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参考人(
船橋洋一君)
船橋でございます。着席したままで御報告をいたしたいと思います。
ちょっと声が風邪ぎみで、申し訳ございません。
時間を三十分いただきましたので、お手元に一枚、二枚、簡単な目次みたいなものをお配りしておきました。同時に、先週末の
ワシントンでの2プラス2、これを受けての共同声明、共同発表、英文それから和文、両方お配りしております。
今日はせっかくの機会でございますので、
日米関係、これからどこがポイントで何が課題かということをお伝えしたいと思いますけれども、やや長期的に見ますと、
世界の大きな潮流の変化といいますか、やはりそれがグローバルな大きなインパクトを持って
日本あるいは
日米関係に新たな
挑戦を迫ってくる。大きく分けて、それを三つにとらえてよいのではないかと。
一つが、
アメリカの「一極化、一国主義化」というふうに書きましたけれども、これは運命的に
アメリカが今後も引き続き一国主義化をずっとそういう傾向を持っていくだろうということではなくて、
アメリカに伍するような、ライバルになるようなパワーが向こう二十年間多分生まれないとした場合に、
大国ゲームにおいてはこの
アメリカの一極構造というのが続いていくだろうと。そうしたときに、やはり内政面も含めて、
アメリカが一国主義的な傾向、これを引き続き傾向として持ち続けるという、その趨勢をとらえている話です。
そのもう
一つの背景に、
アメリカの内政の変化が多分あるのではないかと。外で他より隔絶したパワーを持っているということに加えて、内政面も、二〇〇〇年、二〇〇四年の
選挙などを見ていますと、「文化価値志向」というふうに書きましたけれども、ゲイの問題であるとか、そういう文化・
社会イシューズというのが非常に大きな
政治争点になる。
選挙の争点になる。そこへ九・一一がかぶさってきたものですから、パーソナルセキュリティー、個人の安全に対する脅威、これがそのまま国家のセキュリティーという形で、あるいはそのまた逆も真なりと。
特に、テロとか大量破壊兵器とか新しい脅威の場合に、実存的な、生物的な、生理的なものも含めた脅威感というものが非常に増大、あるいは脅威感が増すと。そうしますと、人間というのは、
アメリカだけではなくて、
アメリカ人だけでなくてどこでもそうだと思いますけれども、より確かなものに確かめたいといいますかね、それが民族であるとか伝統であるとかアイデンティティーであるとかいうことになりがちなんですね。それが今回の、特に二〇〇四年
選挙で非常によく出たのではないかと思いますね。あれほどたくさんの人が
ブッシュ大統領再選、投票したと。みんながみんな跳んだり跳ねたりするエバンジェリカルな宗教右翼であるはずはないですし。ですから、メーンストリームの
アメリカの人たち、そう保守ではない、そう過激ではない人も非常な不安感をやはり持ち始めている。
アメリカはグローバリゼーションのある
意味じゃ震源地ですけれども、また、グローバリゼーションに最も大きな衝撃を受けているのもまた
アメリカだと思いますね。開かれていますから、
アメリカは、
世界のどの国よりも。それが九・一一というトラウマになっていますけれども、このトラウマは、五年、十年ということでどこかへ消えてなくなるということではないと思います。テロの根源であるとか大量破壊兵器の拡散であるとかいう脅威は、これは現実脅威ですから、リアルな脅威ですから、
アメリカが、
ブッシュが
政治的にそれを脅威だ脅威だと言っているだけじゃないわけですよね。
アメリカの
国民がそういう脅威感を持っている。
それは要するに、
アメリカ人は自分たちだけのことしか考えないと、自分のサファリング、苦痛だけを考えていて
世界のことどうでもいいと。まあ確かにそういうところないわけじゃありませんけれども、しかし、単に
アメリカがアロガンスで、傲慢だから、
アメリカの現在取っているような
行動、政策を取っているだけではないと思いますね。
国民の恐怖感、その恐怖感に
政治指導者としてこれはアドレスしなければいけない責任があるわけですから、セキュリティー、そういうことからもやはり今の
ブッシュ政権のような政策あるいは対応というものを取りがちだと思いますね。
そして、これは、じゃポスト
ブッシュになったからどうかと。
ブッシュのやり方をいろいろ批判するでしょう。共和党からも批判が出てくると思います。しかし、長期的な趨勢として、九・一一のトラウマ、それからグローバリゼーションの中での
アメリカのこのむき出しの、裸の状態の、そこから出てくる新しい脅威感というものは、これは内政に必然的に跳ね返ってきますし、それがさらには外交にも投影されてくると。そういう
