○中塚
委員 総裁からお願いをされましたが、これは私に対してというよりは、ここの
委員室にいらっしゃる
皆さんに対してのお願いであるというふうに理解をいたします。
いずれにしても、やはり
金融政策はちゃんと
金融政策として独立をしてやっていく。くれぐれも
政府の
政策によって自縄自縛に陥るようなことがないように。かつて消費税が導入をされるときに、あのときに金利の引き上げということができなかった、そのことが結果としてバブル経済を生んだと言う方もいらっしゃるわけですね。だから、
政府の経済財政運営というものと
日本銀行の
金融政策というものは別だと、その上でちゃんと御判断をいただきたい。
きょうは時間がないのでもう聞けないんですが、例えば、郵貯が民営化される、簡保が民営化される、そうしたら、
民間会社になってしまえば、ポートフォリオはおのおのの
会社に任せるということになる。だったら、今郵貯が持っている国債、簡保が持っている国債、だれが買うんだということが
議論になってくるかもしれない。すぐ、短絡的に、簡単に
日本銀行に買わせろという話だって出てこないとは限りませんね。もちろん、法律ではやっちゃ
いかぬということになっているから、直接引き受けなんということはないと思いますが。でも、あの手この手を使って、
日本銀行に国債を買わせろという圧力だって来ないとは限らない。そういった意味で、ぜひとも
日本銀行の総裁には、日銀の
政策の独立性ということを強く強く求めておきたいというふうに思います。
残りの時間で、偽造キャッシュカードの被害の問題をやりたいと思っています。
総理、
二枚目の紙をちょっと見ていただきたいんですが、私は、この偽造キャッシュカードの問題を去年の三月三十一日、
財務金融委員会で取り上げました。それで、本当にこんな不条理な話はない、不合理な話はない、こんなに被害者が哀れな話はないというふうに思っているんです。
この絵を見ていただきますと、まずA銀行というのがある。ここの下に書いてある人はA銀行の預金者で、A銀行のキャッシュカードを持っているんですね。このキャッシュカードが偽造されて、B銀行から
お金が引き出されていく。偽造カードによってB銀行から
お金が引き出されていくということなんですが、この事件の被害者は一体だれかということになる。この事件の被害者は、何と預金者じゃないんですね。キャッシュカードを偽造されるというのは電磁的記録不正作出という罪名になるんですが、その電磁的記録不正作出の保護法益、要は法律が守っているものは
社会的信頼である。そして加えて、データ自体は銀行のものだということになっていて、カードを偽造されたら、この被害者というのは銀行になるんです。
もう
一つ、B銀行から
お金が抜かれるということになるんですが、この場合の被害者は一体だれかということになると、実はこれはB銀行なんですね。B銀行のATMから
お金を抜いたということで、このB銀行に対する窃盗罪ということになってしまう。というわけで、
お金をとられた人は実は被害者にならないんです。法律上そうなっているんですね。だから、実質的な意味でいうところの被害者の方は、預金を抜かれた方は被害届も出せないんです。
このことを去年三月三十一日、
財務金融委員会で取り上げて、
政府の方でちゃんとそこは対応していただきました。ちゃんと銀行に被害届を出させるという
方向になった。それを受けて、先日やっとそのスキミングの犯人が逮捕されたんですね。
犯人が悪いのは当然ですから、捕まって当たり前ということもあるんですけれども、ところが、やはり踏んだりけったりで、救われないのはこの
お金をとられた人なわけなんです。刑事の問題としては、被害者じゃな
いから被害届も出せない。それで今度は、
お金のやりとりは民事の問題になるんですけれども、民事は対等だという話になってしまう。先ほど石田
委員がお話をされていました。銀行と預金者とどっちに過失責任があるのかということが問われるようになるんですけれども、ほとんどの場合、預金者の方が
自分が無過失であったということを証明するのは困難なんですね。だから、そういった意味で、何かやはりこれは救済策を講じてやらにゃ
いかぬということだと思います。
資料の三枚目なんですけれども、これは実はジャーナルというふうにいいまして、このジャーナルというのは何かといえば、ATMの中に、
