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片山参考人 おはようございます。御紹介をいただきました
鳥取県知事の
片山でございます。
本日は、こういう
意見を述べさせていただきます貴重な
機会を与えていただきましたことをまずお礼申し上げたいと思います。
せっかくの
機会でありますので、私
どもが今回の
国民保護法制についてどういう
取り組みをしてきたかということ、それから国に対してどんなことを願っているかというようなことを中心に
お話をさせていただきたいと思います。
お手元にお配りいただいていると思いますが、私の方で簡単なメモを用意しております。ちょっと字が小さくて恐縮でありますけれ
ども、「
国民の
保護に関する
基本指針と
国民保護計画」という題名の一枚の紙を用意しておりますので、それをごらんいただきながら御説明したいと思います。
最初に、先般
政府がつくられました
基本方針についてでありますが、私はこれは高く
評価をしております。それよりも前に、そもそも
国民保護法制をつくる
過程からずっと見ておりまして、
評価をしております。
それは、そこにも書いてありますけれ
ども、
法案の
作成過程につきましても、それから
法律に基づいて今般出されました
基本方針につきましても、その
策定過程において、かなり
地方の
意見といいますか、
現場に近いところにいる者の
意見を組み入れていただいております。現地にもよく
政府の方からお出かけになられて、私
どもの声に耳を傾けていただきました。これは、ほかのいろいろな
分野で
政府は活動されていますけれ
ども、実は希有な例でありまして、ほかでは
余りないものですから、特に目立つわけです。
そういう
意味で高く
評価しておりまして、こういう
政策形成過程というのが他の
分野でもあれば、随分これから
日本はよくなるのではないかとつくづく思ったりもしております。
それから、その内容につきましても、以上申し上げたようなプロセスにおいてかなり
相互交流がありましたので、
現場といいますか、
現場に近いところで
国民保護計画、県の
保護計画をつくる私のような
立場の者から見て、かなり
満足度の高いものになっております。ほとんど、違和感といいますか、そういうものはないと言っても過言ではないと思います。
ただ、
基本指針は
基本指針として、それをこれからどういうふうに運用されていくかということが一番ポイントでありまして、まさに絵にかいたもちにならないようにするためには、それでもやはり気になる点が幾つかあります。
それは、少し
政府に対しては
失礼に当たることになるかもしれませんが、いい
機会でありますので率直に申し上げたいと思うんです。
一つは、
基本指針の中の
基本方針のところに重要なことが書いてありまして、それらについてまず申し上げますと、例えば、
関係機関相互の
連携協力が大切だということが書いてあります。そのとおりなんです。
ただ、今までのといいますか、今日の
霞が関の
各省の
縦割りでありますとか、
縄張り根性と言うとちょっと
失礼に当たるかもしれませんが、そういう実態を見ておりますと、本当に
関係機関相互の
連携協力というものが円滑にいくのかどうかというのは、これはかなり難しい面があるんだろうと私は思います。
国民保護法制なんかの
法案の
作成過程とか、それから
基本指針の
作成過程については、かなりまとまって、
政府の
一体感をかなり発揮された面があると思うんですけれ
ども、日常の業務になりますと、決してそんなことはないわけです。ここのところを、ぜひ
政治の
リーダーシップで、
各省の
縦割りの弊害が出ないように、ぜひお気をつけいただきたいと思います。
それから、同じく
基本方針の中に、
基本的人権を尊重しなければいけないと書いています。これもそのとおりでありまして、非常に重要であります。
この点でも、
各省庁の
行動形式といいますのは、
自分の
役所の
権利といいますか、そういうものに対しては非常に鋭敏でありまして、他省がつくった政策なんかにも、本当に目を皿のようにして瞬時に反発をする、そういうところがありますけれ
ども、意外に、
国民の
権利、人権については鈍感なところがあります。
各省協議の結果、
各省の
権利は守られた、しかし
国民の
権利は見過ごされた、そういうことはしょっちゅうあります。
私も、過去役人の
経験があるものですから、だれが
国民の
権利を守るんだろうなということを、よく
各省協議の
過程で
