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近藤正道君 今ほど、環境省ともあるいは経産省とも連携を取っておったという趣旨の御発言がございましたけれども、その後の事態の流れを見るととてもそういうふうには思えないと、単に通達を出しただけで後は何もなかったんではないかと思われてなりません。
この通達の翌年の七七年に、埼玉県の曙ブレーキ工業羽生工場からアスベストが外部に飛散をして住民十数名が死亡した
可能性があると、地元行田の労基署が埼玉労働基準局に早急な対応を求めた事実がございます。
つまり、現場は、先ほど来の通達に基づいた対応を行ったにもかかわらず、上の方、
政府の方は何もその対策を取った気配が見られなかった。あるいは、環境庁も、七二年からアスベストが工場周辺住民に健康
被害を与える
可能性があるということを知っていたにもかかわらず、さしたる動きも見せなかった。
あるいは、八六年にILOでアスベストの使用における安全に関する条約が採択されておりまして、これを契機に、この年、市民とか労働組合あるいは専門家で石綿対策全
国連絡
会議、こういうものが結成されておりまして、この連絡
会議が翌年の八七年から毎年のように関係省庁にアスベストの全面使用禁止の申入れを行っていたわけでございますが、にもかかわらず、
政府から誠意ある対応が打たれた、取られたという事実はございませんでした。
そして、この間、八三年のフィンランドを皮切りに、ヨーロッパ諸国では相次いでアスベストの全面使用禁止に踏み切る、そういう事実があるにもかかわらず、
日本はそういう対応をしなかった。ここで大きな差が出るわけでございます。
しかも、九二年、当時の社会党がアスベスト規制法案を議員立法で提出をいたしました。このときに、何と、
日本石綿協会、アスベストの業界団体でありますが、これが意見書を提出をした。この意見書の中に、今後は
作業従事者の健康障害は起こり得ない、こういう
主張がありますし、また、一般環境においてはアスベストによる健康問題は
発生していない。つまり、厚労省の通達を真っ向から否定するような中身が盛り込まれている、そういう意見書を
日本石綿協会が出しているにもかかわらず、それを受け取っているにもかかわらず、厚労省あるいは経産省も全くこれについて沈黙を守った。自分たちの出している見解と真っ向から反する、ある意味では事実誤認、非常識な意見書が出ているにもかかわらず、これに対して全く物を言わなかったという事実がございます。そういうこともありまして、この議員立法は廃案ということになったわけでございます。
いずれにいたしましても、
政府は、危険性を十分に把握していながらこの意見書に沈黙を守ったということでございまして、私はこれはやっぱり大きな問題だというふうに思っております。
こうした
政府のアスベスト規制・禁止の大幅な遅れがあったにもかかわらず、ここへ来てこのアスベスト問題が大きな議論の的になってきたのは、何といっても、中皮腫死亡者数あるいはアスベストの労災認定者数が急速に最近増えてきた、このアスベストによる健康
被害が隠しようもなく増大してきた、そして
被害者と家族の声がもう隠しようもなく大きくなってきた、このことがやっぱり大きな原因に、背景になってきたんだろうというふうに思っています。
なぜ、七六年に通達を出しながらしっかりと指導、規制をしなかったのか。すべて後手後手、
政府の不作為あるいは怠慢は私は明らかだというふうに思っております。このために大勢の命が失われたのではないかというふうに思っております。業界から圧力があったのか、あるいは旧労働省と業界との間に何かのっぴきならぬ関係でもあったのか、あるいは政官業の癒着があったのではないか。正に大甘の規制、このために三十年近く
被害が放置をされたというふうに思っています。
西副
大臣、さきの衆議院の
委員会で、取り返しの付かない問題であるけれども、
決定的な私ども省庁の失敗だったのではないかというふうに私自身は個人的に考えておりますと、こういうふうに阿部議員に答弁されております。
改めて
お尋ねをしたいというふうに思いますが、このアスベスト
被害の
発生拡大に対する
政府の責任、この不作為の責任を明確にしていただきたいというふうに思います。