お金を引き出したときに、こういう写しが残るんです。トイレットペーパーみたいなロールペーパーになっているんです。だから、ここにみんなキャッシュカードがあるわけなんですね。この三枚目の紙は、よく見ていただくと、この黒く塗りつぶした右のところにキャッシュカードと書いてあるのがおわかりいただけると思うんですが、これは真正のキャッシュカードで抜いたものなわけです。
対して、もう一枚めくっていただいて、四枚目にお示しをするジャーナルのコピーは、全部偽造カードなんです。偽造カードですから、ここのところが全部真っ黒になっていますね。この四枚目ですが、この紙を見ていただくとおわかりのとおりで、字なんか出てこないですね。このカードの上部、
数字の書いてある上のところは真っ黒に塗りつぶされている。真っ黒に塗りつぶされているというのはどういうことかというと、真っ白なカードだということなんです。要は、偽造用のカードですね。スキミングの犯人というのは、こういう偽造用のカードを大量につくって、そしてそのカードを何十枚と持ってATMに行って、長時間にわたってどんどんとこうやって
お金を抜いていく、これが実は被害の
実態なわけなんです。
ここまでお話しして、
総理は、こんなばかな話はないというふうに思っていただけると思います。何せ、
お金をとられた人が被害者にならないわけですからね。これはやはりちゃんと法整備をしなきゃ
いかぬということです。これは本当なんです。ちゃんと警察庁あるいは法務省の方に、後で南野
法務大臣にお聞きをいただければいいんですが、今の
日本の法律ではそういうことになっているんです。
お金をとられた人は被害者にならないんですね。その上で裁判をしたって、ほとんどその
お金が返ってくることはないんですね。だから、これだけ
社会問題になってしまっているということなんです。
五枚目、これはある銀行のカード約款です。キャッシュカードの約款をコピーして持ってきております。どんな銀行も似たり寄ったりのカード約款ということになっているんですが、このカード約款の(二)の真ん中ぐらいを見ていただきたいんですけれども、入力された暗証と届け出の暗証との一致を確認した上は、カードまたは暗証につき偽造、変造、盗用その他の事故があっても、そのために生じた損害については、当行及び入金提携先、出金提携先、カード振り込み提携先は責任を負いませんと書いてある。偽造カードであっても、暗証番号さえ合っていれば銀行は責任を負わないということが書いてあるんです、この約款に。これを
総理は、こんなばかな話はないというふうに思っていただけると思うんですね。
時間がなくなってまいりました。三つのことを伺いたいと思う。
まず、こういう銀行の姿勢をどういうふうにお
考えになるか。偽造キャッシュカードであったって、暗証番号さえちゃんと確認できれば、そのことについて銀行は責めを負わぬと。
二番目、偽造されるようなカードを野放しにしておいていいのか。
どっちに過失があるか、銀行に過失があるか、あるいは預金者に過失があるか、それを争うわけなんですが、じゃ、果たして、そんなぽこぽこ偽造されるようなカードを銀行がつくっている、つくらせているということについて過失責任はないのかということですね。暗証番号さえ合えば
お金を引き出して、もうそれで責任を負わないと言いますが、じゃ、何でATMにはカメラがついているんだということにもなるわけですね。だから、あくまで銀行が銀行側の過失をでき得る限り排除する努力というものをしていたかどうかということになれば、やはり私は銀行に対してその過失が全くないというふうには言えないと思うわけなんです。
そして、最後ですが、銀行と預金者が果たして本当に対等だというふうに言えるのかということなわけですね。
それは、民事上は対等かもしれません。でも、銀行と預金者はやはり非対称ですね。それが対等であるなんということはあり得ない。無過失かあるいは過失があるかの挙証責任を預金者に負わせる、被害者に負わせるというのは、やはりこれは無理があるというふうに思います。その被害者が、
自分が無過失であるということを証明する手だて、手段、そしてそれにかかるコスト、そんなことを
考えると、ほとんどそれは無理なんですね。だから、私は、無過失であるということの挙証責任については、預金者じゃなくて銀行に負わせるようにするべきだというふうに思います。
具体的な法律の改正としては、まず第一に、被害者が本当の意味での被害者になるように法律改正をすることですね。それが第一点。第二点目は、どちらに過失責任があるかということを問われるときに、この過失責任の挙証は銀行にあるということ。この二つを法改正するべきだと思いますが、
いかがでしょうか。
〔茂木
委員長代理退席、
委員長着席〕