○辻
委員 民主党の辻惠でございます。
議員になってこのような
法案の
審議に立ち会うことになるとは、夢にも思っておりませんでした。人類は
社会が進歩するものだというふうに信じておりましたけれども、やはり獲得した人類の知恵についても不断の努力を重ねないと簡単に失ってしまうものなんだな、極めて危険なことはすぐ先にも起こり得るんだなという思いが強くあります。
私は、端的に言って、今回のこの
共謀罪は現代版の
治安維持法であるというふうに断じて間違いがないというふうに思います。午前中の
審議、
質疑を聞いていて、当面そういう意図はないんだ、市民
団体や労働組合やそういうところに危険が及ぶものではないんだというような誘導的な
質問があり、そしてそれに応じるような答えがありました。
治安維持法の一九二五年の本
会議、そして
委員会の
質疑でも同じ
議論がなされております。二十年たって廃止になるまで猛威を振るう
治安維持法でありましたが、そのように猛威を振るうような
状況になるなんというのは、一九二五年の時点で
提案者も思っていなかったということが読み取れます。
したがって、問題は、今願望として、市民
団体に及ぶことはないだろうとかいうことではなくて、この
法案の法規の
規定のあり方においてどういう危険性が生ずる
可能性があるのか、そもそも今、立法
目的、立法事実が存在するのか、このことを厳密にとことんやはり
審議をする、
議論をすることが絶対に必要だろう、このように思います。
手元に、一九二五年の
治安維持法の本
会議において、当時の憲政会の加藤高明内閣の若槻礼次郎内務
大臣に対して、星島二郎議員、そしてさらに三番手として鳩山一郎議員が代表
質問を行っている。
委員会質問も星島二郎議員が行っておられます。
「普通選挙を断行せんとし、貴族院改革を致さんとする現政府を支持致して居る一人であります、」星島二郎議員はこのように冒頭で述べております。「然るに其与党に属する私共が突如此
法案に、而も反対の意思を以て
質疑をしなければならぬと云ふことは、洵に遺憾至極に存ずる次第であります」「第一に本法を提出する根本の意思、而して現在政府が此
日本の
社会に対する一種の思想政策、どう云ふ風に一体考へて居られるか、どんな風に一体せられんとするのか、此根本に私は疑点を持つて居るのであります、」このように述べております。「貴族院の問題にも、婦人の参政権も、奴隷制度を否認する此公娼制度の廃止案も、有ゆる
意味に於きまして其根源をもつと立派なる
社会にしたい、もつとより良き人間らしき生活を営みたいと云ふ根柢があるから、普選が少々騒がしくも貴族院改革が少々激烈になりましても、其事態は御互が歓迎せんければならぬのであります」
普通選挙が一九二五年、同時に実施される。そして、支配秩序が揺らぐんではないかという懸念を持って、
治安維持法が、これは同時に一九二五年に制定されておりますが、そういう、これからの
社会を一体どのようにやっていくのかという、当面、今の支配政党がやりにくくなるから、だからといって治安重視の政策を持ち込めばいいんだ、そういうことではない。これは人類の歴史が、
日本の近代史の歴史が証明しているところじゃないですか。
まさに今、越境
組織犯罪条約ということで、
国際的な
犯罪があるんだというふうに云々されている。しかし、では、
日本において立法事実はあるのか、どういう立法
目的でこの
法案に対処するのか、このことを本当にきちっと問うていかなければいけないと思うんですね。
そして、今の小泉政権のもとで、強者が弱者を虐げる、二極分化してしまっている。これは
刑法の重罰化の
法案審議のときにも申し上げましたけれども、いろんな階級、階層の利害を調整して、みんなが、一億総中流と言われる、何がしかの未来に期待が抱けるかもしれないという、市民
社会が統合していた力が弱まっている。その中で、弱肉強食の論理で、強者が弱者を虐げている。多くの弱者が今あえいでいる、こういう
社会をこのままにするのか。そこにメスを入れて、どういうふうに今の二十一世紀の
日本の
社会を立て直していくのか。それこそが先に検討されなければいけないときに、強者の支配権限を強化するような
法案をあえてこの時期に持ち出すということは全く誤っている、本末転倒だろうというふうに冒頭強く申し上げたいというふうに思います。
一言で言って、
治安維持法は、結局のところ、一九二五年の制定、それに続いて一九二八年に三・一五事件があって、そして
目的遂行罪や死刑の
規定を導入しようとして、これは衆議院で否決されたんです。それを枢密院で緊急勅令という形で、一九二八年に勅令でもって
目的遂行罪を導入し、死刑を導入する。その後、どういうふうになっていったのか。一瀉千里ではありませんか。
国体の変革と私有財産の否認という
目的の
結社の結成が禁止されていた。しかし、その
結社は
日本共産党だけではなくて、どんどん広がっていって、果ては、つづり方教室をやっているようなそういう農業
団体にまで、
結社に当たるんだと。そして昭和十六年には、その
結社の外郭
団体も
処罰するという、新たな
治安維持法の改正が行われているではありませんか。
今、市民
団体を
目的としていない、そのことを言うのはたやすい。しかし、それはだれがそれを保証できるんですか。南野
大臣、それを保証できるんですか。あなたがずっと
法務大臣で指揮権をとっているわけじゃないじゃないですか。十年後、二十年後、ひとり歩きすることは明らかなわけであります。それが歴史に学ぶということであろうと思います。
この
共謀罪は、そういう
意味で、冒頭において、本当にその
意味とその危険な性格と、したがって、今立法化する
必要性があるのかということについて本当に
審議を尽くし切らなきゃいけない。この場にいる法務
委員の皆さん、そういう歴史的な場面に立ち会っているんだという自覚を、私も自覚を持って何とか
質疑を行いたいというふうに思いますし、答弁される方も本当に命がけできちっと答弁していただきたい、このように思います。
まず、具体的に
審議に入るに当たって、この場に滝実法務副
大臣がいらっしゃらない。今までの会社
法案についても刑事施設
法案についても、滝実副
大臣がいらっしゃって、政府の側の陣容が整って、答弁をされてきた。何でいらっしゃらないんですか。これは、
理由は何なんですか。今いらっしゃらない
理由は何なんですか。お答えください。