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久保田公述人 連合副
事務局長を務めております
久保田と申します。よろしくお願いします。
本日は、働く者を代表いたしまして、
勤労者が置かれております
状況、特に
雇用と
生活実態がどうなっているのかということにつきましてお訴えさせていただき、私
どもの
情勢認識を話させていただきたいと思います。その上で、
政府の
経済財政運営への要望につきまして申し上げたいと思います。
とりわけ強調したいことは三点でございます。
一つは
定率減税の
廃止縮小問題、
二つ目に
雇用対策の問題、そして
三つ目に
社会保障制度の
改革の三点につきまして、
連合としての
主張をお訴えさせていただきたいと思います。この
予算委員会における
審議におきましてぜひとも反映をさせていただきたいということで参っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
定率減税の
廃止縮小につきましては、
反対でございます。今の
サラリーマンのあるいは
勤労者の
生活実態ということを直視していただきまして、拙速を避けるといいますか、この
タイミングは本当に必要なのかどうかということについて、もう一度再考いただきたいという
立場でございます。
雇用対策の問題につきまして、この
予算で
最大の
問題意識を持っておりますのは、
雇用問題はもう終わったという
認識が
政府の中にあるのではないか。これは現場と大変大きなギャップがあります。後で申し上げますが、
雇用の中身の問題、そして、今後の
日本社会のあり方として、今こそ
雇用問題をしっかりやっていく時期にあるというふうに考えております。
三つ目の、
社会保障制度改革は、もはや待ったなしだというふうに思っております。ぜひ、国会の
責任においてあるいは
政治家の
責任において、
サラリーマンの将来不安の解消ということについて全力を挙げていただきたいという
立場でございます。
まず、
勤労者の
生活実態につきまして、お
手元に、
連合総研の
アンケート、あるいは
定率減税縮小廃止の
連合の
主張を、資料を用意させていただきました。お時間もございませんので後で目を通していただきたいのですが、端的に、
勤労者の
生活実態が今どうなのかということについて申し上げたいと思います。
昨年九月に実施されました日銀の
生活意識に関する
アンケート調査では、約半数の人が、一年前と比べて現在の
暮らし向きは悪くなっていると答えております。また、一年前と比べて
収入が減ったという人も約五割弱。財布のひもを締め続けているわけでございます。
その
理由としては、六割を超える
人たちが、年金や
社会保険の給付が今後少なくなるんじゃないかという不安を抱えています。また、六割弱の人が、将来の
仕事や
収入への不安があると答えています。また、四割強の
人たちが、将来増税されるのではないか、
社会保障費の負担が引き上げられるのではないかという不安を持っているということが明らかになっております。
内需主導型の
経済に向かうために、まず、今最も大事なことは、民のかまどといいますか、
個人消費の圧倒的多数を占める、そして、
日本の
雇用労働者の八割が
サラリーマンでありますが、その
サラリーマンの日常の
生活の安定と、
雇用の不安をしっかり解消し、しかも、将来への、
社会保障を含めた老後の不安を、安心できるそういう
制度をつくるということが第一義にあるべきではないかと考えています。
連合のシンクタンク、
連合総研がやりましたこの
手元の
アンケートでも、今申し上げた
職場、
賃金の
実態は如実に出ております。勤め先での
仕事の先行きや
労働条件が下がるんじゃないかと思っている人は、
回答者の何と六割を占めております。
自分が将来失業するんじゃないかと不安におびえる人も五人に一人の割合でおりますし、
従業員百人未満の企業では約三割が失業不安を抱えております。
雇用の不安というのは実は全く解消されていないというのが
実態でございます。
所得もそうです。
勤労者世帯の可
処分所得は五年連続で下がり続けているというのが
政府のデータでも明らかになっています。私
どもの
調査でも、
自分の
賃金が一年前と比べて減ったという人が三割を超えております。
一方で、
職場での働き方のアンバランスが
拡大をしています。
長期失業者が大変ふえている一方で、今職についている
人たちは、ぎりぎりの人数で
仕事をしております
関係から、実は大変忙しい。
不払い残業、いわゆる
サービス残業の横行はとまっておりません。
連合が昨年十一月に
不払い残業相談ダイヤルというのをやりましたけれ
ども、もう朝から晩まで電話がひっきりなしでございます。
連合総研の
アンケートでも、きっちり残業代が支払われているという回答を寄せた方は五割以下でございまして、労基法違反とも言える行為が、企業
規模にかかわらず依然として存在をしております。一たん残業の打刻をして、その後
