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山崎参考人 おはようございます。どうもありがとうございます。
本日は
郵政民営化につきましてお話をさせていただくんですが、ちょっとこちらをごらんいただきたいんです。一九九九年に当時の
小泉議員が松沢議員と書かれました「
郵政民営化論」。
郵政民営化というものについての
国民の負託ということについて、こういった本で書かれていること、それをまず検証するということが私は非常に重要なことなのではないか。
この本の序文でございますが、私はきょう、二種類資料を準備しております。こちらの資料と、それからこちらも参考資料でございますので、こちらの、横書きのA4の方の資料、こちらには後の方にさらに二ページほどつけておりまして、こちらの括弧書きの中を読ませていただきます。
「
郵政三
事業の
民営化は、」「各
特殊法人に投融資を行う国営
金融機関・
財政投融資制度の抜本的
改革にもつながるのだ。」こう書いております。国営
金融機関、
財投制度の抜本
改革が目的なり。次のページをお繰りいただきますと、「この
改革は、
郵政省のみならず、大蔵省をはじめ全省庁がいやがる
改革であろう。」
果たして、今回の
民営化案がこの一番のマニフェストに沿ったものであるのかということが、
国民の負託にこたえているのかという点につきまして非常に重要な問題かと思います。
それでは、まず、ここで大命題として振られました
財政投融資の問題、これにつきまして、去年九月十日発表されました
基本方針そのほか、
財政投融資あるいは財務省という
言葉自体、全く私は発見ができておりません。
この
財政投融資の問題というのは何かということを簡単に申し上げさせていただきませば、財務省理財局が貸し手となり、
特殊法人等を借り手といたします
世界最大の国営
金融機関、つまり、この
日本の公的
金融における
不良債権問題でございます。
よく、この
不良債権問題では、貸し手と借り手ということが言われます。貸し手は銀行であり、借り手は企業でございます。それでは、この公的な
不良債権問題についてはどういう用語が用いられるか。巧妙に違う用語が使われております。入り口、出口、あるいは
本丸という
言葉が使われております。どうも、入り口というのが
郵貯、簡保。そして、実は公的年金も入り口でございます。この入り口に責任があるのでしょうか。
お金を貸す主体は何か。これは財務省理財局でございます。担当部署、
財政投融資総括課等、定員百八名の部隊が幾らの
お金を貸しておるのか。メガバンク四行、今、全部で二百兆円しか
日本で貸し付けをしておりません、どんどん
お金を減らして。この理財局による貸付残高は、三百六十兆円、およそその二倍に及ぶわけです。
財政投融資というのは、
財政的目的を
金融的手段によって達成する。
金融とは何か。与信の審査をし、きちっと貸し付けをし、業務をモニターし、そして何よりも、貸し金と利息を回収するというのが
金融の
基本機能であります。果たして、この理財局という部署はこの義務を今まで果たしてきたのでしょうか。
道路四公団の負債は全部で四十兆円。NTT、
日本最大の負債を持つ企業の三倍でございます。そのうち三十兆円は理財局が貸し付けをしております。本四架橋公団、四兆五千億ほどの負債がございます。利払いが一千百億、料金収入は何と八百億円です。利払いすらできないから、そのほか費用そして利息が加わって、元本が雪だるま式に膨らむ。これは
民間の
不良債権基準でいえば、完全なる破綻企業でございます。
企業が破綻した場合に、
民間の銀行、あるいは信金、信組がどのような目に遭ってきておるのかということは、大変な検査、そして、ある場合には逮捕、そういうこともされておりますよね。例えば、UFJ銀行がダイエーに貸し付けて損が出た、返ってこない、この責任は
預金者にあるという議論は全くないわけでございます。ところが、この
財投問題に限って言えば、
お金を
郵貯が出すから悪いんだ、
預金者が悪いという議論にすりかわっているのでございます。
預金者である
郵貯が悪いのであれば、公的年金も
