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佐々木(秀)
委員 民主党の
佐々木です。
会社法の
改正という大変壮大なこの
法案の
審議も大詰めを迎えてきたように思います。
考えてみますと、
会社、つまり、これは世界じゅうどこでも、特に
先進国はそうですけれ
ども、
企業あるいは
会社の
存在というのは、その国あるいはその
社会にさまざまな
意味で大きな大きな
意味合いを持っております。もちろん、
企業が行う
経済活動あるいは
生産活動、それがその国、
社会、あるいは国際的にもさまざまな
利益をもたらすものであることは言うまでもありません。
同時に、
会社、特に
株式会社の場合には、そのオーナーとされるのは
株主と言われているわけですけれ
ども、その
株主、あるいは取引をする先、それによる
債権者あるいは
債務者がたくさん生じます。また、
企業活動をするために多くの人が働く場を得て、そこで生活の糧を得るというようなことから考えますと、まことに
会社の
存在というのは、私は、単なる
利益追求の主体としてだけではなしに、大きな大きな
意味合いを持っている。
だからこそ、それに対する
活動の
活発化を求めるための
仕組みをつくると同時に、しかし、そうかといっても、
利益を追求するためには何をやってもいいということにはならないわけですから、そこでやはり
公正性というものが要求される。それとの
整合性を図らなければならない。そのために
会社法という
法律があるんだろう、またできなければならないと私は思っております。
ところが、
我が国の場合には、この
会社法制については、
明治三十二年につくられた
商法の中の
会社編に規定をされていたのが現在まで使われてきたということになります。しかし、
明治三十二年というと、本当に昔のことでありまして、先人がその
時代に
商法、特に
会社法制をここで
先進国の例に倣ってつくり上げたというのは、私は大変なことだったのではないかなと思って、心から改めて
敬意を表さざるを得ないわけです。
しかし、百年近くにわたって、
社会の
情勢が変わり、
経済情勢も変わり、国際的な
環境も違ってくる。これは当たり前のことであります。そうすると、当初つくられた
法規制あるいは
法制度というものも
変化を生じさせなければならないということも、これまた当然の
要請だと思います。
特に
我が国の場合には、戦前から、あの悲惨なおぞましい戦争の時期を経て、それで今から六十年前に敗戦を契機にして大きく変わった。そういうところから、さまざまなまた
時代の
変化の
要請もあったわけで、その都度、
部分的な
改正は
会社規制についてもしてきたわけですけれ
ども、しかし、
部分部分の
改正だけでは到底間に合わないというか、ここで統一的なきちんとした
法整備が必要だということからこの
会社法案がつくられることになったという、この
時代の
要請というのは私もわかります。
そして、
法制審議会でも、
専門の部門がつくられて、
専門家の方々の真剣な討議を経てこの
法案が提出されたということについては、これまた
敬意を表したいと思いますし、全体的な
評価としては、そうしたさまざまな今までの
反省点などを踏まえた上で一定の
方向が出されているということについても、
評価する面が私は非常に多いとは思います。
多いとは思いますけれ
ども、しかし、全般的に今回のこの
会社法を見ますと、この
審議が始まってからも、
同僚の
議員からも、あるいは、
参考人にも
おいでをいただいて御意見をちょうだいいたしましたけれ
ども、その中からの御
指摘があっても、やはり懸念される点も決して少なくありません。
何といっても、これだけの膨大な法条が組み込まれているわけですから、これができたからといって、どんな
会社にもうまく適用されることになるかどうかというのは、これは相当時間をかけて見てみなければわからないということになるわけですけれ
ども、同時に、せっかくつくるものですから、うまく機能してもらわなければならない。そういう点での
幾つかの懸念が、やはり皆さんから御
指摘があるように、あります。
そこで、私は、そういう点について少しおさらい的に、というのは、
審議を通じて、あるいは
同僚の
議員からも御
指摘があったことと重複するかもしれませんけれ
ども、中盤を今経た段階で、おさらい的にその点をもう一度
指摘し、あるいは御説明いただき、あるいは改善すべきところがあるなら改善の
方向を目指したい、こんなふうに考えて
質問したいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
ところで、私は今、けさの新聞一紙の朝刊を手にしているわけですけれ
ども、各紙に出ておりますように、いわゆる大
企業、
大会社と言われるカネボウが大変な
粉飾決算をしていたということが
明るみに出ておりまして、その結果として、来月の十三日から
上場を廃止されるということになってしまった。本当にこれは残念なことですね。
そしてまた、これだけではありません。さきには、例の、これもまた大
企業であります西武鉄道あるいは
国土計画でも、あの
堤会長などの役員によるこれまたいろいろな
不祥事が
明るみに出る。そのほかにも、さまざま残念ながら、
企業関係の
不祥事が相次いで出てきているわけですね。
そういうことから考えますと、例えばこれは昨年の十二月二十四日の朝日新聞の社説ですけれ
ども、
会社法の制定について、
企業活動の
自由化に資するという点では
