゃっているわけでございます。  先ほど申し上げたとおり、昨日まで地方公聴会に出掛けておりまして、岩手県の山村などでは民間金融機関もないと、年金給付を受けるのは郵便局だけが頼りと、こういう地域が少なくないわけでございます。こういったところにも全国津々浦々に郵便局のネットワークがあるということは、もう本当に国民の大きな財産であるということを改めて私もまた感じたわけで、帰ってまいりました。  ただ、そうはいっても、こうした掛け替えのない財産を維持して、また発展させていくためには、当然のことながらそれなりのコストというものも掛かってこなければ道理が合わないわけでございまして、この郵便局の持続可能性ということにつきまして、今後もこの郵便局ネットワークを維持していく、また発展をさせていくということにつきまして市長はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、御所見を賜りたいと思います。
  44. 中田宏

    参考人中田宏君) 郵便局の今後の発展性ということでありますけれども、まず、やはり特に、先ほど榊原先生がおっしゃっておられたように、過疎地等についての金融サービスなどに対してやはり多くの方が不安を持たれておられるわけですね。しかし、それに対して、榊原先生もおっしゃっておられたように、簡保郵貯については縮小して、将来はこれは廃止にしたっていい、でも、その利便性をどう確保するのかといったときには、郵便局を活用してそういうサービスが、これは郵便貯金とか郵便保険とかいうことではなくとも、他の民間も含めてそういうサービスが存在をしていることが重要なんだと、こういうふうに承ったわけであります。私もそのとおりだと思いますね。言わば、今回の法の体系というのは正にそうなっていることなんだと思うんです。  すなわち、簡保にせよ郵貯にせよ、それをサービスとしてあまねく全国で引き続きやっていくためには、民間とイコールフッティングをさせて、民間の銀行あるいは民間の保険会社と相競争しながら今後発展をしてもらうと。しかし、今あるインフラを活用していけば、そうした民間会社同士の競争というものを過疎の村においても実現をさせていくことができるではないかと。それは、すなわち郵便局というものを活用できるからであると。ですから、貯金と保険については新たに会社とし、これはもう特殊会社ではなく民間法人としていくという具合に今回なっているわけですね。  しかし、一方で、郵便事業郵便局事業、こちらの方は政府が責任を持つという意味で、持ち株会社の三分の一の株保有というのも将来的にもこれは政府が担保していくという法体系になっているわけですね。ですから、郵便局というものを今後もこのインフラ状態として活用しながら他のサービスもやっていけるようにしようと。  ところが、今御質問いただいたとおり、じゃ郵便局の将来性って何なんだろうというのを考えたときに、保険と貯金を除いて郵便事業だけの将来性を考えると、これはなかなか無理だと思いますね。  すなわち、逆に言うならば、過疎の村でも郵便配達のためだけの郵便局の存在というのはそれこそ非効率になってくるわけです。ユニバーサルサービスだけを義務付けられて、郵便局は何するのと。集配をし、ポスト業務をし、そして切手を販売するということだけでは、それこそ郵便局は今後やっていくことはできない。だから、ある意味では反対論者の方からすると中途半端という御指摘にはなるけれども、しかしそれは特殊会社として公社よりもより自主性を認める。  すなわち、郵便局が他の事業をやってもいいではないか。これまでは、公社の中においてはやれる業務が限られているわけですね、羅列されているわけですね。それに対して、今回、公社から新たな特殊会社という形にして、しかも政府がその特殊会社に対して公共性というものを担保しながら、それで、かつ自由性を高めていく。  ということは、何ができるかといったら、様々なそのほかの販売もしていこうと。南国の郵便局であるならば飲物の販売もしようじゃないかと。あるいは、レターセットとか筆記用具とかといったようなものもいいじゃないかと。もうはっきり言ったら、コンビニエンスストアを一緒に中に入れて、そして町のキーステーションにしていこうじゃないかと。こういうことを郵便局はできるように、自由度を高められるようにして、その上で郵便局が存在をし、そこに簡保郵貯というものが入れるようにしていくという制度設計になっている。ここのところが私は郵便局のそれこそ発展性というときに重要なポイントだというふうに思いますし、郵便事業郵便局だけでこれから先成り立つものではないと逆に思います。
  45. 西田実仁

    ○西田実仁君 市長は、またあわせて、公共サービスイコール行政サービスではないと、先ほど地下鉄の例を引かれながらもお話しされました。  民の力なしに公共サービスはあり得ないという持論をお持ちになっていらっしゃると承知しておりますが、今郵便局は、先ほど来からお話あるように、情報、公共サービスの地域の拠点として大変重要な役割を果たしておりますし、また、そこで働いている方の職員の皆様もその信頼にこたえるべく大変に密度の濃いサービスを提供してくださっておられるわけでございます。  しかし、この公共サービス郵便局における公共サービス、これはいわゆる郵政事業も公務員としての立場でやっぱりやるべきことなのか、あるいはできないのか、あるいはほかにできることもあるのか、この辺、郵政事業が公務員でなければできないかどうかということにつきましてお話をお聞きしたいと思います。
  46. 中田宏

    参考人中田宏君) これはもうはっきり結論を申し上げれば、公務員でなくてもできると思います。  ただし、公務員であることの重要性を語る方々は、公務員である、そして公的な組織であるからあまねくサービスが全国に行き届くというところを重視しているわけですよね。逆を言うならば、サービスをどう確保するかということが重要なんであって、そのサービスについては公務員でなくてもできます。  ですから、そこは、多くの方々が中途半端な会社だというような言い方をしますけれども、これは、これから迎えていく日本の社会の中で、そうした組織形態というのもほかの分野でも考える必要があるかもしれない大変重要な問題だと思います。  というのは、人口がもう間もなく本当に減っていく社会になっている。そして、横浜市などは、人口はまだしばらくの間増えますけれども、生産人口は減っちゃうんですね。生産人口が減って、しかも人口だけ増えていくということは、より大変な社会だということです。  そういう中で公共サービスを引き続き維持していくということは、もう新しいことをやる以前に維持していくこと自体が非常に難しい状態になっているわけです。毎年毎年、税収は下がり続けてきた。税収は一息ついたかもしれないけれども、これから先、地方に来る交付税といったものも更に削減が中期的には予想されるだろうと。こういう中で地方の運営をしていって公共財を提供していくということになれば、そのやり方を変えざるを得ないわけです。  例えば、公園の手入れというのを考えたときに、今までだったら公務員が現場から、土木事務所から出ていって植木を切るということをやるけれども、しかしそれに対して民間に委託をするという方法もあるし、もっと進めるならば、それは地域の皆さんで公園の手入れをやってくださいということを、地域の皆さんと一緒になって公共を生み出すというやり方をしていくということなどを駆使しながら今後組み合わせていかないと、公共財の維持というものについてすらが危うい社会だということですから、決して郵政の問題に限らず、サービスをどう提供するのかということを考えて、重要なのは人員の確保ではない、郵便局の確保ではない、サービスの確保である。このためにはどういう組織でもできるんだろうかということについては柔軟な考え方が必要になるというふうに思います。
  47. 西田実仁

    ○西田実仁君 済みません、岡村参考人に最後、郵便局に今後期待することとして、地域社会でいろいろ御活躍されておられます。それを最後お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  48. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 郵便局というのはあれだけのネットワークを持っておるわけですよね。これ、民営化されたときには、僕だったら、経営者だったらわくわくしますね。あれもやりたい、これもやりたい。これだけのネットワークがあれば民営化したって、だれだって経営者になればわくわくするような気にならないですかね。民営化すればもっとサービスの提供とか、そういった形の質の向上がもっともっと可能だと思うので、私は、郵便局というのは、これからの社会においては非常にこれから有効な社会資産として活躍できる場になっていくと思います。  確かに、田舎に行きますと、村そのものがなくなってしまうとか、そんなところで廃止というのは確かにあり得るかもしれないです。だけれども、あくまでもそれは住民合意の上で成り立てばいいことであって、あのネットワークを生かすということをみんなで議論することが大事なんじゃないかと思います。
  49. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございました。
  50. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。今日はどうもありがとうございます。  まず、榊原参考人にお伺いしたいんですけれども、二万四千七百局の中で簡易郵便局が四千四百四十七局ありまして、そのうち個人が受託しているのが三千三百程度、三千三百局程度あるんです。この簡易郵便局を存立させるために政府は銀行代理店を認めるという方向を出しております。銀行代理店は今は兼業禁止、そして復代理、再委託の禁止ということになっていますが、簡易郵便局に限ってそれを緩和するという形になっているんですけれども、過疎地がかなり多いんですね。一番困難なところにあって、個人でほかのお店、お菓子屋さんとか八百屋さんとかやりながら委託をされている、そういう三千三百余りの簡易郵便局が銀行代理店に全部なってしまうというようなことに私は非常に違和感と懸念を覚えるんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  51. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 私は、先ほど申し上げましたように、今後、郵便局がネットワークを存続させるために銀行の代理とか、場合によると投資信託を売るとか、様々な金融業務の代理業務をやっていくということ自体は健全なことではないかというふうに思っております。そのときどういうルールを作るかとか、どういう契約にするとか、いろんな細部にわたるお話はあるかと思いますけれども、基本的に郵便局が今後、ネットワークを生かしながら住民のウエルフェアを守り、存続していくためには、様々な金融の代理業務ということをやることは私は望ましいことじゃないかと思っておりますけれども、先生がどうしてそれに違和感を覚えるのかということをむしろお教えいただきたいと思いますけれども。
  52. 吉川春子

    吉川春子君 非常に銀行代理店ということになりますといろいろ高度な知識とか必要ということも一つあると思うんですけれども、同時に、今銀行代理店として認められない、例えば兼業とかいろんなところについても簡易郵便局になることによって銀行代理店になれると。だから、銀行代理店になりたかったらまず簡易郵便局になることだというような感じにもなって、非常に銀行そのものがちょっと変わってくるんじゃないかなという懸念がありましたので伺いました。  もう一点お伺いしたいんですけれども、アメリカが政府に、日本政府に対して日米保険合意で簡易保険商品の拡大についての協議を開催を求めて簡易保険の廃止等を要求していると。簡易保険です、簡保の方ですね。この日米のイニシアティブ、規制改革及び競争政策のイニシアティブによってもアメリカ政府はいろんなことを要求しているわけですけれども、この点についてお伺いしたいと思うんですけれども、衆議院議論でも参議院の議論でも、十七回、準備室がアメリカ政府と民間と会ったというようなことも議論になっているんですけれども、こういう問題についてのアメリカのねらいというものをどういうふうにお考えでしょうか。
  53. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 私、実はかつて財務省におりましたとき日米保険協議なんというのをやっておりまして、その問題は大分よく知っておりますけれども、基本的にはこれは米系の保険会社ですね、AIGとかアフラックとか、そういうところが簡保を非常に強い競争相手だというふうにみなしておりまして、彼らはやっぱり簡易保険は国をバックにすることによって民業を圧迫しているという議論をしているわけですね。  これは、実は日本の保険会社でも同じでございます。簡保が実は官をバックにして非常に有利な競争を展開しているということですから、恐らくこれはアメリカの要求というよりも一般的に民間の保険会社一般の要求で、アメリカは非常に日本に対して交渉上強いポジションを持っておりますから、それでいろんな機会をとらえて簡保の廃止、簡保の縮小というものを今までも、もう二十年、三十年要求してきたという、そういう経緯だというふうに考えております。
  54. 吉川春子

    吉川春子君 紺谷参考人にお伺いしたいと思います。  まず、JRとかNTTの民営化という問題について、ここが非常にうまくいっているから今度は郵貯なんだという議論が、最初かなり小泉総理もおっしゃったと思います。もっとも、JRの事故がありましてからはそういう御発言はなかったように記憶していますが、その前は相当おっしゃいました。  そこで、紺谷参考人としては、NTTやJRの民営化についてここでやっぱりきちっと総括しなきゃいけないということをおっしゃっておられますが、どんな問題点があったとお考えなんでしょうか。
  55. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) JRに関しましては、例えば中央線などは自殺の名所になってしまいましたね。そうやって、どうしてそういうことが起きるかというと、昔はホームに必ず駅員さんがいたんです。自殺だけではなくて、目の悪い方とか車いすの転落事故も激増しているわけです。先日は、小学生の女の子が落とし物を拾おうとして電車にひかれて亡くなりましたけれども、昔、私が子供のときに物をおっことしたらば、駅員さんが待ってと言って飛んできてくれたんですね。そこまで至らなくても、例えば台風とか様々な事故や何かで電車が出ないというときに、じゃどんな代替手段があるのかということを聞こうと思っても、駅員さん、本当にいないんですよ。サービスは明らかに低下していると思うんですね。  昔のように、改札はおい、こらではなくなりました。制服もスマートになりました。確かに、良くなった面もあると思いますけれども、例えば社会的なインフラとしての鉄道という観点から考えますと、上野なんかは典型的だと思うんですけれども、駅構内に様々な出店をつくったために町が寂れてしまったということになっているわけでございます。東京駅も新宿駅も同じようでございますね。そうやって、駅のホームだって売店だらけで掲示さえ見えないという形になっているんです。人夫さんなんかが命懸けで造ったトンネルとか、がけ際の鉄道とかペンペン草が生えたりとか、ここも大きな社会インフラの喪失だと私は思っているんですね。  皆さん御承知と思いますけれども、イギリスで国鉄民営化いたしまして、そのときも上下分離だとか、それから、保有とそれから保守と運行は別会社ということになりました結果、お互いのコミュニケーションがばらばらになりまして大事故が起きているわけですよ。一時実質的な国有化に戻すと。今は第三セクターというか、NPOというか、そういうような形になっておりますけれども、でも、いったん民営化して壊れたものを戻すときには、イギリスの場合だって莫大なコストを掛けたわけでございます。郵便局に関しても莫大なコストを掛けて元に戻した国々がありますね。  そういうことを考えますと、ちょっと私、ヨーロッパの民営化を調べたんですけれども、いずれの場合も、民営化して失敗したら後に戻すという条項が入っているんですよ。日本の場合は、民営化しさえすればともかくいいみたいな考え方でおやりになっているんですけれども、それは非常に違いますね。  NTTに関しても、民営化した途端に事業所が何十分の一という形に激減いたしました。その結果何が起きているかというと、通信線が地上に出ている地域はたくさんあるんですけれども、田舎の方に行きますとですね、雪が降ったりとか台風で通信線が切れてもすぐに修繕、修理してもらえないという問題が生じているんです。都会でも、私の兄がテレホンカードの磁気不良で使えなくなったのを元に戻してもらおうと思って昔どおりに近くの大きな支局に行ったんですね。そうしたら、一つは閉鎖されていると。もう一つ別なところに行ったところが、警備員さんが出てきて、いや、これだったら渋谷区へ行ってくださいと。うち、新宿のど真ん中でございます。都庁まで歩いて十分というところに住んでいてさえその状況なんですね。  ですから、私、前に農協の方にお聞きしたことがあるんです。橋本行革のときに全部の都道府県と多くの市町村で郵政民営化の反対決議をしたと。それは特定局長会の圧力なんだという報道があったわけですけれども、ちょっと待って、農協も相当な圧力団体だと、ある意味では特定局長会よりも大きいぞと思いまして、それなのになぜ皆さん方は郵政民営化反対決議に反対なさらなかったんですかと農協の幹部にお聞きしたんです。そうしましたら、彼らの御返事は、それは郵貯簡保は共済とも農協の貯金とも競合しているからやめてもらったら一番有り難いんだけれども、やめたらば過疎地郵便局はもたないということを我々はよく承知していると。NTTも民営化され、JRも民営化され、どんどんどんどん取り残されていく中で、この上、郵便局までなくなったらどうするんだと。だから、我々は、困った面もあるけれども、郵便局民営化は、最後の中央へのつながりというか、命綱として残してもらいたいんだというふうにおっしゃっておりました。
  56. 吉川春子

    吉川春子君 もう一つお伺いしたいんですけれども、紺谷参考人は、民営化されれば採算が悪い過疎地や小口利用客が切り捨てられると述べておられました。その過疎地の問題がさんざん出ましたので、小口の利用客が切り捨てられるという、その内容について御意見を伺いたいと思います。
  57. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 失礼しました。  それは、郵便局民営化した各国で起きていることなんですけれども、金融ビッグバンと同時に行われたために、銀行はぎゅうぎゅうのリストラをしてるわけですよ。で、その小口は採算が悪いと。だから、その口座管理の維持手数料を取ると。非常に巨額なんですね。シティバンクなんかは今は三十万円以下ですかね。そうすると、月に二千円の口座管理手数料を取ると。とんでもないことをやっているわけです。これは、小口のお客さんは採算取れないから来ないでくださいよということでありまして、一部、日本の銀行も口座管理手数料を取り始めておりますね。それから、貯金通帳だけでも八百円掛かるんですよ、千円掛かるんですよというようなことまで言い始めておりまして、これは管理手数料を取る準備なんですね。そうやって小口がどんどんどんどん排斥されていくという問題は、イギリスでも金融排除の問題ということでブレア政権が大変な苦労をして取り組んで、後戻しさせた問題でございます。ですから、その小口に関してもサービスが低下するという懸念は非常に強いんですね。  コンビニやなんかやることも大事なのかもしれません。しかし、それは公社化法の改正で十分に対応可能でありますし、そもそも民間の、ウの目タカの目でビジネスチャンスをねらっているそのコンビニが進出しないような田舎でコンビニをこしらえて成り立つのかどうかということもお考えいただきたいと思うんですね。先ほど吉川委員のお言葉の中にもあったように、小さな郵便局は非常に人数が少ないんですよ。そこであれもこれもやるということになってしまうと。それから、銀行とか保険会社の窓口として代理業をやるということなんですけど、それは商品設計はできないわけですよ。手数料稼ぎに走らないとも言えないわけでございます。  本当に国民が必要としているサービスを、行政サービスをそれで提供できるのかどうかということに関しては、私は強い懸念を持っております。
  58. 吉川春子

    吉川春子君 ありがとうございました。  中田参考人にお伺いしたいんですけれども、今、紺谷参考人がおっしゃったこととの関連があります。今、日本のメガバンクのホームページを見ますと、預金額が五千万以上、一億円、五億円という超富裕層とか富裕層という言葉がホームページに出てきますけれども、そういう人たちには物すごいサービスを行っておりまして、郵貯が対象としている一千万以下の人たちをマス顧客というふうに呼んでいるメガバンクもありまして、私、今、紺谷参考人のおっしゃった懸念を共有しているんですけれども、口座維持手数料とかいうものが取られて、これ財務省にお聞きしたら、アメリカでは一二%、イギリスでは一四%の国民金融口座を持てないところに追い込まれているということです。  そういうような事態が起こるということは、過疎地郵便局がなくなるというのはこれ一つ大きな問題なんですけれども、何というんですか、富める人はもっと富んで、口座も持てない人も一定数出てくるというような、まあアメリカ、イギリスに限らないと思うんですけど、財務省の数字でいうとそういう形になってますが、そういう市民が横浜市の中に一〇%も十数%も金融口座すら持てないということになったとしたら、市長のお立場としては、これは大変懸念の材料ではないか。もしかしたら郵政民営化というのはそういうことをもたらすのではないかというふうに私は懸念して、その面からも反対なんですけれども、その点は市長のお立場としてどのようにお考えでしょうか。
  59. 中田宏