民営化なさってはいかがでしょうか。
そういうふうに考えますれば、こちらの方、今簡単に申し上げたのはこの一番、「問題の本質」のところでございます。すなわち、
本丸は理財局なり、
本丸を攻めずしてこの問題は終わらないということでございます。
そして、この
不良債権が生まれた問題、確かに、私は、これはいろいろと言いわけはあると思います。いろいろ、政官財、自分
たちでできなかった。しかし、金貸しをやる限りはどのような圧力があってもきちっとした回収をする、これは
民間銀行に対して厳しい
金融行政の中でやってきたことではございませんか。それと同じことが身内の財務省には全くできていないということが今の行政の最大の問題。そして、借り手である
特殊法人等々にも、返済の意思すらない、ガバナンスは全くない、税金で埋めてもらえばいい、こういうことがありますから、大変な
財政赤字が膨らむ。これを放置しておいてほかのところの、例えば義務教育を削る、こういうことはあってはならないことというふうに私は思っております。
そして、官から官への資金の
流れ、これは後で詳しく申し上げますが、実は全く変わっておりません。
財投債というものがございます。これは国債の一種、何と四十五兆円。三十兆円枠、四十兆円枠と言っていたいわゆる新規財源国債をはるかに上回る金額を今でも理財局は発行し、九割を年金、簡保、
郵貯に強制的に買わせ、その
お金は同様に
特殊法人に
流れておるわけでございますから、官から民への資金の
流れがある、
財投改革があった、真っ赤なうそでございます。これは、同じように、
財投債という名の国債をこれから一般に、さらに市場からも求めてどんどん
特殊法人に貸していくという構造は変化はございません。
そういった
意味では、重複をいたしますが、
郵政民営化の
国民へのメリットとして言われていること
一つ一つを検証していきますと、まず一番目、三百五十兆円の
郵政資金が官から民にこれから
流れるのか、これはあり得ません。国債、
財投債でのファイナンスは従前どおり続く。
二番目、極めて重要な部分でございますが、
郵便局は便利になる、コンビニになり便利になる、果たして
本当かということでございます。全国津々浦々に、農協すらない地域に二万六千もの
郵便局があり、これが
日本の近代
生活、さらには明治以来の発展を支えてきた、まさに国土の均衡ある発展の重要な担い手はこの
郵便局であったというのは、これは言うまでもないことであろうと思います。
既に、前島密等々、十九世紀、明治時代に勘考したときに、郵便
事業だけでは全国ネットワークをもう維持することはできない、そのときに何を兼業させるのか。トラックか、何なのか。スイスのようにトラックをやるのか。そうではなくて、
金融事業をやったことによって、
国民にとっては、郵便だけではない、不可欠な
お金を預けること、保険に入ることということをやったわけでございます。それによって
日本国は非常に大きな発展をしてきた。これは、今の中国の苦しみと比べればわかるわけでございます。農村には金がないだけではない、年金もない、保険もない、給食も満足にない。でも、それ以上に、
郵貯はない、
郵便局はない、貯金も保険もないわけでございます。果たして、これから
郵貯と簡保を完全に切り離して一〇〇%
本当に
政府と全く
関係のないものにして、郵便
事業だけで成り立つのでしょうか。もちろん成り立たないわけでございます。
ということは、後でも述べますが、さらにこの
郵貯銀行というものが破綻をすれば、さらに
国民負担はふえますから、当然のことながら、縮小、廃止。
民の本質は、もうからないところはやらないことです。もうかるところだけを高い金をチャージするのが民であり、それが一部株主にだけ帰属するのが民というものの本質でございます。公はそうではありません。
国民すべてに同じ機能を提供し、同じ郵便料金を提供するというのが、これが公の役割でございます。
残念ながら、このままこの
郵政民営化というのが通れば、やはり
日本の戦後のすばらしい発展の原動力であった国土の均衡ある発展というものは崩壊をしていく。そして、これからの少子高齢化、一言で言えば東京が一番
