○辻
委員 民主党の辻惠でございます。
四月二十日に、六人の参考人の方にお見えいただいて、参考人
質疑をさせていただきました。
今回の新
会社法の実質
審議を全体的に見ておられる
立場で、江頭参考人が御
発言になっております。その内容を見ると、今回主要な改正点は五点ある、
一つは
有限会社の廃止及び株式譲渡制限
会社法制の大改正、第二が
会計参与制度の創設、第三が合同
会社制度の創設、第四が合併等組織再編行為の自由化、第五が剰余金分配手続等の自由化だ、こうおっしゃって、一番目から三番目は非公開
会社の
法制の問題であって、
取締役の任期の定め方とか
監査役制度のあり方等
議論があったけれども、
一定のところで落ちついているんだ、こういう
説明をされております。
四番目、五番目は公開
会社も含めた
制度でありますが、これに関連して、江頭参考人は、
経営者に対する監督の強化、コーポレートガバナンスに関する規制強化という領域と、そしてもう一方で、株式
制度とか、あるいは組織再編、剰余金分配等の
制度を自由化するという領域があるんだ、今回取り上げているのは後者の領域なんだ、前者のコーポレートガバナンスに関する領域については、これは二〇〇一年十二月の商法改正において大改正をしているから、成果を観察している時期なんだ、今回は取り扱っていないんだ、こういうふうにおっしゃっているんですね。
つまり、非公開
会社の
法制についてどうなのかということを
一つ取り扱っているということと、主に公開
会社の問題について、
企業再編の自由化とか、そういう領域について一点取り扱っている。しかし、コーポレートガバナンスに関する領域については今回取り上げていないんだ、これは、二〇〇一年の商法改正、大改正がなされて、それを経過観察をしているんだ、こうおっしゃっているわけです。
だから、部分的なんですよね、今回の新
会社法というのは、提案している内容が部分的である。全体を統括してどういうふうな日本の
会社制度をつくっていくのかという、全体的な理想像というか、総合的な提案というのがどうもなされていないんではないか、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。
この点について、参考人のお一人である上村達男参考人は、証券取引法適用
会社法という本格的な
会社法の構想が必要なんだ、だから公開
会社法というのを改めて
制定すべきなんだ、こうおっしゃっている。そして、
企業再編
法制についても、これは大幅に自由化されているけれども、
企業結合
法制というのが欠落しているから、そこの弊害とか問題点について全部カバーできていないじゃないか、こういう御
指摘をされているんです。
ですから、今、この新
会社法の
審議に当たって、日本の
会社法制全体としての目配りをして、その中でどういう理念でそれぞれ非公開
会社、公開
会社、公開
会社についても二つの領域についてどういう手当てをしていくのかということをはっきり
議論しなければいけない、そこがこの
審議のやらなきゃいけないところだろうというふうに思っております。
この点について、私が参考人
質疑という形で江頭参考人に対してさせていただいたところ、江頭参考人は、「近時、某銀行の
企業合同におきまして、実質上一〇〇%子
会社である銀行を譲渡する、それが株主の意思表示も何らなしに、持ち株
会社であるために、親
会社である持ち株
会社の
取締役会限りでできたといったことにつきまして、いろいろ問題とする向きもあるということも存じております。」というふうに一応事実を
指摘されて、「ああいうことが起こるということは、株式交換の
制度をつくったときにもう既に予想されていたこと」なんだと。つまり、これは恐らく二〇〇一年の商法改正のことを言っているんですが、そのときにはもう実質
審議一年足らずで
制度をつくったので、どうするかということについては今後の検討課題だとそのときもされた、こう言っているんですよね。
だから、経過観察じゃなくて、今回全般的な
会社法を新設するのであれば、まさにこの株式交換
制度で予想された弊害やそういう
企業再編のシステムについて、この
会社法の中でやはり
議論しなければいけないし、新たに
法制として整備しなければいけないはずの問題なんですね。そこを先送りして論じていないというところが今回の
会社法の基本的な問題だろうと私は思わざるを得ないというふうに思います。
江頭参考人自身、今後の検討課題だとそのときもなったんだということを言いつつ、ほかにも、
第三者割り当て増資の
方法で子
会社になる、これについても
取締役会限りでできるというのは問題だ。また、対価柔軟化に伴って、その対価の性質等について誤解を招くような記載が書類にあった場合にどういう
責任を
取締役に負わせるのかという問題も、今回盛り込まれていない。そういう意味で非常に課題は多いんだ。こういうふうに、この間、四月二十日の参考人
質疑で江頭さんみずからがおっしゃっているわけですね。
これにとどまらない。江頭さんは、ことしのエコノミストの四月十一日号で、「子
会社であるUFJ銀行が優先株を発行した結果、親
会社の株主が事実上、権利を奪われた」「持ち株
会社を作りさえすれば、親
会社の株主の権利はほとんど奪える。まさに今回のUFJのようなことが起きるからけしからんと、われわれ学者は強く主張しました。」と。二〇〇一年の商法改正のときに、今回のUFJ銀行のような問題、黄金株の発行というような問題が生じるということを懸念して、それじゃいけないんだというふうに強く主張したというふうにみずから語っているんですね。
しかし、この問題について今回の
会社法の中では先送りですよ。経過観察しているんだから、そこの領域については今回取り上げないんだ、こんなことを言っている。それでいいのか、そこが問題だろうというふうに思います。
そういう観点に立って、個別具体の事案、UFJ問題について逐一細かくお伺いするというのは、お答えもなかなか出にくいところだろうというふうに思いますけれども、まず、前回の商法改正でそういう問題点があるんだという
議論がなされて、先送りになっていた。それで今経過観察するというのはどういう意味なんですか。これは、当局としては、何でその問題について今回きちっとした法
制度として提案をしないんですか。そこの理由について述べてください。