    参考人中田宏君) お答えを申し上げれば、そういう事態になれば当然困るというふうに私はまず思います。  しかし、そうはならないだろうということの方が重要だと思っています。アメリカ、イギリスという例も引いておられましたけれども、アメリカ、イギリスと同じような制度を導入すればアメリカやイギリスと同じような傾向になるということでは決して日本の今までを見ていてもそうとは言えない実態があります。  それは、株式市場にしたって、やはり日本人の多くはリスクを個人として多分に抱えた株式投資ということに貯蓄を持っていくのではなく、むしろもっと安定的な貯蓄というものを日本人はいまだ志向しているわけであって、個人株主ももちろん増えてきました。そして、ネットも含めて個人取引というのも増えてきました。きたけれども、しかしアメリカやイギリスということと比較をして、決してその傾向に一気に雪崩を打っているものでもありません。  一方で、一番重要なのは、先ほどから今の御質問の前提に立つ、過疎の郵便局はなくなる、だからというところになるんですけれども、そこの部分が私は決してその議論の前提に立てるものではないと思うんですね。郵便銀行は正に小さな小口のお金を集めていくリテールバンクとしてビジネスチャンスを求めていくということにも私はつながってくると思います。そここそが大口を相手にしている銀行とは違う郵便銀行の正に差別化されたマーケットの読み方になってくるだろうというふうに思います。  何せ、今まで郵便局は全国の小口を集めて、それで二百兆円以上もの貯金残高を持ってきたわけです。これから先もその傾向は郵便局は、郵便貯金銀行は当然考えていくわけであって、郵便局会社は日々その地域の暮らしの市民と付き合っていますから、その中で、日常郵便局運営していくに当たって郵便銀行があってほしい、そのことは郵便銀行会社に確実に伝えることになりますよ。我が町で郵便銀行をちゃんと営んでくださいねということを包括的に契約をしていくということに郵便局会社はなっていくわけですから、そういう意味では、郵便局会社郵便銀行会社に対して、うちは過疎だからやらなくていいですよという答えにはならない。  よって、決して、過疎の村を含めて、ましてや横浜も含めて、郵便銀行そのものがなくなって大口を求める銀行だけの競争になる社会になるとは到底思えないというふうに思います。
  60. 吉川春子

    吉川春子君 郵貯自身が今のメガバンク以上の超大型の金融機関になり、競争を激化させるわけですから、今でこそ郵貯がただで口座を置いている、置いておけるという制度、それがなくなった暁に、本当に国際的にもグローバルに競争していく金融機関が弱者のための配慮がなされるだろうかという懸念を私は強く持っているわけです。  最後に、遅くなりましたが、岡村参考人にお伺いします。  山口県では郵便局が幾つあるんでしょうか。その中で簡易郵便局の数は、過疎地が中心だと思いますが、幾つあるんでしょうか。もし御存じでしたら教えてください。
  61. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 申し訳ありませんが、数そのものは把握しておりません。
  62. 吉川春子

    吉川春子君 正確な数でなくてもいいんですけれども、恐らく郵便局というのは、銀行が駅前に支店を設けているのと違って、過疎地とかそんな便利じゃないところに散らばってあると思いますけれども、そういう郵便局が今、山口県民の生活にとってどういう役割を果たしているとお考えでしょうか。それがなくなっては困るというふうにお考えになりませんか。
  63. 岡村精二

    参考人岡村精二君) もちろん、なくなるとは思っています、困ります。だけれども、このまま郵政公社が行った場合、経営が破綻をしてサービスが下がれば、当然そのときには廃止される可能性もあるわけです。そうしたら、その前に今の段階で民営化しておいて活性化をしていく方が私は将来にわたっては存続の可能性が高いと思っています。  公社経営者、経営陣の皆さん方の中にも将来にわたって不安を感じていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるわけです。だから、大規模な改革をやらなければいけないか、民営化をしなければいけないかというような議論は内部でもあるはずなんですね。ですから、将来を見たときには是非とも今のうちにというのが私の考え方です。
  64. 吉川春子

    吉川春子君 公社であっても破綻してなくなってしまうかもしれないという御懸念をお持ちなんですか。
  65. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 将来的にはJRの、同じような状況に陥る可能性は十分にあるだろうと私は思えてならないわけです。最終的に国民にツケを回して、大きな強制的な人員削減とかそうなったときには、必然的には地方の小さな郵便局は廃止される可能性もあり得るだろうと、だったら今のうちというのが私の考え方です。
  66. 吉川春子

    吉川春子君 ありがとうございました。  終わります。
  67. 大田昌秀

    大田昌秀君 社民党・護憲連合の大田でございます。  四名の参考人方々、本当に御苦労さまでございます。いろいろと貴重な御意見を賜って、大変参考になりました。  まず最初に、中田参考人にお願いいたします。  政治の場から行政の場に移られていろいろと御苦労なさっていると思いますが、郵政民営化について、行政の立場にあられて、賛成という御意見でございましたけれども、横浜市議会のこの問題についての対応と申しますか、賛成の態度を示しているのか、それとも慎重にしてほしいと言っているのか、あるいは反対と言っているのか、それを教えてください。
  68. 中田宏

    参考人中田宏君) 行政の立場でもありますが、私自身政治家ということでもありますので、その立場として参っております。  お答えを申し上げますと、横浜市議会におきましては、慎重な審議をするようにというふうに議会の方では意思を出しております。
  69. 大田昌秀

    大田昌秀君 なぜこういうことをお聞きするかといいますと、御承知のとおり、全国の自治体の多くは反対若しくは慎重審議というのを要望しておりまして、私、沖縄出身でございますが、我が沖縄県議会でも二回にわたって、慎重に審議してほしいということを要請しているからであります。  小泉内閣は、昨年の九月二十日の閣議でもって郵政民営化の基本方針を決めたわけでございますが、この基本方針の冒頭で、今回の郵政民営化は明治以来の大改革であり、国民に大きな利益をもたらすとうたっておりますけれども、中田参考人国民にどのような大きな利益をもたらすというふうにお考えでございましょうか。
  70. 中田宏

    参考人中田宏君) これは先ほども、陳述の中でやや時間がなくなってしまったところでもありますけれども、現在の段階でもやはり見えない国民負担というものが郵政の三事業には既に生じているということがあります。それは、先ほどから出ている財政投融資の課題ももちろんこれまでは顕著でありましたし、今は改正をされることによって、まあその部分は少しずつ減ってはいるものの、しかし依然としてそれは残ることでありましょう。  さらには、郵便事業に関しましては、今後、郵便需要というものの伸びが見込まれない中において、そのことの公社を維持をしていくということは、やがてそれが国民負担につながってくるということも予想されます。実際に、例えばNTTなども民営化されることによって通信料金は大きく値下がりをしてきました。そしてまた、様々な多様なサービスがそこから生まれてきました。ですから、今度は行って来いで郵便事業、またそれに関連するサービスというものが、より多様化をするサービスということが提供される。  さらには、郵便需要を促していくために、諸外国の例えば民営化された事例では、郵便局の幾つかの指定したサービス郵便事業として利用する場合は、お客様感謝デーを設けて、ある日には投函をした郵便については無料でこれは配達をしましょうというようなお客様サービスというところを設けたような事例もあります。  すなわち、お客様を重視をし自分たちで需要を喚起するということが、その自由度を増した経営の中では可能になってくると思います。そうしますと、見えない損失、一方では生み出されるであろう利益、このことを考えますと、行って来いでは相当に国民利益というものに影響が出てくるということがあります。  そして、最後に短く付け加えれば、先ほども言い掛けたところになりますけれども、民業が既に設備投資などをしてこれまで築いてきたマーケットに対して、税金を払わないというような事業体が参入をしていく、これは公社であっても原則的にその方向は変わりありませんから、そのことをやることによって、民業がやっていれば売り上げていた金額、そして売上げの中から払っていたであろう税収、こういったものも予想、得ることができないということも申し添えなければいけないと思います。
  71. 大田昌秀

    大田昌秀君 おっしゃっていることは分かるつもりでございますが、我が国郵便の父と言われる前島密は、郵便制度を創設するに当たって、島や山奥などどこであっても、また距離にかかわらず、少額でかつ均一な料金で迅速に正確に届ける通信制度にしなければならないという趣旨の考えを明らかにしています。つまり、あまねく公平に信書を送り届けるというのが郵便の基本であるわけですが、今回の郵政改革ではこの基本が崩れてしまうのではないかと懸念されています。  先ほど来の中田参考人の御意見を伺っておりますと、都会でも、あるいはへき地においてもそういうことはないんじゃないかという趣旨のお話でございましたけれども、今の問題と関連して考えますことは、経済のグローバリゼーションによって効率化ということが絶えずうたわれて、競争力ということが言われるわけなんですが、その一方で、話がちょっとそれて失礼ですが、例えば神奈川県や我が沖縄県では軍事基地を抱えておって、そこから金が入ってくるわけなんですね。ですから、事金銭的な面だけでいえば確かに有利な一面がありますが、しかし人間の生活の面から考えた場合に、極めて危険な、命を危険にさらすという面とか、それから戦争に加担するとかというそういう心の痛みとか、人間らしく暮らしていく上で必ずしも金銭的な豊かさだけが人間を幸せにすることではないということをもうひしひしと感じているわけですね。ガルブレイス辺りの、何のための豊かさという理論なんか読んでもそうなんですが、そういう点から、今の郵便局がなくならないというお考えの根拠はどういう点でございましょうか。
  72. 中田宏

    参考人中田宏君) 今、大田先生のおっしゃられたやはり国民の痛み、軍、基地のあることによる痛みとか、それからまた豊かさとは何かといったような御説については、私はもう全くそのとおりだというふうに思って拝聴いたしました。  その上でお答えを簡潔に申し上げれば、例えばヤマト運輸が宅急便を開始した当初は、当然、島嶼部というのは除かれてスタートをしました。また、私もこれはうろ覚えでありますけれども、かなり業界団体の包囲網が強かった山梨県も参入するのになかなか最後まで残ったエリアだったというふうに記憶をしています。そういう中でもヤマト運輸は、やはり全国ネットワークを築くことに精力を上げてきました。そして、今では離島も含めて配達をするようになりました。もちろん、いっときヤマトだってゆうパックを利用して、ゆうパックに逆に荷物を出しているじゃないかというような御批判を、まあ私はヤマトの人間じゃありませんが、批判がなされていた時期がありましたけれども。  しかし、全国どこにでも配達をするということが運送業者からすればこれは信頼なんですね。その信頼を築いていくということは並大抵のことではないわけであって、逆に言うならば、今の郵便局のネットワークやあるいは郵便事業現状のユニバーサルサービスというものが、その信頼を自ら壊して経営の採算だけを求めるということは、これは経営全体の方針上もあり得ないと思いますし、また、先ほども申し上げた体系の中で、例えば郵便局はそのサービス簡保郵貯にも求めるであろうし、また郵便局を持つ持ち株会社、その持ち株会社は政府が三分の一保有し続けよう、そして公共性というものについては一定の口出しができるようにしていこうといったことなどの担保を考えると、私は、全くなくならないということは言いませんけれども、その可能性は信頼とそして法体系という中から極めて少ないのではないだろうかというふうに申し上げているところです。
  73. 大田昌秀

    大田昌秀君 岡村参考人にお願いいたします。  先ほど、小泉首相が自らの所信に従って命懸けで郵政民営化をやっておられることに対して敬意を表するという趣旨のお話と、郵政民営化をすることによって子供たちに夢を与えることができるというお話がございました。  私、戦前派でございまして、戦前は何事につけても命懸けでやるということが言われたわけですが、いい目的を、いい指導者がいい目的を命懸けでやると大変いい結果を生むわけですが、余り良くない目的を命懸けでやられたら大変なことになりますので、そこはひとつ御理解いただきたいと。  それで、民営化することによって子供たちに夢を与えることができるということについて、若干御説明いただけますか。
  74. 岡村精二

    参考人岡村精二君) 私は、今日は大田先生に会えるのを本当に楽しみにしてまいりました。実は、ジュニア洋上スクールという船を毎年出していまして、春休みに百五十人連れていきますが、先生の本をテキストにさせていただいています。そういった意味では、先生から御質問受けたのは本当にうれしいなと思います。  子供たちに夢をという話が今出ていましたけれども、私は、やっぱり民営化というのを見たときに、JRにしてもNTTにしても非常に活力がわいてきたように思うんです。特に、私が思うのは、何か現状維持というのが余りにも、今の子供たちはそれで幸せだというような印象が余りにも強いです。先送り先送りしたことがすべてにおいて今の日本の大きな問題点をつくったんじゃないか、教育問題にしても、JRの事故にしても、そういったことをすごく感じるんですね。ですから、先送りというような印象をこれ以上つくってほしくない。それは非常に感じるところがあるんです。  やっぱり、子供たちに夢と希望を与えるというのは私は大人の義務だろう。どんなに不景気なときでも、どんなに苦しいときでも、大人は夢と希望があるんだと子供たちに言い続けなけりゃいけない。それが大人の義務だと僕は思っているんです。これは、本当に二十何年間、私、子供たちと接してそのことをつくづく感じています。  その夢が持てない、また先送りしてしまうのかという、そんな印象を子供たちに与えないためにも、経営陣そのものが、公社経営陣そのものが問題があるんだと思っているならば、取りあえずでもいいから可決させて、そしてその後、三年置きの見直しやるなら、今いろいろな疑問を感じていらっしゃる皆さんが一生懸命そこで議論をしてほしいし、見直してほしい。まず進むこと、そのことを、大事なことだろうし、今こうやってマスコミに騒がれていて、子供たちも一生懸命これ見ているわけですから、是非ともいいイメージづくりを子供たちに与えてあげたい、そう思っております。
  75. 大田昌秀

    大田昌秀君 紺谷参考人にお願いいたします。  いろいろとずばずばおっしゃっていただいて大変参考になりましたが、経済問題について大変お詳しくしておられるので、この郵政民営化と関連して諸外国の際立つ点、先ほど必ずしも外国と日本は同じでないという趣旨のお話もございましたけれども、しかし私は多かれ少なかれ先進諸国の影響とかそういうのは、参考になるだけじゃなくて知っておく必要があると思いますので、郵政民営化をした諸外国の中で失敗したとかあるいは間違っていたということでまた振出しに戻ったというところがあるとすれば、教えていただきたいと思います。
  76. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 幾つもございますけれども、例えばニュージーランドは国営銀行を復活いたしましたね。先ほども申し上げましたけれども、英国も小口が金融サービスを失って、それでブレア政権は銀行と交渉するのに大変な苦労をいたしました。  そういう様々な失敗例もございますけれども、私、何よりも申し上げたいことは、官が駄目だから郵便局民営化して民間に任せろという議論は逆転していると思うんですね。官が駄目ならば公営できちんといくようになぜ改革をしないんですか。公的な事業というのは一切やらなくていいんですか。公の仕事が駄目だから、官業に問題があるからどんどんどんどん民営化しろといったらば、究極的には政府は要らないということになるんだと思うんですね。  それから、先ほども申し上げましたように、最大の行政改革というのは、もうこれ以上ないというぐらいに権限を集中しながら何ら結果責任を取らない役所を温存していることでございます。その役所が、国会議員よりも、国民の代表よりも上にいると、ありとあらゆる権限を駆使しているという問題なんですね。その権限の分散こそが、分散してその権限を政治の手に取り戻すことこそが本当の行政改革であると私は思っているわけでございます。  経済財政諮問会議にいたしましても、何でああいう民間議員、委員が入っているのかと。一人の委員の方は、学者でいるときと全く意見が変わってしまいました。どうしてですかということを御自身は講演会でしゃべっていらっしゃるんですけれど、今は政府の一員だから言えないこともあると。じゃ、民間議員を入れた意味はないですね。そもそも経済財政諮問会議というのは、財務省の手から予算など財政の権限を政治の手に取り戻すために行われたはずなんですけれども、今や学会でも財務省と非常に仲よしだということで有名な学者が事務局長をお務めになっていると。  大蔵省が、経済財政諮問会議が邪魔をするので自分たちの思いどおりにはいきませんと、大蔵省は弱体しましたと、うその議論をマスコミに言い散らかさなくてはならないくらいに大蔵省の権限は強まっているわけでございます。  先ほど来申し上げておりますけれども、財政の問題は、きちんと景気対策をやって、ほかの国だったらば当たり前の景気対策をやれば税収だって増えるんですよ。GDPだって二・余倍になったっておかしくないわけでございます。そういうことをきちんとおやりくださいと。それをあたかも公共事業とか景気対策のせいであるような誤った世論誘導をわざと行って、それで景気対策を行わせないできたのが大蔵省でございます、財務省でございます。  さらには、医療保険は、組合健保も政府管掌保険も黒字でございます、国保は赤字でございますけれども。それも皆赤字であるかのように言って、不況の最中に国民負担を増したと。  さらに、年金は、賦課方式といいまして、そのときの働き手が払った掛金をそのときの高齢者に支払うという公的年金のやり方からいきますと、積立金はゼロでもいいんですね、原理的には。しかし、年金給付を安定させるためにある程度の予備費をどこの国も持っているわけでございますけれども、日本はほかの国の数倍にわたる積立金を持っているわけです。それを厚労省は、高齢化に備えて積んできたんだと言いながら、高齢化のピークが過ぎる二〇五〇年まで取り崩さないと言っているわけでございますから、一体それはどういうことなんですかと。不況の最中に国民を不安に突き落としてまで国民負担を上げ、社会保障を削減するというのが、なぜ改革なんですかというふうに私はお聞きしたいですね。  先ほど来、目に見えない国民負担があるというお話ですけれども、だけれども、それを言うんだったらば、すべての政府機関というのは税金払ってないですよ。だから、議論すべきは、郵便局が行ってきたサービスが公的に必要なサービスであるかどうかと。それを、そのサービスを行っていくに当たってどんな形態でやるのが一番コストが低いのかという議論を行わなくてはいけないにもかかわらず、それは一切なしで、始めから民営化なんですね。だから、コストが掛かっているというのは当たり前なんでございまして、政府のやる仕事はコストが掛かるんですよ。だから税金を払っているわけでございまして、そういう意味でも間違っているなというふうに思うわけです。  生田総裁はこのままでは郵政はもたないとおっしゃったそうですけれども、それはあくまでも営利企業としてはもたないというようなお話でありまして、国がやる公的事業ということであれば税金を掛けてやったって全然おかしくないですね。政府の仕事というのは、基本的に税金でやる仕事でございます。それをあたかも営利企業と一緒になって採算、採算、採算というのが大きな誤りであるというふうに思っております。  国民生活の健全性を損なってまで財政を健全化しようというようなことを考えている財務省の権限を分散化することこそが本当の意味での行財政改革であると。そこに手をお付けになっていただかなければ私は改革と認めるわけにはいかないということを再度申し上げたいと思います。
  77. 大田昌秀