自嘲ぎみに懸念したこともあるんです。そういうところがあるということは
先生方は先刻御承知と思いますけれ
ども、
基本的人権が
各省の権益の中で埋没しないように
目配りをお願いしたいと思います。
それから、
国民の
権利利益の迅速な
救済、これも大切なことだと思います。やはり、
有事のときには
国民の
権利を一時的に制限するということはありますし、そういうときに一番大切なのはスピーディーにリカバリーをするということだと思いますけれ
ども、その
救済というものが、例えば
財政の論理によってゆがめられてしまうとか消されてしまうということも、
我が国では往々にしてあることであります。
財政の論理というのは、
財務省の
財務省流の視野ということももちろんありますし、それから
我が国の
財政が、これは国も
地方もそうですけれ
ども、どうしても
ハード中心になっています。例えば、
建設国債の対象になるものは優遇されるけれ
ども、そうでないものは捨象されるとか、これは
地方債も同じようなことがあるんですけれ
ども、そういう
財政の理屈でもって、本当に必要な
国民の
権利の
救済というものがちゃんとなされないということが
日本の場合には往々にしてあるんだと私は懸念しておりますので、そういうことも御認識いただければと思います。
それから、
国民に対する
情報提供というのも重要です。
国民にもそうですし、我々
地方団体にも、やはり必要なところには必要な
情報が迅速に届かなければいけないと思います。
これも、見ておりまして、例えば災害のときなんかも、最近はかなり変わってきたと思いますが、一時期までは、だれが、どこの
役所が一番
最初に官邸に報告をするか、そういう
功名争い、
先陣争いみたいなことは一生懸命やられるんですけれ
ども、肝心の
現場がお留守になるということがよくあります。そういうことがないようにその辺の
バランスを、もちろん官邸にもスピーディーに
情報を届けなきゃいけないと思いますけれ
ども、
バランスが必要だと思います。
それから、この種のことは
スピード感が必要だと思います。いざというときにぱっと対応できる、この点でも危惧をしております。
今の
各省の
合意形成過程を見ていますと、実に
スピード感がないわけです。いやいや、いざとなったらちゃんとやりますよと言われるかもしれませんけれ
ども、普通のときにできないことは、いざとなってもできないと思います。普通のときにどんなにやっても
スピード感がないのに、いざというときにはぱっと
スピード感が出るなんということは
余り期待しない方がいいんではないか、やはりふだんが大事だと私は思っています。
それからもう
一つは、弱者のことは書かれています、この中に。
高齢者とか障害を持っておられる
皆さん方の
避難の問題についても配慮しなきゃいけないと書かれておりますが、もう
一つ、
男女共同参画の視点というのをぜひ持っていただきたいと思うんです。
これは災害のときもそうですし、こういう
有事の場合の
避難なんかのときもそうなんですけれ
ども、例えば物資というものを考えた場合に、よく、乾パンでありますとか水でありますとか毛布だとか、そういうものはすぐだれでも思いつくんですけれ
ども、例えばそこに、粉ミルクでありますとかおむつでありますとか、それからもっと言えば
生理用品でありますとか、そういうものについては、やはり男だけで考えたらだめなんです。
ですから、平時というか、ふだんから、いろいろ準備をする段階から
男女共同参画の視点というものが必要だと私はつくづく思います。
次に、
鳥取県でこれまでどんなことをしてきたかということでありますが、
鳥取県では、実はもうかなり先行して、
法律で義務づけられました県の
国民保護計画をつくる作業をやってまいりました。これは県だけではなくて、肝心なのは
市町村でありますから、
市町村も巻き込む形で今日までやってきました。スケジュール的に言いますと、国が想定していますスケジュールに対して、県では一年先行して、
市町村では二年先行してやってきております。
それはなぜかというと、別に奇をてらったとか、これも
先陣争いしたとかそういう
意味ではありませんで、従来から、
政府が
法律をつくって、それで
地方団体に
計画策定を義務づける、こういう手法はいっぱいあるんですけれ
ども、往々にして、大体
政府が
方針を決めて
ひな形をつくって、それを
地方団体がもらい受けて、
ひな形どおりにつくって
政府に提出して承認をもらう、こういうやり方になるんです。
そうしますと、本当は
現場でワークしなきゃいけない
計画をつくるのに、
政府に承認してもらうための