アメリカだということですね。
世界の国際情勢・環境の変化というときに、
日本にとって掛け替えのない
同盟国の
アメリカ自体が最も激しく揺さぶられていると、あるいは揺らいでいるというところが大きなこれからの課題だろうと思います。
もう
一つは、
中国の台頭ですね。これはインドの躍進がもう
一つ、一波、二波と来ますけれども、まあこれ「変更」と書きましたけれども、既存のステータスクオを変更というよりは変質ということになるかもしれないと思います。国連のシステムであるとか今のWTOであるとか、大枠のところでこの両、将来のスーパーパワーが、インド、
中国という、これを破壊しようということではないと思います。やはりこの枠組みの中でゲームを自分に最も
利益のあるようにしていこうということだろうと思います。
それは多分、
国際政治の文脈あるいは面では、多極化という趨勢が強まってくると思います。インドと
中国は最近ストラテジック
パートナーシップと言い合う、インドとロシアと
中国が首脳会談を開催するとかいうようなことを見ても、明らかに
アメリカ一極をにらんだ多極化ゲームというのが始まってきておりますし、
日本の外交政策、対米政策もそのような新たなゲームの影響を受けざるを得ない、あるいはそういう要素を織り込んでいかざるを得ないというところですね。
三つ目がグローバリゼーションですけれども、これはむしろ構造というか、構造というより、プロセス面での大きな変化が生まれている。トランスナショナルなインターフェースが
経済、
社会、それがさらには
政治にも噴き出してくるということです。ですから、
多極化時代における
日本外交というこの一連のシリーズというふうに伺いましたけれども、単なる多極化ということだけでなくて、もう少し多層的な変革が、パワーバランスにおいても、それから
関係論においても内政面においても、物事の決め方、例えばスピードとかですね。
あるいは、この間までインドとそれからフランスとイギリスと
アメリカとロシアと、この五か国の首脳の補佐官、外交補佐官は四六時中、Eメールと電話でつながっているわけですね。インドは別にG6、G7でも何でも、G8でもないわけですけれども、そういうたまたまの偶然の要素もあるんですけれども、目に見えないG5というのが、そういうことで補佐官
レベルでは毎日連絡を取り合える
関係というのができてしまっている。
日本はそこに入ってない。
中国もなかなかうまくまだそこに入れないと。
そうしますと、そういう政策決定過程というのは、別にこれはフォーマルなものでもありませんし、何らの表に出るものでもないんですけれども、多分
世界で我々の見えないところで様々なそのようなループ、つまり輪ができているわけですね。これは外交でもそうですし、いろいろの分野でもそうでしょうけれども。そういうことも含めて
日本の外交政策上、対
米外交も含めて、政策決定プロセスであるとか外交体制というのが今までのままでいいのかどうかという実は非常に大きい問題がここに生まれているわけです。
日米関係そのものに即して、それではどのような環境変化が生まれているのかというふうに少し分け入りたいと思いますけれども、やや
言葉が過ぎるかもしれませんけれども、
同盟経営、
同盟管理維持上のリスクが今までより高まってくるということを覚悟しなければいけないんではないか。
その根本は、様々なギャップが
日本、
アメリカ両国の間で生まれつつあるということですね。これは
日米だけでなくて、
アメリカの
冷戦期の
同盟諸国、
同盟体系、
同盟関係との間でほぼ一様に生まれているギャップなんですが、
一つは軍事変革、トランスフォーメーションで明らかになってきていますけれども、能力ギャップですね。インターオペラビリティーが非常に難しくなってくる。
アメリカだけが突出して、3CIであるとか、軍事の、特に軍事革命、RMAと言いますけれども、ソフトウエアも含めて、インテリジェンスも含めて圧倒的に強い立場に立ってしまうと。アフガニスタンの侵攻のときにラムズフェルドが、イギリスなんか来てもらっても来てもらわなくてもいいというふうに口を滑らしましたけれども、イギリスでさえ相手にされないようなこの
同盟というのは一体何だろうかということを、深刻な疑問を投げ掛けたときだったと思いますね。
NATOが九・一一後、初めてその六条、これに基づいて、つまり
アメリカへの
攻撃を我々の
攻撃であるということでコミットをしたところ、
アメリカは、サンキュー・バット・ノーサンキューと言わんばかりの対応でしたよね。つまり、お荷物だと言わんばかりなんですね。純粋に軍事オペレーション上はそうかもしれません。しかし、
同盟というのは純粋に軍事オペレーションではないはずなので、それは
