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岩國委員 こうした持ち合いというのは、表現を変えて言えば、議決権の信託がずっと行われているということです。
フジテレビが
ニッポン放送の
株式を貸し株した。貸し株したというのは、さあ、それを持って五年間配当を受け取ってくださいよというのではなくて、議決権を相手に渡そうという、議決権の隠ぺい、あるいは議決権を疎開させることに本当のねらいがあったわけでしょう。とすれば、世間は五年間もそこに貸したということで驚きました。しかし、驚くのは、五年という期限をつけたということに驚かなきゃいかぬのです。
日本では期限なしでやっておったんですから、五十年間。
五十年間一遍も議決権を行使しなかった
株主がどれだけ多いことか。行使はしているけれ
ども、常に
経営者側に賛成の議決権行使しかしないという、これが書かれざるルールですよ。したがって、相手の
会社に対しても、議決権を行使するときには必ず賛成しかしないんです。つまり、議決権をこれは行使しない、そういう形の慣習がずっと行われている。
私は、そういう
伊藤大臣のようにガバナンスの
観点からということだけではなくて、
株式とは何かということを考えるためにも、
株式というのは、配当を受け取ること、新株を引き受けたいこと、それから値上がりを期待すること、しかし一番大切なことは、
会社の
所有者としての一票を行使する。
株式とは何とやということを考える場合には、私は、この安定
株主という、議決権を行使しない、しかも、世間の大
企業がほとんど、持っている
株式の議決権を行使しないというおかしな国、このおかしな国を変えていくことが本当の世直しじゃないかと思うんです。
資本主義の根幹である
株式市場、その
株式たるものが、ただ配当だけもらっていればいい、値上がりだけ期待していればいいだけの
株式をこれから期待してこの
証取法改正をおつくりになっているのか。
会社の
所有者の一人なんだという意識をしっかり持たせる、それが今世間で問われているんではないんですか。
今まで議決権なんということはほとんど世間で問題になったことはありません。
株主の持つ四つの権利の中の三つしか、みんな、
投資家でも
経営者も問題にしなかった。突如として、この議決権というものが
株式にはあるんだということが急にわかった
人たちがたくさんいます。
しかし、そういう中になっても、依然として議決権を行使しない、しようとしないあの立派な
企業の方々は、それを持ち合い
制度という名前のもとにずっと放置し、これからも温存していくような
証券市場、資本
市場というものを期待していらっしゃるのかどうか、私はその認識をお伺いしたかったんです。
さて、次に
質問させていただきます。
この持ち合い、いわゆる議決権を行使しない、ある
意味では議決権がないといってもいい、ある
意味では、
経営者からいえば、
経営者が貸し株を受けている、三〇%の安定
株主から、株券そのものはそれぞれの金庫の中に入っているけれ
ども、議決権だけはその社長の引き出しの中にいつも入っているような、こういう議決権信託を持ち合い制というわけです。
とするならば、その
会社を
支配しようとする
投資家から見れば、社長の引き出しの中に議決権が何株入っているのか知りたいのは当然でしょう。その持ち合いはすべて
取引所に報告されていますか。一般
投資家に、すべての
投資家にそれは
情報公開されていますか。
三十年間議決権を行使しなかった歴然とした安定
株主という名前のもとの持ち合い
制度が、このA社についてはどれぐらいあるのか、B社についてはどれぐらいあるのか、その持ち合いという壁を乗り越えて
日本の
会社を
買収しなきゃいかぬのです、
日本の
投資家といい、外国の
投資家も。これは、アメリカの
企業を
買収するときに、私はそういうことをカウントする必要は全くありませんでした。ヨーロッパの
会社を
買収するときも、相手の
会社の社長の手元に、社長が表に出ない形で
支配している議決権がどれぐらいあるかということは、知る必要も調べる必要もなかったんです。
しかし、
日本の
会社を
買収するときにそれをどうしても調べなければならないのは、その安定
株主が三〇%あれば、安定
株主の壁を乗り越えていかなければならないということなんです。これは、
取引所でもどこでも
情報は公開されておりますか、されておりませんか。