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参考人(
安岡厚子君) 最後になりましたけれども、よろしくお願いいたします。
私は、
特定非
営利活動法人サポートハウス年輪の代表をしております
安岡です。こういった
機会を与えていただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
お手元に三種類ほど資料を出させていただいております。サポートハウス年輪の概要につきまして、ピンクの簡単なパンフレットですが、こちらを簡単に説明いたしたいと思います。
九四年に、サポートハウス年輪を、私たち公民館を使っておりましたグループが中心となって自分たちで立ち上げました。
これをつくる前に、前年、九三年に当時の田無市、現在は合併をいたしまして西東京市になっておりますが、そちらの独り暮らしの
高齢者の方の実態調査を市民グループで行いました。そのときの資料が、今日一冊持ってまいりましたが、テーマが「私はこの家で死にたい」というテーマにさせていただきました。六十五歳以上の
高齢者の独り暮らしの方が約千人いらっしゃいまして、この方たちの半数を二人一組で調査をいたしました。この中で、
高齢者の方が望んでいらっしゃることは、この町にこのまま住み続けたいという、そういう願いでした。九五%の方が今住んでいるところに住んでいたいということでした。
じゃ、もし要
介護になられたり、いろいろな事情があったりしてこの町にどれぐらいまで住み続けられるんだろうかと思って調べましたところ、今から十二年前ですね、ほとんど
サービスがない
状況でしたので、何かがありますと、痴呆症状が出たり、あるいは
転倒をされて
骨折、あるいは脳梗塞等で半身麻痺になられますと、ほとんどの方が救急病院からたらい回しで遠くの病院に行って亡くなっておられる
状況でした。ほとんどの
高齢者の方がこの町に住んでいたい、私はこの家で死にたいという願いを持っていらっしゃるにもかかわらず、その願いは遠くの遠くの夢の世界であったということをまず御報告させていただきます。
それから、私たちは、
地域でいつまでも暮らし続けるためには、二十四時間、三百六十五日の
介護ヘルパーさんの派遣と、それから夕食の配食が必要だなというふうに考えまして、それを発足させまして、事業を少しずつ広げながら、多くの方の力をいただきながらやってまいりました。
当時から、サポートハウス年輪と、名前の中にハウスというのが入っておりますけれども、
認知症の方に対する非常に劣悪な環境がございまして、
介護サービスがほとんどない
状況の中で穏やかにお過ごししていただけるグループホームというものを、私がスウェーデンに行って九二年に見てきたものですので、是非とも町につくりたいという思いが強くて、ハウスと名前を付けました。それから、
地域の方たちに広めるためにバザーを行ったり、いろいろなことをしてまいりましたけれども、なかなかこれは
実現ができませんでした。
介護保険の力は本当にすばらしいと、ここは思っております。
九九年に
特定非
営利活動法人格を取得いたしまして、二〇〇〇年から
介護保険事業を行っております。左にありますように、
介護保険サービスとしては六事業、それから独自
サービスとして食事
サービスを行っております。
やっと二〇〇三年の一月に、痴呆性
高齢者のグループホーム、ねんりんはうすが開所いたしました。一般のマンションを、賃貸マンションを借りておりまして、一階にサポートハウス年輪の本部があります。そこの三階
部分の三つのお部屋、二DKですね、四十平米の二DKのお部屋を三つ、
真ん中のコンクリートをぶち抜きまして、都市型のグループホームということで、東京都ではこれは初めてだということでしたが、行っております。是非
機会がありましたら見に来ていただきたいと思います。そんなようなことで、サポートハウス年輪をずっと運営してやってきました。
私は、今日この場に来まして、
現場の多くのお
年寄りの方と、私もホーム
ヘルパーをやっておりましたし、特養にも勤めておりました。それから、二〇〇〇年からは
ケアマネジャーとして
利用者さんの相談、あるいはコーディネーターとして
ヘルパーの派遣の方、それからグループホームの計画作成担当者、現在は
認知症介護の東京都の
指導者もしております。こういった立場の中で、多くの
利用者さんの御相談あるいは
サービスにかかわる中で、今回の
介護保険の改正につきまして、市民の立場から、あるいはNPO法人としての立場、
利用者さんの声をお届けしたいという思いで発言をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
先ほど申しましたように、
地域で暮らしていらっしゃる