政治的な信頼
関係であるとか、あるいはプレゼンスであるとか、安定力であるとか、非常に様々な目に見えないコンポジットであるはずであって、非常に不幸な出来事だったと思います。まあ、今
アメリカは少しは反省期に入っていると思いますけれども、先ほど五百
旗頭先生おっしゃったようなところに少し戻りつつあると思います。
脅威ギャップ、脅威ギャップは、先ほども触れましたけれども、
アメリカだけが九・一一テロ、大量破壊兵器、少し大げさに騒ぎ過ぎているんじゃないかと。インテリジェンスまで動員して、あるいはねじ曲げてでも、大変だ大変だと、危機だ危機だとあおっているんではないかというような疑いを西欧あるいは
アメリカの
同盟国の一部が持ち始めるほどこのギャップが広がっている。
大ゲーム・新ゲームギャップというふうに言えるかもしれませんけれども、新しい脅威、テロとか大量破壊兵器とかそういうものと、伝統的な
大国パワーにおける、例えば
中国の台頭、さらには将来における覇権に行くかもしれないリスクとかそのようなもの、あるいは朝鮮半島の
冷戦がまだ完全にはここは終わっていない、そういうレジデューとして残存の脅威というのがやはりあると。そこに、さらに核保有という全くもう
一つ新しい脅威がかぶさってくるという非常に屈折した複合的な脅威が生まれてきているわけですけれども、そういう地域の脅威。それと
世界の平和
協力というようなグローバルな脅威と、どのようにそれぞれに優先順位であるとかいうのを測定し、それから決めるのかと。これは地理的な要因もありますし、これが例えば
アメリカと
日本でも必ずしも同じではない。
今度の2プラス2では、非常に特徴的なことは、最初のこの二番目の、第二ですけれども、
世界、地域、ここでの脅威というのに一緒に取り組みましょうということで、もう
日米安保は初めからもう
世界というふうに何かすとんと入っちゃっていますね。それから、この例えば十三のところでは、そういう新しい脅威も含めた課題が生まれているので、安全保障上のですね、自衛隊の
役割とか任務とか能力とか、そういうことについても、
アメリカの、米軍も含めてそれぞれ検討する、エグザミンという表現ですけれども、しましょうという、ある
意味では
安保条約、
安保体制の全く新しい
段階に向かおうというような、そういう今局面だと思いますね。
そのときに、やはりこの能力、脅威、それから
世界の主要な安全保障上の課題、優先順位、これをどうするのかというようなところにおいて、実はギャップが非常にあるんだというその現実を見ておかなきゃいけないと思いますね。
日米関係は、先ほども五百
旗頭先生が御指摘になりましたけれども、ある
意味では非常に恵まれたところがあって、
日本の
政治リーダーも
日米関係はこれは命懸けでやってこられたと思いますね、自民党
政権も。
アメリカも、歴代の駐日大使を見ても分かりますけれども、やはり非常に意を尽くして、
日本に最大限の配慮を払った人事、シンボルとしてやってきていると思います。
これは、担い手ということでいいますと、国務省の菊クラブ、クリサンセマムクラブ、ジョセフ・グルーがこの典型といいますか、この源流の一人だと思いますけれども、それが脈々と続いてきている。天皇制の維持とかいうのを体を張ってやってくれた人ですよね。それから、それが大体もう終わりになって、ここでアーミテージさんを頂点とする山脈、トーケル・パターソン、マイク・グリーン、ジム・ケリーという、一期目の小泉・
ブッシュ関係の強固なものを下支えしてくれた、これを私はマッチョクラブと呼びたいんですけれども、ムキムキマンですから。アーミテージさん、二、三日で来ますけれども。そういう人たちの
流れ、これも多分アーミテージ退場とともに消え去っていくだろうと。次にどのような担い手群像というのが、
日本との
関係、
日米関係をライフワークとしてやると、そういう人たちがどこにいるか、ちょっと見えないんですよね、ここは。多分
ヨーロッパの人たちも同じようなことを感じているかもしれませんね。ですから、
日本だけが特別ではない。しかし、そういうことも考えておかなきゃいけない。
中国リスク。これは先ほど五百
旗頭先生触れられましたんで余りあれしませんけれども、
アメリカのこの、まあ
中国は
アメリカの二面性と言います。
私は、長期的には
米中関係やっぱり相当険しくなるんではないかと。
アメリカはやはり
中国を、
アメリカにそれを挑んでくる相手と。ライスがフォーリン・アフェアーズの論文で、
中国は
アジア太平洋における
アメリカのこの今の
役割に対してリゼントしていると、つまり恨みに思っていると、ですからそれを、現状を変革したいんだと、つまりステータスクオを変えようという国だと、今のステータスクオにサティスファイドしてないと、こう言っていますね。多分、まだ今の