    大田昌秀君 榊原参考人にお願いいたします。  先ほど参考人お話ございましたけれども、我が国には無人島も含めて六千八百五十二の島があって、離島のうち人が住んでいる島は二〇〇二年の統計で四百二十三を数えます。我が沖縄県は、二〇〇一年の統計ですけれども、県内の五十二の市町村のうち、民間金融機関の店舗がない町村が五つの町と二十の村、民間生命保険会社の店舗のない町村が十二町、二十六村に上っております。  民営化が進みますと、郵便局はなくならないように維持するというお話もございますが、私たちは非常に懸念しております。どうしてかと申しますと、採算の取れない民間航空が廃止になって離島の人たちが大変困っていて、結果的に国、県、市が補助を出して辛うじて運営しているような状態ですが、その辺の離島の問題について、時間がございませんけど、簡潔に御説明いただきたいと思います。
  78. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 大田先生の懸念を私は全面的に共有いたします。  やはり、離島の問題、過疎地の問題を考えると、これは公共サービスでございますから、これを維持する義務があると思います。  それから、民営化をおっしゃる方は、やっぱり民営化すれば何とかなるんだということを、大変御立派な中田さんまでそういうことをおっしゃるわけで、これはやっぱり民営化原理主義じゃないかと。何でも民営化すれば必ず知恵が出てきてうまくいくんだと。そうでないものもかなりあるわけでございますね。  時間があれでございますけれども、実は私、インドネシア危機のとき同じような問題がありましたね。インドネシアというのは、これ二万から三万島があるわけですね。この島に対する流通補助金を全部切れとアメリカとIMFが言ったんですけれども、それは無理だと、これは公的セクターがやらなきゃ駄目なんだと言って、結果、インドネシアは政府が崩壊して暴動が起こるわけですね。  ですから、やっぱり政府がやらなければいけない公共サービスというのはきちっと、郵便局が今やっているわけですから、これを維持するというのは大変大切なことだと思っております。
  79. 大田昌秀