高齢者の方、
高齢者とは問わず私たちはこの町でいつまでも暮らしていきたい、暮らし続けるための
制度であってほしいというふうに思っていらっしゃる方が一〇〇%とまず思っていただきたいと思います。
じゃ、今の西東京市で要
介護五の方がどれだけ暮らしていることができるか。皆さん、住んでいらっしゃる
地域で要
介護五、最重度の方が
在宅で暮らしていけますでしょうか。そういう
制度になっているかどうかということをまず検証いただきたいと思います。
私の経験から申しますと、要
介護五の方で
在宅で暮らしていらっしゃる方には条件があります。一番には、おうちを自宅で持っていらっしゃること、
在宅ですね。賃貸ではなかなか難しいですね。持ち家であるということ、家賃を払わなくてもいいということですね。ローンがないということですかね。それと、あとは
介護してくださる方がいらっしゃるということです。
介護保険制度は
在宅中心でしたけれども、
家族介護に負っているところが非常に多いですよね。ここをなくして
介護保険制度の改革はないと思っております。御
家族がきちんと
介護することができる方、そうじゃない限りは
在宅で要
介護五の方が
地域で暮らしていくことはできません。ですから、
在宅中心の
介護保険制度ですけれども、
介護度が限られているというところを是非注目いただきたいと思うんですね。
今回の
介護保険の改正の目玉であります
予防重視型システムへの転換、これは言葉が悪いかも分かりませんが、私は、勝ち組、負け組という言葉がありますね、最近よくテレビで出ておりますが、これを促進する可能性が非常に高いんではないかなというふうに思っているんです。是非ともこの点をお考えいただきたいなと私は思います。
じゃ、どんな勝ち組、負け組なのかといいますと、御
利用者さんにとっては、自立者は勝ち組ですね、
介護予防ですから。
介護になった方は負け組になります。
私は、
介護予防という言葉はどうなんでしょうかということで、十月に厚労省の有識者ヒアリングに出ましたときに、何とかいい言葉ないんでしょうかという話をしました。非常に切り分けていく言葉じゃないかなと思いますので。
介護予防の
内容自体は特に悪いとは言っておりませんが、そういうふうに、要
介護者、
介護を今受けていらっしゃる当事者ですよ、御本人さんの気持ちが、ああ、自分は
介護を受ける身になってしまったんだというふうに落ち込んでしまわれるような
状況が現在もあるんですね。そういう
意味で少し危惧をしております。
それから、じゃ事業者にとってどうか。私のところもNPO法人で
介護事業をやっております。
訪問介護がどうなるか分からないという
状況の中で、資本力のある事業者は勝ち組ですね。資本力のない団体にとっては、負け組になるかも分からないという不安を非常に抱えております。
訪問介護事業所は非常に脆弱ですね。資本力のない団体がたくさんおります。そういった事業体の中で
訪問介護の収入が減っていきますと、倒れるところはたくさんなりますね。
介護保険前から
地域の中でニーズを拾い上げて一生懸命頑張ってきた、そういう事業者が消えていく、吸収されていくということがあります。現在もう既に始まっておりますね。大手の
訪問介護の事業者さんが西東京市でも小さい事業所を吸収しているという
状況がもう始まっております。ですので、事業者にとっても勝ち組、負け組が出てくるのかなという不安があるという、こういったようなことが懸念されている
現場であることをまず御報告させていただきます。
それから、
訪問介護につきまして私は今日は中心で
お話しさせていただきたいと思っておりますが、要支援・要
介護一の軽度の
利用者さんが
訪問介護を
利用したために自立度が落ちてきたというような調査があるということで、
家事援助じゃなくて家事代行
サービスになっているということで、ちょっと目の敵のように言われているかと思います。これが見直しの大きな項目になっていることは御承知だと思いますし、私もそのように聞いております。
じゃ、何で家事代行になったんですかというところなんですね。
介護保険で算定できる
家事援助の
内容というのは全然示されていなかったんですよ。
介護保険制度が始まったときに、じゃ、
介護保険でできる調理、洗濯、掃除というのは一体どういうものかという
内容についての示しが何もありませんでした。こんなふうになるのは当然の結果だと私は思っています。
現場任せで
家事援助の
内容を示してこなかったツケが今、回ってきているかなと思います。
私は、デンマークの
訪問介護ですか、
ヘルパーの
現場に行ってきたときに見せてもらったものがございますが、例えば、掃除でしたら一週間に一回を頻度とするとか、洗濯は一週間に二回までとするとかというふうに決まっていますし、
