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参考人(
多和田栄治君)
全国公団住宅自
治会協議会代表幹事の多和田でございます。
法案に関連して
意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
今回の法案は、
公営住宅のほか、私が住んでいる公団
住宅も含め、
公的賃貸住宅の今後にかかわっていますので、初めに
居住者の生活実態と
家賃や
建て替え、空き家の現状、自治会活動の様子を私の例を、私の
団地を例に紹介させていただきます。
なお、初めに公団
住宅と言いましたが、
機構は今ではUR
賃貸住宅という言い方をしております。いずれにしろ、正式の名称はないんですから、公団から引き継ぎ、また国民にもなじみのある公団
住宅という言い方をさせていただきたいと思います。時々、公団と
機構を間違えて私が言っちゃう場合もありますが、御容赦ください。
私は、東京国立市に住んでおりますが、国立市の昭和四十年にできた築四十年、二千戸の
団地です。どこの
団地にも共通していますが、
居住者の高齢化とともに小
世帯化、収入低下が進んでいます。
全国公団自治協は、三年ごとに生活実態のアンケート調査をしており、これは三年前の調査結果ですが、私の
団地では
世帯主六十五歳以上が四五%、五十歳以上だと八〇%を占めています。半数が年金生活者です。
世帯数では、二人家族が四〇%、一人が二三%の順で、年々一人住まいが増えています。その上、目立つのが空き家の増大です。今、二百戸の空き家があります。全体で一〇%ですが、増築した住棟では、三百二十戸のうち八〇%、つまり二五%が空き家のままになっております。
家賃が高いせいか、常時募集していますが、応募者は少なく、入居しても定住する人は減少傾向にある。また、ついの住みかとしていた人たちも最近では引っ越す方が目立つようになりました。
団地に活気がなくなるのは理解できますが、
住宅地らしい落ち着き、安定感がとみに失われていくように思われます。
居住者の収入と
家賃ですが、私の場合、当初から入居し、娘たちが巣立って、今は七十歳代の夫婦二人、三Kに一部屋増築した住戸に住んでいます。ライフアップと称する設備改良は全くせず、ほぼ昔のままです。
家賃は
高齢者の特別
措置を受けて月額八万六千百円、ほかに共益費二千六百円を払っております。
団地の
状況は、さきの調査結果によりますと、年収では、所得五分位の第一分位、年収四百六十九万円未満が六四%、第二分位、六百二十五万円未満が一五%、合わせるとほとんどが
公営住宅の入居階層と言えます。言い忘れましたが、私の月収は月二十六万円ですから、
家賃負担率は三四%になっております。
家賃は、一DKから四DKまで住戸によって違いますが、五、六万円台が四四%、それから七万から九万円台が四五%、十万円以上もあります。ちなみに、今年の募集
家賃は、一DK、これは二十八平米未満ですが五万円台、二DK、約四十五平米で八万円前後、四DK、七十平米未満で十二万円となっております。
私の
団地に限らず、
全国多くの
団地の
居住者は似たような生活実態にあります。
家賃額は
住宅の新旧、所在、立地によって多少開きがありますが、収入からいえば
家賃負担がきついことに変わりがありません。ですから、またどこの
団地でも空き家が増えています。
建て替え団地では、戻り入居しても
家賃が高くて払い切れず、また退去を余儀なくされ、そして
建て替え前からの従前
居住者は結局だれもいなくなるという例もあります。
昨年九月の東京多摩公団
住宅自治会協議会の空き家調査では、二十八
団地の空き家率は平均六・三%、
建て替え団地だけですと七・六%に上り、合計で多摩地区には、この二十八
団地には約二千戸の空き家があります。
居住者には高
家賃と空き家損失のしわ寄せを強いながら、莫大な
社会的損失が放置されている。
公営住宅らしい適正な
家賃なら入居希望者は多いはずですし、老いも若きも共生できる
ソーシャルミックスを実現してこそ
公的賃貸住宅の姿と思います。特に若者、子育て世代に魅力のある
団地にしていただきたいというふうにも思っております。高
家賃をそのままに、空き家をセカンドハウスとして賃貸する都市
機構の新方針は間違っていると思います。
次に、
団地自治会の活動と役割に触れておきます。
団地ができて入居すると、すぐ
居住者は自治会をつくり、新しい
まちづくりに意欲を燃やし、多方面にわたる活動を重ねて着実にコミュニティーを築いてきました。
家賃や
修繕、環境
整備のことは公団、
機構、暮らしやごみ問題では行政と交渉し、防犯、防災、交通安全等の問題にも取り組み、役割を果たしてきました。それができたのも、
居住者が自治会にまとまり、住民自治の力が育ってきているからです。そうした連帯感は、自治会を
中心とする長年の日常活動や行事を通じて培われてきたものです。コミュニティーのこうしたきずなが生まれてこそ、住まいの安心も得られるのだと実感します。