評価するけれ
ども、自由とともに
規律が必要なんじゃないか、欠かせないのは、
企業活動を活性化させつつ、
会社に
規律を守らせて、経営の暴走を防ぐ
仕組みが必要なんじゃないかということを強調されている。私は全くそうだと思うんですね。そういう点で、やはり
幾つかの心配があるのだろうと思います。
そこで、私
どもの党からも
修正提案もされておりますので、また、私は、
幾つかの
修正だけでは足りない、この
修正協議が今進んでおるようですけれ
ども、やがてはそれを経た上で採決ということになるんだろうと思います。
私
どもの党の方針が、この
修正協議がまとまれば、全体的には賛成という
方向になるのではなかろうかと思っておりますけれ
ども、仮に私
どもが反対いたしましても、
政府提案でありますから、
与党がこれをどうしてもということになれば、これは
与党多数なんですから通ることになる。したがって、これが廃案ということにはならないわけで、この
会社法が新しくできることは間違いがないということになるわけです。
しかし、先ほど申し上げましたように、この
法律ができたとしても、今後、うまくこれが機能していかなければならないし、また、
企業としても、今の
モラルハザード、あるいは
遵法精神、これをきちんと守ってもらって
公正性を貫いてもらわなければ、これは
社会的に大変なマイナスを与えるわけです。
そういうようなことから考えますと、私は、やはりこれからも、これができた以降も、多くの
関係者が正すべきものはどこかで正すというようなことも大胆に踏み込まなければいけないだろうな、こんなふうに思っているわけです。
そこで、そういうようなことから、具体的な個別的な問題になるものですから、きょうは、主として、
提案者であります
政府の
担当者、特に
民事局長を
中心にお聞きをしていきたいと思います。
まず、今度の
改正の
一つの大きな目玉というか柱になっているものとして、従来ありました
有限会社を廃止するんだ。
有限会社については、
商法ができました後に、昭和の初期ですけれ
ども、
有限会社法という
法律がつくられて、それで
有限会社という形式が、
社員の
有限責任を
中心にしながら、しかし、
中小あるいは零細の
企業に適合する
一つの
類型としてつくられた。私は、これはなかなか日本的な知恵だったと思うんですよ。
これについては、例えば過日
参考人に来ていただいた中で、今度の
会社法改正の
中心的な方でもありました東大の
江頭教授が
参考人で
おいでになったときに、
同僚議員からの
質問に答えて、「
有限会社法制というのは大変いい
制度で、また
現実にうまく動いてきたんだと思います。」ということを言っておられるんですね。それからまた
上村参考人も、
有限会社制度というのは非常に
柔軟性がある、それからまた
閉鎖企業としての特色を持ってきた、特に同族的、家族的、閉鎖的な
企業にとっては、ある
意味では不自由さこそが重要なんだという御
指摘もあったりした。
それで、御承知のように、日本の
企業というのはほとんど九十数%が
中小企業だと言われているわけです。
有限会社というのは、言ってみれば
有限責任ですけれ
ども、しかし、
仕組みとしては、
株式会社よりもいろいろな点で
仕組みを柔軟にして、同族的、家族的あるいは小規模の
企業運営にとっては非常にやりやすいという
利点があったからこそ、今までうまく機能してきたと言われるんじゃないかと私は思うんです。
ところが、今度の
改正では、そういう
利点をむしろ
株式会社の方に入れ込むということで、
有限会社をなくして、そういう持っていたものを
株式会社にも入れて全部
株式会社にしちゃうんだと。そういうようなことから、これは後でまた
質問で出てきますけれ
ども、
株式会社の
取締役の任期、これが今まで二年であったものを、定款によっては十年まで延長できるというようなこともこの
有限会社などの要素を入れ込んだ
株式会社にするからだと。
それからまた、
資本金な
ども一円以上でいいんだと。
最低資本金制度は撤廃するということもそういうことの中に入れ込んでいるんだと言われるんだけれ
ども、さて、わざわざそういうことにすることが例えば
中小企業のためにもいいんだろうか。むしろ、私は、
身の丈に合ったようなスタイルでの
有限会社というものの方が、いろいろな
意味でも機動的なんじゃないか。
有限会社ということに対するコンプレックスだとかなんとかということも言われているというように言うんですけれ
ども、私はそんなことはないと思うんですね。
私も
弁護士時代にいろいろ
会社設立の相談なんかを受けたときには、
北海道あたりでは大体が小さい
会社ばかりですから、新しくつくろうなどというので、そんなに
資本金を大きくして大きな
会社を最初からなんということはまず難しいわけで、そうすると、私は、
身の丈に合った
有限会社の方がいいよということを勧めてきたんですね。それを、
有限会社を廃止する。さっき言ったように、
江頭参考人なんかもうまく機能してきたと言われる
有限会社をなぜここでなくさなければならないのか。
そして、その一方で、
人的会社と言われる
合名会社、
合資会社は残そうというんでしょう。ところが、実際私たちも見たり聞いたりしているところでは、
合名、
合資なんという
会社は余りないですよ。私はほとんどないと言ってもいい。これをわざわざ置かなければならないという、ここのところの理由がどうしてももう
一つ納得できないんですよ。
局長、この辺どうなんですか。もう少し説明してください。