    大田昌秀君 ありがとうございました。
  80. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 以上で中田参考人榊原参考人岡村参考人紺谷参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  81. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ただいまから郵政民営化に関する特別委員会を再開いたします。  郵政民営化法案外五案を一括して議題といたします。  本日午後は、21世紀政策研究所理事長田中直毅君、八千代町議会議長稲葉常美君、日本経済研究センター理事長慶應義塾大学商学部教授深尾光洋君及び泰阜村長松島貞治君、以上四名の参考人の御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、田中参考人、稲葉参考人、深尾参考人、松島参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず田中参考人からお願いいたします。田中参考人
  82. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 良識の府参議院の委員会において発言機会を得ましたことを大変光栄に存じております。  今日は、郵政民営化法案、関連法案を議決、可決すべきだという立場からお話をさせていただこうと思っています。  四点ございます。  第一点は、今回の民営化法案の柱をどう理解するのかという問題でございます。二番目に、なぜ民営化法案が可決されねばならないと考えるのかというテーマでございます。三番目に、民営化に伴ってリスクが幾つかございますので、そのリスクの封じ込めにはいかなる視点が必要なのかということをお話しさせていただこうと思います。四番目に、今後、民営化したと仮定した場合に、その有効なマネジメントはいかにして確保できるのかというテーマをお話しさせていただこうと思います。  第一に、私は今回の民営化関連法案について三点の特徴があると思っております。  第一点は、四分社化を通じて金融業務の切離しを行って金融庁の下に置くということでございます。これは、世界の金融ビジネスを取ってみますと、最もあってはならないことはシステミックリスクというものでございます。国際社会が相互に関連を強めまして、とりわけ金融業務はその最たるものでございますが、ここでもし破綻懸念が生ずるということになりますと、これは一国にとどまらず、他の国々に波及するわけでございます。  現在、国際金融社会においては、こういう金融リスクの国際的な破綻をいかにして避けられるのかというテーマにかかわって、個々の金融機関についてそれぞれの国ごとに専門の役所が監視をし、そして検査を行うという体制を取り、システミックリスクが国際的に波及するのをどうやってとどめたらいいのかと、ここに関心があるわけでございます。  一九九七年から九八年にかけまして、不幸なことに我が国をシステミックリスクが覆いました。このときは、海外で業務を行っていた日本金融機関は、邦銀というだけで、インターバンクで、銀行間相互でお金を導入しようといたしますと、邦銀と名が付くがゆえにすべての金融機関が割増しの金利を支払わなければならない状態に陥ったわけでございます。  システミックリスクがいったん起きますと、邦銀、個々の銀行の看板や顔を思い浮かべる理由はないと、そういうリスクに襲われているところはすべてつまみ出すと言わんばかりの態度になったわけであります。こういう状態になりますから、日本の銀行は海外において極めて高い資金コストになりました。結果として、日本金融機関の国際社会における存在感は一挙に低下し、それが今日まで尾を引いているわけでございます。  そういう流れからいきますと、日本の個人の金融資産の四分の一を、実質上四分の一の受入れ窓口となっております郵貯簡保を三事業、実質上三事業一体として総務省がその管轄下に置くということでは国際社会の納得が得られないと考えるべきではないかと思います。  お手元にお配りさせていただいたかと思いますが、二枚目に図の一、個人金融資産の国際比較表がございます。郵貯簡保の残高が一体どの程度のウエートを占めているのかというのを見ていただければ、この大きさに、いかに巨大かがお分かりかと思います。  そういう点からいきますと、三事業は三事業としてこれまで歴史的な意味があって一体として行われてきたわけですが、二十一世紀の国際社会における我が国経済のありようを考えますと、金融業務は金融業務として郵便業務とは区別した管理体系に置き、しかもそれは金融機関として同じ目線で検査、そして監督を行う役所のところに付けるというのが、これがどう考えても正解でございます。  それ以外の形態を取った場合には、決して日本における今日までの郵貯簡保が小さな存在ではなく、国際的に見ても異常に大きなウエートでございますので、これを三事業一体として金融庁とは別の監督・検査の体制に置くということに国際社会の納得は得られない。もし何かがあれば日本はこの国際社会からつまみ出す。実際にはGDP世界第二の日本でございますから、つまみ出せるのかという問題があります。しかし、もう少し言いますと、GDP二位で世界経済を支えなければいけない日本金融業務が、なぜ個性といいますか、歴史的な経緯のゆえに個性があるわけですが、郵政事業、それをあくまでも二十一世紀においても持続しようとしているのか、それは説明することが相当無理なことでございます。  今回の民営化関連法案では、金融業務を切り出しまして、これを一般的な金融の検査・監督の下に置くという仕組みに置きました。私は、このこと自体極めて重要なことだと思っております。  二番目は、政府保証を外して、郵便貯金銀行、そして郵便保険会社運営を倒産確率の下に置くということでございます。  倒産確率の下に置くということは、一般の民間銀行と、あるいは民間の保険会社と同じでございますが、この倒産確率というものの下で経営に常に厳しい規律を求めるということが不可欠であります。もちろん、いい経営者を付ければいいではないかとか、いろんなことは他に方法がないわけではありませんが、しかし余りにも人に依存したといいますか、特定の個性に依存した形で規律に依存することには長い目で見て無理がある、それはシステムとして経営者に規律付けを強いる仕組みが重要だということでございます。  かてて加えまして、二十一世紀の日本では、財政再建の課題が極めて重要なテーマになっておるわけでございます。これは、歳入と歳出のギャップだけを意味するのではなくて、政府が保証を与える業務というものをできるだけ減らす、政府保証の傘をすぼめることがいかに重要かという認識からきていると思います。政府保証というのは、いつかどこかで偶発債務として納税者の負担に跳ね返ってくる可能性があるわけでございます。もちろん、常にそれがあるというわけではありませんが、そういう可能性がある。そういう政府保証の傘をできるだけすぼめられるものからすぼめておくというのが二十一世紀の日本運営において極めて重要だということでございます。  そういう意味では、この政府保証を外すということは経営者に規律をもたらすこととともに、日本の財政のありようについての指針を出すということかと思います。  三番目の特徴として、非公務員型という形で今後株主、そして経営者の柔軟な経営判断が確保できるということであります。このことは働いておられる、現在郵政公社で働いておられる立場からいきますと、自分たちの立場が損なわれるという形で理解される可能性が非常に強いわけでございますが、しかし二十一世紀における国家のありよう、国家が何を行うのかということからいきますと、この政府が果たさなければいけない役割については極めて限定的に、しかしその分野では、例えば医療とかそれから社会福祉とか、そういう分野においては政府が責任を持って実行するということは明らかでございますが、民間の業務として実施できるものはこれは政府の範囲ではないという原則を明らかにしませんと、我が国におけるこの二十一世紀の国とそれから納税者、あるいは国と民間企業との規律ができないということかと思います。  現在、日本郵政公社で働いておられる方々にとってはのめる話とのめない話があるということは当然でございまして、これは労使間において今後協議されることだと思いますが、非公務員型に移行すること自体は、納税者として二十一世紀の日本社会を展望する上において当然のことではないかと私は考えております。  二番目に、もしこの民営化法案が通らなかったらということを少し考えてみたいと思います。  で、日本社会が今後どの方向に行くのかということについては、日本のみならず国際社会においても大きな関心が寄せられているところであります。日本がアメリカと並んでもし世界の秩序を支えるような仕事をするということならば、これは世界から当然よくやっているという評価を受けるわけでございますが、もしそういう路線からどうも違っているようだと、日本には日本の事情があるようだけれども、それは国際社会の流れの中でいうと違いそうだということになりますと、私は日本そのものにも問題が起きるというふうに思っております。  二十一世紀の日本にとって最も重要なことは、日本社会が投資社会に移行するということでございます。勤労者は毎月収支が合うのか合わないのか、きゅうきゅうと生活するということが間々ありますので、そんな一か月の生活でさえ手元不如意なのに、何で投資社会だと言われるかもしれません。金持ちのことだけではないかと言われるかもしれません。しかし、我々は勤労時において年金を拠出し、働き終えた後、二十年とか二十五年を想定する時代になっております。勤労時に拠出しました年金は、当然のことですが、これはうまく運用されて太るといいましょうか、富を殖やす形で運用されてなければならない種類のものでございます。そのためには、我々はたとえ毎月の生活がぴいぴいいってつめに火をともすようなことがあるといたしましても、明確に投資社会の住人であります。  したがいまして、この投資社会の目線で社会を設計するということが高齢化社会にとっては不可欠でございます。それからいきますと、我々の社会では投資のためにふさわしいインフラストラクチャーとでも言うべきものが整わなければならないということでございます。  で、投資社会の基本というのは、人によっていろいろ考え方ありますが、例えば最も安全だと思われる国債というものの金利、これを前提にして例えば株式の値段があるというのは普通の考え方であります。世界でもいろんな金融情勢の中で株価と国債の流通利回りとの間にいろんな関係がございますが、循環的な関係がございますが、いずれにしろ、国債の利回りが説明できないような要因でぐるぐる変わるところは投資社会として極めて不適格だということになります。  図二をごらんになっていただきますと、現在では日本銀行よりも郵貯の方が国債の保有残高が多いわけでございます。これはどういうことかといいますと、日本郵政公社の手元流動性によって国債が急に売られる可能性があるということを示しているわけであります。  九八年の暮れに、当時の大蔵省が国債の持ち切りはもはや不可能であるという発言をしましたところ、マーケットは反応いたしまして国債の流通価格が大幅に下落いたしました。金利は高く、流通利回りは高くなったわけでございますが、このとき世界の投資家は日本社会をどう見たかというと、集中満期、一九九〇年ごろの六%台の金利の付いたものが西暦二〇〇〇年前後に相次いで集中満期を迎えますので、それは資金繰りという問題が資金運用部にあったことは間違いないんですけれども、そうした特定の金融商品の満期がやってくるとかやってこないとかというようなことで日本では国債の金利が急に変わると、そんなややっこしいところにおいて国債保有ももちろんのこと、株式保有もできないというのが世界の年金運用者にあったわけです。  年金運用者は、年金を拠出した人からの委託者責任を受託した上で、そして委託した人にちゃんと説明できる形で運用することが要求されているわけであります。手元流動性が、特定の会計とか日本郵政公社とか、そういうところにおいて起きるかもしれないと。それは、はたでは簡単には分からない、マクロの分析をやっているだけでは分からないというようなところに命から二番目に重要なものを預けていいのかと、そんなところで資金運用していいのかという声は必ずあるわけでございます。  すなわち、今回もし郵政民営化法案国会で成立しなかったというふうに考えますと、仮に考えてみますと、国際社会は、この最も重要なテーマ、二十一世紀の日本は投資社会に踏み込むはずだったのではないか、そのための条件整備をやるはずだったのではないか、にもかかわらず、そのことは国会の議決で反映しなかったということになるわけですから、これは長い目で見て、すぐその場で日本の株式に売りが殺到するとは思いません、しかし長い目で見て、日本はそういう場所から次第に外すべきだなというふうに考えるわけです。  それは海外の投資家が考えるだけではなくて、実は日本の投資家も考えざるを得ないわけであります。日本で安定してこの富を殖やすというのにふさわしい条件整備が行われていないということになりますと、忠良なる日本国民あるいはその委託を受けた日本資金運用者が日本の資本市場を回避するという可能性もあるというのが問題のポイントではないかと思います。  以下、リスクの問題それから有効なマネジメントの問題等については十分論じておりませんので、もし御質問があるようでしたらそのテーマについてもお話しできればと思います。  どうもありがとうございました。
  83. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、稲葉参考人にお願いいたします。稲葉参考人
  84. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) ただいま御紹介をいただきました八千代町の稲葉でございます。私は、住民の立場に立って私の意見を述べさせていただきます。  また、参議院の先生方には、我が国発展のために日夜御熱心な御審議をいただいておりますこと、大変ありがとうございます。  八千代町は、茨城県西南部に位置する約六十平方キロの面積と約二万四千人の人口から成る町であります。関東平野のほぼ中央に鬼怒川の豊かな流れをたたえ、筑波山を望む緑の大地が広がる自然豊かな純農村地帯であります。その自然との共生による快適で住みよい生活環境整備を進めるとともに、地域資源を活用した産業振興や広域提携交流を進めることにより、躍動感あふれる、住民が明るく生き生きと輝く町づくりの実現に努めているところであります。  郵政民営化に、関連にいたしましては、これまで衆議院及び参議院で様々な議論がなされてきたところであると承知しておりますが、我々のような地方公共団体や住民にとって最大の懸念は、生活に密着している郵便局やその提供されるサービス民営化後にどうなってしまうのかという点であります。これまで行われてきた郵便、貯金、保険のサービスは、これまでと同じように提供されていくことになるでしょうか。それとも、何らかの形でサービスの低下が、質の低下がしたり、提供されるサービスが縮小されたりするということがあるのでしょうか。また、サービスの低下だけではなく、郵便局の数そのものが減ってしまうということはないかという懸念もございます。  少子高齢化の流れの中で、八千代町の人口につきましても、六十五歳以上の高齢者の人口全体に占める割合は、平成二年の約一五%から平成十年の二〇%へと上昇しております。八千代町といたしましても、様々な高齢者対策に取り組んでいるところでございます。このような状況において、これまで郵便局で提供されたサービスがなくなってしまったり、郵便局が少なくなってしまったりとすることは、これを頼りに生活している高齢者、障害者を含む住民の利便を大きく損なうことになることだと考えております。  この点に関しまして、八千代町における郵便局の数を紹介させていただきます。八千代町には郵便局の、集配を行う郵便局が一局、身近な窓口サービスを行う郵便局が四局、いわゆる簡易郵便局が一局の合計六局の郵便局がございます。  一方町内の、町内にあるほかの金融機関は、常陽銀行、関東つくば銀行、地元の信金、信用組合の一つずつ、そのほか農協が五支店となっております。しかし、これらの支店は、農協を除き、ほぼ一つの地域に集中しておりまして、特にこの地域以外の住民にとりましては郵便局が唯一の金融機関であると言っても過言ではありません。  郵便貯金の例を挙げましたが、郵便貯金に限らず、郵便サービス簡易保険サービスを含む郵便事業は、既に生活インフラとして国民生活の中に深く浸透し、今やなくてはならない存在となっていることと認識しているところでございます。特に、災害時における郵便局との、郵便局と町との間に、道路の損傷などの情報提供に関する覚書を取り交わしております。  このような郵便局が私たち国民生活にとって大きな役割を果たしている中、今回の郵政民営化法案は、郵便局の設置基準については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することが定められていると聞いているところでありますが、国会の審議の過程では、いわゆる過疎地において郵便局ネットワークの水準を維持することを旨として郵便局が設置されるという現在の規定がそのまま適用されるものの、八千代町のような過疎地帯に該当しない地域においてはその基準が現行の基準よりも低くなり、郵便局を廃止するか否かについては新しくできる会社経営判断の問題だとされていると聞いております。  過疎地以外の地域においても、これまで述べてきたように、郵便局は大きな公共的、社会的役割を果たしており、これが不採算だからという理由で撤退していけば国民生活に大きな支障を来すことになると考えております。  また、公社形態のままでは経営規模も利益も縮小して将来に厳しい状況になると話がある一方で、民営化して新事業に進出すれば一兆円もの利益が、計上することが可能との話も聞いております。我が国の経済、特に地域経済の停滞する中で、ノウハウを持たない新会社が本当にこれだけの利益を出せるのでしょうか。私は疑問に思います。  また、仮にこれほどの利益を出せるということであれば、それは地域経済における地場産業を淘汰することによって実現されるものだと考える次第であります。そうなれば、住民、そして地域の活力は失われることになり、地域の経済が更に悪化することも懸念されるところであります。  そもそも、郵便局はこれまで地域のことをよく、とても考えて仕事をしてきており、地域住民の相談にも丁寧に対応してくれ、非常に評判が良いと思います。この状況は郵政公社になって更に改善してきたところであると認識しております。我々の疑問は、このような地域に密着し住民から高い評価を得ている郵便局を今なぜ民営化しなければならないのかということにあります。  これまでの議論を十分に承知していない点もあろうかと思いますが、改革の結果、郵便、貯金、保険の三事業などを通じて地域に貢献している郵便局が更に便利になるとともに、住民が身近で安心、安全に利用できる拠点がなくなるのではないかという不安、懸念を持つことのないよう、郵便局をこれまで以上に地域に根差し愛される存在としていただきますよう、お願いをいたします。  ちなみに、茨城三十六町村の先般の定例会において、郵政事業民営化反対に関する請願は三町村を除きすべての町村は採択であり、また、政府各関係機関、省庁に、各町村の可決されました郵政民営化関連に関する意見書を地方自治法第九十九条の規定により提出しておりますことを確認のため申し添えさせていただきますとともに、我々地方議会に対する決議を真摯に受け止め、各諸先生方の正しい判断をいただきます。  あわせて、郵便局の職員は地域の住民でもあり、地方行政を担う立場からも、それぞれの職員が今まで以上に創意工夫を発揮し、意欲を持って仕事に邁進することにより、地域全体が活性化するような改革にしていただけるようお願いいたしまして、発言を終わらしていただきます。  本日は、このような立場で発言をさしていただいておりますことを大変に光栄に存じます。ありがとうございました。
  85. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、深尾参考人にお願いいたします。深尾参考人
  86. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 本日は、参考人としてお呼びいただきまして、ありがとうございました。  お手元にある縦長の資料を使って説明させていただきたいというふうに思います。  郵政郵便貯金簡易保険については、いずれも民間によるサービスの担い手が発達してきているため、政府による関与の必要性は低下してきております。二〇〇三年に行われた日本郵政公社への改組においては、民間企業との競争条件の平準化という点である程度の改正が行われましたけれども、しかし郵政公社は依然として政府から相当の特典といいますか、恩典を得ているという側面がございます。このため、郵政事業民営化による民間企業との競争条件の統一化ということが必要だというふうに考えております。  二に入りますが、国民には郵政事業のパフォーマンスという観点からいうと、民間比較して取り立てて悪いという認識がないというのが一つポイントかと思います。この点においては、旧国鉄あるいは電電が民営化されたときに、もう明らかに民間の私鉄等に比べて国鉄のパフォーマンスが悪かったと、そういった状況ではないということは事実であります。  しかし、郵貯簡保が健全性を維持している背景には、実は巨額の見えない補助金ということがあります。一つは、政府による保証が郵貯簡保にあるわけですが、これについて無コストであるということ、それから二つ目は、多くの税目が非課税になっているということ、こういう点がございます。もちろん、特典の一部は全国で同一価格の郵便サービスを提供するために使われているわけですが、同時に郵政公社は、民間よりも高い利回りの金融商品、あるいは郵政公社にとってよりリスクの高い、あるいは逆に言えば、顧客から見れば有利な商品というのを提供することが可能になっております。  現在、郵政公社は巨大な金融・物流コングロマリットになっておりまして、従業員二十七万人以上、郵便局が二万四千か所、総資産四百四兆円。郵貯だけ取ってみましても、二百二十兆円といいますのは四大メガバンクの預金を上回っておりますし、百二十兆の簡保といいますのは民間生保トップ四社の資産に匹敵します。市場経済体制の国としては極めて異例の大きな政府の金融活動であるということが言えます。  このように今郵貯簡保、特に金融活動がこれだけ拡大してきた背景には、支店の設置や税といった面での優遇措置が相当あったということが言えます。支店網を見てみますと、郵便局の合計数というのは銀行と信用金庫の店舗合計に匹敵するわけであります。一九八〇年代まで大蔵省の行政指導により、民間は店舗の新設が厳しく制約されてきたということがあります。また、郵便局では郵便事業と預金、為替、生命保険というのを兼業できたわけですが、民間はそういうことができなかった、こういった違った取扱いがあったということがあります。  二つ目は、税制上の優遇措置というのがあります。一九八八年までのマル優の存在というのは、実は郵貯簡保を非常に拡大する上で大きな役割がございました。非課税限度額を思い出していただきますと、民間金融機関合計で三百万円までの預金が非課税と、それに対して郵貯一つで三百万円まで非課税になりました。このためにある程度のお金を持っている人は、郵貯とそれから民間銀行が一対一の割合になるようにお金を預けていたと。これによって郵貯は非常に拡大してきたということがあります。  また、顧客保護の面でも、民間金融機関よりも保護水準が手厚くなっております。郵貯はずっと昔から元本と利息の両方を一〇〇%保護してまいりましたが、預金保険機構が利息も含めて保護するようになったのは二〇〇一年以降でございます。また、簡保民間の保険会社を比べてみますと、簡保の場合は利息、元本全部について契約が終わるまで政府が全部保証しておりますが、民間生命保険会社の場合は、保険契約者保護機構が保護するのはこれまでためてきた部分の実質九割ぐらい、実際破綻が起きますとそれより更にカットされるということになります。  そうしますと、また、保険会社が破綻した事例を見てみますと、例えば五・五%の予定利率を約束していた終身年金があったという場合に、その金利については例えば一・五%ぐらいまでカットされております。そうしますと、長い長い契約において、契約が終わるまで五・五で回すということを保証する郵貯、まあ簡保ですね、とそれから、破綻した場合には金利が五・五あったものが一・五までカットされてしまって、将来得られるはずだった利息がカットされる、こういう意味では実は非常に大きな違いがございまして、当初の契約に比べる保険金のカット率は七割とかいう例も実際上あるわけであります。  また、こういった特典がある中で、郵貯簡保の預け入れ限度もずっと引き上げられてきておりまして、郵貯はかつてマル優があったときは三百万であったわけですが、現在は一千万円まで入れられます。また、簡保についても保険金額一千万円、あるいは年金の年額九十万円というのは決して低い額ではありませんで、実際計算してみますと、年間九十万円の逓増年金を設計しますと、実際預けられる金額は三千万円と。それぐらいまでの貯蓄を簡保に預け入れることが現在でも可能になっております。  また、定額貯金についても、規制が緩和されて民間でも出そうと思えばそれは出せるわけですが、出す銀行はないと。これはやはりリスクが非常に大きいわけでして、金利が下がるときに預け替えが、十年間高い金利を保証できる、また低い金利で預け入れたものでも、金利が上がったときには預け替えて高い金利に乗り換えられる、こういったメリットがありますので、民間ではなかなか出せないということがあります。  振り返ってみますと、二ページの下にありますように、三のところですが、郵便局郵便サービス国民にあまねく提供してきた。実際、明治の初期には都市以外には十分な金融サービスがありませんでしたし、簡易保険が創設された大正期でも、民間生保というのはもううんと大金持ちだけを対象にしていたという経緯があります。そういう意味では、民間を先導する官業としての役割は当然あったわけであります。しかし、現在では、民間の宅配業者あるいは金融機関が全国的なネットワークを構築している。また、郵便だけではなくて、電話、ファクス、電子メールという形で代替的な通信サービスも利用可能になってきております。実際、郵便がすぐ出せないようなところでも、携帯さえ使えれば写真付きのメールを送るという形でどこでも通信ができる状態になってきております。  こういうふうに民間が拡大してきていることに加えまして、財投についても変質が起きております。かつて財投は、規制金利の下で低い金利で調達した、金利を、になるべく低い利ざやでお金を貸し出すという形で、実質的な補助金を目標とする産業に出すことができたわけでありますが、金利が自由化されることによって財投の集めるお金というのは決して安いお金ではなくなってきた。民間とコストが実は余り変わらないようになってきたということがあります。このために、財投機関、特に政府系金融機関についての補助金はずっと増えてきておりまして、昔は補助金なしでやれた財投による政策誘導というのが、一般会計からお金を出していかないと維持できなくなってきたということが言えます。  政府による郵政事業の維持コストということを実際推計してみますと、法人税が非課税になっております。現在、郵政公社は、資本がある程度たまりますと、つまり郵貯の三%プラス千五百億円なりを超えると、納付金と、国庫納付金ということで四年に一回税金に当たるようなものを払う必要がありますが、しかし資本が低い間は税金を一切払わなくていいという特典があります。また、事業税、印紙税の免除、固定資産税の半額免除といったものがあります。  郵便局の振り込みのコストが安い理由の一つがこの印紙税でありまして、民間銀行ですと証書を、実際の振り込みの証書、証明を出しますと、それには印紙税、まあ張ってはおりませんが別納でお金を払っているということになります。そうしますと、この印紙税の違いというのが振り込み料金の違いになって、郵政省、まあ郵政事業の有利さということになっております。  また、預金保険機構への支払も免除されている。これは三ページの下に一覧表がございますが、預金保険料だけでも民間であれば二千億近いお金が要るわけですが、それを払っていない。あるいは、法人税であれば四千億程度は払う必要があると見込まれるわけですが、それを払わないで済んでいる。合計でいいますと、大体七千億前後、国民一人当たり六千円程度の郵政公社の維持コストが掛かっているということが言えます。  郵政事業民営化の必要性ということをいいますと、郵政公社のままでは税や預金保険料など巨額の優遇措置、規制上の優遇措置を受けた郵便事業あるいは郵貯簡保を政府が運営し続けることになります。このために民間金融機関郵貯簡保の競争は公正でないという状況になっております。そうなりますと、例えばWTOの観点からも、例えば政府の補助金を受けた金融機関が民間、生身の、税金を払っている民間金融機関と競争し続けるという観点から、将来問題になる可能性すらあるというふうに思っております。  この観点からいいますと、やはり三事業とも税金は全部払ってもらう必要がある。また、事業のリスクというのを国が保証で負うのではなくて、株主が、保証に対応する資本コストを受け取りながら株主が負担するという形にする必要があります。  また、経営陣につきましても、株主による選出ということが必要ですし、監督当局の一元化も必要だというふうに思います。金融活動については当然金融庁が監督すべきですし、物流については国土交通省が見るべきであるというふうに思います。やはり行司と監督を兼ねるような形の現在の体制というのはおかしいというふうに思っております。  郵貯は、やはり郵便、保険料をしっかり負担してもらって、預金保険制度に加入する、あるいは準備預金制度にもしっかり完全に参加する、BIS規制を守るということが必要ですし、簡保についても、契約者保護機構への加入ということや、自己資本比率規制に当たるソルベンシーマージン規制を守ってもらうという必要があります。  また、兼業規制についても、郵政事業の兼業を維持するのであれば民間でも兼業にすべきでありますし、民間金融機関にそれをさせないというのであれば郵政公社にもさせるべきではない、この点で、同じ土俵での競争というのが必要になっているというふうに思います。  また、郵貯簡保は非常に大きいわけでございまして、民間金融機関のトップ四つ分に大体相当する巨大さであります。  そうしますと、現在の郵政民営化法案にもまだ欠陥があるというふうに思っております。欠陥をずらっと並べますと、五ページの下にありますが、移行期間の十年というのは余りにも長い、その間に、政府からの補助を受けた、民営化される郵政公社が補助金を受けながら民間と競争する期間が十年もある。やはりせいぜい二年から四年程度に短くすべきであるし、郵貯簡保についても民間の最大手並み以下に分割する必要があるのではないか。せめてニッセイなりみずほ、東京三菱銀行サイズ以下ぐらいにしないとそもそもフェアな競争にならない、ガリバー型の寡占になってしまうという問題がございます。  また、既存契約からの利益が株式会社化された郵貯簡保に帰属します。勘定分離というふうに説明されておりますが、実際上、私はほとんどうそであるというふうに思っております。つまり、損益両方が新会社に帰属するというわけでありますので、分離するのであれば損益は全部分離勘定にしておくべきでありまして、益が出た場合には新会社に送るべきではないと、この点が、勘定分離ができていないという点が問題だというふうに思っております。  現在の法案には幾つかの問題点はありますけれども、民間金融機関や企業との競争条件の平準化の第一歩というふうに考えておりますので、民営化を実現させる必要があるというふうに思っております。  以上です。
  87. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、松島参考人にお願いいたします。松島参考人
  88. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 私、長野県下伊那郡泰阜村の村長の松島でございます。  日ごろ過疎法、山村振興法等で御支援を賜っておりまして、先生方に御礼を申し上げるところでございます。過疎の山村で行政を預かりながら、また、過疎の山村の住民として、郵政民営化に反対する立場で、感じるままを申し上げさしていただきたいと思っております。  泰阜村は、人口二千百人の過疎の山村でございます。高齢化率三八%、今では典型的な過疎の山村だというふうに思っておりますが、そんな中で、私も五十五年生きてきましたが、戦後、経済成長の中で過疎過密という話が出てきまして、一番先に消えた民間公共サービスはバスでございます。乗合バスがまず赤字になって消えていきました、それは赤字ということで。現在走っておる乗合バスは全部、先生方の御理解をいただいた、国からの御支援、県からの支援をいただいた、補助金によるバスが運行しているだけという状況でございます。  そんな中で、民営化という観点から、典型的な例なんでございますが、これは平成十七年の、今年の話でございますが、私は机を、職員と同じ事務室で執務しておりますが、裏口がございまして、私のところから十メーターぐらい離れたところに公衆電話がございますが、いろいろ公衆電話は引き揚げられてきたんですが、それは残っておったんでございますけれども、今年の三月に話があって、四月だったのか三月下旬だったのか、その公衆電話が引き揚げられました。私もかなり使っていたんで、利用率は結構あるんじゃないのかなと言ったら、それはない、駄目だ。  土曜日にピアノ教室に、その役場の横のセンターを使ってピアノ教室をやっている子供たちが、子供には携帯電話を持つなと言いながら、お母さん、ピアノ教室が終わったんでという電話をする、それを使っておったんですが、その電話がなくなってしまって、仕方なく役場の電話を使わせているという状況になるわけでございます。  これは典型的な例でございまして、では携帯電話が全部使える状況なのかどうかといいますと、私どもの地域は、役場から離れた、十キロ以上離れた地域で、三集落から四集落、十五戸以上も家がありながら、携帯電話の通じない地域もございます。しかし、効率によって、それはもう公衆電話引き揚げざるを得ないというのは、私は、市場原理にゆだねたらそれもやむを得ないだろうというふうに感じてはおりますが、かつてこの公衆電話も抗議したことがございますけれども、答えは、公社だったら残ったであろうというふうに、先輩の電電公社の皆さんはみんなそういうふうに言われます。しかし、それもまあ市場原理にゆだねた結果であろうということを思っておりまして、民営化とはそういうことなんではないだろうかということでございます。  郵便局に関しまして、一つ金融機関、金融関係の例で挙げますが、私どもの村内では、民間金融機関というのは支店もなければATMもございません。あるのは、郵便局のATMが二か所、JAが広域合併したので、かつて二か所あったのが一か所になって、私の村は泰阜村という村でございますが、去年の四月からJAは支所を統合して、泰阜村にも支所はあるんですが、私の預金通帳はJA泰阜支所という名前がJA下条支所、隣の村の名前に変わってしまいました。したがって、頼りになるのは郵便局だけという状況でございます。  そんな中で、何年か前に民間金融の皆さんが、巨大な郵便、これだけ肥大化して巨大化してしまった郵便局はやっぱりまずいと、民営化すべきである、要するに郵便局解体をすべきであるというようなことで、これは全国民金融の皆さんが統一行動を取られたと思いますが、私のところへは地銀の皆さんや地元の信用金庫の皆さんが見えられました。で、村長、こういうことだから是非御理解をいただいて、我々と同じ土俵で郵便局もできるようにという要望がございましたので、ああそうでございますかと、分かりました。では、今度私の方からお願いしますが、泰阜村の役場の一角でも、泰阜村の一番いいところでも、皆さんが最もいいという場所を無償で、無料で提供するのでATMを設置していただきたいと。誠に申し訳ありませんが、それはできません。できませんと言うんです、それは。では、郵便局はなくせと言うんだけれども、自分たちはそれに代わるサービスをできないと言いながら、それはおかしいんじゃないですか。  ということで、先ほども優遇という話がございましたが、私は現在、したがって私の給料も、まあ厳しい財政で下げてわずかではございますが、郵便振替、振り込み先は郵便局にしております。職員の多くは郵便局にしております。地元に郵便局が一番、ただ手続は面倒なんですね、民間より。どうして郵便局に給与振替をするとこんなに面倒なのかというのは私は分かりませんが、郵便局にしております。そのぐらい郵便局が現在頼りになっております。  村における郵便局の役割というのは、そういう意味でもうなくてはならないものなんでございますが、更に言えば今年の、去年の十二月三十一日、今年の一月一日は、三十一日に降った雪が、私たち長野県の南部でも十センチぐらい雪が積もったんです。これ大変なことで、年賀状の配達をせないかぬ。私の家内の母、義母がですが、役場から十何キロ離れた山合いの、山村の集落に住んでおりますが、もちろん、山合いの集落でございますから道路から、すべての家が道路から、百メーター、百五十メーター、幹線道路から離れたところに家がありますので、心臓も悪い母が、後から聞いた話なんですが、郵便局も大変だということで、私の家内のところの母のところへは郵便局長が年賀はがきを持っていってくれたと言うんですが、幹線道路から自分の自宅のところまで雪をかいてやった。その集落の皆さん、みんなかいたと言うんです。私の母はもう八十歳で心臓も悪くしておりますが、それでもそれは郵便局の配達の皆さんに御迷惑が掛かっちゃいけないということで、日ごろお世話になっている郵便局の皆さんが年賀状を配達してくれるために、それは雪ぐらいかいてやらないかぬというそういう思いで、郵便局を思いながら、郵便局の皆さんを頼りにしながら生きておるというのが山村の実は実情であるわけでございます。  それは私は、郵便局だからそういうふうに過疎の泰阜村にも残しておける。だから、それを優遇ととらえるのか。じゃ、民間と同じように、税金を出して、同じ土俵で勝負しなければならないんではないか。そうだったら本当に泰阜村に郵便局が残るのかどうか。ここのところが今回の郵政民営化の中で私どもが、山村の住民が最も不安に覚え、もし公衆電話のように、一言も断りもなく、あっ、見たら、朝行ったら消えていたというようなことが現実に起こっている。このことを、我々も確かに、コンビニも鉄道もない、何もないところでおりますけれども、しかし同じ国民として生きているということを感じたときに、やはり少なくとも郵便局の今のサービスが維持されなければならないということを思っておる次第でございます。  郵政公社になって私は郵便局というのは物すごく変わったというふうに思っております。私どもの郵便局も、それは今までそんなおはようございますなんてあいさつもなかったところが、もう、おはようございます、帰りにはありがとうございました。それは当たり前といえば当たり前なんでございますが、そうなったと同時に、私が一番驚いておりますのは、もちろん赤字郵便局だというふうに聞いておりますが、郵便配達に、私たちは今までの感覚では、公務員の給料表を適用した、五十にもなれば年間七百万も八百万円もお金を取る人が配達するのが郵便物だというふうに考えておりましたが、最近、公社になってから嘱託の職員を使ったり臨時の人を使ったりしてコスト削減に非常に努力しておるんです。  私は、元々そんなことができるんならどうして今までやらなかったのか。しかし、それは公務員が配るべき、郵便物配るべきものだ、しかし公務員だって悪いことをするやつは悪いことをするんであって、そう思えば、きちんと現場に任せて、現場がその信書をきちんと本人に届け出るという体制さえつくれば、雇用形態はいろんな雇用形態ができる。それは公社がやればいいんではないかと思うと、民営化になれば自由度が上がると言うんですが、公社のままでも十分自由度を上げることができるんではないだろうか。  現在の公社になって郵便局見ておりますと、法律に縛られて縛られてという言い方がよくされるんですが、そうではなくて、法律を決めているのは正に国会の場でございますから、法律を変えることによってかなりの自由度は上げられるんではないのか。そうすれば、先ほどの参考人意見の中にも非公務員型という話がございましたが、私は、これからは、これは役所もそうでございます、厳しい財政の中で役場もそうなんでございますが、すべての業務を全部公務員がしなければならないのかどうかということを考えていくとしたならば、コスト削減ということについて、過疎地郵便局においても郵政公社の中でかなり自由度を高める方法があるのではないかというのを、現在の変わった郵便局を、郵政公社になって非常に対応が良くなった郵便局を見て思っております。ただ、本人確認という、私が行っても本人確認に免許証を持ってこいというようなことになるんですが、それはどういうふうに言ったらいいのか分かりませんが、そういうことでございます。  それから、資金運用のことで少し時間があれば触れたかったんですが、私は、先ほどの深尾参考人が言われたとおり、歴史を見ると、国民の金をどこかが集めて基盤整備に使うというふうなすばらしい日本型のこの手法というのは、当時やっぱり郵便局ができた背景にはその理由もあったというように思っておりますし、大変有り難いことだと思っておりますが、現在でもその手法というのは過疎地においては必要ではないのかということを思っておることだけ申し上げます。  最後に、私の母はもうやはり八十になるんですが、有り難いことに、父は亡くなりましたが、その父の恩給を、これは先生方のおかげで恩給をいただいて、それを本当に大切にお小遣いにして暮らしております。月に一回から二回、診療所に行った帰りに郵便局へ寄って、それを自分で引き出してそれを持って帰ってくるんですが、それは泰阜村の郵便局があるからそこで、ほかに金融機関がないんですから、農協若しくは郵便局でしかないんですから、自分でお金を、車を運転できませんから、自分でそこで、自分のお金を自分で下ろすことができるのはそこしか、郵便局しかないんです。  その姿を私は見ておりながら、村の村人が郵便局のあるおかげで暮らしておれる、郵便局のおかげだと。おかげさまという言葉は郵便局に対して、局長に頭下げるんじゃなくて、郵便局に対して頭を下げておるというふうに私は思って見ておるんです。  私は、その姿を見ながら、私の局長さんにも言いました。私は決して、特定郵便局という制度がかつては必要であった、かつて村長も郵便局も報酬なくて、財産家、名士がやらなければならなかった時代はあったんだけれども、いつまでもそんな制度が平成の世にもなって続くということのために私は郵政民営化に反対しておるのではないと。そうではなくて、本当に村民の暮らしておる、特に高齢者の、足もない、車も運転できない皆さんの姿を見ておるときに、もし税金ぐらいの優遇がありながら、それでもそのことによって郵便局を維持できるというような安心感を与えていただかなければ、本当に過疎地というのは生きていく希望を失うんではないかということを感じておりまして、お手元に配付のように、私は全村民に向けて私の定期通信で、私は郵政民営化に反対しておるということを申し上げております。議会も議決もいたしました。一人も私に対して文句を言う人はございません。  それだけやはり郵便局に対する期待、郵便局に対する思い入れというのがあり、それは現在のサービスがあるからあるということをよく御理解をいただきまして、この法案の慎重な御審議をお願いして、私の意見とさせていただきます。
  89. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 小泉昭男

