○水岡俊一君
民主党の水岡俊一でございます。
私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました国の
補助金等の整理及び
合理化等に伴う義
務教育費国庫負担法等の一部を改正する
法律案について
質問をいたします。
まず、
質問に入る前に一言申し上げます。
衆議院文部科学委員会にあってはならないことが起こりました。義務教育の根幹にかかわる義務教育費国庫
負担制度に関して審議をしているさなか、自民党は、参考人招致をめぐって、
民主党が推薦した参考人を拒否し、委員長が職権で参考人質疑を中止するという前代未聞の暴挙を行いました。
民主党は、重要
案件であり、参考人の意見を聴き、審議をすることを強く求めましたが、受け入れられませんでした。よって、この場において断固抗議をするものであります。
去る二月の十四日、大阪府寝屋川市立中央小学校において、学校を訪れた卒業生により一人の教員が殺され、二人の教職員が重傷を負わされるという、本当に痛ましく悲しい
事件が起こりました。亡くなられた鴨崎教諭に心から哀悼の意をささげるとともに、重傷を負われた二人の教職員の一刻も早い回復を願うものです。
子供にとって何よりも安心、安全でなければならない学校や幼稚園、保育所において、またしても殺傷
事件が起こったことは極めて残念でなりません。四年前の大阪教育大附属池田小学校の
事件を始め、近年、学校などにおいて幾つもの殺傷
事件が起きている中、文部科学省は、多少の防犯装置や
施設の補助は行っているものの、
基本的には通達や手引書を出すだけといった通達行政にとどまり、義務教育を行う学校における
安全確保は国の責任でもあるという姿勢を示してはいません。
学校などにおいて外来者に
対応するためには、校長や教頭などの
管理職だけでは手が足らず、専ら子供たちの教育に携わる教職員にもその余裕は全くありません。たとえ監視カメラを設置したとしても、モニター画面を常時チェックする
体制は今の学校現場にはありません。そもそも、教職員に外来者との
対応は本来の職務にないはずであります。
今や、専門の保安職員を配置するなどして、不審な外来者に対し
対応するといった方途がどうしても必要であると
考えられます。
大臣は、さきの
予算委員会において、私の
質問に対し、学校の巡視等に保護者や
地域住民のボランティアを活用するも
一つとの御
答弁がありました。刃物を隠し持っているかもしれない不審者への
対応をボランティアにゆだねるという発想は全く
理解ができません。私は、さらに、ボランティアにもしものことがあったらどうするのですかとお尋ねしたところ、それに対し、保険を掛けて
協力してもらっているところもあるとの大臣の御
答弁。何たる理不尽なお答え。人の命の尊さを軽視し、
危機管理の
課題に対して全くの無策であることを物語るもので、耳を疑ったのは私だけではありません。
文部科学大臣、もう一度聞かせてください。
義務教育を行う学校において、掛け替えのない子供たちや教職員の命を守り、安全で安心して生活できるよう、国としての責任、義務教育費国庫
負担制度の精神として学校の保安要員等を配置するお
考えはないのか、また、学校の総合的防犯安全対策として学校安全法を
策定する予定がないのか、お尋ねします。
OECD、経済
協力開発機構によるPISA、学習到達度調査の結果、そしてIEA、
国際教育到達度評価学会の調査結果が大変話題を呼んでいます。
日本の子供たちの順位が落ちたことにより、文部科学大臣は学力低下を声高に叫ばれ、そしてマスコミがそれを積極的に取り上げることを利用し、競い合う心、切磋琢磨する精神等々を強調しながら、学力テストの
実施や総合的な学習の
見直し、土曜日の授業復活などの
発言を繰り返しておられます。
PISA調査の
目的は、二十一世紀を生き抜くための道具としての
能力を測ることであり、状況を分析し、推論し、
自分の
考えを持って意思疎通することができるか、また生涯を通しての学習を継続できる
能力を身に付けているかを調べることだと言われています。そのことを、大臣、あなたは御存じでしょうか。
そしてOECDは、一九八〇年代、数学でトップを取っていた
日本や韓国の子供たちの知識は
変化が激しいこれからの社会に果たして役立つかどうか分からないと批判し、試行錯誤をしながら、新しい学力観に基づいた調査へと設問を変えてきたのです。そのPISAの新しい学力観による調査で順位を落とした
日本の子供たちの結果が示しているものは、従来の暗記・詰め込み型から生きる力の習得への転換といった、思考力や判断力、問題解決
能力を育てることが最も重要であり、正にゆとりの中でじっくり
考えさせる教育や総合的な学習を求めていくべきだという
方向性にほかなりません。そのことを、文部科学大臣、あなたがだれにも増して強く訴えるべきだと思いますが、
いかがですか。
かつて文部科学省は、PISA調査結果が示す
日本の子供たちの学力に
危機感を持ち、いち早く、生きる力に視点を当て、大変な勇気を持ってゆとり教育の必要性を説き、総合的な学習を勧めてきたではないですか。その結果、学校現場は、特別な教員の配置もなく、テキストもないまま、戸惑い、悩みました。しかし、全国の教職員たちは、文部科学省の
考えを
理解するよう努め、懸命に
努力をしてきたわけです。今、ようやく総合的な学習も定着し掛けており、取組の成果が芽を出そうというこのときに、先祖返りとも言える
方針転換は愚の骨頂であります。
今、全国の学校現場では大変な混乱が起こっています。学習指導要領の
見直し内容がまだ示されないうちに、ゆとり教育や総合的な学習の
見直しを大臣が一方的に押し付けるかのように
発言されるからであります。来年度の教育課程編成を行っている学校現場は大混乱です。
