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脇雅史君 お聞きになっていて、至極もっともだと
皆さんお
思いになっているかもしれませんが、私、少し足りない点があると思う。
この
発注者の責任というのは、
大臣が言われたことは正にそのとおりなんです。これは間違いない。それだけでは足りないんですね。今だけ良けりゃいいんじゃないんです、将来までそういうことが継続できなければいけない。
大臣の言われたのは、どっちかっていうと
税金を払っている
国民の目から見た視点が非常に強い。これはもう当然、当たり前なんですが。
ところが、この
世界というのは、
公共事業で
仕事をする人たち、
税金を実際
道路に変えたりダムに変えたりしなくちゃいけない
仕事というのは厳然としてずっとあるんですね。その人たちの立場はどうなんですかと。できるだけ安けりゃいいとはおっしゃった。
税金払っている立場からしたら、そうでしょう。でも、もうぎりぎりたたかれてたたかれて、百姓は生かさぬように殺さぬようにではありませんが、徹底的にたたかれたら業界の力はどんどん落ちていって、そのうち死んでしまう。そうしたら、肝心の
仕事を出したくても相手がいなくなっちゃうという事態が将来生じるかもしれない。だから、今だけ良かったらいいんじゃない、安けりゃいいんじゃないんです。業界が適正な利潤で健全に将来も続いていくということが、
発注者は見なけりゃいけないんです、ほかにいないんだから。
一般
市場があればいいですよ。
公共事業の
市場の特殊性というのは、その
市場規模、
マーケットの
市場規模をだれが決めるか。
市場原理には関係ない
役人、
役人というか
政治家、政治が決めるんですよ、毎年予算で。これだけだよと、おまえら、あとやりなさいよというのは、与えられたものとして業界は受け取るしかないんです。業界は幾ら
努力しても
市場は広げられない。民間建設、建築
市場があれば別ですよ。そういう非常に特殊な
世界なんです。だから、生かすも殺すも
発注者次第。
発注者が、健全な業界が将来も行くように見なかったらだれが見るかという部分があるんです。
また、護送船団といって、そんなことやったら悪いことだというふうにお
思いの方が多いかもしれませんが、それがこの
世界の非常に特殊な部分なんですね。だから、納税者の目だけではなくて、
仕事をする人の目、そして実際に
発注の
仕事をする人、この三者がみんな良くならなければいけない。今だけ良かったらいいんじゃない、将来もずっと良くなる。そして、そのことが
国民に納得されるやり方でなければいけない。つまり、情報をきちっと公開をして評価をしていただく、そのことが大事なんで、
大臣の言われたことは、業界がきちっと健全に将来も存続し得るという部分、その部分に
公共事業の
発注者は非常に重たい責任を負っているんだということが抜けていたように私には聞こえました。そのことは非常に大事な視点なんです。癒着しろと言っているんじゃないんです。建設業というのはそういう
仕事なんです。
これはまた
誤解されるんですが、特に実業界の方によく言われるんです。建設業というのはいいよなと、何も
自分で
努力しなくてもいいんだもんなと、景気悪くなったら
役所にお願いして、陳情して
仕事もらえばいいんだから
税金で食っているんだよなと、おれら
税金にたかれないもんなと、こう言うんですよ。これまた非常にそうだなと思うんですが、実はそうじゃない。実はそうじゃない。
なぜかというと、景気が良かろうと悪かろうと、この業界はその
税金で出てきた大事な
お金をきちっといいものに変える、その
仕事をしているんですよ、元々。元々そういう
仕事なんです。景気良かろうが悪かろうが関係ない。それは、いまだかつて、あるときにどっと
仕事出して、あるとき、ないぞと、おまえら勝手にしろというのは非常に無責任なんです。だから、
仕事の出し方も、景気がいいから、予算があるから一杯