内容も決まっているんですね。そのようなことを何もしないで、
介護保険の中での
家事援助というだけでやってきたツケは今大きく回ってきていると思うんですね。
現場の
ヘルパーが勝手に
利用者さんの言われるようにやってしまった例もあるかも分かりません。それは認めますけれども、でも、きちんとした
制度の中で、
家事援助というものを
介護保険に入れた以上は、やはり示すべきであったんじゃないかと思います。これは今後も是非とも示していただきたいというふうに思いますし、各自治体でそのモデルを出すんであれば、そういった形を示した方がいいと思います。
例えば、調理を、一汁一菜なのか、こんなものが
介護保険でできる調理だよというのがないと、
日常生活を営む上で援助する調理というのが
利用者さんによって違うんですね。うちはフランス料理を毎日食べていますという家もあるわけですよ、例えばですけどね。
現場の
ヘルパーは非常に
混乱しているということがあります。何で家事代行になってしまったのかということをもう少しきちんと評価をし、やるべきことはやっていただきたいなというのが私の
考え方です。
それと、
訪問介護員のことを家事代行をするロボットのようには考えていませんかというふうに今回の改正で私は感じられます。
訪問介護の仕事を私も長年やってきましたが、これは対人援助技術を要する仕事です。単なる、
訪問介護ですね、
ヘルパーさんはおうちに入って料理を作ったりお掃除をするロボットでは決してありません。対人援助ですね、メンタルケアが
現場で行われているということを是非評価しなきゃいけなかったんではないかなというふうに思っております。
家事援助とかそういう
内容だけではなくて、対人援助の仕事をしているのが
訪問介護員だということを是非とも御理解いただきたいというふうに思っています。
そういったようなことが案外
介護予防につながっている例は山ほどあるわけなんですよ。ですから、軽度の方に対する
訪問介護が、
介護給付が行われなくなったときに、
筋肉トレとか転予とかいろいろメニューが出ておりますけれども、要支援、要
介護者の
介護にちょっと不安を感じていらっしゃる、
生活にちょっと不安を感じていらっしゃる方のメンタルケアをどのような形でしていくのかということが非常に大事になります。ここを抜きにして新
予防給付の方に移行していきますと、私は、かえって
介護予防じゃなくて
介護を促進することになりはしないかというふうな危惧を
現場の中では非常に感じておりますので、このメンタルケアというところを是非とも御協議いただきたいというふうに思います。
最後になりますけれども、最重度の方の
利用者の尊厳について
お話しさせていただきます。
グループホームもやっておりますし、多くのいろいろなところのグループホームも見てきておりますけれども、さりげないサポートということで、
利用者さん本位の、尊厳を守りながら拘束をしないケアを
提供しているグループホームも幾つかたくさん出てきていると思うんですね。それで、最後になりまして入院になりますね。入院になられる
利用者さんがいらっしゃいます。そうなりますと、今の今まで自由に暮らしていらっしゃった
利用者さんが、入院した途端ばりばりの拘束で、なってしまわれる現実というのが最近あるんです。グループホームのスタッフは見舞いに行きましてもがっかりして帰ってきます。僕たちは一体今まで何をやっていたんだろうかということの現実がございます。
グループホームは通過
施設と言われておりますけれども、最後のところで
利用者の、
高齢者の尊厳を守るということが
認知症介護の大きなテーマになっておりますね。これは、尊厳は、最後、死を迎えられるまで守れるような仕組みを
医療と
介護とが
連携していくべきではないかなというふうに思っているんですね。グループホームあるいは
施設のぎりぎりの
介護のところで尊厳を守っていても、最後のところで尊厳が守れない、守れないというか、守ってられないというんですかね、
医療の方に行くという現実もあることを皆さんの方に御報告させていただきたいと思って言いました。
本当に最後なんですが、九十歳の
利用者さんから、私が今日ここに行くんだよという
お話をしましたら、是非言ってもらいたいっておっしゃった言葉がありますので、これを言って最後にしたいと思います。
自宅ほどいいものはないんだ、家でいつまでも暮らせるような仕組みに是非ともなってほしい。
介護保険制度がそういうふうになるんだったら、もう一生懸命税金も払うし、
保険料も払うし、自分は、私が最初に申しましたように、私はこの家で死にたいんだと、それを支えてくれる
介護保険制度に是非ともなってほしいということを今日は訴えてきてほしいと言われましたので、最後にそのことをお伝えして、終わりにいたします。
ありがとうございました。