一体何を根拠に教育課程を編成すればいいのか、羅針盤を失った船のようです。ここで、是非とも
日本の文部行政のトップリーダーとして、目先にとらわれず、冷静で的確なメッセージを示していただきたいと思います。
ところで、PISAの結果で総合一位に輝いた国はどこだか、もちろん大臣は御存じだと思いますが、フィンランドです。
日本は、順位が下がったことにより学力が低下をしたとされ、さあ、
世界のトップの座を取り戻せとばかり、ハッパが掛けられています。そこで、学力を向上させるためには、PISAの調査で連続一位となったフィンランドに注目し、その方法を学ぼうとするのが当然の
考え方です。
ところが、不思議なことに、そのような話は一切出てきません。なぜなら、一位のフィンランドの学校では、授業時間数が少ない、習熟度別学級もない、序列をつくるためのテストや競争もなく、有名校への進学熱や学力の二極分化のエリート教育もない、そして大学までほとんど無償という実情があるからです。つまり、フィンランドの教育は、大臣の言われる
方向、
政府が導こうとする
方向と百八十度まるで反対を示しているからであります。
更に付け加えるならば、教育費における公の財政支出のGDP比は、二〇〇一年のOECD統計によると、
世界最低の
日本三・五%に対し、フィンランドは五・七%と教育にお金を掛ける国であるからです。
フィンランドの教育になぜ学ぼうとしないのか、改めて文部科学大臣の
見解をお聞きいたします。
現代の若者の
変化、とりわけニートと呼ばれる若者の増加、度重なる学校の内外での殺傷
事件などに何とか
対応していきたいという思いの余り、十分な検証作業もしないまま、わらをもつかむ思いで、PISAの結果を読み違え、かつての詰め込み教育に逆戻りというのでは余りにもお粗末であります。完全なミスリードと断言できます。
教員が悪い、親が悪い、挙げ句の果てに日教組が悪いなどと、いたずらにだれかの責任にして非難していれば教育行政の最高責任者の仕事が果たせると思っておられるなら、言語道断、全くの責任転嫁と言わざるを得ません。
今、全国の義務教育を行う学校の教職員と保護者に対し、文部科学大臣の高い見識を披瀝し、文部科学省の義務教育に懸ける熱い思いを科学的、実証的な根拠とともに示すことができるかが、文部科学大臣、あなたの責任なのではないでしょうか。大臣、
いかがお
考えですか。
近年、学力低下が叫ばれる中において、受験産業の予備校や塾はかつての繁盛ぶりを示しています。当然ながら、家計における教育費の増大を招き、同時に親の階層格差を拡大しています。例えば、年収四百万円以下の低所得世帯の年間教育費は約百五十八万円で、家計の半分近くも占めているのに、年収一千万円以上の裕福な世帯では、家計の四分の一ではありますが、約二百四十二万円と、そこには教育費の大きな格差が生まれています。言い換えれば、親の経済状態の格差が子供の教育に大きく
影響しているわけです。
また、全国の小中学校の図書費や教材費などは、一定の基準に基づき地方交付税交付金に算入されて、都道府県、市町村を通じて各学校に配分されているわけですが、文部科学大臣御
自身が
発言されているように、現実には各学校に配分されている図書費や教材費は基準に満たないケースが多く、十分に
措置されている学校とそうでない学校との格差は、各市町村や各都道府県によって大きく広がっています。言い換えれば、地方自治体の財政状態の格差が、これまた子供たちの教育に大きく
影響しているわけです。
しかし、
憲法第二十六条、教育を受ける権利、教育の機会均等、第二項に義務教育の無償がうたわれ、教育
基本法第三条に「すべて
国民は、ひとしく、その
能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。」と明確に示されています。また、教育
基本法第十条第二項には、教育行政の
任務は教育条件の
整備義務にあるとうたわれております。
このように、
憲法、教育
基本法の精神に基づいて
考えてみると、今日の教育の格差問題がゆゆしき
事態であることは、だれの目にも明らかです。国の責任としてこれまで掲げてきた義務教育費国庫
負担の
考え方が現実的に
機能しているのか再
検討すべきだと
考えますが、総務大臣、文部科学大臣のお
考えを示してください。
今、この改正法案によって、更に義務教育費国庫
負担の本来の意義が大きく揺らいでいます。地方分権の名の下、財政再建の単なる数字合わせに巻き込まれ、教員の給与費の一部を
負担金削減の中に盛り込むような今次の改正案には、断じて賛成しかねるというのが私たちの立場であります。
暫定的に四千二百五十億円を一般財源化するという案は、表向きには中教審の
見解を待つというポーズですが、
小泉総理は次のように述べています。義務教育の国庫
負担金の中学校にかかわる
部分、地方にその権限を渡してもいいということで、今後のことについては中教審等の意見を踏まえて
協議していく。一方、麻生総務大臣は、地方の改革案が適切に生かされる形で中教審の
結論が導かれると
考えていると
答弁しています。そして、中山文部科学大臣は、今回の暫定
措置は中教審の今後の
検討を制約するものではないと述べています。
このように、
小泉総理、麻生総務大臣、中山文部科学大臣の
答弁がばらばらになっており、正に内閣不一致と言わざるを得ません。官房長官、内閣としての統一
見解をここで明らかにしていただきたい。
最後に、義務教育を国の責任として、子供の教育を受ける権利を保障し、そのために教育の機会均等を図る
観点から、この改正法案にどのような
意味があるのか、文部科学大臣にお尋ねを申し上げ、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣中山成彬君
登壇、
拍手〕