財政が苦しくなります。そのときに、みんなに喜んで
地方に住んでもらわなきゃいけない時代にこの
国民の大事なインフラをなくしていいのか、私は非常に疑問に思います。
次のページ。小さな
政府になるのか。これは先ほど
田村先生からもう答えがありました。税金を納めているのは
郵貯であって、
民間銀行ではないわけです。もうこれで自明のことです。
公務員数にも入っておりません。
そして、潜在的な
国民負担は減るのか。これは幾つかのルートですべてノーと申し上げてよろしいと思います。
一つは、この
財政投融資の
特殊法人への財務省理財局による放漫融資が続くということですから、そこからの
財政赤字が恐らく一番大きな項目になると思います。そして、新たにできる国営の郵便貯金銀行、
民営化と称しながら国が一〇〇%保有する国営銀行を新たにつくるというのが、今回の
民営化案が今までのNTTあるいはJRと全く違うところです。新しい機関をつくるわけでございます。
これは、試算によりますと五十兆円の資産を持つメガバンクであって、一%の利ざやで五千億円を稼ぐそうです。すごいメガバンクですね。しかも、今人はだれもいない、これから雇ってくる。何か聞いたような話でございます。楽天イーグルスがことし絶対優勝するというようなものでございまして、
本当にそんなことあるんですかと。
百年の伝統を持つメガバンクがすべて失敗をしたこの旧来の二十世紀型のメガバンクビジネスモデルを、二十一世紀、これからつくって、うまくいったらどうなるか。地域
金融機関はほとんど崩壊し、倒産をする、破綻をする。そこからの
財政負担。そして、そこで支えられている地域の中小企業が共倒れをしていく。地域
経済は一層疲弊をするということは明らかであります。
当然のように、失敗をしてしまった、破綻をした。そうしたときには、上場益どころではありません。この五十兆円が新たな
不良債権、
財政負担、
国民負担を生むということでございますから、
国民負担は今回の
民営化によって増大をしていくということでございます。
それでは、なぜこのようなことをやらなくてはいけないのか。あるいは、
公社のままでいいのか。私は、それはそうではないと思います。それを四番目に説明をさせていただきます。
かつて、
財政投融資が極めて有効な時期がございました。高速道路でも、名神、東名まではよろしゅうございました。新幹線まではよろしゅうございました。そのときは、財務省が貸しても、各種
特殊法人は国債プラスアルファ一%を超えるリターンをちゃんと
郵貯、簡保に返してきた。
財政投融資は国家の制度として七〇年代まではうまくいったと申し上げられましょう。ところが、八〇年代以降、資金需要は減る、実は資産の内容はどんどん劣化をしていくわけです。
このときに、財務省理財局がきちんとした銀行であったら何をするか。資産の時価評価、洗い直し、損失の早い処理。ということは、損失が出るわけですから、高い利回りを
郵貯、簡保、年金に提示してはいけないわけです。理財局がやったことは、資産の中身はぼろぼろ、二、三割金は返ってこないのに、利回りをどんどん高くして金を集めてつぶれた信組と同じようなことをやっていたということであって、これは
預金者の責任というよりもやはり銀行である理財局の責任である。
しかし、この
現実を考えますと、実際に
財投改革で国債の利回りしか回らなくなった
郵貯、どうやってプラスアルファを稼いでいくんですかというのが今の
公社に課された最大の課題でございます。それに対する
政府のお答えは、メガバンクをつくること。それは、先ほど申し上げましたように、うまくいかないモデル。
二番目、私、提案をいたしておりますのは、中小企業、個人に
お金が回る共生型、ともに生きるシステムとしての証券化システムを
日本でも本格的に導入をしてはいかがかということでございます。これは後で次のページで申し上げますが、官から民へということではなくて、公と私のパートナーシップでございます。具体的にどういうものであるのかについて若干次のページで御説明をさせていただきます。