段階ではそうだと思いますね。それが東
アジア共同体構想であるとか六者協議であるとか、様々なところで
中国の影響力あるいはパワー投影という外交につながっていると思いますけれども。しかし、
ブッシュ政権、向こう四年ぐらいで考えたときは、やはり
中国との
関係、安定させておくという方が優勢だろうと思います。
日中
関係が非常に難しくなると
日米同盟もなかなか難しいというのはおっしゃるとおりだと思いますけれども、
米中関係が難しくなったときの
日米同盟というのも実は非常に難しいんだということを同時に考えておく必要がある。そこでは台湾の問題が決定的に重要であって、ここは予防外交、予防安全保障という概念でもって、言ってみれば現状維持、独立させないと、
中国にも武力行使させないということでいく以外ないと思います。
日本も
アメリカも、台湾の独立でそれぞれの
同盟の強度、強靱さをテストされるということに関心はないわけです。それを許さないということを台湾にも言わなきゃいけないし、
中国には、今回の2プラス2のことで台湾初めて言及しました。
中国怒っていますけれども、私は良かったと思いますね。こういうふうにはっきり、あいまい戦略はもう効かないというふうに思います。
時間がなくなってきましたから少し飛ばしまして、
日米同盟の経営といいますか、管理上の問題ということを少し申し上げたいんですけれども、このような大きな大変革の中での
日米同盟、三つの考え方で多層的に組み立てていくべきじゃないか。
一つは、自立の思想といいますか、精神の領域でいいんですが、独立しろということじゃないんですね。
日米同盟破棄して
日本が自分でやれということを言っているわけじゃありません。私はそれには反対ですけれども、やはり
日米同盟を
中心に考えていくべきだと思いますが、やはり、
日本が自分の国を守る、特に南西諸島、
沖縄、領土問題も含めて、尖閣の。自らが自らを守るというこの意志、精神、それをもう少し強く持たないことには、実は
日米同盟も難しくなるというふうに思います。
五十年、
アメリカは相当
日本は甘くやってきたところありますね。勝者、
敗者という
同盟というのは
日本と
アメリカだけですから、二国間
同盟は。ドイツもイタリアもNATOの中で、枠組みの中でやったわけで。非常に珍しい
同盟ですよね。やっぱり歴史のそういう遺制といいますか、非常に機微なところ。広島、長崎とか、そういうこともありますし。しかし、これから
日本が
アメリカに対して戦略的な価値を高めて
同盟を維持していくと。
経済力はかつてほどではないと、
中国は
アメリカと戦略的
パートナーシップを組みたがっているという中で、やはり、
日本はこれだけのことを自分でやれると、やるんだということを常に
アメリカに示しておくということがやはり重要になってくると思います。
沖縄の基地の問題の解決も、
沖縄をやはり
日本が自分の安全保障上の課題だということでやって初めて、米軍の海兵隊も含めたそのフットプリントの削減ということもあり得るわけですね。単に面積だとかそういう平面的な解決ではなくて、もっと立体的に、つまり
日本の
役割というもう
一つ心棒を入れた形で立体的に解決していかざるを得ない。これが
一つ。
もう
一つは、相互補完ということですね。これは、今NATOの新しい構想の理論的な検討が進んでいますけれども、そこでの
一つのキーワードがコンプリメンタリティーと。これからの
同盟というのは相互補完を旨とするべきである、みんな同じようにやる必要はないんだと、それぞれの得意芸で、
役割分担で総和として一番いい結果をもたらせばいいと、こういう言い方ですね。これは
日米同盟についても言えるんではないかと思います。
例えばアチェ。
アメリカも今
日本も、軍隊それから自衛隊を送って支援
活動やっていますけれども、インドネシアはやはり
アメリカには早く引いてもらいたいと、
日本にはもうちょっといてもらっても構わないということをもうかなりはっきり出してきていますね。モスレムの国であるとか、
アメリカが
動きにくいところというのもたくさんあると思います。ですから、そういうことも含めた相互補完という新しい文脈、分野というのが出てきている。
それから地域
協力。これは、先ほどの東
アジア共同体づくりの過程で、現在、ASEANプラス3を
中心にこれを築き上げていこうということなんですけれども、
アメリカの中にはいろいろな
意見があります。まだきっちり、きっかりと定まってないようですけれども、反対論もあります。御承知のように、十数年前には、ベーカー国務長官がマハティール・マレーシア首相のEAECをつぶすと、太平洋を分断させないと。