計画づくりになってしまう。せっかくの
現場の草の根の英知というものが
計画に生かされないという弊害があるものですから、
政府から
ひな形が出る前につくろうというのを実は
鳥取県では
方針にしているんです。
ですから、この
有事法制の場合だけじゃなくて、例えばDVの
発生防止と
被害者支援計画なんかも義務づけられましたけれ
ども、もう
鳥取県ではとっくにつくりました。これは
法律が義務づける前につくってしまったんです。そんなことをしています。
何がいいかというと、そうやりますと
自分たちで考えます。
自分たちで課題を考えて、その中から課題を発見したものを
政府にむしろ提供する、こういうことをやっております。今回の場合も、実は、
鳥取県でこの問題で早く取り組んでいろいろ
現場でやってみますと、
法制上の問題でありますとか
現行制度との兼ね合いとか、いろいろ問題が出たものですから、
政府の方に提出をいたしました。そういうものに対して
政府は、このたびは本当に珍しくちゃんと見てくれて、
政府の
方針の中にも取り入れていただいたということで、そんな
意味でも私は
評価しているということを申し上げたわけであります。
あわせて
住民避難マニュアルなんかも独自につくりまして、
自分たちでつくって、
余りできのいいものではありませんでしたけれ
ども、それでシミュレーションもやったりしました。そういう苦労をしたおかげで、実は
市町村の方も随分
取り組みが進んでまいりまして、
最初、
市町村はかなり嫌がっておりました。そんなものは国がすることだろうとか、せめて県でしょうということでしたけれ
ども、
鳥取県では、いろいろ説得したり
協働作業をしてきまして、
市町村は今では非常に
熟度が増しております。ですから、多分
全国でも一番早い時期に
鳥取県内の
市町村は、全部とは言わないかもしれませんけれ
ども、大筋、
市町村分の
計画をつくることになるんだろうと思います。
今後のことでありますが、これはやはり
全国の
自治体で
計画策定がスムーズに進まなければいけませんので、そのためにどんなことが重要かというのを
鳥取県の
経験から、ちょっと差し出がましいですけれ
ども申し上げますと、
一つは、さっき言いましたように
市町村です。
市町村がどれだけその気になるかということ、これが私は一番重要だと思います。県も重要ですけれ
ども、
自分でやってみまして、やはり
市町村が本当にいざというときにワークするかどうか、作動するかどうかということが非常に重要です。
ただ、今日までの
全国の
市町村は、今まで、例の
合併騒動で力をそっちの方にとられていまして、本当にお取り込み中だったものですから、肝心なことが
余り進んでいないです、この
分野だけではなくて。
鳥取県では、そうはいってもというので、この
分野はかなり強引に県と
市町村でやってきたんですけれ
ども、
全国ではいかがでありましょうか。大事なことが全部、
合併までは
合併まではということで停滞をしているというのが現状であります。
合併もめどがつきましたので、いよいよ重要なことに本格的に取り組まなければいけないと思います。
それから、
関係機関との
連携、これは言うまでもありません。それから、隣接県との
連携、これが重要であります。どういう
有事を想定するかによりますけれ
ども、
鳥取県なんかは小さい県でありますので、どうしても隣県との
連携というのが必要になってきます。これを必ず視野に置いておかなきゃいけない。
そのときに、やはりここでも、
県同士の間のこの問題に取り組む、熱意と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、
熟度といいますか、要するに
温度差が歴然とあります。これをこれから調整しながら克服しなきゃいけないという問題がありまして、
地方でも一生懸命やりますけれ
ども、ぜひ国の方でこの問題については
目配りをしていただきたいと思います。
あとは、
地方独自の問題として、試行錯誤的な訓練を積み重ねるということが重要だと思います。
自分でやってみて考えて、ああ、なるほど、こんな問題があるのかということを会得するということであります。
それから、
政府については、ぜひ
協力体制をしっかり設けてもらいたい。特に
総合窓口、
政府にはいろいろ
関係機関がありますから、
たらい回しになるということのないように、
ワンストップの窓口をしっかりとそろえていただきたい。そして、親身に相談に乗っていただきたい。
それから、
政府は、この問題を私は