仕事をするなんというひどい例もこの相談ダイヤルには寄せられておりました。
連合としても、徹底して労働組合としての改善の努力をいたしますが、それでも改善されない場合は内部告発辞さずということを明言しながら今
職場で取り組んでいる最中でございますが、法の遵守の
立場から、労働基準監督行政をぜひ強化していただきたいというふうに思っております。
政府は、一貫して
景気は堅調に回復していると
主張されておりますが、私
どもの実感と全く違います。今、我々の実感は、企業の業績回復が
自分の
生活の改善に結びついていないということに尽きるわけでございます。OECDの労働組合諮問
委員会の会議で、
経済総局長も、
日本の
経済の問題は企業の
所得が家計部門に移転していないことに尽きるという指摘をされております。全くそのとおりだと思っています。働く者に、今、
景気回復の実感はありません。
生活が向上していっているという実感がない、そこに
最大の課題がございます。
政府の
経済財政運営につきまして、小泉政権の成果は何か。さまざまな成果が上がっていると言われていますが、問題を先送りし、しかも国民に痛みを押しつけて、構造
改革という名の
市場万能主義が横行していったのではないかという懸念を持っております。
財政再建も大事でありますが、余りに最優先にし過ぎますとさまざまなデメリットも出てまいります。
しかも、今、我々労働組合の
問題意識の
最大のポイントは二極化でございます。この
日本を支えてきた分厚い中間層といいますか、一億総中流社会と言われましたが、それが崩れかけているというのが言われているところでございます。あらゆる分野において二極化がひどくなり、
産業間、あるいは同じ
産業でも企業の間で、企業
規模間、大企業と中小企業、そして地域の間においても格差がますます広がっております。働く者の間でも、いわゆる
雇用形態間によって格差がどんどん開いています。正規社員と言われる典型社員と、パートやアルバイトや派遣労働者の非典型社員の間の格差はますます広がっています。そして、それを後押ししてきたのは、実は規制緩和という名の
政府の政策ではなかったかというふうに思います。
勤労者の
雇用や
生活、
社会保障への将来不安が続く限り、
景気の本格的な自律回復は望めないというのが
連合の
主張でございます。ぜひ耳を傾けていただきたいと思います。
政府の構造
改革は、まず国民に痛みありきでやってしまっているのではないか、抜本的な
改革は先送りという感がぬぐえません。我が国の
経済を持続的な
成長軌道に乗せるためには、まず、
雇用、
生活の安定と将来不安の解消を最優先とすべきだと考えます。自律的な
景気回復を確実に実現した上で、
財政構造の抜本的な
改革を断行し、中長期的な
財政再建を目指していくべきであると考えています。
そのためには、安心して暮らし、働ける環境をつくるための政策であり、
予算であるべきだと考えます。特に、
雇用創出や格差是正につながる政策を最優先に打ち出していただきたいと思います。国民が納得できる税制や
社会保障制度の抜本
改革を早期に実現して国民の将来不安を解消することこそが、今求められているのではないでしょうか。
そういう観点から、
定率減税問題と
雇用対策と
社会保障制度の三点につきまして御
意見を申し上げたいと思います。
まず、
定率減税の廃止縮減問題ですが、お
手元に資料を用意いたしました。国民が
雇用、
生活不安を抱えて、将来不安も解消されないまま、貯蓄を取り崩しながらの
生活を余儀なくされている中で、税や
社会保険料などの国民負担だけが相次いで引き上げられているということについて、極めて問題ではないかと考えております。特に、
定率減税の二〇〇六年一月からの段階的
縮小廃止が今回の
政府予算案に盛り込まれているということにつきましては、強く
反対の
立場から御
意見を申し上げたいと思います。
指摘すべきことは二点です。
一つは
景気への影響、
二つ目は、
所得税以外の恒久的減税の取り扱いが、もう条件が終わっているのかどうかという問題でございます。
所得税、住民税の
定率減税について定めました一九九九年の恒久的減税法では、
景気が回復したら見直すということになっておりますが、今、
景気回復だと言われても、それは実感なき
景気回復でありまして、
定率減税を
縮小廃止することは、医療費や配偶者特別控除の廃止、年金保険料や
雇用保険料の相次ぐ負担増でただでさえ負担感を感じている
勤労者の家計を直撃して、消費が冷え込んでしまいかねないという懸念を持っています。
とりわけ、
景気回復から取り残されている地域
経済、地方の
経済は大きなマイナスになりかねないと懸念をしております。今、
連合は、
定率減税問題で街頭に出ております。とりわけ、地方に行きますと、
サラリーマンの方々から大変大きな反応がございます。
連合頑張ってくれ、
生活大変だという声は、地方に行けば行くほど非常に強いものがございます。
二つ目に、
定率減税問題ですが、恒久的減税法では、
所得税、住民税の最高税率及び法人税率の引き下げも措置をされたわけでございます。これも