メガバンクモデルの問題というのは、大きいところが小さいところを全部食べてしまう、なくなってしまう。そうなるとどうなるか。まさにアメリカの大恐慌がそうでございました。民しかなかった
経済で銀行が全部つぶれてしまった、そのときにアメリカはどうしたか。公的
金融機関を
政府部門として一九三八年につくりました。それがファニーメイ、これが証券化のための、そして住宅ローンに資金を供給するためのまさに
政府機関。それが大きくなり、ファニーメイが
民営化し、そのかわりに
政府機関としてジニーメイができ、さらにフレディマックができた。今これが幾らか。四百兆円のサイズでございます。
日本は、メガバンクが破綻した後にわざわざ全部を
民間銀行にしてしまうということは、複線化すべき
金融システムを単線に変えてしまおうということでございます。
なぜ、この証券化が共生型かと申しますと、実はそこにはいろいろな参加者が来る。一番今
経済の中で
お金が必要なのは
民間企業、しかも中小企業、そして個人でございます。商工ローンしか借りられない中小企業をいかに救うのか。そして、そこに
お金を貸すべき信金、信組がペイオフで苦しむ、いかにここに資金を供給すべきか、これが大きな課題です。
そのためには、商工中金、中小企業
金融公庫あるいは住宅
金融公庫、既に一部証券化をやっております。つまり、そこが、個人向けの小さなローンを信金、信組、地域
金融機関が買ってきて、十億円のポートフォリオを例えば千買ってくれば一兆円になります。大きくして
リスクを小さくして、それを機関投資家である、そしてこのときに三百五十兆円の
郵政が、二割でも
お金を向ければ七十兆円です。中小企業融資、この国は百八十兆しかないのが、七十兆、三割ふえるわけです。それでいかに地域が潤うか、そしていかに信金、信組、地銀が救われるのか、そういうことでございます。
こういう仕組みは、アメリカは、大恐慌の民オンリーの
金融システムの非常に手痛い反省から生んだ。つまり、公が提供する
金融インフラ、公正、ディスクロージャー、取引所というシステムと同時にこの証券化というシステムをつくった。
日本もその
考え方はありますが、まだ五兆円しかない。そこに
郵政資金を投入すれば、これは形としては格付の高い債券を買うだけですから、十人人をふやせば組織
改革は終わりでございます。
ですから、それが私は
郵政民営化の答えである。
民営化をするよりも
公社を、しかも
郵貯・簡保
事業を財務省から
独立をさせ国債を買ってもいいんです。ただ、自己の意思として、
リスク許容度に合わせて、年金は少なく、簡保はより多く、
郵貯は恐らく七、八割ぐらいは国債にする、これはアセットマネジメント上当たり前。その残りの二、三割の金でどれだけの金を稼ぐか。そこを、この証券化を中心としたスキームをやる。実際に農林中金がやっている、これは
日本の
金融機関最高格付の農林中金、一切自分でほとんど貸し付けしていない、ほとんど国債とこういう証券化運用で
現実にその成果を上げているわけですから、既に成功したビジネスモデルがそこにあるわけですから、それを使えばよろしいのではないかと思っております。
最後になります。
結局、
郵政民営化というのは、私も非常に期待をした。
郵政民営化、ここから国が変わる。どういうことなんだろうか、こういう取りまとめをせざるを得ないのかな。財務省を中心とした
財政投融資を抜本的に
改革するどころか、過去の
財政金融政策の過ちを
郵政に押しつける、これは私はスケープゴートの政策であると言わざるを得ないと思います。
そして、問題を起こした財務省あるいはその親戚の
金融庁の権限は
現実には大幅に強化いたします。まあ、卑俗な言い方をすれば、マッチポンプで焼け太りができる。失敗して破綻した銀行が
預金をしてくれている優良企業を乗っ取るのと同じようなことが今行われようとしているということ、そしてこれが
日本の
本当の強さを殺してしまう。これから中国とも
経済競争していかなきゃいけない、強くならなきゃいけない
日本の強みをなくしてしまうのではないか。
そういうことで、私は、この
郵政民営化、今回の案には反対でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)