    ○小泉昭男君 参考人の皆さん方、本当に大変お忙しい中おいでいただきまして、大変貴重な御意見また御指導をいただきましたことに心から感謝と敬意を表したいと思います。  参考人の皆さんのお話を伺いまして、私、二つの考え方の中で今皆さんいろいろ議論されているんじゃないかなと、こういうふうに思いました。  それは、一つは、日本のこれからの経済・金融社会がどうなっていくかという大局的な立場での意見と、それとまた過疎地域を含めたユニバーサルサービス、この部分意見と、二つに大きく今日ははっきりした意見があったんじゃないかなと、こういうふうに思います。特に、村長さん、町議会の立場から、また村長さんの立場から、大変な日ごろの御苦労話も伺いました。  私、親戚が秋田の横手にありまして、横手といいますと、一番自分が行って感じたときには一時間に三十センチ雪が降るときがあったんです。もう次の日は自宅が見えないぐらい降るんですね。そういう中でも、大変御苦労されて郵便物を配付されている、そういうことも聞きましたし、今の郵便制度に対して特別今大きく不満を持っている方は少ないんじゃないかなと、こういうふうにも思います。しかし、私はこういう時期だからこそ、はっきりと方向をしっかりとした足取りで決めていかなくちゃいけない大事な時期に至っているんだと思います。  そういう中で、先ほどお話を幾つか伺いまして、私、田中参考人、稲葉参考人、深尾参考人、松島参考人に同じことをまずお伺い申し上げたいと思いますが、現在の郵便局ネットワークの実質的な価値と民間の宅急便のネットワーク、この価値観についてと、もう一点は、現在の郵便局ネットワークがすべて今後ずっとこのまま継続されるかどうか、そういうことが可能かどうかということをまず伺っておきたいと思います。よろしくお願いいたします。田中参考人から。
  91. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 今日は、過疎地における郵便局の果たしている役割について、幾つか村長さんからも、それから町議会、町の議長さんからもお話を伺いました。大変感銘深いお話でありました。  ただ、地域社会の活力を維持するのに、郵便局が確かにその一つかとは思いますが、それでは郵便局のネットワークだけで地域社会の核心といいますか、それができるのかという問題はあろうと思います。  おっしゃっている話の中で申し上げますと、多分その住民の方々郵便局がなくなったら困るとは思っておられる、これはうそでないと思うんですが、でもそれは、じゃ肉屋さんは、魚屋さんは、食べ物についてはどうされているのかということを考えますと、地域社会のネットワークは総合的に考えていろんな補完的なものがあるんだろうと。そのときに、郵便局が、郵便局があれば他のものに代替できるのかといったら、そういう関係にはないんだろうと。  ですから、地域社会のありようを根底から考えるということは御発言からも明らかに重要なことだと、それはもう私も分かっているつもりですが、ただそれが郵便局が中心になるネットワークではなくて、自治体における生活のネットワークをどう張り巡らすのかという視点からの議論がもう一度行われるべきであって、それを、郵便局のネットワークさえとにかく今のままをそのまま存置すれば自治体における基本的な問題が解消できるものだというふうには思っておりません。  そして、民営化したときに、じゃ過疎地におけるネットワークはどうなるのかという具体的な問題、確かにございます。これは多分自治体とそれから民営化されたネットワークとの間で地域ごとにいろんなお話合いが始まるんだろうというふうに思います。それはトータルといいますか、全体としての地域社会のネットワークをどうするのかという御議論があった上で、民営化された郵便局ネットワークとの間での相互に取り得る手段についてのいろんな模索が始まるのではないかというふうに理解いたしております。
  92. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) お答えいたします。  我々地方にいる住民にとりましては、私どもは小さいときから郵便局というもの、郵便貯金というものに慣れ親しんで今日に至っております。  なぜならば、私どもは小さいときに、大きくなったらしっかりとした人間になれよと、そういう教育を受けてきまして、このお金は無駄遣いはするんじゃないよ、そういう時代から始まって、小さなお金でこつこつと小学校低学年から、こども郵便局というものを創設しておったようでありますが、そこでこの歴史というものが、それが繰り返されていたと。正にこれは郵便局と私どもの住民が一体となった、この地域の人間性の、人間形成をつくるのにはもってつきなこの局であったかなと、こう理解しております。  特に郵便のネットワークということについての御意見がありましたが、私はこの郵便局数そのもののネットワークということよりも、自治体がしっかりとした中で、根付いた中でこれを発進するべきだなと、それも地域における自治体と行政と郵便局が一体となってこれから進んでいかなくちゃならないかなと、こう私はこれ痛感しております。なぜならば、八千代町は市町村合併がしない自立の道を選択したからであります。今後、それらについて十二分に郵便局、我々と、行政と一体となって議論を重ねて、これ、より良い郵便局に邁進したい、そして我々行政も価値ある行政に努力したいというふうに考えております。  以上であります。
  93. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 私が強調したのは競争条件、特に郵貯簡保について、金融事業についての競争条件の均一化ということを主張しております。私は、郵便サービス、それから手紙の配達という観点からいいますと、全国ネットワークの維持を義務付けて、そのためにある程度の独占を付与する、あるいは参入に対して制限を行うということはやっていっていいというふうに考えております。  ですから、郵便局の配置をどうするのかということはやはり政治的な判断でありますので、例えば、国民の例えば九五%以上の人から十キロ以内に配置しなさいというような形での、合理的な形での配置の基準というのを設定するということの方が、あいまいに全国あまねくという言い方よりはいいのではないかというふうに考えております。ただ、合理的な形で、つまり国民の何%以上から何キロ以内というような形での義務付けを行う。で、その上で、例えば郵便物については一日一回以上配達しなさいという形での制約を課した上で、それを満たせる事業主体があれば、当然民間の参入も入れるべきではないかなというふうに思っております。  その観点からいいますと、現在の信書便の参入規制の在り方、あれは総務省の訓令というのに事細かに書かれておりますが、現在の参入規制はちょっとやり過ぎではないかなと、もう少し自由な発想でやれるという形の参入規制をやりつつ、その上で全国、全国のサービスが維持できるのであれば民間郵便局が競争していくべきではないかというふうに考えております。
  94. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 物を届けるという観点に立てば、民間の宅配という言葉でいいんでしょうか、そういうのと郵便局とはそう差がないというふうに思っております。ただし、郵便局が、先ほどから申し上げましたとおり、私の地域に限っていえば、それは物だけでなくて心まで届けておるというところが大きな違いだというふうに思っております。  それから、ネットワークで一番問題は、今回の市町村合併で自治体の規模というのは大きな、大きいところから小さいところができてしまいました。で、私ども山間部を見ておりますと、本当に私のような山間部が大きい市にくっ付いたって、市の中心の市役所から一時間も離れておるというような地域ができてしまいました、自治体は同じでも。そこのところを本当にどうカバーするのかということが一番大きなネットワークでは問題ではないのかと感じております。
  95. 小泉昭男

    ○小泉昭男君 大変に貴重な御意見を伺いました。お話しの四人の参考人方々の共通した部分では、ネットワークについてはこれからも議論を重ねながらしっかりと前向きに構築していくべきだという、そういうことだと思います。それと、松島参考人お話では、物を届けるだけだったらそんなに差がないじゃないかと。実際に、だけど考えてみますと、昨日のある冊子にも載っていましたけれども、宅急便と普通の小包便の金額の差が大分詳しく載っていました。  これから、私、今のままでこの郵便局のネットワークが維持されていくとは私は思っておりません。そういう中で、昔から郵便局と農協と消防団は津々浦々まであるって言われてきました。しかし、消防団もなかなか過疎化が進み団員が確保できない、こんなことも聞きますし、これが人口減少時代の現れかな、こういうふうに思います。  昨日、京都での公聴会の中で御意見がございまして、ある委員の方は、郵貯に集まるお金は東京にだけ集まっているんじゃないと、みんなもう本当にわずかなお金をずっと皆さんが地域で預けていただいて、その合計が三百兆だとか幾らだとかになるんだって、こういうふうなことを言われた委員もありました。それとまた、もう一人の委員の方は、田中参考人が言われた部分に触れるんですけれども、何でも郵便局郵便局って、今回何でもかんでも、過疎の問題から地域の行政サービスからを郵便業に絡めていくのはどうなんだろうかって、こういう御意見もありました。私はそれ同感であります。  これから地域の住民サービス、行政サービスは、もうこれ行政がやっていく仕事でありますから、その辺のところも郵便局が肩代わりするような形で地域にしっかりと貢献してきたということは大変大きく評価したいと思いますが、これからの方向の中ではそれは少し考えていかなくちゃいけないんじゃないかなと、こういうふうに思います。  今私が住んでいるのは川崎なんですけれども、川崎の辺で見ますと、ヤクルトの販売の方々はしっかりとしたネットワークを持っています。それと、ダスキンというところの販売の方も、あの小さな掃除のそのお届けをいただくのに細かく歩っていられます。こういうネットワークが地域でしっかりとでき上がっていますから、こういうふうな民間の力というものをこれからしっかりと認めて、それを育てるような形にしていかないと、いつまでたっても、行政がやることが安全なんだ、この一点張りになってしまうんじゃないかなと、こんなことが思います。  大きな政府を目指すのであれば、皆さん税金をしっかり納めていただいて、そして高福祉高負担の社会でいいと思うんです。しかし、よりコストの少ない、そういう中で生活を送っていこうとすれば、どうしてもそこを工夫いただけるネットワークづくりに貢献している組織に世話になっていくことが大事かなと、こういうふうに思います。  既に、もう先日も申し上げましたが、中国も人民元の切上げ二%、わずかですけれども上がりました。これはこれからどんどんどんどん変わっていくでしょうし、ほかの国でもまだ固定にしているところは変わっていくでしょうから、こういう中で日本の経済の中での金融がしっかりと力を付けていかないと、将来国際的な中での日本の足下の揺らぎというのが否めないんじゃないかなと、こういうように思います。  こういうところで、田中参考人にいま一度、国際的な部分から日本の国内の郵政に関しての御意見伺っておきたいと思います。
  96. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 御指摘の点は、海外の人々が日本を見る目の非常に集中したものだと思います。東アジアは勃興しておりますので、東アジアにいろんな意味で企業も投資をしたい、あるいは、年金はアメリカでもヨーロッパでも拠出したものが積み上がってきていますので、それを世界じゅうでできるだけ有利な形で運用したいというふうに彼らは考えています。そういう意味では、勃興する東アジアは極めて重要な地域であります。  そのときに、現在、日本の資本市場あるいは日本という経済社会に対して、ありていに言って、非常に関心が高まってきていると思います。それは、東アジアに直接例えば投資をするよりも、日本の企業に、日本で上場されている企業に投資をした方がうまくいくというケースが多いわけです。  例えば、中国と日本とを比較してみますと、この数年、確かに中国の経済発展はすごいんですが、御存じのように、上海、深センの株式市場においての株価はずっと下がり続けております。中国の個人投資家のほとんどは、お金をすったと、ひどいところにお金を置いてしまったというので、文句といいますか非常に不満が出ているような状態です。ですから、中国株に直接投資した例えば欧米の投資家たち、年金運用をしている人たちは、失敗したなと。中国ではまだ資本市場は十分透明なものではないし、上場企業に対して規律付けは難しいと。国有企業がもうどんどん次々上場したけれども、非流通株というような形で、非常に不鮮明な形の値付けが行われている。  これに対して、日本で、中国の機械、中国が発展するのに対して非常にうまく振る舞われた企業ございます、荷役機械とか、それから建設機械とか、あるいは鉄鋼とか、あるいは海運とか。そういう企業は、上場企業は、もちろん日本の資本市場において幾つかの基準を満たして、透明性、それからできるだけ早くもし収益に変化があれば開示するということが行われていますから、海外の投資家にとっては、日本というところはより管理しやすい場所であります。  そういう意味では、一番上手だった人は、中国が勃興することによって利益を上げる日本企業に株式投資をしていた人が一番に国際的にも利益を上げているということですから、そういう意味では日本の資本市場についての関心は高まります。それから、日本の企業が知的所有権その他についてももちろん国際的な基準でやっておりますので、東アジア、勃興する東アジアに対して日本の企業を通じて管理するということについても関心が高くなっております。  そういう意味では、これから海外からの投資を通じて日本の職場が増えるという、そういう経路がだんだん築き上げられようとしているんだと、まあ二十一世紀に入ってからの日本はあると思いますが、そのとき重要なことは、日本の資本市場において、例えば国債の金利とそれから株式市場で付いている各銘柄の値段との間、これはもうどこの資本市場でもそうなんですが、ある関係を持って動いていますから、そういう関係が確認されれば、私は、日本の資本市場というのは使い勝手のいい、本当にここに持ってきてここで管理してという態度が定着するだろうと思います。それは、日本における経済繁栄といいますか、職場を増やすことにもつながるという意味で、私は、お金の流れについては、投資社会に既に変化した日本社会である以上、私はもっと関心を持つべきだと。  二十一世紀、我々は高齢化社会を生き抜く決意を固めざるを得ませんけれども、そのためには、投資社会にふさわしい日本の資本市場整備は不可欠だと。そういう意味では、郵貯簡保のありようについても根底的な議論をしていただくことが望ましいのではないかと思っております。
  97. 小泉昭男

    ○小泉昭男君 大変大所高所からの御意見を伺いました。  深尾参考人から先ほど、リスクについてしっかりと受け止めるような体制をつくるべきじゃないかという内容のお話聞きました。これから私はリスクのない社会は発展しないと思っていますから、私たち議員も選挙でリスクをしょうわけでありますから、リスクのない社会は発展しない、私はこう思います。  これから郵政がしっかりと今までの百三十年の歴史を踏まえて前進すること、そして改革がスムーズに、なるべく短い時間に完成することを期待をいたしまして、参考人に対してお礼を申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  98. 内藤正光

    内藤正光君 皆さん、こんにちは。民主党・新緑風会の内藤正光です。  今日は、四名の参考人の皆様方には、大所高所から本当に大変有意義な御意見をいただきまして、ありがとうございます。  私、今住んでいるのは東京なんです。生まれは愛知県なんです。まあどちらかというと都市なんですが、とはいうものの、私は選挙区が全国比例区でございまして、全国津々浦々本当に回っている。言葉は悪いんですが、全国版どぶ板選挙をやっているわけなんです。で、それ、私なりに地域の、地方の実情は理解をしていると私なりに自負はしておりますが、そんな中私が感じるのは、郵便局というのは、特に地方の人においてはその日常生活においてなくてはならない存在になっているんだろうなというふうに正直感じるところでございます。  そこで、まず稲葉議長、そしてまた松島村長にお尋ねしたいのは、まず町民、村民の日常生活の中で、又は地方公共団体とのかかわりの中で郵便局はどんな役割を果たしているのか、お尋ねしたいと思います。
  99. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) 現在、この八千代町では郵便局がどのように根付いているのかということでありますが、まず郵便局と行政というものが八千代町の場合は普通一体であったと。  特に、この八千代町が合併をしない、自立を、道を歩んだときに、これからの新しい建設計画の中で今までの八千代町をどのように構築していくか、それを、今までの全体を見直さなくちゃならないということから始まりまして、これが、これから八千代町にとって非常な試練が待っているわけでございます。  そういう中で、郵便局と私どもは、常にこの町にはいろんな、農業が基本産業でありますので、東京からのあらゆる残土、廃材なんかが持ち込まれてしまうと。そういう中で、この情報を提供する覚書、それらを締結しており、まだ、独り暮らしの老人に対する声掛けや、特に町には、町は簡保資金の貸付け、町民の体育館、小中学校のプール、体育館、木工室というふうに、多くにこう位置付けられておりますので、この厳しい行財政の中で、これからの郵便局というものには、郵便局は八千代町にとって根付いている。  また、町民も、これが定着しているのであるから、決してこれからの民営化云々というよりも、住民の関心が高いということも一方ではありますし、我々はこの行政を取り扱う責任者として、この町民が、またこういう経済が厳しい中で、町民がこう何とか生きていかれるような自立の町をつくるのには、あらゆる団体、また郵便局の皆さんの、特に局長さんなんかはいろんな面で精通しておりますので、すべて八千代町に参加をしていただいて、これからの新しい行政に多くの知恵をいただきながら八千代町の新しい建設に邁進することが不可欠であるというふうに考えております。
  100. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 私ども、先ほども言いましたが、過疎の山村の生活というのは大変に、いろんな公共サービスが消えて、大変厳しいものがございます。これは田中参考人からも話もございましたが、すべて、では郵便局がカバーできるのかではなくて、私ども一番困っておりますのは、高齢者で車も運転できずに障害を持って、じゃ地域で暮らしている皆さんに、一番困るのは買物なんですよね。今、私どもはJAに委託して、昔の行商ですよね、行商のような仕事を実はJAにお願いしてやっております。  その生きていくことが大変なんでございますが、そういう観点からいきまして、毎日その地域を訪問してくれておるというのはその郵便局局員だけなんでございます。そういう中で、あそこに崩落、崩落があって道路が大変よ、そういう第一報も郵便局から。それから、あそこのおばあさんこうだよという。それから、住民がもう、これちょっと役場まで届けて。それはいいのかどうか分かりませんが、郵便料金払わずにこれ役場へ持っていけなんというのがいいのかどうか分かりませんが、それは正に地域共同体のなせる技でございまして、これ頼む、よし分かりましたというように、郵便局員さんというのは言ってみれば村における御用聞きということなんです。  私は、郵便局が例えば民営化してコンビニエンスストア化というような話もあるんですが、本当の意味で、公社のままでも私は郵便局員は御用聞きをやったら、やってくれたらこんな有り難いことはないというふうに思うぐらい、地域社会での活用というのはまだまだその郵便局に担っていただけることが一杯あるというふうに思って、考えております。  金融関係については、先ほどもう、くどくもなりますので重ねてはそう言いませんが、とにかく郵便局しか、JAに一か所、あと郵便局の二か所のATM。これで民営化して一つ、泰阜村のような小さいところは、郵便局、そうはいっても一つの村に一つは残さにゃいかぬといって、半分の人が困っちゃうんですよね。だから、ほかにない、代替ができるものがないというときに、やはり金融お金の出し入れがもう、もう郵便局の生命線でございます、私の村の。  以上でございます。
  101. 内藤正光

