○中根康浩君
民主党の中根康浩です。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表し、ただいま
議題となりました
障害者自立支援法案につきまして質問をいたします。(
拍手)
まず、質問に先立ちまして、昨日、JR福知山線尼崎—塚口駅間で、列車が脱線し、数多くの死傷者を出す悲惨な事故が発生しました。
亡くなられた
方々の御冥福をお祈りし、御遺族に哀悼の意を表すとともに、けがを負われた
方々の一日も早い御回復を心よりお祈り申し上げます。
また、現地で必死の救命活動に当たっておられる
方々の御苦労に対し、心より感謝を申し上げます。
民主党は、今回の事故に関して対策本部を
設置し、徹底的な原因究明と抜本的な安全対策の確立に向けて全力を挙げてまいる所存であります。
今回のような悲惨な事故が起きないよう、事故の原因を徹底的に究明し、抜本的な安全対策を確立すべきであると考えますが、国土交通大臣の見解をお伺いいたします。
さて、本題に入ります。
二〇〇三年四月から、利用者の自己決定を尊重し、利用者本位のサービスを提供する支援費
制度がスタートいたしました。
ところが、ホームヘルプの利用増加や知的障害者のガイドヘルプの増加もあり、初年度からいきなり約百二十八億円の財源不足となりました。二〇〇四年度になっても、ホームヘルプ、ガイドヘルプの利用は増大し続け、最終的に約二百五十億円の財源不足となりました。
なぜ予算不足となったか。
まず第一の
理由は、厚生労働省が利用量の増加を読み誤ったことにあると考えます。厚労省が読み違えたのは、それまでホームヘルプやガイドヘルプのニーズが潜在的に存在していても利用できずに、厳しい
状況を強いられてきた障害者や、その家族の生活の実態に正面から向き合うことがなかったということを意味しているのではないでしょうか。
サービスが過剰に利用されたのではなく、必要でも使えなかった人たちがいかに多くいたかということですし、まだ
全国には、サービス提供者が少なく、サービスを使えないでいる多くの障害者がいます。これからやっとニーズが安定してくる支援費
制度を、より
充実させていくべきだとの声もあります。
支援費
制度を成功と見ているのか失敗と見ているのかを含めて、導入以来二年間の支援費
制度をどのように総括しているか、尾辻厚生労働大臣にお尋ねいたします。(
拍手)
提案されている
障害者自立支援法案は、支援費
制度が財源難に陥ったことから、同様に先行きの財政
状況が厳しい介護保険との統合を前提に、国と都道府県に費用
負担を
義務化する一方、新たに利用者に
原則一割の定率応益
負担を求めることが柱となっている障害者福祉のグランドデザインを取りまとめ、法案にしたものと理解しています。
支援費の補助は、国二分の一、都道府県四分の一でしたが、ともに予算の範囲でしか出せない裁量的経費で、不足分は市町村が
負担することになっています。
今回の自立支援法案の最大の問題の
一つは、支援費
制度の財源不足を解消するために国と都道府県
負担が二分の一と四分の一ずつの
義務的経費化されたことの裏腹に、現行の、利用者は収入に応じて
負担する応能
負担であるものを、利用するサービス量に応じて
原則一割を
負担する応益
負担を強いることになっていることです。
応益
負担を導入する
理由について、厚労省は、障害者みずからも
制度を支えるべきだと
説明しています。
二級障害年金で月六・六万円、作業所、授産施設、一般企業で働いている障害者の八〇%は年間収入十万円未満という
調査もあるように、障害者の就労
状況、所得
状況は非常に厳しく放置されたままです。この
状況での応益
負担の導入は、厚生労働省の障害者政策の怠慢を障害者に責任転嫁するものと言わざるを得ず、決して納得できるものではありません。(
拍手)
当然、応益
負担では、サービスを多く必要とする障害の重い人ほど
負担が重くなります。反面、障害程度の重い人ほど、働く機会は少なく、収入も少ないというのは自明です。
そもそも、障害者がサービス利用によって自立と