所得税の抜本的な見直しとセットであると書かれているわけでございまして、
政府の説明では、恒久的減税を廃止する条件がそろったと言っておりますが、では、それならば、最高税率や法人税率についても議論があってしかるべきじゃないか。しかし、この間、そうした議論は全く行われておりませんし、
政府が示されているのは、
所得税、住民税の
定率減税だけの
廃止縮小案になっております。国民が納得できるだけの議論も説明も全く欠けているんじゃないかというふうに思います。
税制の抜本的
改革を言うのであれば、ジニ係数に顕著にあらわれているように、
拡大しつつある格差をどう是正するかという視点が貫かれなければならないと考えています。明らかに我が国では税の
所得再配分機能が落ちているのではないか。これを是正するための税制
改革、
所得税の累進機能をもう一回高める、そういう見直しがあってこそ、恒久的減税法は見直しをされる時期に来たと言えるのではないかと思います。
連合は、労働者の
所得増に確実につながる
景気回復への道筋はまだ見えていないということ、そして、税制が持つ
所得再配分機能を高める視点からの抜本的
改革が行われていないこと、この二点から、恒久的減税見直しの条件はまだ満たされていないと考えております。したがって、二〇〇六年一月からの
定率減税の
廃止縮小は何としてもすべきではないということをもう一度強調させていただきたいと思います。
二点目は
雇用問題です。
雇用問題につきまして、先ほど申しましたけれ
ども、
雇用問題はもう終わったという感覚があるのではないかという
最大の
危機感を持っております。そういう意味で、この
政府予算は、
雇用対策予算は全く不十分だと言わざるを得ません。大幅な拡充を求めていきたいと思います。
二つありますが、第一は
雇用の二極化の問題、第二は若年者
雇用の問題でございます。
雇用の二極化の問題ですが、総務省の労働力
調査でも、九八年からの五年間で、典型労働者、いわゆる正規
従業員は三百七十二万人も減っておりますが、パート、派遣、契約、請負などの非典型労働者は逆に四百十万人もふえています。フリーターも二百十七万人を数えまして、将来の
経済成長や
社会保障制度への悪影響が懸念されています。
これらの非典型労働者の数の中には、労働契約を結ばずに契約上は請負や業務委託契約となっている
人たち、すなわち、
実態は極めて労働者に近い個人請負や委託労働者が多くおられます。また、パート
タイム労働者の中には、
生活費を稼ぐために多重就労を行っている場合もございます。
政府の統計では就業者がふえていると言っておりますが、中身はこういう問題でございまして、
雇用問題は解決したというのはとんでもない
認識のギャップ、誤解でございます。
連合は、非典型労働者がふえることはけしからぬ、
雇用の多様化が進むことはけしからぬと必ずしも言っているわけではございません。働く側からすれば、選択肢の
拡大という側面がございます。ただ、そのためにはしっかりしたルールをしっかり確保してもらいたい。そのキーワードは均等待遇でございます。
我が国は、ILO百号条約、これは男女同一
価値労働同一報酬の条約ですが、これを既に批准しています。すべての労働者に、公正な
賃金、あるいはいかなる差別もない同一
価値の労働者についての同一報酬を規定している。
政府はこれを誠実に実現すべき国際的
責任も負っていると思います。
連合も、均等待遇の実現をこの春季
生活闘争の中で最重点課題として位置づけておりまして、パート
タイマーの組織化、条件改善、今
職場で盛んに取り組んでおります。同時に、パート・有期契約労働法の制定を求めておりまして、昨年六月に民主党が提出をしていただきましたパート労働法の実現を切に願うものでございます。均等待遇というルールをしっかりした上で
雇用形態の多様化やそういうものに対応するということがなければ、どこまでも二極化は進んでいく、そして、将来の
社会保障や若い
人たちの生涯にわたる
生活というものはこれから大変なことになっていくんじゃないかという危惧を持っております。
若年者
雇用問題に移ります。
この部分は、
政府とも問題の意識は同じであろうと期待しておりますけれ
ども、問題は、対策が十分かどうかということでございます。
フリーターの急増やニートの存在というのは、我が国の中長期の競争力や
社会保障や担税力や社会の活力さらには治安など、さまざまな問題につながりかねない深刻な問題だと思っております。UFJ総研の試算によりますと、税収や消費などの
経済的な損失は十兆円以上というふうにされています。若年者問題は、社会全体として取り組むことが重要であると考えています。
フリーター対策でございますが、フリーターは働く意思がございますので、
雇用機会の確保が重要となります。さきに
連合と
日本経団連のトップ懇談会でも確認したところでございますが、若年者対策の必要性については労使ともに
問題意識を持っておりますので、
政府としても、余力のある企業に対して、若年者の