    内藤正光君 どうもありがとうございます。  続きまして、松島村長も金融のことについてお触れいただきましたが、いわゆる金融のユニバーサルサービスについてお尋ねしたいと思います。  ただ、ユニバーサルサービスの定義をここでしっかりしておかなきゃいけないんですが、金融というのはいろいろ、証券だとかそういったものを一緒くたにやると。ではなくて、過疎地も含めて広くあまねくサービスを提供するという意味でのユニバーサルサービスについてお尋ねをしたいと思います。  松島村長にはお答えいただきましたので、稲葉議長にちょっとお尋ねしたいんですが、民営化というのは取りも直さず効率性を追求するということにほかならないわけですね。  ニュージーランド、民営化の成功例として一時騒がれたわけですが、いろいろな経過があって、最終的にはやはり国営の銀行、キウイバンクをつくらなきゃいけないというふうになったわけですが、そこの経緯を振り返ると、当然ながら今後、もしこの法案が通ってしまったその後どういうことが予想されるかといえば、まず非採算地域から間違いなく撤退をしていくだろう。そしてまた、少額預金者の排除、例えば三十万とか四十万とか、それぐらいの預金しかしていない人は手数料払わなきゃいけない、何千円かの。何百万というふうに預金してくれる人はどうぞお願いしますとなる。こういうことが予想されるでしょうし、また、今郵便局としてやっている福祉サービス、いろいろあろうかと思います。例えばひまわりサービスですとか年金配達サービス、いろいろあろうかと思います。そういったものも当然のことながら経済合理性を追求していく中で淘汰されていくんだろうというふうに思います。  そういった私たちの懸念に対して竹中大臣がよく答えるのは、いやいや、コンビニや住宅リフォームの代理店をやって収益性を上げていけるんじゃないか。私は、こういう答弁を聞くにつけ、本当に地方の実情を理解しているんだろうかという疑問を抱かざるを得ません。本当に地方が何を求めているのかということを理解していたら、こういった答弁は出ないだろうと思います。  で、いろいろな事態が想定をされる今回の郵政民営化法案でありますが、地方の行政を預かる立場から、一言で結構ですので、懸念なり思いをおっしゃっていただければと思います。
  102. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) お答えいたします。  先生のおっしゃることは、この不安を克服できれば譲歩できるのか、また、成った、民営化成った場合はどうするかということであると思いますが、私は議会の議決を得てこの意見書を提出しております。その議決は極めて重要なものだというふうに理解しておりますので、当面の段階では、それを堅持する私の立場でありますので、さらに郵便局の配置、法律規制いたしましたとしても、例えばそれが赤字になってきたときにどうすればいいのかについては議論がなされていないということでありますので、明確な答弁ありませんので、私としてはその部分は譲歩できないと。  また、今まで、民営化成った場合の予想と、どう思うかということでありますが、私は今まで郵便局との協調関係の中でずっとやっていましたので、新しい民営化、そして郵便局がどのような郵便局になってくるかということはなかなか私の頭の中では浮かんではきません。  これが民営化成るということは、過去において国鉄が莫大な赤字をしょって民営化になったということぐらいであって、私は、新しい民営化された郵便局、どんな姿に浮かんでくるかと問い掛けられても私の頭の中には浮かんできませんので、そういう期待を持っておりませんので、今までやっていた郵便局が継続、堅持できるような方向性へ持っていくことが急務であろうかなというふうに考えております。
  103. 内藤正光

    内藤正光君 はい、分かりました。  次は深尾教授にお尋ねをしたいと思いますが、多くの有識者の方々意見を最大公約数を取りますと、公的金融が肥大化した、これが我が国金融市場をゆがめている、だから、今回の金融部門ですね、それをもう義務を課さずに、ユニバーサルサービス義務も課さずに完全民営化をすると、そしてリスクも遮断をして完全民営化すると、こういうことなんだろうと思いますが、私なりにちょっと申し上げさしていただくならば、そこにはどうもマクロ的な視点しか見られないんですね。ミクロ的な視点といいますか、地域への配慮、そういったものがどうもちょっと見られないなというふうに思うんです。  例えば、もっと分かりやすく言えば、民にできることは民に、小泉さん、よく言っていますが、それは当たり前なんです。しかし、民の追求する合理性のはざまにはまってしまったところをどう手当てするのか、そこを考えるのが政治の役割なんですよね。どうもそこがちょっと見られないんですね。  で、今の法案、正直言いまして、最後は、金融サービスを提供するかどうかというのは経営者の判断にゆだねられるわけですから、私は中長期に見たら、必ず非採算地域からの撤退あるいは少額預金者の排除、これはもう避けられないと思います。私は、そういったものをカバーするのが公的部門の役割なんだろうと思います。  そこで、お尋ねしたいのは、ニュージーランドのキウイバンク設立の経緯だとか、あるいはドイツの、最終的にはユニバーサルサービス義務を負わしたわけですが、そういった経緯を踏まえてお答えいただきたいんですが、金融のユニバーサルサービスの必要性についてどのようにお考えでしょうか。必要ないと考えるのか、あるいは必要だと考えるのか、教えていただけますか。
  104. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 私は、ある程度のユニバーサルサービスといいますか、ある程度の、例えばライフライン預金のようなものを提供することというのは政治の役割としてあり得るというふうに考えております。  ですから、例えば、銀行に対してすべての勘定に手数料を課すといったことについて禁止をする。つまり、一人について一口座については無料で決済口座を提供しなさいというような形でのライフライン口座のようなものを導入することは当然考えられると思っております。  また、では、じゃそれをどのようにして達成するかでありますけれども、そのためには当然コストが掛かるわけでありまして、例えば過疎地に五キロ以内にすべてくまなく店舗を配置するというのは、それは物すごいコストが掛かるわけです。そうすると、そのコストの掛け方を、どれだけ出せるのかというところでバランスを取るのが政治の役割だというふうに思っております。  その点から考えると、例えば現在でも二兆円の基金をつくるわけでして、これによってネットワークを相当程度維持できるわけですね。そうしますと、郵便局に対して例えば代理店をできるようにするといったような形にして、これも郵貯銀行だけではなくて民間からの代理店もやれるようにするということにすれば、それはサービスを、ユニバーサルサービス郵便貯金というものだけに限って提供するのではなくて、民間銀行もうまく利用して、言ってみれば、ラストワンマイルという言葉がありますが、電話サービスのラストワンマイルのような形で銀行サービスのラストワンマイルを郵便局のネットワークに出させると。  しかし、その場合に、代理店は郵貯だけにやらせるのではなくて、民間にも同じ条件で開放するといったようなやり方、それはやはり知恵の使い方をやっていけばユニバーサルサービスを提供していくことは可能ですし、それもコストを下げてやることはできるというふうに思っております。
  105. 内藤正光

    内藤正光君 実は、私は議員になるまでは、先ほどいろいろ言われたんですが、NTTで働いておりました。正直申し上げまして、ユニバーサルサービスを提供するためのコスト、どれだけ重いものかよく知っています。はっきり言えば、だれも、お金出してくれるからといって、もう絶対やりたくないところあるんですよ、経済合理性を追求していく中で。ちょっと失礼なんですが、人口二千幾らの松島村長のところ、あそこ、幾らお金くれるといっても、恐らく経済合理性から考えてどの民間会社もやらないと思います。私は、ある程度の義務付けしないことには絶対に進出してこないと思います。やはり最後経営者は、そこに店舗を構えて人を置くなりなんなりして、それに掛かるコストとそこの地域で上がる収益性をてんびんに掛けるわけですよ。  私は、先生のおっしゃるように民間会社も含めて何らかの手助けをするといっても、私は現実問題来ないと思います。私はもうちょっと仕組みが必要だと思います。どうなんでしょう。
  106. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 私がもう申し上げていますけれども、既に基金を置いているわけですね。これ郵便局に対して例えばユニバーサルサービスの義務をどこまで課すかというのは、これはコストとの兼ね合いであって、それは政治的に決めるべきことであると思います。  ですから、例えばユニバーサルサービスについて、金融機関が全くないところについて、例えば郵便局に銀行業務をやらせる義務を課すというのは、それはあり得ることだと思います。これは、それに対して幾らぐらいお金が掛かるのかということを考えて国は金を出す。それはどこかで税金を取るということが必要だと思いますが、それをやっていく必要があると思います。  ですから、私は、ユニバーサルサービスが要らないと言っているのではなくて、ユニバーサルサービスの提供の仕方をよく考えて、コストをいかに下げるか。ですから、郵貯簡保に対して全国くまなくやれということは必ずしも必要ない。それに対して、全然店舗がない、非常に遠くて困るというところが幾つもできては困る。それは本当そのとおりでありますので、そこに対しては、例えば過疎の郵便局に対して銀行サービスを義務付ける、ただし、その場合のコストは基金なりで見るというのは当然あり得るというふうに思っております。
  107. 内藤正光

    内藤正光君 ということは、今の法案の枠組みではそれは全然義務付けられていないわけですから、あくまで最終的には経営者の判断ということになっていますから、不十分だという理解で先生はお持ちになられているわけですね。
  108. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 私は現在の法律の中には一杯問題があるというふうに考えておりまして、現在の法律は相当問題があります。  これは、ユニバーサルサービスというのは、ただし、これは郵便局に課すというのはやっぱりおかしいわけでして、郵便局といいますか、郵便貯金簡保に課すというのはやっぱりおかしいわけでして、ネットワークとしての例えば郵便の窓口業務に対して、例えばライフライン的な口座を上げる、あるいはATMを設置してもらうということをやっていくということは当然考えられる。ですから、これは郵貯あるいは簡保に対して全国でやれということではなくて、最後のラストワンマイルといいますか、最後のアウトレットを提供することを義務付ける、これはあり得るというふうに思っております。その点では不十分、法律上例えば手直しをした方が将来いいということは、それはあると思います。ただ、ほかに問題も一杯ありますので、まとめて直していただけると非常に良くなるというふうに思っております。
  109. 内藤正光

    内藤正光君 もうほとんど時間もありませんが、本当にありがとうございます。  ただ、一つ私の考え方を申し上げさしていただくならば、今オーバーバンキングと言われるこの日本の中で、なぜ五つ目の超メガバンクを誕生させなきゃいけないのか。私は、郵便局の預け入れ限度額を下げるなどして民間との直接競合を避ける、その代わりにユニバーサルサービスを義務付ける。私は、こうしてこそ初めて公の役割がしっかり果たせるんじゃないのか。そのことを申し上げて、私の質問を終えさせていただきます。  どうも本当にありがとうございました。
  110. 山本香苗

    山本香苗君 公明党の山本香苗です。  本日は、四人の参考人先生方、本当にお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、様々な御意見いただきまして、ありがとうございます。  なるべくお二人と質問が重ならないように質問させていただきたいと思っておりますが、まず最初に田中先生の方にお伺いしたいんですが、最初に、今回の法案の三つの柱の中で政府保証を外すというところがございました。この今回の法案におきまして、確かにこの政府保証を外すというところが非常に大きなポイントになっているわけでございますが、ここを、政府保証が付いていることがどういう点で問題となっていて、また現在、将来にわたって国民に対する、国民への負担になるのかと、その辺りのことをまず分かりやすく御説明いただけますでしょうか。
  111. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 二つあるのではないかと思います。一つは、二十一世紀の日本の政府を、政府活動を設計するに当たって、政府が提供する保証は、保証の傘はできるだけすぼめるべきだということです。  それは、政府保証が付いた活動について、まあもちろん国会を通じてでもいろんなチェックは利くわけですが、しかし我々がこれまで経験してきたことからすれば、政府保証を付けた分野における管理というのはやっぱり十分ではない。そういう意味では、偶発リスクという形で、政府活動が付いていたがゆえに事後的に大きな負担が納税者に、そのときの納税者に掛かってくるという心配はやっぱりあると。ですから、すぼめられるという認定が付けば、それはもうできるだけ政府保証の幅はすぼめるべきだというのが一つの理由ございます。  もう一つは、政府保証が付きますと資源配分のゆがみは必ず起きます。現在、例えばアメリカでなぜあれだけ住宅投資が起きるのかという議論があります。住宅投資はバブルではないのかという議論があるんですが、その一つの理由として、グリーンスパン連銀議長を始めとしてこの分野に詳しい人たちが皆言っていますのは、住宅抵当証券を買い上げるのがファニーメイとかフレディマックというところがあるんですが、ここが債務証書を発行しておりまして、この債務証書が、全部政府保証が付いているわけじゃないと皆が言っている、だけど部分的には保証があると。そうすると、部分的にでも保証があると、そこの出している債務証書はあたかも全額連邦政府の保証が付いているというふうに誤解したい投資家がいるらしくて、それはアメリカだけではありません、実は日本の投資家もそう思いたがって買っている気配があるんですが、債務証書が出やすいわけですね。  郵貯簡保についても、国の会計からいけば、あるいは郵政公社の会計からいけば、契約額であれあるいはこの貯金の受入額であれ負債でありまして、この負債がどんどん拡大しているわけです。これは政府保証が、明確な政府保証が付いてきたからこういう形で増えました。  アメリカの住宅投資を陰で支えていますのは、暗黙の政府保証という言い方がされていますが、だれも全部保証されているとは思っていないのに、その債務証書はほかのものに比べてどんどん売れている。どんどん売れていくから、そこに資源が回る。住宅投資がやっぱりそういう意味での渦をつくってしまっているというのがあるんですが、日本でも現実に、政府保証が付いている債務政府保証が付いていないものとの間に大きな差がとりわけこの十数年出ました。これは日本における資源配分を明確にゆがめているわけでして、今度の民営化関連法案についていえば、ここを、その問題点を、まあ、既に問題なんだけれども、これ以上大きくならないうちにそれをふさぐという決意をされているわけで、私は、これは大変重要な、日本における資源配分、長期的に考える上で極めて重要なことだと思っております。
  112. 山本香苗

    山本香苗君 今、田中参考人の方から暗黙の政府保証という話が出ましたけれども、深尾参考人とお二人にちょっとお伺いしたいんですが、正にこれから二年後、一応民営化して、その後移行期間が十年。深尾参考人の方からもうちょっと短く、もっと短くしなくちゃいけないんじゃないかというお話ございましたけれども、正にその間の期間というのは完全処分という形の中で暗黙の政府保証が付いているような状況があるわけでございますが、その間におけます経営の自由度と民業圧迫、コインの両面だというふうに言われますが、このバランスをどういうふうな形で取っていかなくちゃいけないのか。  また、その中で、田中参考人の方からのレジュメの中でちょっと飛ばしてしまったというふうに言われましたけれども、ここで郵政民営化委員会というのが非常に大きなポイント、ポイントとなると思われるわけなんですけれども、この在り方につきまして両参考人の方からお話をお伺いさせていただきたいと思います。
  113. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 実はこの郵政民営化というのは非常に重要なテーマだと思いまして、私どもの研究所で、福岡、広島、高松、大阪、仙台、札幌と、コンファランスといいますか、いろんな議論をやってまいりました。そのときに、それぞれの地元で経済活動をされている方、それから一般市民の方も一部含めて、いろんな質疑応答の、お互いに議論するというセクションを設けていろいろ議論してまいりました。  その中で、御指摘の暗黙の政府保証について懸念を持っておられる方が非常に多いわけです。そして、そういう意味では、この郵政民営化委員会は三年ごとに見直しをするという規定になっておりますので、この委員会委員になられた方には、正にこの暗黙の政府保証が引き起こすかもしれないゆがみというものについて、見直し、チェックのときには当然これはチェックしていただかなければいけないものだというふうに思っています。  そういう意味では、この移行期間の間においてこの暗黙の政府保証日本の資源配分全体をゆがめないために最低限どういうことが必要なのかを国民的にも議論してもらわなければいけないし、国会でも恐らく議論が起きると思いますが、少なくとも、この御指摘のように、郵政民営化委員会委員はこのテーマについて具体的な研究といいますか調査を行うということは私は不可欠だというふうに思っております。
  114. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 暗黙の政府保証がある中で、実際上生まれる、政府が実際上株を持っていますと、そういう会社をつぶすはずがないという期待が生まれるという意味での暗黙の政府保証ということかと思いますが、その期間が非常に長い、現在の移行期間最長十年ということになりますと、その中で新ビジネスをやるということになりますと、ほかの金融機関は生身の金融機関で、競争に敗れればつぶれる可能性があるわけですが、それに対して、当面つぶれそうにないという金融機関と競争していくという形での競争上の不均衡が出てくる。その意味では、今日も説明しましたように、移行期間が十年というのは余りに長過ぎるので、二年から四年ぐらいに短くすべきではないかというふうに思っております。  また、委員会民営化委員会というのは、当然その場合の新規事業へのペースですね、出ていくペースが例えば早過ぎないか、つまり民間金融機関のやっている領域とフェアに競争しているかどうかということをやはりチェックしていく必要があるというふうに思っております。  やはり企業、規模としては、市場としては、もうガリバー型の寡占という格好になりますので、本来は幾つかに分割した上で民営化が必要な規模だというふうに思っておりますが、それを丸ごとやろうとしているというところに一つの問題があって、その中で、暗黙の政府保証を持ったままで、しかも十年間の移行期間の中で拡張していくということになりますと、やはりゆがめる要因の一つになる可能性はあるというふうに思っております。
  115. 山本香苗

