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参考人(
濱田實君) 私は、
健康保険病院労働組合、略称を健保労組と申しますが、中央書記長の
濱田實と申します。
今日、
意見を述べる機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
私たちは、社会保険
病院、
厚生年金病院、社会保険診療所、健康管理センター、介護老人保健
施設で働く看護師などの職員でつくる労働組合です。今日、職員の
皆さん、患者さんの
皆さんの気持ちが少しでもお伝えできれば幸いというふうに思っております。
私たちは、日ごろから安全、安心の医療、看護、介護、健診を提供し患者さんや
地域住民から信頼される
施設になろうを合い言葉にみんなで頑張っています。この
考え方は、例えば二十四時間の救急体制の充実のために三交代制を行い職員も努力しよう、こういう形で現れています。
私自身は、一九七五年から約三十年間、医療の労働組合に関係しております。また、
政管健保及び
厚生年金保険の被
保険者という
立場からも今日、
意見を述べさしていただきたいと思っております。
最初に、
年金・保険
福祉施設整理機構法案についての
意見であります。
現在審議されておりますこの
整理機構法案は、どの
施設を
譲渡又は
廃止するかは厚生労働大臣の
考え方によることになっています。箱物を
売却するのに箱物の
法律をつくる。何か私は、不動産会社をつくるのかというようなイメージを持っております。
民間人が
売却するとの内容ですので、国有
財産の扱いは
法律の段階からきちんと内容が明確である必要があるのではないかと思っています。
次に、私が関係する
施設が審議の対象となっておりますので、順次
意見を述べさしていただきたいと思っております。
最初に、社会保険診療所、健康管理センターを
売却せず、引き続き社会保険の
施設として健診
事業を行う必要性があることについて
意見を述べたいと思っております。
政管健保の生活習慣予防健診
事業、これは平成十四年度ベースの実施機関は六三・九%が
民間病院などで、二百六万三千人を実施しております。三六・一%が社会保険
病院・診療所と社会保険健康管理センターで、百十六万八千人であります。合計三百二十三万人余りであります。政府管掌健康保険の被
保険者と扶養者は三千六百七十八万人ですが、健診数はその八・八%でしかありません。
政管健保の健診実施機関は、これは平成十五年度ですが、千五百十七
施設で、社会保険関係は九十五
施設、六・三%です。
このように、私たちは社会保険
病院・診療所、健康管理センターで
政管健保の健診を独占しているというわけではないということを申し上げたいと思います。
同時に述べたいことは、被
保険者などが
自分たちの
保険料で
設置した
施設で安心して健診を受けることができる、これは言わばオーナーとして普通のことだと思います。健診はそういう
意味では重要な保険
給付だと思います。
ところで、
政管健保の適用
事業所の規模は、平成十四年十月一日現在、従業員一人から二十九人が全体の九二・五%です。圧倒的に中小零細企業であります。労働安全衛生法は労働者五十人以上規模の一般健診を強制事項にしておりますが、中小企業の労働現場の実態では、なかなか自主的に健診は受けません。
自分で仕事を休んで受診しない。病気があることが使用者に分かると首になるのではないかという不安があります。このような中でどう受診率を高めるかは大変なことなのです。
一つの例として、
先生方のところに配付しております資料一をごらんいただきたいと思います。これは東京の四つの診療所、健管センターの
政管健保の実施例でありますが、従業員規模二十人前後の中小零細企業の健診であることが分かっていただけると思います。
次に、五ページに資料二がありますので御参照ください。東京の四つの機関で
政管健保健診を行っておりますが、
政管健保からの補助がある健診と補助のない持ち出しで行っている、これが合わせて五二・四%、そのほか独自の健診が四七・六%です。政管健診を独占もしていないし、むしろ健保組合、
地域の主婦健診など政管以外の健診にも
経営努力をしているところです。
それから、本社、営業所の企業の健診を一体で行っているので、データが一元化しているという点でも重宝がられています。さらに、これまで膨大な健診データを蓄積しており、
売却でこのデータを消滅することは
国民の健康増進からしても大きな
損失です。また、健診は精度の高さが生命線ですが、これにも努力をしております。
資料三を次に見ていただきたいと思います。ページ、六ページです。平成十五年度実施数は三百十三万七千人ですが、この数も少ないのですが、四十歳以上の生活習慣予防健診受診率は全国平均でわずか三〇・二%です。これは
民間病院を含む全医療機関の数です。生活予防健診の
予算は、平成十年五百七十一億円が、平成十七年度
予算では四百二十八億円と、七年間で百四十三億円も減少しています。保険
給付費約四兆円の約一・三%ぐらいでしかありません。もっと健診数を増加させなければならないときに社会保険診療所や健管センターを
売却することは、更にこの健診数を減らすことになります。それは、
国民の健診、予防に多大な影響があり得るというふうに思います。
厚生労働省も、生活習慣予防対策として最近、公的医療保険を
運営する
保険者による健診
事業を拡充する方針を明らかにしましたが、社会保険診療所、健管センターを
売却することは健診の実施実態からしても逆行するものと思います。病気が重篤になる前に早期に発見することは、
国民の健康を保持し、また医療費の増加を防ぐことにも貢献します。むしろ、これらの社会保険の
施設を被
保険者が
自分たちの
施設として利用して、積極的に健康管理を期待することができるようにしてほしいと思っております。
社会保険診療所と健康管理センターは、山奥の遠い