評価していますので、今までのようないい姿勢をこれからも続けていただきたい。
現場に学ぶ、そういう姿勢を続けていただきたい。
それから、ぜひ
政府には
専門的領域での力を発揮していただきたい。
専門的領域というのは、私の次に
お話があると思いますけれ
ども、例えば
敦賀のような原発のあるところの問題とか
生物化学兵器とか、そういう問題はやはり
地方では不得手であります。ですから、
政府が
専門家集団を設けて、
地方への指導とか
協力に当たるという体制をとっていただきたいと思います。
あとは、何といっても、
国民、
住民のこの問題に対する理解と
協力、それから、いざというときの
統一行動ができなきゃいけませんので、これは
役所だけではなくて、その次の段階として、
自治会とか
町内会、そういうレベルで
住民の
皆さんとのこの問題についての認識の共有が必要になるだろうと思います。
その他、
あと二つですけれ
ども、
一つは、
地域の
防災力の強化ということに今
鳥取県では力を入れております。
地域の
防災力は、
地域の力の減退とともに今著しく落ちております。
消防団に若い人がいないということなんかは象徴的でありますけれ
ども、今これを克服するために、
地域をもっとみんなで力をつけよう、支えようという
取り組みを広くやっております。
まず隗より始めよということではありませんけれ
ども、
県庁の
職員、そうはいっても
県庁も相当
職員を抱えていますから、職場で仕事をする、これはもちろんですけれ
ども、もう日がな一日、休みも
県庁に出てきて、机に歯形がつくほどかじりついて仕事をするんじゃなしに、早く家に帰って、休みは休んで、家庭で
役割を果たして
地域に貢献しなさいということを言っています。
地域で一人
一役運動というのをやっていまして、
消防団に入れる人は入りなさい、
自主防災組織、
町内会、
自治会、NPO、ボランティア、何でもいいから一人一役以上はやりましょうねということで、少しずつ成果が出ております。
実は、
町内会なんかに参加しないのは、
県庁の
職員もそうなんですけれ
ども、教員が参加しません。
あと、
国家公務員が参加しません。ぜひ
国家公務員の
皆さんも、例えば消防庁なんかも、
霞が関から号令かけるだけじゃなくて、みずからが
町内会に出て、
町内会でどういう
役割が個人として果たせるのか、そういう体験はやはり学ぶべきだと私は思います。
これは、
防災関係機関に限らず、どの
役所の人もそうですけれ
ども、それぞれ生活の場があるわけですから、その生活の場を一人一人の
国家公務員も支えるということを、これは国の
方針としてやっていただきたい。そうなりますと、
全国には、
地方にはいっぱい
国家公務員いますから、大きな力になるのではないかと思います。
それからもう
一つは、これも
政府の
あり方ですけれ
ども、
有事法制をつくるということは、今までの平和、ちょっと
ぬるま湯の時代から変わってくるということであります。それなりにみんなが変わらなきゃいけないと思うんです。
例えば
政府の
人事なんか見ていますと、相変わらず
年功序列です。
政府にもいろいろな
機関があって、
防災とか
有事とか安全とか治安とか、そういうものに直接かかわる
機関がありますけれ
ども、そういうところの
人事が一体どうなっているのか。
例えば、それが
年功序列で、次官が一番偉くて、その次が外局の長官で、局長で、そこに微妙な序列があって、年次との
関係で、必ずしもその
専門家でない人が座っているケースがあるのではないでしょうか。実際あると思います。ずぶの素人がぱっとトップになったりするというようなことがあるんです。そんなものを見ていると、
危機感があるのかなと私なんかは思うのであります。やはり
政府関係機関も、
ぬるま湯ではもういられないわけでありますから、
専門的所見、知識、
経験、それから
現場感覚のわかる人がその
機関を率いる、そういう
人事、それは、すなわち
年功序列をやめなければいけないと思うんです。
私は、
危機管理ということを重視する以上は、今の
霞が関の
あり方なんかも、
政治の
リーダーシップ、
政治の
指導力で変えなきゃいけない、こういう時期になっているんだと思いますけれ
ども、ちょっと外から見た感じでは、ほとんど変わっていないな、
危機意識は
霞が関の
人事までは全く及んでいないな、そういうことを思わざるを得ない。これは
政府の方には大変
失礼でありますけれ
ども、あえて申し上げさせていただきました。
ちょっと時間をオーバーしましたけれ
ども、ありがとうございました。(拍手)