    山本香苗君 一番最初の話に戻るわけですが、政府保証を外して官から民へのこの流れを、官の方にとどめないで民の方へどうにか流していこうという形であるわけなんですが、今回の郵政民営化、この一つ法案だけでぱっと流れる話ではなくて、そこの仕組みをしっかりつくっていかなくてはいけないと思っているわけなんです。  そうした中で、この郵政民営化法案でいろいろと中心的な役割をされていた加藤先生なんかは、特にこの郵政民営化というのは地方の活性化の財源づくりなんだみたいなことをお話をされていることがございますけれども、両参考人のお二人からお話をお伺いしたいわけなんですが、どうやったらこの、今の段階でぱっと郵政民営化法案が通って、すぐにこういった作業が進む中で地方の方へ流れていくような仕組みというのは難しいと思うんです。ここをどうやってつくっていくかということが今後の課題となると思われますが、その点につきましてお考えをいただければと思います。
  116. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 私は、郵政民営化の問題と地域社会の振興構想、地域再活性化の問題とは明確に分けて考えるべきだというふうに思っています。  政府保証が外れた後の例えば郵貯簡保を考えてみますと、格付機関が株式会社郵便貯金銀行であれ、株式会社郵便保険会社であれ、倒産確率をはじき出します。このことに対して、我々といいますか、一般の家計は非常に敏感になっています。一九九七年に日産生命が破綻した以降、生命保険契約を行う上で、個々の民間の保険会社が責任準備金をどの支出のものをどの程度積み上げているかについて一般的ならざる関心を持っています。でも、もちろん一人一人がそんなことを詳しく分かるわけではありませんが、少なくともそういうことを分析した経済雑誌を手にして、どこの民保はどうだということを前提にして保険契約を結ぶという傾向がそれ以上強くなりました。  今回、この政府保証が外れますと、格付機関はすぐそのときから倒産確率をはじき始めますので、どういう付き合いをするのかというのは個々の家計は相当冷静に考えるというふうに思います。  現在でも日本郵政公社の店頭では、預入限度額に近づいているような人たちに対しては個人向け国債を推奨されています。例えば、個人向け国債というのは、考えてみますと、これは個々の家計からいきますと、郵便貯金を持っているのか、それを個人向け国債に振り替えるかというのはそんなには違わない。むしろ、最近の商品設計でいけば個人向け国債の商品設計は非常にいいですから、現在の金利水準の定額貯金よりはそれは個人向け国債の方がよほどかいいと思う人は増えているわけです。  そうしますと、そういう行動が起きますと、日本郵政公社の負債はその部分減ります。その部分どこかの形で資産を落とされます。日本郵政公社のバランスシートは圧縮されまして、そして個人の家計は資産が、例えば定額貯金から個人向け国債に振り替わるだけです。  そういう意味では、どういうことが起きるかと。例えば、そういうプロセスがずっと進む、これからは投資信託もいろいろ売られるということになりますと、バランスシートが圧縮されるわけですね。金融部門、現在の郵政事業金融部門のバランスシートは圧縮されますので、あたかも今、二百兆を超える郵便貯金がずっとのりで張り付いたようなものだとか、それから簡保の保険契約はどれだけでも増えるんだというふうに考えるのは、私は、もちろんそういうふうに考えられる方もおられますが、多分そういうふうにはならないと思います。  ですから、こんなにも二百兆を超えるような郵便貯金があるんだから、これを少しでも資産の部門で地域活性化のために使ったらどうかというふうに言われる方は確かに何人かおられるんですが、私は、ちょっと待ってくださいと。このお金というのは本当にそんなにのり付けされたようなお金なんですかと。とりわけ、この民営化法案議論し、民営化しようというわけですから、これはのり付けされているんではなくて、家計がもう一遍、これたまたま棚に置いただけのものですから、多くの家計にとってですよ、棚に置いたものをもう一度自分に引き戻してきて、どこに置くかは自分で決めようと思っていますから、そういうことからいくと、このお金、バランスシートというのは相当圧縮される可能性がある。事実、日本郵政公社でも今後どうなるのかの展望を幾つかされていますけれども、これは圧縮されると言っておられますね、発表されたものでも。ですから、そのスピードは人によって違うんですが。  ですから、地域振興のために金を使う、これ家計が持っているお金であって、郵便局が持っているお金じゃないんですね。日本郵政公社にとったら負債なんですから、これは。ですから、そういう意味ではいつ引き出されるかも分からないという性格のものでもって、それで地域振興のために充てるというのは私は見合わない議論だと。ですから、地域振興とはまた別に重要な課題ですから、それはもう知恵を使って頑張っていろんなアイデアを出さなきゃいけませんが、郵便局に金があるんだからそれを使えというのは僕はもう余りにも乱暴な議論だと思っております。
  117. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 地域振興と郵政民営化をつなぐラインというのは単に資金だけではなくて多分、売却益の部分もあるんだろうと思います。そういう意味では、郵貯簡保を売却することによって、その株式を売っていくことによって政府が歳入を得るという部分がございます。この部分についてはもちろん地域振興に使うことも可能かと思いますけれども、やはり日本の財政のバランスからいうと、やはりなるべく歳入を増やしてその分、借金を減らしていくということがやっぱり一番初めに来るのではないかなというふうに思っております。  ですから、なるべく高く売っていく、なるべく魅力的な金融機関にしながら、また一つに、一つで売るのはちょっともったいなくて、四つぐらいに分けて売るともうちょっと売りやすいのかなというふうに思っているんですが、その上で高く売っていく。これによってなるべく歳入を得て、それによって財政に余裕ができれば一部を地域に使うということは当然あり得るんだろうというふうに思います。  また、地域振興という観点からいえば、郵便局のネットワークはまだまだ使いでがあるというふうに思っておりまして、全国にあるからこそ使えるという部分もありますので、これについて民営化をすることによって事業に対する制約をなくしていく、これによっていろんなことをやっていく。もちろん、これはいろんなアイデアを使っていかないと難しいものもありますし、それによる懸念というのはありますけれども、同時にこれまでの縛られたビジネスラインというところから広いビジネスをやっていくということが地域にとってもプラスになることというのは私はあると思いますので、これについては地域振興に役に立つというふうに思っております。
  118. 山本香苗

    山本香苗君 済みません。田中参考人と松島参考人の方にお伺いをさしていただきたいと思っております。  本当に現場の声をそのままこの国会の方に届けていただいたと思っております。実際、私も比例区ですのでいろんなところを回らせていただく中で、国会でこれだけ審議をしていても、あまねく全国にこういった形で義務付けるという話が法律の中に書いてあるんですよという形になったとしても、なかなか安心をしていただけないところがある。民間になれば、採算ベースで不採算になればぱっとなくなってしまうというところは本当に想像に難いところではありますけれども、我々としては、都市部においてもまた過疎地においても本当に郵便局の皆さん方が頑張ってくださっていて、そのサービスを確保していきたいという思いでこの与党の中でもいろいろな話合いをさせてきていただきました。  そうした中で、お二人に改めてお伺いをさせていただきたいわけでございますが、公社のままで、今回の参議院の質疑の中でも公社の生田総裁がそう答弁をされておりまして、公社という形で官でがんじがらめになっていると、なかなかこの先、中長期的に見て、この一、二年でぱっと駄目になるということはないけれども、中長期的に見てきて経営が厳しくなってくると。そういう中で、公社を大きく変えていくか民営化するか、この二つしかなくてと。そういう中で、民営化と、できれば経営の自由度を持たしていただいて、民営化さしていただいて、今あるサービスを確保していくことによっていい形で着地したいみたいなお話をされていたわけでございますが、それは今のそのままという形ではなくて、皆さん方が心配されているサービスをきちっと確保していくんだという観点からのお話だったと思うんですが。  公社のそうした実態を踏まえた実情というものを稲葉参考人また松島村長の方はどれぐらい御認識をされていて、そうした、将来を見越した上でそうしたリスクに対してどういうふうな形で自治体として対応していこうとお考えになっていらっしゃるのか。  済みません、時間が短くなりましたが、よろしくお願いいたします。
  119. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) 今、ちょっと、もう一度話してください。
  120. 山本香苗

    山本香苗君 済みません。公社の実態、これから、将来の見通しをどれぐらい御認識をされているのかということと、そうした上で、郵便局というものをこれから自治体でどう活用していこうかとお考えになっていらっしゃるのかということです。
  121. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) 将来、もし民営化成った場合に、私どもの地帯は、例えばコンビニエンスが進出してきたと。そういう中で、我々の地方のコンビニエンスはみんな、日用雑貨店、小さなお店、そして酒屋さん等が一生懸命後継者を、少子時代になって非常に人口が減ってきた。八千代町も十年前は二万五千人、現在は二万四千人、そういう中で何とか生き残ろうという意思があったわけでございますので、そういう中で、民営化になった場合にはそれらが淘汰されてしまうという心配があるんではないだろうかというふうに考えております。  また、郵便局と行政というものは、先ほども申し上げましたように、一体となった、行政と一体となった、これから歩むんだと、郵便局の位置付けというものは重要だと。なぜならば、すべて、我々以上に根付いていた郵便局、特に局長さんたちが、すべて、何代にわたって八千代町をすべてノウハウが分かっている。そういう中で、これからの新しい町づくりにはかくて欠かすことができないその貴重な意見として、また郵便局、また行政が一体となってこれからの町をつくることが不可欠だなというふうに考えております。
  122. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 松島参考人、簡単にひとつお答えください。
  123. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 森林組合の合併、農協の合併、先ほどの公衆電話の話で御案内のように、もう明確なことだというふうに私は思っております。もう市場原理にゆだねたら赤字のところは消えていくというのは、もうすべての今までの歴史が示しておるというふうに思っています。  それで、私は、国鉄、電信電話公社、専売公社のやっぱり今、個人収益、収益率が上がっているという要因がいろいろ言われておりますが、大きな要因はリストラ効果だという見方があります。私は、公社のままやればいいと思うんです、郵便局も。だから、公社のまま一杯できるじゃないですか。法律も変えてもいいし、公社のままどんどんどんどんその経営赤字を減らす経営を、正に生田総裁言われるとおり徹底的な公社経営改革をやれば、私はそのまま公社残して十分やっていけるというふうに思っております。
  124. 山本香苗

    山本香苗君 済みません。終わります。
  125. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。  まず、田中参考人にお伺いいたしますけれども、先ほど日本を投資社会にするというお話があったかと思いますが、日本人というのはリスク商品を買うよりも安定して低金利でも郵貯へと、こういう、国民性というのかどうか分かりませんけれども、傾向があるわけですけれども、この郵政民営化法によってやっぱり投資社会へ投げ込んでリスク商品もどんどん買うような、そういう国民にしていくんだと、こういうことなんでしょうか。
  126. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 決してそういうことではございません。一番望ましいのは、現在、日本郵政公社のバランスシートに一杯たまっているものが、もう一度国民が自らで、これは棚として置いているわけですが、その先まで考えずにとにかく棚に置いていた。それをもう一度自分で考えてみて、例えば個人向け国債というものだったら、それは別にばくちを、個人向け国債買ってばくちをやっていると思っている人はだれもいませんから、例えばそういうことです。  ですから、それは、まず第一段階で、たまり金が一杯あって、その運用の一挙手一投足によって、お金の値段、国債の値段がぐるぐる変わるような環境を減らすということが投資社会を一つ一つ完備していくことにつながっていくと、そういう意味なんです。  いずれにしろ、我々働いている間に拠出したものはちゃんと富を生む形で、それが十分成果の上がるものでなければ我々の老後はどう考えてもうまくいきませんから、その条件整備のためには、このたまり金として運用も難しい、そして多少動くことによって資本市場の骨格を揺るがすような、そういう存在は次第に減らしていった方がいい、もちろん急に減るわけではありませんが、時間を掛けて減らしていく、民営化はそれを実現する一歩だと、こういう意味でございます。
  127. 吉川春子

    吉川春子君 泰阜村の松島村長にお伺いします。  泰阜村と言えば、本当にぎりぎりの財政の中で福祉の充実ということに大変熱心に取り組んでおられるところと承知しておりますけれども、ここには特定局が二つと簡易郵便局一つあると伺っておりますが、この簡易郵便局の維持について大変御苦労をされた経過があるそうですが、それはどういうことだったのでしょうか。
  128. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 門島という地域、そんなこと言っても分かりませんよね。
  129. 吉川春子

    吉川春子君 いや、分かります。
  130. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 泰阜村の門島という地域にあったんですが、廃止するという話のときに、地域がどうしても残してくれなければ困るという話が入りまして、結局、村が仲介に入りまして、現在もその敷地料等々は村が払いまして維持しておるという状況でございます。こういう状況に、財政状況なんで、私も郵政民営化に、この流れにのっとって、その簡易郵便局が、本当はもしかしたら廃止なんというふうな思いもしたぐらいなんでございますが、しかし地域の離れておる地域なんでどうしてもその郵便局だけはということなんで、今現在も村が支援して継続しておるという状況でございます。それはもう地域の要望として残さざるを得ないということで、敷地料、それから、例えばくみ取り料でありますとか、いろんなものを村が負担して維持しておるということでございます。
  131. 吉川春子

    吉川春子君 簡易郵便局というのは本当に、四千四百幾つあるんですけれども、一番困難なところにあって、しかもこれは公社がやっているのではなくて、個人とか自治体とか農協とかやっているんですけれども、泰阜村のこれは、自治体がそれでは引き受けておられるということなのか。そして、運営は、今いろんな援助をされているということでしたけれども、その委託料というんですか、基本的な部分と手数料収入と両方あるというんですけれども、大体どちらが幾らぐらいの割合で維持されているのか、その辺伺います。
  132. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 私、基本的には個人が委託を受けてやっておりますので、村が出しておるのは今言ったとおり、敷地料でありますとか、そこの維持する経費の一部だけでございます。
  133. 吉川春子

    吉川春子君 茨城の八千代町の稲葉議長にお伺いいたしますけれども、先ほどのお話の中で、六つの郵便局があって、その中の一つは簡易局だというお話ですけれども、ほかにも金融機関は幾つかあるんだと、しかしそれは一か所に集中していて、郵便局だけが全地域に散らばっているんだという、こういうお話でしたけれども、具体的に言うとどういうことなんでしょうか。
  134. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) 八千代町は五つの村から合併されております。そういう中で、南北十キロメートル、東西約六キロメートル、そういうのが、中心部が役場が位置しております。その役場から半径約二百メートル以内に各金融機関が存在しているということであります。  で、郵便局がなぜ散らばっているのかというと、五つの旧村がありまして、その旧村に一つずつ今まであったと。それが現在も続いていると、そういう中でございます。そして、皆さんは三人ないし二人でこの三事業を、仕事をやらせていただいていると。非常に真剣にやっている。また、親切であると。  正に、何度も言わせていただきますが、地域には欠かすことのできない郵便局だなというふうに考えております。
  135. 吉川春子

    吉川春子君 この簡易郵便局もそうなんですけれども、要するに郵貯簡保の収入で維持、特定局も郵貯簡保の手数料で維持されていると、その上がりが七割という形で維持されておりますが、御承知のように、法案では郵貯簡保の義務付け、ユニバーサルサービスの義務付けというのはなされていないということが先ほど来議論になっておりましたけれども。  そこで、深尾参考人にお伺いしたいのですけれども、これは基金で相当程度ユニバーサルサービス金融問題についても維持できるんだという御発言がありました。私は、政府が一兆円積んで、その中で二千局掛ける六百万という計算式を出しているんですけれども、それでも到底、特定局だけでも一万九千もありますし、加えて簡易郵便局が四千四百もあるわけですから、この一兆円の基金でどうやって維持できるかというのは実は竹中大臣の答弁ではなかなか納得できないでいるんですけれども、学者の立場からといいますか、先ほど相当程度維持できるとおっしゃったのでちょっと、その計算式とは言わないまでも、どういうことでそれが維持できるとお考えなのか、お示しいただきたいと思います。
  136. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 私は一兆円の基金で維持できるというふうに申し上げたのではなくて、現在の法律でもそういう形での維持する仕組みは中に入っていると。それで十分か否かというのは、私も原価計算を見ているわけではありませんので何ともお答えできないというふうに思います。
  137. 吉川春子

    吉川春子君 まあ、これは参考人の責任というより政府の責任なんですけれども、それで本当にネットワークが維持できるのかどうかということを全然国会に具体的に示さないわけですよ。それで、何かあいまいな形で、郵便事業だけではなくて郵貯簡保のいわゆる金融サービスも維持できるかのような幻想を国民に与えているということは本当に私は許されないと、こういう思いで一杯です。  もう一つ、深尾参考人にお伺いしたいんですけれども、明治初期は都市部以外には十分な金融機関のサービスの提供がなかったんだけれども、今は違うんだと、こういうお話がありました。実は、郵政公社のディスクロージャー誌を見ますと、東京の練馬区の駅の周辺のカラーの写真が載っているんですね。練馬区、銀行は練馬区の練馬駅を中心に駅のところにごちょごちょっとあるわけですよ。そして、郵便局はやっぱり百メートル、二百メートル、三百メートル、この円のところに、さっきの八千代町の話じゃないですけれども、散らばっているわけですよね。だから、銀行とか金融機関は便利なところに固まっているけれども、しかし人間というのは山の中でも海辺でもいろんなところに住んでいて、そこに一・一キロで歩いていける範囲に郵便局があるということが今一番国民のライフラインとしての価値があるんですけれども。  明治の初期と比べなくてもいいんですけれども、やっぱり銀行というのは支店の数も合併、合併で激変してきていますし、やっぱり便利なところにしかないんで、私は、そういう意味で、明治とは違うけれども、やっぱり全国にくまなく散らばっている、不便なところにもきちっとある、その金融機関としての郵便局の価値というのはいささかも違わないと思うんですけれども、その辺は御認識はいかがですか。
  138. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 現在の郵便局金融群の支店網としてのネットワークの価値というのは非常に高いというふうに思っています。  ただし、これができたのは、逆に言えば、銀行の店舗が、例えばみずほ銀行でも六百ぐらいしかないわけですね。これしかない理由というのは、従来の行政が銀行の支店網の数を抑えて、競争を抑えることで結局、共存共栄の護送船団をずっとやってきた、このために、銀行も支店自由に出せるんであれば小さい支店をたくさんばらまきたかったんだろうと思いますけれども、数が例えば年間幾つまでというふうに言われるもんだから、結局、便利なところに大きなのを置いてきた、こういう経緯があるわけです。逆に、それをカバーする形で郵便局がカバーしてきたんだというふうに思っております。そういう意味で、郵便局のネットワークはそれ自身価値がありますので、それを、じゃどうするのか。  つまり、現在の郵便局郵便貯金簡保をあてがって、それでユニバーサルサービスを維持するのが適当かどうかということに関しては、私はむしろ適当でないというふうに思っています。つまり、ネットワークを使って、そこで例えば民間の預金でもあるいは民間の生保でも代理店をやらせれば、十分サービスが行き届くんだというふうに思っております。  ですから、郵貯簡保に全国でサービスをするということを義務付けるのではなくて、むしろ郵便局の窓口に対して金融サービスを提供するという形で民間のものを売らせる、その中の一つとして民営化された郵貯簡保の商品も売っていく、これはそれでいいのではないかというふうに思っております。
  139. 吉川春子

    吉川春子君 田中参考人にもう一つ別のことでお伺いしたいんですけれども、実は過疎地の問題と同時に、小口預金者の保護という点で、郵便局郵貯の今のやり方は大変優れているし、送金手数料も安いですし、ところがメガバンク、日本でも口座利用料というものを取るようになっていますし、こういう郵貯簡保などのその金融サービスがなくなった暁には、やはり超富裕層とか富裕層とか、そういう高額預金をする人に対して手厚い保護をすると。  今の公社はそういうことできませんからね。あまねく公平に、しかも安い費用でと法的な規制が掛かっています。それが全部なくなって、しかも普通の銀行に郵貯あるいは生命保険簡保がなった暁には、やっぱりその弱者保護、福祉、公共の福祉という機能が失われて、やっぱりさっき参考人もおっしゃったような国際、グローバル化された中での生き残りを懸けて大銀行として競争していくわけです。  そういうときに、過疎地なんて顧みる余裕があるんでしょうか。少額の預金者を顧みる余裕なんかあるんでしょうか。利益を上げるということでひたすらに走るんじゃないか。そこが非常に懸念されていますが、その面について参考人はいかがお考えですか。
  140. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 私は、一人一人の人間に対して国の仕組みがどう対応するかというときに、健康で文化的な生活をという現在の日本国憲法が書いていることが、これが基本だと思います。しかし、特定の業務をやっているところに特定の業務を押し付けるというやり方が望ましいわけでもないし、効率的でもないというふうに思います。  御指摘金融について言うならば、いろんな技術進歩が起きておりますし、例えばATMの設置は今正に始まったばかりで、コンビニエンスストアに置かれたATMの設置は、これからも日本列島全体をカバーするようになるわけでございますし、あるいは宅配便業者の人たちは弁当をいろんな形で、例えば独居老人に対して弁当を配るというようなことだってサービスの内容にしようとしております。それは、コンビニエンスストアというのは、例えば御存じのように一日に二回、弁当とかお握りを配る。  要するに、いろんな形の、そういうものも含めていろんなネットワークが完備する中で、一人一人の国民が健康で文化的な生活が営めるかどうかということが、これが国が全体としてチェックする問題であって、現在、確かに郵便局がある、郵便局のネットワークがあるからといって、それを固定して、特定の業務をあなたたちしなさいと。多少コストが掛かった場合には、じゃ、補助金を納税者の金から出すとか、そういうことを固定することが私は望ましいものではないと。で、もちろん、国は健康で文化的な生活をどうやって維持するのかについて、全体としては責任を持っている。でも、個別の経路に過大な負担を掛けるべきではない。特に、技術進歩が激しい今日はそうではないかと思います。
  141. 吉川春子

