○福井
参考人 日本銀行の福井でございます。
本日は、
日本銀行の
金融政策運営につきまして詳しく御説明申し上げる
機会をちょうだいいたしまして、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げます。
最初に、最近の
金融経済情勢について御説明を申し上げます。
日本の景気でございますが、IT関連分野におきます調整の動きを伴っておりますが、経済全体としては回復を続けております。
この点をやや詳しく御説明申し上げますと、輸出は昨年半ばにかけて大幅に増加いたしました後、このところ中国向けを中心にやや伸び悩んでおりますが、IT関連分野の在庫調整が進むもとで生産は緩やかな増加傾向にございます。企業収益が高水準を続ける中、企業の景況感にも再び改善が見られるようになってまいりまして、設備投資は増加を続けております。また、雇用面の改善や賃金の下げどまりから、雇用者所得は緩やかながら増加しておりまして、そのもとで個人消費は底がたく推移いたしております。こうしたことを踏まえますと、
我が国の景気は踊り場を脱却しつつあると言えると思っております。
先行きにつきましても、海外経済の拡大が続くもとで、輸出の伸びが次第に高まっていくと見られますほか、国内民間需要も高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に引き続き増加していく可能性が高いと考えられます。こうしたことから、緩やかながらも息の長い景気回復が続くと判断いたしております。
物価面について見ますと、経済全体の需給バランスが基調として改善を続ける中で、国内企業物価は原油価格上昇の影響などから上昇しております。先行きは上昇基調を続ける可能性が高いわけでありますけれ
ども、当面の上昇テンポは少し鈍化していくのではないかというふうに見ています。消費者物価の前年比は、規制緩和などに伴います電気料金、電話料金の
引き下げの影響もございまして、基調としては小幅のマイナスとなっております。先行きにつきましても、当面はなお小幅のマイナスで推移するものと予想されます。ただ、ことしの末から来年初めにかけましては、お米の値段の下落あるいは電気料金、電話料金
引き下げといった一時的な要因の影響が剥落していくという過程にございまして、消費者物価指数の前年比がプラスに転じる可能性が高いと考えられるところでございます。
金融資本市場では、株価は総じて底がたい動きを続けておりまして、一方、長期金利は安定的に推移をしております。また、企業
金融をめぐる環境は、総じて緩和の方向にございます。
金融機関の貸し出し姿勢は積極化しておりますし、こうしたもとで民間
銀行貸し出しは減少幅が緩やかに縮小してきているという
状況にございます。また、CP、社債といった資本市場を通じた
資金調達環境も良好な
状況にございます。
次に、最近の
日本銀行の
金融政策の運営について申し述べさせていただきたいと思います。
日本銀行は、いわゆる量的緩和政策のもとで潤沢な
資金供給を続けております。量的緩和政策の枠組みは、
日本銀行が、
金融機関が準備
預金制度等により預け入れを求められている額、いわゆる所要準備額を大幅に上回る
日本銀行当座
預金を供給することと、そうした潤沢な
資金供給を消費者物価指数、これは
全国ベースで、除く生鮮食品の指数でございますが、その前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで堅持するということを約束する、この二つのことから成り立っております。先週七月二十七日の
金融政策決定会合におきましては、三十兆から三十五兆円程度という当座
預金残高目標を維持することを決定いたしました。
この間、短期
金融市場の
状況を見ておりますと、
金融システム不安の後退を背景に
金融機関の流動性需要が減少しておりまして、いわば
資金余剰感が強まってきているという
状況にございます。
日本銀行では、こうした情勢を踏まえ、五月の
金融政策決定会合以降、市場機能への影響にも配慮しながら最大限の
資金供給努力を行った上で、
金融機関の
資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座
預金残高が一時的に目標値を下回ることがあり得ることとしております。これは、量的緩和政策の方針
転換を企図するものではございません、むしろ量的緩和政策をより円滑に運営していく観点から実施しているものでございます。
最後に、
金融システム面でございますが、先ほど申し上げましたとおり、
我が国の
金融システムは安定を取り戻しつつございます。四月からのペイオフ全面解禁も円滑に実施することができました。今後、
金融機関としては、顧客ニーズにこたえて創造的な業務展開を図りながら経済を支えていくことがより一層強く求められる
状況となっております。このため、
日本銀行の
金融システム面への
対応も、これまでのいわゆる危機管理重視という姿勢から、
金融システムの安定を確保しつつ、リスク管理や経営管理の高度化など
金融の高度化に向けた民間の取り組みを積極的に支援していく、そういう方向へ切りかえているところでございます。
日本銀行としては、
金融システムの機能度や頑健性の向上に貢献していくため、
金融機関の新しい業務展開などの動きを積極的に後押ししていくほか、私
どもの業務につきましてもさまざまな工夫を凝らしていきたいと考えております。
以上申し上げましたとおり、日本経済は世界経済の拡大が続くもとで回復を続けております。先行きにつきましても、緩やかながらも持続性のある成長軌道に移行していくものと見込まれるところでございます。
日本銀行といたしましては、今後とも、情勢の変化をよく見きわめながら、適切に政策運営を行ってまいります。現在、消費者物価指数がなお小幅の下落基調を続けているもとにおきましては、先ほど申し上げました約束に沿って
金融緩和を続けることで、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現のために、
金融面からの支援を行ってまいる所存でございます。
こうした
金融政策面での
対応に加え、
日本銀行が
我が国の中央
銀行として
国民の皆様から負託された責務を適切に果たしていくためには、私
どもが提供するさまざまな中央
銀行サービスの高度化を進めるとともに、規律ある組織運営に努めていくことが一層重要になっていると考えております。このような認識を踏まえ、
日本銀行では、今後五年間の経営方針を示した中期経営戦略を策定したところでございます。こうした取り組みを通じて、
国民の信認を高め、経済の健全な発展に貢献するという使命達成のために、今後とも全力を挙げて努力してまいりたいと考えております。
以上、簡単ではございますが、御報告とさせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
委員長退席、遠藤(利)
委員長代理着席〕