○島村国務
大臣 久方ぶりにじかにこういう話し合いができる、幸せに
思います。あの当時、あなたは敏腕記者として鳴らして、私は随分貴重な
意見を伺って勉強させていただいた恩義も感じているわけですが、実は私は、あなたの御尊父が
経済企画庁長官のときに政務次官としてお仕えをした、こういう
関係もあるわけでございまして、非常にいろいろな意味での因縁を感じているわけであります。
ただいま御
指摘のことは、そういうわけだからではございませんけれ
ども、全く同じ考えに実は私も立っているわけです。本当ならば、私
たちが掲げた目標をきちんと実現して、いわば私
たちも
努力の結果、
皆さんの
努力が生きました、こういうことを申し上げたいわけです。
もう釈迦に説法ですけれ
ども、私
たちの自給率をいろいろ過去に顧みて調べますと、御承知のように、昭和三十五年には何と七九%、約八割、自給率があったわけですね。これが五年後の四十年には七三に落ち、さらに五年後にはこれが六三に落ち、そしてその後、昭和五十年代から六十年にかけての十年は、大体五四から五三に落ちただけですから、一%減という横ばい状態にあった。しかしその後、また五年ごとに五%、五%落ちてきて、現在の四〇%。もう実に六年続いておりますが、これも多少は減りぎみの中の四〇%です。
では、なぜそんなことになっているのか。自給率というのは、だれしも一般の素人の方は、
生産面が能力が足りないからなんだろう、こう考えがちですけれ
ども、実はそうではありませんで、今の数字を申し上げたのも、消費に
影響されることが極めて大だということを申し上げたいわけであります。
しかも、大づかみな言い方をしますと、
日本人の主食はお米でございますが、一〇〇%これは供給する能力が今でもあるわけですね。なるほどミニマムアクセス米その他も抱えさせられる国際的な義務はあるものの、私
たちは、お米さえ食べていただければ自給率をどんなにでも上げることができる。ただ、具体的に申し上げれば、この四五%、
平成二十二年を想定した当時、
農林水産省は何を考えたかというと、大体統計を全部ひもときまして、一日に
日本人は平均茶碗三杯の御飯を食べる。その三杯の御飯を食べるということを前提にいわば四五%ということをやっているわけです。
この茶碗三杯を食べるときに、一杯食べるときに、かわりにもう一はし御飯を食べていただけると、一%上がるという数字が出ております。
ところが、どうも最近は
日本型食生活、
日本人には余り好まれない。皮肉なことに、国際的には大変な評価を受けて、いわば
日本食ブーム。だれが考えても美容と健康には断然いいわけですし、
世界一の長寿国になったのは、医学も
環境面の進歩もありますが、一番基本となるのは、やはり
日本の食生活によるところが極めて大きいと思うんです。その証拠に、海外で肥満体を苦にする女性がたくさんいますけれ
ども、海外の肥満体と
日本人の肥満体というのは比較にならない。スカートの上にもう一枚スカートをはいたような大きな体をしている人をたくさん見かけるわけでありますが、あれは
日本の食生活と向こうの食生活の違いなんだろうと
思います。
そういう意味で、具体的に申し上げると、お米の消費が私
たちの
予定をはるかに下回った。例えば、ここに数字がございますが、当初
予定した、
平成九年当時は六十六・七キログラムだったわけですが、大体六十六キログラムぐらいで推移していただけるという期待を実は前提に置いたわけですが、何と今六十一・九キログラム。実に四・八キログラムも減っているわけですね。これでは、私
たちがどのようにあがいても自給率は上がらない理屈になります。
そして一方では、油脂類あるいは肉類、こちらへのいわば消費はどんどんふえている。これは残念ながら自給率が低いわけでございますから、その分食料自給率が下降するということにもなります。
そういうことをいろいろ考えますと、私
たちは、本当ならば、お約束の二十二年に四五%、五%アップをしたいんですけれ
ども、今すぐ四五%に持っていきますということを言うと、これは結果によってはうそをつく
可能性がある。それは、あくまで消費者は自由に選択しているわけですし、大体最近の
家庭の状況なんかを見ていますと、お母さん方も御自分の時間が欲しいし、どうも手間暇かかる和食は嫌だ、皿洗いその他も面倒くさい、とすると、安直にパンか何かで食事を済ませてしまうというような傾向が非常に強いわけですから、これを何としても米を食えという、戦時中のようなわけにいきませんので、私
たちは、残念ながら、いわば自給率をはっきり上げて責任を持ちますということが言いたくても言えないというのが実情です。
そこで、では、我々は拱手傍観するのか。これは許されません。それでは何をするのか。
生産面に対していろいろ我々の
努力を重ねることは当然でありますけれ
ども、少なくとも、先進国も皆やっておりますフードガイド、こういうものをつくって、いわば食生活に対するいろいろな私
たちなりの手引きをするとか、当然のことのように、今話題の食育を
推進して、いろいろな意味で
国民の
皆さんに、美容と健康と、そして同時に
日本の国の国益にもつながることをもっともっと知っていただくというような意味もそうですし、また、食事内容をもっともっと充実させるようなお手伝いも必要でしょう。
あらゆる角度で私
たちは
努力をして、それでお米の消費を高め、それでもって自給率を上げようということにしているわけで、油はやめなさい、肉はやめなさい、これも私
たちは言いませんし、また、それはどちらでもいいけれ
ども、少なくとも最低限度お米だけは食べていただくということをぜひお願いしたいものだ、こんなふうに考えているところであります。