    吉川春子君 ATMをお年寄りは使えないわけですよ。でも、郵便局だと親切に出てきてやってくれるし、窓口でやってもらえるわけですよ。ATMの利用料は、御承知かと思いますが、時間外とか休日は普通の銀行は手数料を取るんですね、銀行は。ただなんですよ。もうこれは本当に弱者にとっては有り難いことです。  私は、もうあと時間がなくなりましたので、松島参考人と稲葉参考人に、正に田中参考人がおっしゃったその生存権を保障する、それが郵便局だと思うんです。それをなくなるかどうかの瀬戸際の法案を今議論していますので、特にその過疎地の声、そしてこういうものをなくしてはならないという声をお二人に最後に挙げていただきたいと思いますし、泰阜村は満蒙開拓団にたくさん人が出て、残留孤児、残留婦人がたくさん帰ってきて、そこも受け入れているわけですよね。乏しい財政の中で一生懸命やっていらっしゃる。そのようなところから更に郵便局まで奪うのかという怒りを、私は何遍も言っていますので、あるんですが、その点、お二人に一言ずつ最後に御意見を述べていただきたいと思います。
  142. 稲葉常美

    参考人(稲葉常美君) この自治体と郵便局は相互の協調関係に現在まで至っておりまして、私ども八千代町といたしましても、この情報の提供、そしてサービス、細かいサービスが今までなされていたと。それが民営化にもしなった場合には、それらのサービス、情報提供というものが担保されるのか、そういう懸念もあります。なぜならば、これは採算性を重要視するからだと私は思っております。ですので、そういうことを議論する前に、この各家庭なり各行政は一番問題であるのは何だと、一番問題から手を付けるべきだなと私は思います。  じゃ、その問題何だと。これは御承知のように特殊法人をあのままでいいのか、我々はとんでもない税金をこれなされていると、そういうのから手付けるべきだと。私は、この郵政民営化に対しては、このままで我々住民は何の被害も被っていない、そしてこれからも住民が、何の批判、不平不満を聞いたこともない。また、まして八千代町におけるところには、この一体となってこれからの新しい八千代町を建設したいというふうに考えておりますので、この郵便局というものはなくしてはならないというように感じております。
  143. 松島貞治

    参考人(松島貞治君) 私は、政治の眼目というのは、国民に安心を与えることだというように思っております。郵便局は我々にとっては公共サービスの最後のとりでなんでございまして、これがなくなるではないかと。今は国民に安心を与えるのではなくて、我々の村民に不安しか与えない法案だというふうに私は思って、考えております。  したがって、最後のとりでの郵便局を、本当に我々が生活していく上でどうしても必要である、また、なければならないというのは先ほどからずっと申し上げているとおりでございますので、国民に安心を与えるようなやっぱり政治であっていただきたいということを思っております。  それから、一つちょっと先生に。先ほど私、簡易郵便局で、村が支援しておることは間違いございませんが、地代というふうに言い切りましたけれども、もしかしたら平成十六、十七年度になっては違う形で、お金出していることは間違いございませんが、偽証罪ということになってもいけませんので、そこは出しておることは間違いございませんが、地代を計算して出しておるというふうには、もしかしたら変わっておるかもしれませんが、その点はちょっと御了承いただきたいと思います。
  144. 吉川春子

    吉川春子君 終わります。  どうもありがとうございました。
  145. 大田昌秀

    大田昌秀君 社会民主党・護憲連合の大田でございます。  四人の参考人方々はもうお疲れでしょうが、最後でございますので、ひとつよろしくお願いいたします。  まず、田中参考人にお願いいたします。  理路整然としたお話を聞いておりますと、つい郵政民営化賛成したくなりますけれども、そうもいきませんので、若干私の考え等を述べまして、参考人の御意見を伺いたいと思います。  先ほどお聞きしておりますと、二十一世紀で最も重要なことは投資社会へ移行することだという趣旨のお話がございました。田中参考人の御専門の立場からいいますと、経済のグローバリゼーションが不可避の状況の下でそうおっしゃると思いますが、私は、投資社会へ移行するという場合に、東京を中心とした都市部と離島あるいはへき地とでは随分と違うのではないかと。私が今更申し上げるまでもなくて、田中参考人は沖縄の事情について随分詳しい方でございますから、私が何を申し上げたいかある程度御理解できると思いますが。  私は、この今の投資社会へ移行するというときに、先ほど来、町村の代表の方々が安心こそが大事だという、生活で安心が大事だということをおっしゃっておりますが、私も全く同感でございまして、実は沖縄県で投資社会へ移行しようとしても余りにも条件が悪過ぎる。それは恐らく不可能な状況じゃないかと。例えば、国際都市形成構想をつくって一国二制度制度を国にお願いしても全然認めてもらえなかったし、そういう関係からいっても非常に厳しいと思いますが、今のその投資社会へ移行したとして、果たして人間らしい、安心、暮らしができるかというと、実はつい最近アメリカへ行ってきまして、私が学生時代に過ごしたアメリカとはもう全く違っていることに愕然としたわけです。  つまり、アメリカはあらゆる国が投資しようと構えている最も有力な対象国でありますし、経済的に見ますと世界一の強大な経済力を持っておるし、軍事力からいっても世界一を誇っているわけなんですが、市民生活面でいいますと、至る所にもう警官が立っていて、そして監視カメラがもうありとあらゆる場所に据え付けられている。それから、空港へ降りますと靴の中まで全部やられてしまうというような、もう学生時代とは本当に天と地の違いがするほど妙な社会になっておりまして、私は、そういう、アメリカが世界一の財力を誇る、世界一の軍事力を誇るという国でありながら、そこの市民生活を見ていると決してうらやましいとは思わないわけなんですね。  沖縄は日本全国一の貧しい県でございますけれども、しかし沖縄は長寿からいいますと世界一と言われるほど長寿を誇っておりますし、それから子供の誕生する率は全国一を誇っております。そういう沖縄の文化というのは、そういう社会の沖縄の文化というのは、決して相手をけ落として自分だけ伸びていこうという競争の原理に基づいた生き方ではなくて、足りない相手に対しては補ってあげるとかという、ともに生きていく、豊かな人は貧しい人に対して分け合っていくという共生社会というのが沖縄の伝統的な社会でございます。  それと同時に、何よりも平和を大事にしていくというのが沖縄の社会でございますが、そういう観点からしますと、今の郵便事業というのは、これは経済的な面でいう事業というよりか生活文化のもう一つになっているわけですね。非常に重要な側面を持っているわけなんですね。詳しいことを申し上げると時間がありませんので、沖縄の郵便事情については御理解していらっしゃると思いますが、そういう状況の中で、私は人間としての生き方を考える場合に何が本当に幸せか。  つまり、経済、経済の発展だけというものが本当に人間の幸せに結び付くかというと、先ほど午前中もちょっと申し上げたんですが、例えばお金が欲しいために心を売ってしまって、軍事、戦争と結び付く軍事基地を誘致するとか、そういうことをやってしまうわけなんですね。そうしますと、果たしてそこに住んでいる人たちが安心して生活できるかというと、日常的に命を落とす危険にさらされているという不安感におびえ切っているわけなんですね。  ですから、そういう面から、やはり郵便の問題という非常にささやかな、国際的な観点から見れば小さなことのように見えるかもしれませんが、先ほど申しておりましたように、一つの心のよりどころみたいな、安心感のよりどころみたいな面があると思いますが、その辺についてどうお考えなのか、お聞かせください。
  146. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 沖縄が本土復帰する三年前に初めて沖縄に行きまして、大田先生にいろいろ教えてもらいまして以降、もう三十七年も折に触れいろいろ教えていただいておりますので、言われたこと、身にしみること幾つかございます。  ただ、私が投資社会と申し上げたのは、ぎすぎすした金目の社会にしろと言っているのではなくて、たとえ我々が毎月ぴいぴいいった生活していても、働いているときに拠出したものに、退職後はそれに依存して生活せざるを得ないわけですね。職場を離れてから我々はやっぱり二十年とか二十五年もう皆さん想定されていますから、それは国が年金のお金運用するのであれ、あるいは私的な年金であれ、形としては勤労時に拠出したものをその後二十年、二十五年使うわけですから、この拠出した時期と給付を受ける時期が差がございますから、これは言葉としてはやっぱり投資社会と言わざるを得ない。そして、拠出したものが積極的な意味を持って十分な収穫を持ったものとして出てくれば我々は給付時にそれを受け取ることができると。それは沖縄の人々、沖縄の住民の人々だって同じことでございまして、その年金という、年金会計が事後的に見て本当に豊かなものになれるかどうかは、日本に投資社会が成立しているかどうか、投資社会のインフラができているかどうかということかと思います。  知事時代御尽力されたので、例えば名護の金融サービスにかかわる幾つかの措置をいろいろ工夫されましたけれども、どうやら、まだ不十分だとは思いますけれども、正に投資社会のありようの中で、東アジアの中で少しは動き出す気配もあるように思っておりますので、そういう意味では投資社会の流れの中で沖縄の明日の設計も一つ一つ動き出しているのではないかと思います。  郵便について御指摘がございました。  確かに我々、幾らダイレクトメールが増えた時代でも、受け取った手紙に心を洗われる思いがするということは今日に至るまで変わっておりません。しかし、今回の民営化関連法案でも郵便が着かないということは想定してないわけでして、郵便は届けますと、必ず届けますということを言っているわけですから、郵便制度の骨格が何か変わるわけではないと私は思っています。ただ、郵便局の配置についてはいろんなことはあるのではないかと。ですから、郵便局郵便とは一応これからは区別して議論していく、基本はですね、区別して議論していくことになるのではないかというふうに私は理解しております。
  147. 大田昌秀

    大田昌秀君 深尾参考人にお願いいたします。  実は、この郵政民営化につきましては、全国からいろんな手紙とかはがきとかその他の手段でのメールが届いておりますけれども、かつてないほど多くの方から、これは我々の生活を破壊するものだから廃案にしてほしいという、そういう趣旨のことが書かれております。  世論調査を見ますと、NHKの六月の十三日付けを見ますと、七一%がこれに反対か慎重審議をしてほしいと、それから読売新聞の六月十四日付けを見ますと、七六・五%が同じように慎重審議若しくは反対と言っております。それから、東京新聞の六月の二十一日付けを見ますと、七二%が、七二・一%が反対若しくは慎重審議ということを言っています。それから、都道府県の、四十七都道府県の約半数が反対若しくは慎重審議を唱えているし、市町村議会の九〇%が反対それから慎重審議ということを要請することをしておりますが、なぜこのように多くの議会とか一般の人たちが今の郵政民営化について反対若しくは慎重にしてほしいということを要請するとお考えでしょうか。
  148. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) 一つは、どういう形で変わるかよく分かっていないといいますか、PR不足の部分は私はあるんだろうというふうに思っております。  つまり、相当程度従来のサービスを維持するための仕組みは入れてあって、その中で株式会社の形に変えていくことによって民間の企業や金融機関との競争条件を同じにしていく方向に動かしていくわけです。そうしますと、当然、従来の税金が掛からなかったとか軽減されていた部分、あるいは預金保険料が掛かっていない、これだけで、郵貯だけで二千億あるわけですが、こういった部分がやっぱり民間並みの負担になっていくということ。これに伴ってもちろんある程度の合理化は要るわけでして、その場合のコストのカットということはやっぱり出てくる。その場合にどうなるかということの不安感というのは多分あるんだろうと思います。  ただ同時に、むやみに心配しているという部分も私は相当程度あるというふうに思っておりまして、現在の郵便局のネットワーク自身は相当程度の価値があるというふうに思っておりますので、それをうまく従来の制約に縛られないでいろんなビジネスをやっていく、あるいは行政サービスを引き受けていく、あるいは民間金融機関からの代理店サービスなんかを受け入れていく、こういったことによってむしろサービスなり選択の幅なりが広がっていくというところがまだ見えていない。そこはやっぱり実際に動かしてみないと見えないという部分があるんでしょうけれども、そういうところがあるんだろうと思います。  例えば、郵便局しかないのでそこが簡保郵貯をやっている、これがなくなるのは困る。それは分かるわけですが、逆に、郵便局簡保あるいは郵貯以外の金融機関のサービスも全部提供できるようになっていけば、これはむしろ選択が広がって、より便利になるわけですね。そうすると、例えば金融コンビニとして使えたりするわけです。  そういうようなことを考えていけば、私は、とにかく従来のサービスでいいのだから絶対動かすなと言って、それに実際表には見えないような形ですけれども、一人六千円ぐらいのコストを掛けている。これをしっかり見直していって、コストを下げながらサービスも更に充実していく。このときに、もしも例えば本当に困るようなところの郵便局がたくさんなくなってしまうということがあれば、それは民営化委員会なり国会の方でチェックをするなり何らかの維持義務を課すというようなことは、それはあり得るわけですから、そのときの移行期間がそのために置いてある。  ただ、移行期間としてはやっぱり十年というのは余りに長過ぎて、もう少し短い期間で十分だというふうに私は思っておりますけれども、その中での見直しという制度もやっぱり中に入っているんだというふうに思っております。
  149. 大田昌秀

    大田昌秀君 恐縮ですが、深尾参考人にもう一問だけお願いいたします。  小泉総理は国会答弁等で、郵政民営化によって身近にある郵便局がなくなってしまうのではないかと心配する声があるが、国鉄や電電公社民営化されて鉄道や電話がなくなったでしょうか、そんなことはないと強調なさっています。  しかし、国鉄民営化時点に廃止された旧国鉄の路線は四十五線、千八百四十六・五キロ、第三セクターに転換した路線は三十八線、千三百十・七キロ、民営化後に廃止された路線は、主なものだけで五線の百九十八・五キロとなっており、廃止ないしは第三セクターとなったのは計三千三百五十九・七キロに上ります。これは、旧国鉄総路線二万二千四百六十キロの一四・九%に当たります。  電電公社民営化では、公衆電話の台数は一九八五年に九十万九千五百七十台あったのですが、二〇〇四年はNTT東日本、同西日本合わせて四十四万二千三百十二台と半分以下に減っています。しかも、公衆電話の電話料金は一通話三分十円が一分十円の、三倍になりました。したがって、街角で気軽に公衆電話を利用できなくなっております。また、電話番号問い合わせは無料だったのが、現在、一案内六十円が掛かり、電報の受付は二十四時間だったのが午前八時から午後十時までになりました。  こういうふうに、民営化は確実に利用者へのサービスを低下させている実態があるわけですが、これについてはどうお考えでしょうか。
  150. 深尾光洋

    参考人(深尾光洋君) いわゆる廃止されたローカル線を全部保護する、あるいは郵便、公衆電話を全部維持するために一番簡単な方法は、自動車に一杯税金を掛けて使用を制限するかですね、あるいは携帯電話にこれまたうんと税金を掛けて高くすればこれは維持できるんだと思います。しかし、やっぱり便利なものが出てくるとやっぱりみんなはそちらへ行くわけでして、大抵の人は自動車を使う、もちろん、自動車を使うなりあるいは携帯電話を使う、こういうことになっていくわけです。  そうしますと、電車をそのまま、電車をそのまま維持するのが安いのか、それとも、例えば公共のバスを使うなりあるいは簡易な自動車サービスを入れるなりですね、乗り合いの路線を決めないバスを入れるなり、いろんな形でのその代替的なものが使われるようになってきているんだと思います。  ですから、これは従来なかったサービスが新たに出てきたことによって、古いサービスが使い勝手が悪いのでみんな使わなくなってこれがなくなってきたんだ。これは、やはり世の中が変わっていく上ではやむを得ない。  この中で、じゃその、それで落ちる人をどう保護するかですけれども、これは保護するときのコストの掛け方ということになるかと思います。ですから、本当に電車を毎日何便も走らせるのが本当に安いのか、本当に困る人だけにタクシー代を補助する方が安いのか、これの、ということになるかというふうに思います。
  151. 大田昌秀

    大田昌秀君 あと一問、田中参考人にお願いいたします。  郵政民営化するという今回の改革の目的、ねらいは本当のところは何なのか、また、民営化を急ぐ背景には一体どんな事情があるのかという疑問が絶えず提起されております。  と申しますのは、経済評論家の間では、米国の金融・財政問題と関連しているのではないかとの指摘があります。もっと率直に言わしていただきますと、郵貯簡保の資産三百五十兆円の開放を米国の金融資本がねらっているのではないかという見方さえ出ています。  ちなみに、経済学者の吉川元忠神奈川大学教授は、その著「マネー敗戦」の中で、日本のアメリカ国債購入総額は、一九七六年の一億九千七百万ドルから、十年後の八六年四月には一千三百八十億ドルに達し、日本の八五年一年間の対外投資額八百十億ドルのうち五百三十五億ドルが債券投資、特にアメリカ国債に向けられたと経緯を説明した上で、二〇一〇年にはそのアメリカ国債の二十年か三十年物国債の償還期を迎えるが、償還ではなくドル債の乗換えとなって、日本は国富が米国へ流出する構造から抜けられなくなるのではないかと指摘しています。  つまり、ドル債の乗換えの原資に郵貯簡保の資産が活用されかねないという懸念があるわけですが、これについてどうお考えですか。
  152. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 郵貯簡保お金を持ち込んだ日本国民郵貯簡保に置いているのであって、郵貯簡保の会計がこれを勝手に動かせるものではそもそもないわけです。  ですから、例えば現実に定額貯金について言うならば、六か月をたったものは解約自由ですから、あれは、あそこに置いたものは国民自身のものなわけです。ですから、国民自身がもし、その今後の民営化した郵便貯金銀行の推移について心穏やかならざるものがもしあるということになりましたら、手段はもう簡単です、引き出せばいい。それは、人のものでなくて自分のものなんですから。  ですから、それはもう明快、明確なことでございまして、これが何か特定の外国の勢力との関係でできているというふうに言うのは、私は取って付けた議論ではないかというふうに思います。少なくとも私が、私はまあ郵政事業民営化をすべきだと議論していましたけれども、それは何も米国の金融的利害とかなんとかではなくて、今日、何度か説明させていただきましたけれども、日本に投資社会のインフラをつくるためにはこれは避けて通れないことだということから申し上げているわけでして、もし私の議論、まあ多分、先生がそう言われるんですから私の議論に説得力がないんでしょうけれども、でも分かっていただける方もあるのではないかと期待いたしております。
  153. 大田昌秀

    大田昌秀君 ありがとうございました。  終わります。
  154. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 以上で田中参考人、稲葉参考人、深尾参考人、松島参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  暫時休憩いたします。    午後三時四十六分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