仕事出すなんということは本来しちゃいけないんです。業界のことを考えて、やれる範囲で出すという配慮が要るんです。そのことが非常に欠けていて、お上意識というのは、おれが出した
仕事を忙しくてやれねえと、ふざけるなと、おまえなんかもう二度と来るなというようなことを言うわけですよ。どんなに忙しく働いている
会社であろうと、お上が
仕事を出したら必ずやれと、そうなっているんです。そこに大きな間違いがある、あったんだと私は思うんです。このこともまたこの
談合をめぐる一連の評価の中で非常に大きな
誤解といいましょうか、一つだと私は思っております。
それから、
独禁法で言えば、これまた面白い話なんですが、
独禁法がいろんな規制をする。なぜ規制するか。なぜ規制するか。独占資本が
消費者に悪いことをすることを規制するんですよ。
消費者保護なんです。大体、うんと
お金持って
市場を支配できるようになると好き勝手やり出すから、それを
消費者のためにきちっと守ろうというのが
独禁法なんですよ。だから、強い人を規制するんですよ、当たり前でしょう。弱い人を規制してしようがないんだから。
その辺、地方の建設業の立場に立つとどうなるか。もうほとんど青息吐息、死にそうだと。何とか
仕事取ると、
独禁法違反だといって捕まえられたと。脇先生、何とかしてくださいと。私は独占資本でも何でもないし、強者でも何でもないでしょうと、こうなるわけ。圧倒的にこの
市場の違うところ、
公共事業の
市場の違うところは、だれが強い者でだれが弱い者かという本来の
市場の弱者と強者が入れ替わっている。普通は
生産者側が強いんです。
消費者側が弱い。だから、
消費者保護で
独禁法の
意味がある。
ところが、この
公共事業の分野というのは、強いのは圧倒的に
発注者なんです。さっきもちょっと申し上げましたが、おれが出した
仕事が受けられねえのかと、ふざけるなという人もいれば、もう
本当にね。しかも、
発注者というのは
税金を預かって
仕事をしているんだから、
国民に損をしちゃいけない非常に大事な
仕事だという自意識もある。そして、
自分で自ら
法律を作って、どんなことがあっても
自分は損しないように様々な補償
制度もつくって、補償金はおまえら払えよというんで
建設業者に払わしているんです。何があっても損しない。それはまあ当たり前だ、
国民の
皆さんの
税金を預かっているんだからやりますよと。つまり、この
公共事業の分野では、
独禁法は守らなくても、自ら
発注者というのは
消費者の保護を完璧にこなせる完全な買手
市場になっているわけ。
そこへもってきて、何でまた
独禁法で
消費者保護の
法律ということで
発注者の国や県を保護しなくちゃいけないんでしょうかと。おかしいんですよね。どう考えたっておかしい、弱いんだから。弱い者を規制して強い者を守ってどうするんだと、話が逆じゃないか。
私は、何ぼ考えても分からないから、
独禁法の改正案のときに何度も申し上げたんです。
公正取引委員会、誠に失礼な物言いで恐縮でありますが、
独禁法を幾ら強化しようとも、この
市場を適正に運用することには、百害あって一利なしだというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういう
言い方を何度も何度もして、
発言するたびに、またあのやろう、
市場だの何だの訳の分からないことを言っているというふうに嫌がられたかもしれませんが、最後は大分御理解いただいたように思う。当たり前なんです、それが
本当なんだから。弱い者をいじめて強い者を保護して、世の中どうするんだと、こんなもので良くなるわけない。それだけ、この
公共事業の
マーケットというのは、ちょっと考えてみれば不思議なものなんです。
本当は、どういうことかというと、そもそも
公共事業は
税金を使って
仕事をする。
道路を造る、ダムを造るという
仕事は、本来公的な立場でやる部分だったんです、元々。つまり、歴史を見れば、建設省は直営という施工で自らやっていた。自らやれないからやれる人をどんどん増やしてアウトソーシングしていきましょうと。つまり、
