○広田一君 私は、
民主党・
新緑風会を代表しまして、
政府提出の
平成十七年度における
財政運営のための公債の発行の
特例等に関する
法律案及び
所得税法等の一部を改正する
法律案に対し、反対の立場で討論をいたします。
まず、いわゆる
特例公債
法案に反対する
理由を申し上げます。
第一に、この
法案は、
政府のこれまでの
財政運営の失敗に対する反省もないまま、将来
世代に赤字をツケ回す象徴的な
法案であります。
政府は、四年ぶりに国債発行額を縮減したと強調しています。しかし、その主な要因は、民間の自助努力により生じた税収の増加のおかげであることは言うまでもありません。また、三年ぶりの一般歳出の削減ができたのも、税源移譲や単なるスリム化に伴う地方への国庫補助負担金の大幅な減額によるものであります。つまり、今回の国債発行額の縮減や一般歳出削減は、民間と地方頼みの結果であり、国自らの歳出削減努力の
成果とは到底言えません。
第二に、この
法案が、昨年年金不信をもたらした年金保険料の年金事務費への流用を実行しようとしていることであります。
国民の皆さんは、自分たちが納めた年金の保険料の流用について大きな不信と不満を持っています。このことを払拭できないまま、その後も
社会保険庁に関する不祥事は後を絶ちません。与党からも解体論が出ているほどです。
私たちは、まず、時限的
措置として始められたこの
特例措置をやめて、
制度本来の姿に戻して、事務費を全額国庫負担とすることを強く主張します。つまり、給付以外に保険料は使わない、この原点に立ち返ることが、今や地に落ちた年金
制度に対する信頼を取り戻す初めの一歩であります。
無論、保険料であれ税金であれ、
国民の皆さんからお預かりした大切なお金には変わりありません。その意味で、今後とも私たちは
国民の目線に立って無駄遣いを排し、事務費使用の適正化に取り組んでまいります。
次に、
所得税法等の改正案について、反対する
理由を申し上げます。
第一に、本
法案の
提出の仕方に問題がございます。
景気判断など十分かつ慎重な審議を要する所得税の定率減税の縮減と他の税制改正案をいわゆる日切れ
法案等として一緒に
提出することにより、中には
中小企業関係の税制改正や教育訓練費の税額控除
制度の創設など
評価すべき
法律案もありながら、
建設的な議論や判断を妨げたことを
政府は深く反省すべきです。
第二に、所得税の定率減税の縮減については時期尚早と言わざるを得ません。
なぜなら、多くの
国民の皆さんが抱く、家計に負担を求めるのならば所得の裏付けが必要ではないかという素朴な疑問にすら
政府は正面から答えていないからです。
私たちが反対をする最大の
理由の
一つが、まさしく私たちと
政府との
景気認識の違いです。
政府は、
平成十一年度の定率減税導入時期と比べて、
我が国の
経済は著しく好転しているとしています。確かに、
企業部門だけを見れば、経常利益や
設備投資の増加など改善している面もございます。
しかし、所得税増税の影響を直接受ける家計部門はそうではありません。特に、今回の増税では、子育て
世代や中堅所得層の
負担増が他の層と比べて大きいと言われています。これらの層も含めて、定率減税導入時期と比較しましても、年収に当たる民間給与所得者の現金給与総額は下がり続けているなど、厳しい
状況にございます。その上に、配偶者特別控除の一部廃止、年金保険料、
雇用保険料の引上げなど、一連の
負担増がのし掛かっています。
また、先ほど中川大臣からもございましたように、地方の
現場を歩き実際にお話を聞きますと、
景気が良くなっているなんてとんでもないという答えが返ってまいります。そして、それを裏付けるように、最新の統計によれば、各都道府県内の総生産や住民所得が対前年度比でマイナスになっている自治体が続出をしております。特に、人口集積が小さく
産業基盤の弱い地方の
地域経済の疲弊は深刻であります。
さらに、
回復をしていると言われている
企業部門も、先ほど我が会派の
加藤議員から
指摘がございましたように、大
企業と中小零細
企業とでは大きな格差が生じ、問題化しているのは皆さん御承知のとおりです。当面の
景気も、いまだデフレが続き、
個人消費の低迷が依然として続いているなど、各種
経済指標は先行きの不透明さを示しています。
このような
状況での定率減税の縮減は、
景気に冷や水を浴びせることになりかねません。その結果、
景気後退をもたらし税収減となれば、
財政再建にかえってマイナスになることを強く懸念いたします。
以上の
理由から、現時点での定率減税の縮減は明らかに時期尚早であり、即時撤回すべきであります。
これらに対し、
民主党・
新緑風会の修正案は次の項目から成り立っておりました。
第一に、これまで申し上げたとおり、定率減税縮減に関する規定の削除であります。
また、
政府は、縮減により生じる財源を基礎年金国庫負担金の引上げの一部に充てるとしています。
これに対し、私たちは、
国民の皆さんの年金に対する強い不信などを考えれば、まず徹底した歳出削減により必要な経費を賄う努力をすることが筋であると考えます。
第二に、NPO
支援税制の
拡充であります。
NPOは、公共
サービスを提供する非営利の民間
組織として、二十一世紀の「この国のかたち」をつくるためには必要不可欠なセクターであります。しかし、現在は約二万に及ぶ認証NPOが活動している一方で、寄附金が所得控除される認定NPOはわずか三十団体であります。毎年、NPO
支援税制は改正されますが、小手先の
支援にとどまっています。
それに対し、私たちは、パブリックサポートテストや活動要件など認定NPO要件を大幅に緩和すると同時に、個人寄附金などの控除を
拡充し、NPOに対する寄附を飛躍的に
促進させます。これによって、これから社会を支え、担う第三のセクターにふさわしい環境整備を進めてまいります。
第三に、ローン利子控除に関する規定の新設であります。
これは、所得控除の
対象を、住宅ローンのみならず、自動車、教育ローンなどキャッシュローン以外のローン全般に拡大することによって、これらに係る金利分をおおむねすべて所得から控除することができるようにいたします。このことによって、低迷する
個人消費を刺激して内需拡大を図ろうとするのが私たちの考えであります。
最後に、今多くの皆さんは様々な不安を抱えております。この国はどこに向かうのか。私たちの生活はどうなるのか。子供たちの未来は大丈夫なのか。本当にこのままで、今のままで、私たちは次の
世代に自信と誇りと安心を持って今の社会、世の中を引き渡すことができるのでしょうか。このことを自問自答したときに、私たちに課せられた責任は大変重いものがございます。
その責任を果たすためには、今
政府が進めるような先の見えない場当たり的な
負担増や赤字のツケ回しではなく、しっかりとした
財政健全化のビジョンに基づいて、そしてそれを裏付ける納税者の視点に立った税制改革が必要であります。
このことを強く強く
国民の皆さんに訴えて、私の討論を終わります。ありがとうございました。(
拍手)