社会参加するための基本的な行動の自由を得ることは、益という考え方になじまないのではないでしょうか。
社会の側が合理的配慮を怠れば、それはむしろ差別に当たるというのが国際
社会においても共通の認識になっているのではないでしょうか。
応益
負担化は障害者施策に不適切であると考えますが、尾辻大臣の御認識をお伺いいたします。(
拍手)
既に、障害当事者や家族からは、新
制度で大幅に
負担増が強いられるのなら、サービス利用を減らすしかないというあきらめの声も上がっています。これでは、自立支援どころか、自立阻害法と言われても仕方ないのではないでしょうか。それとも、
もともとサービス利用の自己抑制がこの法案のねらいということでしょうか。
障害者施策の歴史で、一九八一年の国際障害者年以降展開されてきたノーマライゼーションの
理念推進、一九九三年の障害者基本法、一九九五年の障害者プラン、二〇〇〇年の
社会福祉法における、自己決定、施設から
地域へ、自立と
社会参加という方向性などの障害者福祉の歩みを逆行させるものと言えるのではないでしょうか。尾辻大臣の御見解をお伺いいたします。(
拍手)
また、この法案をめぐって、政府は、自立という言葉を、介助を必要とせず、一人でできるようになるという意味で使っているようにも思われます。だから、サービスを利用したければ、国に頼らず自分で稼げという理屈になるのでしょう。
障害者が求めている自立とは、施設を出て、
地域でその人らしく、人間らしく生きるということです。図らずも今回の法案によって、自立という考え方に、政府と障害当事者の間に大きな溝があることが浮き彫りにされたようです。政府の考える自立とは何か、その定義を明確に御答弁願います。(
拍手)
応益という考え方、自立という
理念について、障害当事者とかけ離れた考え方を持つ政府に、障害者の生活を白紙委任することなど到底できません。サービス共通の尺度も明らかではなく、よって障害程度区分もわからない。それぞれの区分の支給時間数は市町村にゆだねています。自分の障害はどのように認定されるのかもわからない。住んでいる場所で他の市町村と格差なくサービスが受けられるのかもわからない。これでは、障害当事者は不安でたまったものではありません。
これらの事柄は、審議に際して明らかにされるのか、尾辻大臣にお伺いいたします。
あわせて、今回法案で対象となった三障害以外の障害者に対する支援はどうするのか、お伺いをいたします。
財政基盤の弱い市町村では、経費の四分の一を
負担するのを嫌い、
審査会が事実上の給付調整機能を果たしてしまうことになるとの心配があります。
国、都道府県の補助は
義務的経費になったといっても、算定根拠は、標準的なサービス量(時間数)掛けるその
地域の程度区分ごとの障害者数であり、もし算定を誤れば、支援費の財源不足の二の舞となりかねません。
義務的経費としながらも、上限額超過分の
負担、すなわち算定の責任を市町村に押しつけています。そのツケは、結局障害者に押しつけられてしまうことになりませんか。このような危惧は当たらないのか、尾辻大臣にお伺いをいたします。
自立への第一歩は、家族への依存からの脱却です。その意味で、支援費
制度では、扶養
義務者の範囲は親、兄弟を除く配偶者と子に限定されたのに、自立支援法案では、扶養
義務者の
負担は
廃止すると言いながら、低所得者の
負担限度額の決定や減額
措置に際して、親、兄弟を含む生計を
一つにする家族の
負担を勘案することになっています。結局、世帯収入を合算して自己
負担額を決めるということに、支援費以前に逆戻りという指摘があります。
自己
負担決定に際しての扶養
義務負担を撤回し、勘案する家族の範囲を見直すよう求めますが、尾辻大臣の見解を伺います。(
拍手)
移動介護サービスは、障害者本人の
社会参加の根幹をなすものであり、支援費
制度においても利用が激増したところです。行動援護、重度訪問介護、日常生活支援以外の人の移動支援は、自立支援給付でなく、市町村の
地域生活支援事業となるようです。