日本もそういうことで、EAEC、マハティールにはもうこれ以上やるなということだったんですが、今回は私は、この東
アジア共同体を
日本も一緒になって、あるいはある
意味では先頭に立って育て上げて
アジアの地域主義をしっかり固めていくべきだと思いますね。
そのロジックと、
アメリカと
日本にとってのメリット、それから
日米同盟にとってのメリットも
アメリカにしっかりと語り掛けていく強靱な論理構成、これが必要だと思いますね、戦略対話が。
日米同盟と東
アジアの共同体形成というのは矛盾しないということなんです。先ほど五百
旗頭先生もおっしゃった。私も全く同感です。
よしんば、
アメリカが圧力掛けてまた同じように入るなと言ったとき、これは、
日本は多分
アジアの国であることをやめなきゃいけないですね。最も
アジアから
日本が自ら孤立することになる。そもそも地域の安定というのは、グローバルな平和安定、
世界平和
協力と、そのために
日米同盟やりましょうというんですから、地域の安定というのは
世界の安定の
一つの足場として非常に役立つと。これ、NAFTAについてもEUについても言えると思います。東
アジアだけなぜそうではないのかと。この説明しなきゃいけませんね、
アメリカは。できないんではないかと思います。
中国をインゲージさせるために様々な手を使わなきゃいけないですね、これから。
アメリカの力はもちろん使わなきゃ、
日本の力も使わなきゃいけない、国連も使わなきゃいけない、
アジアの地域主義も使わなきゃいけない。そのために
中国をみんなでまたこの中に入れていくと。これインゲージャーですね、インゲージングでもあるわけです。今はAPECがありますから、かつてのように単に東
アジアだけで突っ走るというわけじゃないわけです。APECもまた強化しながら、再構築しながら、そこと東
アジアの共同体をつなげて考えればいいということも言えますよね。
ですから、様々な形でこの東
アジア共同体と
日米同盟の共存、両立、これは可能であると。それを論理構成も含めてやるのは
日本だろうと思います。また
日本しかできないんではないかと思います、
アメリカにそういう説得力を持って言えるのはですね。ですから、これは歴史的な大変大きな機会であると。で、
アジアの国々に対しては、
日米同盟が
アジアにとっての大変なステーバライザーである。
日米同盟だけでなくて、
日本そのものもまた大変なステーバライザーであるということを示していく必要があるというふうに思います。
時間が来ましたけれども、最後に一言だけ。
この今まで申し上げたような政策的課題、
日米同盟維持の、管理の、プロセス上の問題というのを一番最後にちょっと書いておきましたので、お目通しいただければと思います。
二つだけ申し上げておきますと、官邸の外交の強化。
日本が独立して一九五二年以降、
日本の総理が
アメリカの上下両院で演説した人は一人もいないんです。イギリスは四人います。アトレー、チャーチル、それからサッチャー、ブレア。
池田勇人首相があいさつというのをしました、
アメリカの下院で。六一年です。そこで、これから
日本は二年で倍増してみせるということを言っていますね。立派なものだったと思いますけれども、しかし、これはあいさつです、あくまでも。グリーティングです。本当にスピーチをしていただきたいと思いますね、
日本の首相に。
最後は、オックスフォード大学が二十一
世紀のこの一番最初の年の二〇〇一年の五月に、七百万ポンドを投入して
アメリカ研究所を作った。ラザミアという、このロード・ラザミアというデーリー・メールを持っている人ですけれども、まあ亡くなりましたけれども、この間。これだけ深い米英
同盟の国のこの一方のイギリスが、二十一
世紀の門出に当たってもう一度
アメリカとの
関係をとことん我々はやるんだというんで、グローバルにおける
アメリカというのと、それから
アメリカの文化、これのコンストラクションと、この
二つの大きな講座を作って始めました。
私は、
日本も本当の
アメリカ研究所というのが多分必要になってきているんではないかと。
アメリカの大きなその大変化がこれから予測される中で、
アメリカを空気のように、知的な対象と見ない傾向がありますけれども、それは良くない。良くないだけでなくて、やはりそれが
日米関係の担い手をいろいろ育てていく、そういう温床と、知的な温床という、そういう
意味合いからも必要になってきているというふうに思います。つまり、
認識とか経験を共有して蓄積するその場、そういう、そのインスティチューションが必要なんですね、
日米同盟、これから。
アメリカ研究所はその
一つの枠組みになり得るのではないかというふうに思っております。
以上でございます。