事業所、例えば
老人ホーム、それから数が少ないのでそういうところでは遠距離であっても不採算で受診者の少ない
事業所、これは敬遠されるケースが多いのですが、
事業所や受診者の
ニーズにこたえるために、
経営的に非効率でも社会保険の健診バスが公的医療機関の使命として出掛けていっております。例えば、東京の大島の健診は重たい健診バスを船に積み、移動費に百万円掛かりますが、それでも健診を行っています。
次に、社会保険
病院についてですが、健康保険法第一条は、この
法律は労働者と被扶養者の疾病、負傷、死亡、出産に保険
給付を行って
国民の生活の安定と
福祉の向上に寄与すると定めています。健康保険法は我が国の公的医療保険の基準の
法律だと思いますが、第二次
世界大戦後に我が国が、医療機関が壊滅的な打撃を被る中で、
政管健保の被
保険者は保健所では医療
給付を受けることができなかったと言えます。そういう中で全額自己負担、自由診療であったということです。こういう
状況下で、被
保険者が自らの政管健康保険の医療機関を望んだことは当然のことです。
その後、社会保険支払基金が創設されて、医師会はそれまでの自由診療の方針を変えて、健康保険の患者の歓迎を打ち出しました。今日、保険医療機関の看板がなければ医療機関の
経営が成り立たないほど、
政管健保が公的医療保険の中核となってきています。そのためには多くの人々の貢献があったと思っております。
資料四を読んでいただきたいと思います。
保険料の使い方は、私たちは十分に吟味されなければならないというふうに思っておりますが、
政管健保、平成十五年度で六兆百六十七億円のうち二兆一千五百七十九億円が老人保健拠出金で拠出されている、これが
政管健保の財政を圧迫している
最大の要因だと私たちは思っております。私たちも長い間、健康保険組合、
厚生年金基金の
運営に労働者代表を半数近く出し、
給付の
在り方、投資先会社の
在り方など吟味することで健全財政を保ってきた経験から、このことは痛感いたします。
健康保険法第百五十条でこういう
福祉施設が
設置されることになっておりますが、公的医療機関としての健康保険法において、被
保険者と被扶養者、先ほど三千六百万人と申しましたが、日本の人口の四分の一の人々に、第一に保険
給付を行うこと、第二に
政管健保の被
保険者の
保険料で医療機関を
設置し、医師、看護師等や介護従事者による診療や介護、健診、介護を望む、これは私は言わば現物の保険
給付であるというふうに思います。それは日本国憲法二十五条の求めているところの具体化だと思っております。
社会保険
病院などは、単に
地域の職域の
施設としてだけでなく、
地域医療の重要な担い手として
地域住民や自治体から高く評価をされております。社会保険
病院や老人保健
施設も国有として二十八
施設が併設されておりまして、介護を行い、
地域住民、自治体との連携が強くなっております。自治体、議会の多くの
意見がそれを証明しています。また、各地の医師会、歯科医師会や自治体の首長の
皆様からも、諸団体、個人の存続、充実の
意見が出ております。
次に、
厚生年金病院について述べたいと思います。
厚生年金病院は、今詳しく先生からお話がありましたので私は簡略に述べたいと思いますが、
厚生年金病院は
厚生年金保険法七十九条で
設置されておるわけですが、
年金財政を有効に使うことは当然だと、そういう
意味では
無駄遣いは駄目だというふうに私は思います。第一条では、「この
法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険
給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と
福祉の向上に寄与する」と定めています。受給権者に対する保険
給付とともに、
保険料を払っている現役世代にも、健康保持、回復のために
病院を
設置する、保養ホームと連携して現物の保険
給付を行う、私はこれは
無駄遣いではないと思います。正に
保険料の重要な使い道だと思います。
厚生年金病院も社会保険
病院・診療所、健管センター、老人保健
施設と同様に、
地域住民の医療、健診、介護を担っていく、こういうふうに是非これからもさせていただきたいというふうに思います。
時間の関係で詳しくは述べられませんが、各地から、各議会で
意見書の採択がされております。一、二だけ紹介をさせていただきます。
高知
病院について高知県議会が
意見書を採択いたしましたが、消防団の方から消防団と
病院の連携が必要だと。防災訓練の際には医師や看護師を派遣してほしい。災害時も透析が受けられるように水、医薬品などを蓄えてほしい。災害救援
病院として傷病者の治療、収容、避難所の巡回診療、被災により不足する他の医療機関への医師、看護師の派遣、こういったことをやってほしいということが自治体から期待をされております。
大分の県議会では、国においては湯布院
厚生年金病院と同保養ホームが連携して提供している医療サービスの
機能が、将来にわたり継続、充実できるよう、
施設の
売却に当たっては特段の措置を講じられるよう強く
要望するということがあります。
先ほどお話のありました星ヶ丘
病院の周りの先生たちからは、
地域の医師会の先生からは、
自分の
病院の患者を紹介し、星ヶ丘が各種の治療を行い、また患者を
地域に戻してくれるので助かっている、こういう声が上がっておりますし、患者さんからは、重い病気を診てくれる
病院で安心です、長年リハビリで通っているが、
病院がなくなることは生死にかかわるなど悲痛な
意見も出ております。
そういうことで、私
どもは、社会保険や
厚生年金の名を外さないでもらいたい、これは言わばブランド名です。このブランド名が何か悪いことをしたというわけではないというように私たちは考えておりますので、是非この辺を考えていただきながら、
先生方の御審議をよろしくお願いをしたいと思っております。
以上です。