公団
住宅の自治会はそれぞれに、桜祭り、夏祭り、月見の会、クリスマス会、バスハイク、コンサートなど多彩な親睦行事、あるいは
住宅修繕相談会や防災訓練、環境美化運動を恒常化し、
高齢者の安否気遣い活動や食事会、幼児教室を開いている
団地もあります。近年では
機構との連携活動も実績を上げてきています。こうして私たちは、安心して住み続けられる公団
住宅を合い
言葉に自治会活動を展開し、その願いは既に衆参両院
国土交通委員会の
機構法附帯決議としても書き留めていただいております。
公団
住宅居住者が置かれている
状況と問題点に立って今回の法案を読んでまず気になるのは、
公共住宅制度の根幹を成す
公営住宅の将来です。
公営住宅の現状には様々な問題点が指摘され、それはそれとして解決されなければなりません。しかし、見逃せないのは、
供給実績が長年にわたって計画戸数の半数にも及ばず、応募倍率は
全国で十倍、東京では三十倍と、入居希望者が今も非常に多いという事実です。
住宅事情の最も劣悪な東京では、この六年間、新規建設ゼロが続いております。
全国的にも、財政上の困窮を理由に、
住宅行政が後回しにされてきているように思います。
国の予算はといいますと、平成十四年度から
公共住宅等あるいは
住宅地区改良が住まいの安全確保と項目が変わり、その中に今回法案にもあります
地域住宅交付金も新たに加えられていますが、予算規模は前年に比べて、国費で七・五%、事業費で二三%に縮減されています。これまで、
住宅予算は年々縮小し、予算額と歳出総額に占める比率を見ても、平成十年以降、ほぼ半減しております。こういう今までの流れと現状の下で、
公営住宅への国庫補助をやめて交付金に変えるとか、
公的賃貸住宅等の
整備を市町村の
自主性、創意
工夫にゆだねていくという法案の
内容には違和感があり、不安を持ちます。
法案審議を通じて、これからの
住宅政策の基本は、
市場中心の
ストック活用、
市場に縁のない低
所得者には
住宅セーフティーネットの機能
向上と説明されています。
住宅セーフティーネットの構想の説明だけではなく、
法律上にも確かな構築への裏付けを明記していただきたいと思っております。
公営住宅法一条は、国及び
地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる
住宅を
整備し、これを
住宅に困窮する低
所得者に対して低廉な
家賃で賃貸し、国民生活の安定と
社会福祉の増進に寄与することを目的とするとした上で、第三条では、
地方公共団体は
公営住宅の
供給を行わなければならない、四条では、国は
地方に対し、財政上、金融上及び技術上の援助を与えなければならないとしています。この憲法二十五条の生存権と国及び
地方の保障義務に根差した
公営住宅法の原則が、今回の
地域における多様な
需要に応じた
公的賃貸住宅等の
整備等に関する
特別措置法案によって変わることはないのか。同特別
措置法の三条は「必要な
措置を講ずるよう努めなければならない。」と、国及び
地方とも努力義務に変わっているだけに、大いに危惧を持ちます。
私たち公団
住宅居住者も
公営住宅法の行方を我が事として気にしているのは、何よりも、公団
住宅居住者の大多数が
公営住宅の人たちと変わらない生活実態にあり、共通の願いを持つからです。
山本
住宅局長は、四月二十二日の衆議院の
委員会で、
機構の
賃貸住宅は、大都市
地域の中堅勤労者、ファミリー層を
対象にしており、
公営住宅とは
施策対象、役割が異なると言われました。都市基盤
整備公団になって以降、そしてなお都市
機構になって、公団
家賃の
市場家賃化を始め、この建前が私たちの生活の実態に反し、またこの
居住を一層困難にし、矛盾を深めていると言わざるを得ません。新たな
住宅政策が、そしてその前段としての今回の法
改正が、
セーフティーネットの機能
向上を実現するものであってほしいと切に願っています。
この立場から、
機構法の一部
改正に関しては、
機構の
賃貸住宅部門の収益は高
家賃の引下げと
住宅の
修繕等に充当すべきですし、
団地の
民間売却をやめて
社会資産として守り、公共活用を図ってほしい。旧公団、
機構の土地開発事業の赤字の穴埋めに回すのは許し難いと思います。
公的賃貸住宅整備の特別
措置法に関しては、
公営住宅を始めとする
公共賃貸住宅の必要な
整備にあくまで国が
責任を持って、
地方の実情に即した
住宅政策を積極的に進めていっていただきたいという
意見を述べさせていただきます。
終わりにもう一度、
住宅政策は、育ちつつあるコミュニティーをひとみのように大切にし、
地域住民参加の
まちづくりを支援する観点と用意が今強く求められていることを申し上げ、
住宅政策がともすれば
住宅、不動産
市場の
活性化、景気
対策として扱われがちですが、
居住福祉とコミュニティー形成を第一に掲げた
政策論議をお願いして、私の
意見陳述を終わります。