税金を物に変えるというのは公的サービスだった、自らそれをやっていた。
人間も足りなくなったから自らできない、そして民間事業が一杯できてきたから、もう
マーケットらしいものが建設業にもできてきたから、だったら
市場原理を使って、働かせて動かそうということで、それをアウトソーシングしてきたのが今の
世界。元々、公的サービスなんですね。その部分を忘れちゃいけない。
もちろん、今、
市場原理をできるだけ働かせて、そして
競争をきちっとさせて、一生懸命
努力する者が報われる社会をつくる、これ大事なことなんだ。だから、今の世代で昔へ戻って建設業は全部公的サービスだなんて思う必要はない。だから、歴史的に見ればそうなんだけれども、今や
会社が一杯立派に育ったから、そこに
本当の
市場原理を働かせてうまく機能させるという
工夫が要るんです。
そこで、さっきの
発注者責任で一番の
誤解が何かというと、今そこに座っている
発注者の方々、まあ私もかつてそうだったんだけれども、ある
仕事を出して、こういう
仕事を
皆さんやってくれませんかというときに、こう見て、いや、この
会社が一番ちゃんとやってくれそうだなと、今空いているし、一番いいやと、この人に頼みたいなと思っても、それを口にしたらいけないですね。
発注者がこの人にやってほしいと言ったら、官製
談合、とんでもないと、癒着だとなるんです。中には癒着した人もいるかもしれぬから、それはきちっと罰すればいいんだけれども、だれがいいぞということをそもそも選ぶことが
本当に悪いことなのかと。
普通の
マーケットでいえば、みんな
自分の好きなものを買うんですよ、
自分の
お金で買うときに。おれはサントリーしかウイスキーは飲まぬ、ニッカしか飲まぬという人もいる。好きなものを買う、
自分の責任で、
自分で
お金出すからそれで許されるわけ。ところが、公的なもので、
税金で物買うときにそれは許されない。
自分が好きなもの買っちゃ駄目ですよ。だけれども、後で、
国民の
皆さんから、いやいい
会社を選んでいただいてありがとう、あなたがきちっと選んでくれたからいい
仕事ができたと。きちっと選んで、選ぶ過程を
国民の前に見せて、そして納得させて、いい
会社を選んでくれたと思わせることが
発注者責任なんですよ。それは
市場原理を言う以上、
発注者がいいものを選ばなかったら
市場は動かない。
市場原理というのは、
発注者が、
発注者というか購入者、
消費者、
消費者が選ぶことによって、
消費者に選ばれたものが生き残るのが
市場原理なんです。だから、
公共事業の分野に
市場原理を生かそうと思えば、
公共事業の第一
消費者である
発注者が、これはいいこれは悪いと言わなかったら駄目なんです。それがこの業界の持っている基本的な問題点なんです。そのことをきちっと考えずに、ただ
談合が悪いという表面的なことを幾ら言ったってどうにもなるもんじゃない、うんと掘り下げて考えなくちゃいけない。しかし、そのことは幸い
我が国はみんな大分分かってきた。だから、これから、私は、今まではこんな
談合問題あったけれども、これからは起こらないと信じているわけですが。
そこで、また
国土交通大臣に失礼なことを申し上げて恐縮でありますが、まあ
近藤総裁もそうだけれども、この一連の
談合事件が起きたらどういうパフォーマンスをされたかと。大変だと、大変
国民に対して申し訳ないことをした。それはまあいい。だから、二度と起こらないように原因究明のために
委員会をつくろうと。また
委員会かと、こんなもの何十回やっているんだ、何回やったって今私がこれまで申し上げてきたようなことをきちっと考えなかったら
談合なんかなくならない、何ぼ
委員会つくっても無駄。
そこで、
我が国がどう変わってきたかということを申し上げるわけですが、
猪瀬委員にお尋ねをいたしますが、
委員は
公共工事の
品質確保法というのは御存じでしょうか。