○
木村参考人 日本獣医畜産大学の
木村と申します。よろしくお願いいたします。
私は、現在大学におりますが、
飼料会社で三十二年間、牛のえさを中心にえさの
研究、あるいは、そのえさを牛に給与することによってどのような
生産性あるいはどのような
生産物の質の向上が得られるか、そういった仕事をやってまいりました。
現在は、動物栄養学ということで、学生
たちあるいは自分の
研究、そういうことをやっておりますが、動物栄養学といいますのは、主に、家畜の栄養の要求量あるいはそれに見合った
飼料の設定、飼養管理、そういったものを扱う分野の学問でございます。
飼料は家畜に給与し、それによって人が食料とするものでございますから、
飼料というものは食の
生産材でございます。
飼料というのは、本来、人の食料と競合するものでないものを活用するという側面がございます。そういうことで、
食品副産物ですとか食になっていないものをいかに有効に活用するか、栄養分の過不足分をどのように補うか、こういった分野が動物の栄養学でございます。私は、そのような
立場から、
BSEと
飼料との関係について幾つか陳述させていただきます。
お手元に、畜産システム
研究会の会報というものを配付させていただきました。私は、この
研究会に所属している
立場、あるいは畜産技術士会という制度がございますが、その会員である
立場、あるいは動物栄養学をやっている
立場からお話をさせていただきます。
まず、
日本の
BSEの
発生と感染経路になり得た
飼料について、考えを含めて陳述させていただきます。
一般的なお話でございますが、
BSEと
飼料に関しましては、
BSEの原因は、肉骨粉に含まれている患畜由来、
BSEにかかった動物由来の異常
プリオン、これを経口的に食べるということによって生じる、これはもうはっきりとうたわれております。言いかえますと、この異常
プリオンを摂食しない限りは問題がないということになります。
そういうことから、
BSEにつきましては、どういうえさを給与されたのか、そういったことを周辺から
調査し、
状況を判断していく、こういうことが非常に大事なことでございまして、感染経路というのはそういうふうな手法から積み上げていくものだということになります。そういった手法は、一般的に感染経路の疫学的
調査、そういうふうな名前で呼ばれております。
お手元に表がございますので、ごらんいただけたらと
思います。この表は、我が国における
BSEの確認日、その
月齢、誕生場所、誕生日、それから、給与した代用乳のメーカー、AからDで示しておりますが、それを誕生日順に整理して示したものでございます。上から牛の番号が一番から二十番。現在、二十頭
発生しております。
一番から七番までのところで、国の疫学的
調査ということで報告がなされました。この表を見ていただきますと、一番から七番まで、先ほどの疫学的
調査、どういう共通の
飼料があったかというふうなことをチェックしてまいりますと、これは代用乳でございますが、
飼料Aというものが共通して給与されていたということがございます。
これは、日常的な私
たちの生活上の感覚ですと、共通のえさとして、一頭目、二頭目、三頭目、四頭目、七頭目まで同じえさが使われていたということは、これが非常に大きく関与していると感じるのは自然なことであるというふうに思っております。この結果につきまして、
平成十五年九月の
BSE調査報告書では、関連性が薄いと否定的な報告になっております。
これに対しまして、畜産システム
研究会では、昨年発行しました会報なんですが、代用乳使用と
BSE発生は関係あるとは言えないというのは本当であろうかということを論文として会員が書いております。そこでは、国の疫学的
調査、統計的な処理、少し専門用語でいいますと、カイ自乗検定といいますが、その手法自身が統計学的、学問的に間違っているんだということを明確に指摘しております。お手元に配付しましたこの資料でも、二十ページのあたりにカイ自乗検定の統計的誤りということを再度指摘しております。
こういう報告の結果、それでは、何が
飼料の上で大きな原因と考えられるかということになりますと、結果としまして、ミート・ボーン・ミールが交差汚染によって原因となっていた可能性が強いのではないかというふうな方向に動きまして、その結果、交差汚染を排除するための経路の分離、製造あるいは
流通、保存の経路の分離ということが大きく表に出まして、そういう法律が動き出して、ことしの四月から動いているということになっております。この周辺につきましては、やはりこの
研究会の会報の中に、
飼料会社の経験者である方、技術士の方なんかがその背景なんかを詳しく
説明しておりますので、ごらんいただけたら幸いかと
思います。
それから、その後のことですが、もう一度この表をごらんいただけたらと思うのですが、先ほど配付しました表を見ていただきますと、その後、二十頭まで感染牛の確認がなされております。一九九六年前後、このときに生まれた牛、生まれ月で整理しますと、この前後に生まれた牛で確認されたのは二十頭のうち十三頭でございますが、これはやはり同じ代用乳が使われていたということでございますので、七頭で否定的になりましたが、再度これを疫学的に