もともと個別性が強く、現行の支援費で居宅サービス体系に入っていた移動介護が、なぜ切り離されて
地域生活支援事業になったのか。障害者基本法第一条の目的に明記されている、自立及び
社会参加の支援策として不可欠な移動介護は、個別給付を
原則とすべきと考えますが、尾辻大臣の御見解をお聞かせください。(
拍手)
地域生活の場として、施設から
地域への移行のための
社会資源として大切な役割を果たしてきたのがグループホームです。
障害者本人がだれとどこで暮らすかは、本人が選択すべきです。しかし、法案では、現行のグループホームを障害程度によって輪切りにし、重い人はケアホーム、中軽度の人はグループホームなどの新体系に、五年程度かけて移行することとされています。現在、障害程度が異なるグループホームの利用者は、引っ越しを迫られるのでしょうか。
また、ケアホーム、グループホームの入居者へのホームヘルパー派遣も、一律にできなくするのではなく、個別の必要性に応じた利用は認められるべきと考えますが、尾辻大臣の御
意見をお聞かせください。(
拍手)
精神障害者は、現行の支援費
制度では枠外に置かれてきました。それだけに、福祉サービスの一本化でおくれを取り戻すチャンスとの期待感もあります。
しかし、三障害のサービスを統一することで、精神障害者の通院医療に関する公費
負担制度が見直され、自立支援医療に一本化し、利用者
負担の仕組みの共通化が図られ、
原則一割
負担、所得によっては三割
負担とされそうなことで、期待が失望に変わっています。
外来通院している精神障害者の医療
制度は、精神保健福祉法により所得に
関係なく一律五%の自己
負担とされ、服薬治療を長期にわたって継続しながら、
地域で暮らすことを支えてきました。受診抑制が余儀なくされるこの医療費自己
負担増は、入院中心の精神医療から
地域社会での生活支援を目指してきたこれまでの厚労省の方針と矛盾することになるのではないでしょうか。尾辻大臣の御見解をお願いいたします。(
拍手)
障害者虐待につながる
規定を盛り込み、市町村の責務としていることは評価できます。
尾辻大臣、今後、実効性ある虐待防止策をどのように行っていくか、お示しください。
障害者虐待の実情の深刻さを見るとき、障害者虐待防止法の必要性を痛感していますが、いかがでしょうか。(
拍手)
この法案には、
負担増による財政的抑制論ばかり目立ち、目指すべき
社会像がまるで見えてきません。グランドデザイン発表からわずか四カ月で法案化され、この間、当事者の
意見を聞く機会も十分とは言えませんでした。
政府は、私たちのことを私たち抜きで決めないでくださいという当事者の声を、どのようにお受けとめになっておられるのでしょうか、お聞かせください。
小泉
政権では、ごまかし、骨抜き、看板倒ればかりで、冷たい弱肉強食的競争
社会が助長されています。
養護学校へ行ってみてください。だまさない、出し抜かない、ねたまない、純粋な
子供たちばかりです。この子らが幸せになれるかが政治の試金石です。
努力する
国民が正当に報われる共生
社会をつくることが私たちの願いです。
知的障害を持った
子供たちを見ていて、この子らはだれ一人戦争を始めようとはしない、この子たちは、もしかしたら神によって選ばれ、そして、知恵がある、力がある、地位があると思い込んでいる
人々の傲慢さを打ち砕き、一人一人違って、みんないいと教えてくれる平和の使者であり、人間
社会の天使ではないかと感じています。(
拍手)
民主党は、障害者が暮らしやすい国やまちはだれにとっても優しく温かいものになるとの思いで、障害者政策を推進してまいります。そして、そのことこそが改革の真髄であると信じています。
今、私たちが変えなければならないものは、人間観や価値観かもしれません。純粋な人間、物や金や地位によっては得られない真心や温かさが大切にされる
社会づくりが必要なのではないでしょうか。(
拍手)
この点からも
政権交代の必要性を強く訴え、質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔国務大臣北側一雄君
登壇〕