雇用を促進するような施策をぜひ強化していただきたいと思います。トライアル
雇用やインターンシップ、キャリアコンサルタントの養成、増員につきましては大幅に拡充していただきたいと思います。
ジョブカフェにつきましても、現在、各都道府県に一カ所設置とされておりますが、その設置数をもっとふやしていただきたい。広域行政三百カ所ぐらいにふやしていただきたい。そして、相談機能と紹介機能がきちんとリンクをしたワンストップサービスが提供されるように機能強化を図るべきだと思います。
ニート問題への対応については、これは大変難しい問題だと思っておりますが、昔のように、おやじの背中を見て育つような環境条件が非常に薄れています。ただ、やはり親が
雇用と
生活の不安におびえるような環境の中では、その子供たちが将来に希望が持てないということになっていくのではないかというふうに考えております。
最も大事なことは、学校教育における職業観や勤労観の醸成ということがやはり中核になるのではないかというふうに思っております。既に幾つかの県で行われていますが、中学校や高校の授業で一週間くらい
職場体験をさせる試みが行われています。こうしたものへの支援を拡充させることは大変重要だと思います。受け入れ先の企業を探すのに今苦労しているようでございますが、企業に対するインセンティブな
ども考えていただきまして、
連合としても、教育現場への講師派遣や若年者の
仕事探し支援など、労働組合としても協力できるところは積極的に協力をしてまいりたいというふうに思います。
その点で、地域労使就職支援機構というのを、
予算をつけていただきまして、今労使で運営しておりますが、ここをどう活用するかという視点をお訴えさせていただきたいと思います。学生やニート等に
職場経験をさせる受け入れ側企業との橋渡しをする、そして、若年者への勤労意識の啓発や適職相談を行うコーディネート機関として、この地域労使就職支援機構はふさわしい組織ではないかと考えております。既に一部の機構では実施しているところもございまして、各県の労使共同で若年者対策に取り組む機関の
一つとしてこの地域労使就職支援機構を位置づけていただくとともに、十分な継続した
予算措置をお願い申し上げたいと思います。
最後、
三つ目の視点です。
社会保障制度の抜本
改革について申し上げたいと思います。
昨年の年金
制度の
改革におきましては、結局、年金保険料の引き上げと給付の削減だけが決定をされまして、
制度の抜本
改革を見送られたということは極めて残念だ、問題であったと考えております。厚生年金の空洞化、国民年金の空洞化はとまっておりません。その結果、
社会保障制度に対する国民の信頼が全く回復されずに、国民年金の未納率は一層
拡大している現状にあるんじゃないかというふうに思っています。
私
ども連合にとって、昨年の年金
制度改革の唯一の収穫は、労使代表が入って、
連合の笹森会長が入っておりますが、年金、医療、介護の
社会保障制度を総合的かつ一体的に見直すための
社会保障制度のあり方に関する懇談会を設置していただいたことだと考えております。この懇談会において、実効ある検討と、その結果を
最大限に尊重した
社会保障制度の抜本
改革を実現することをお願いいたしたいと思います。
もう時間がございません。
連合としては、
社会保険料の一五%を超える以内に抜本
改革をすべしだというふうに考えておりまして、この懇談会に並行して、この国会におきましても、党派を超えた検討の場を設置されるよう切にお願いを申し上げたいと思います。
サラリーマン、
勤労者は本当に将来不安の解消を願っております。国会の先生方の決断と、そして、現在の
社会保障制度の問題点につきまして本当に真剣に考えていただきまして、ぜひこの国会の場で安心できる
社会保障制度の
改革をなし遂げていただきたいというふうに思います。
もう
一つ、この国会におきましては介護保険改正案が
審議されることになっておりますが、この改正法案には、被保険者、給付対象者の
拡大について附則に検討条項がついておりますが、この内容では、二〇〇九年度からの適用
拡大があいまいになったままでございます。昨年の年金
制度改革における先送り体質と同じことが出ているのではないかと危惧をいたします。
連合は、
制度発足当初から、被保険者、すなわち四十歳以上の被保険者と六十五歳以上の給付対象者につきまして、普遍主義という視点から、年齢で限定すべきではないとずっと一貫して
主張し続けてまいりました。ぜひ、二〇〇九年度に適用
拡大を行うことを明確にしていただきたいというふうに思います。被保険者の範囲につきましては、四十歳以上から二十歳以上への
拡大の道筋をこの国会でつけていただきたいと切に要望いたしたいと思います。
以上、
勤労者の厳しい
雇用、
生活実態を踏まえまして、働く者を代表して、この
政府予算案を
勤労者国民の
生活不安、将来不安を払拭する
予算に組み替えていただきたいということを申し上げまして、
連合を代表して
意見といたします。
ありがとうございました。(拍手)