検討するとどうなるのであろうか、正しい
方法で再
検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
さらに、この表を見ますと、右の方、すなわち二〇〇〇年前後にも生まれた子牛が確認されております。この場合の代用乳の内容を見ますと、同じものであったり、また、違うメーカーのものが出てきたりしております。これをどういうふうに考えるのかというふうなことを
検討すべきだと思っております。
第一世代は、このAという代用乳が非常に濃厚であろう。それから、二〇〇〇年前後、これを第二世代というふうに考えますと、これは事によると、
国内で、第一世代の持っていた
プリオンが
国内原料を汚染して回っているんではないか、そういう疑念も考えられます。そういうことから、きちんとした
検討をさらに続けていく必要がある、これをどういうふうに検証するのかという責任があろうかと
思います。
代用乳についてどういうものであるかということについては、この資料の中に幾つか、私の報告では四十七ページからですが、そこに書いております。詳しいところは省略いたしますが、この代用乳の中で危険性が予測される
原料とは何であろうかということを考えますと、幾つかの
原料が浮かび上がりますが、私の方では三つぐらい考えられるのではないかというふうに思っております。
一つは、油脂の危険性でございます。油脂は、当初、規制の対象外でございましたが、この中に含まれている沈殿物、これがたんぱく質という可能性が非常に高く、このたんぱく質の中に異常
プリオンが紛れ込んでいないかということでございます。ですから、油の中に濃度としてどれだけ含まれているかが問題なのではなく、その有無が問題であるということになります。油というものは、濃度の高いところが使われると、非常に危険性があるということになります。
それからもう
一つは、粉末油脂でございます。これはオランダ製ということも言われておりますし、当初、規制の対象外でございましたが、これは、不溶性不純物は測定のしようがございません。溶けないもので粉末化してあるわけですから、測定のしようがございません。
それから、もう
一つの危険性を思わせるのは、血漿たんぱくという
原料でございます。これは
アメリカ産の豚由来のものであるということになっておりまして、当初、規制の対象外でございましたけれ
ども、これも共通、代用乳の中に
原料として含まれていた。こちらの検証もやっていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
こういうことから、
飼料の
安全性のことを考えますと、危険性の排除のための感染経路の確認、これは
飼料からやっていくということになります。
こういう検索をするということは、私
たちは犯人捜しをしようということではございません。どれが最も危険性を有しているか、それをどういうふうに排除していくか、あるいは無用な過剰な規制をしている場合にはいかに緩和していくか、そういうことを考えるためにも、きちんとした検索、
検討が必要ではないかというふうに考えております。
そういうことから、全
頭検査につきましてもいろいろな意義がございますが、これは少し私の方から考えますと、
日本では法の規制、これは
飼料に対して世界で最も厳しく、今の
状況では、今の
飼料規制の中では、まず
BSEが
発生すると思われないぐらいの大きな規制になっております。ですから、そういった意味での法規制の有効性を確認するためにも、全
頭検査を一定
期間続けるべきであるというふうに考えております。
それから、感染経路を解明し得るのは、世界的なレベルで見ましても、全
頭検査をしている
日本が最もできる技術であります。こういう技術を
日本が率先してやるということは非常に大事なことであるというふうに思っております。
それからもう
一つは、安心に対する考え方の問題でございますけれ
ども、
一つの安全
基準として、感染した牛の肉は食べたくないという考え、あるいは
流通させたくない、食べさせたくないという気持ち、これは
一つの
基準ではないかというふうに考えております。特定の病気の牛に対しては、そういうお肉は食べたくないという感覚も大事にすべきじゃないか。
さらには、先ほど言いましたような、二次感染が起きていないだろうか、これの確認のためにも
検査が必要である。
それからもう
一つ。私は、動物の
立場から、人間が安全のために議論、人の安全のための議論が中心なんですが、今度は、人が動物に与えて、その動物を
BSEに感染させているという
立場から、牛に感染させないのは人間の義務であるということから、
BSEを排除するために、その意味で
検査を続ける必要がある、こんなことを考えております。
こういった結果は、
日本だけのものではなくて、海外にも情報として共有するために非常に大事なことではないかというふうに考えております。
以上で陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)