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鈴木(克)
委員 次の
質問に入らせていただきます。
定率減税について、これも
縮減にただ反対だと言うだけでは通らないわけでありまして、なぜ反対なのか、そして、今の景況感の見方がいかに違うかというところを
中心に申し上げていきたいと思います。
ちょっと時間をいただいて今から少し
お話をさせていただきますが、
定率減税は九九年に
景気対策として導入されたもので、本来の納税額から
所得税は二〇%、上限年二十五万円、そして住民税は一五%、同じく四万円を割り引くというものであります。全体の減税
規模は国と
地方を合わせて年三・三兆円。特に中高年層の恩恵が大きく、そして、今この
定率減税を
縮減するというのは非常に問題があるということを申し上げて、以下御
説明をさせていただきます。
まず、この背景なんですが、九〇年代後半に賃金
所得の減少というのが起きまして、リストラが本格化した九七年と最近時の二〇〇三年度について一人当たりの賃金を表にしてまいりました。配付資料の一の下の表をごらんになっていただくとわかるんですが、全産業で見ますと、賃金水準は九七年度の四百九十六万円から二〇〇三年度には四百二十八万円へ一三・七〇%低下をしたわけであります。
問題は、この低下が
企業規模が小さいほど大きいんですね、零細
企業が一七%、
中小企業が八%、中堅
企業が六%。ただ大
企業のみが〇・五%ということですから横ばいである。製造業で見てもほぼ同じような傾向なんですね。ただ、製造業の大
企業のみが八%上昇したということなんです。これは表にはありません。
つまり、
企業業績は二〇〇二度年から改善に転じたけれ
ども、その恩恵は製造業、特に大
企業に限られておる。大
企業が占める従業員数というのは八%なんですよね。つまり、残りの九二%の働く
人たちが低賃金下でやむを得ず暮らしておる、そして、賃金格差が拡大しても、それを我慢して耐えておる。これが実態なんですね。
それで、
定率減税の廃止論というか減少ということなんですけれ
ども、廃止論について、
経済はよくなってきているのだから、この減税
措置を取りやめることを
議論する段階に入ったと、
財務大臣も税制調査会長もそのようなことをおっしゃっておるわけですね。これは明らかに、冒頭申し上げましたように、
経済実態に関する見方が誤っておるというふうに私は思うんですね。
確かに今回の
景気回復、
企業業績の
回復は待望久しいところであったわけでありますが、実際に
回復しておるわけじゃないんですけれ
ども、例えば売り上げが
回復したその大半が輸出、特に対中国輸出なんですね。そして、国内市場の伸びは、デジタル
景気が一部あったとしても、最大の市場である国内需要はさして伸びておらないということです。すなわち、
経済の立て直しは明らかに失敗をしておるということでございます。
では、
経済の本当の
改革は何だということなんですが、これは、国内市場が
回復をして
企業コストに見合う価格が支払われて、
企業コストの最大項目である賃金がこれ以上低下しない、さらに、低下した賃金が恒常的に増加する、これはなかなか難しいわけでありますが、それがいわゆる国内市場が
回復したということなんですね。そして、そういう仕組みがつくられているという確信が
国民に共有されたとき、いわゆる
景気が
回復したなということなんです。明らかに今はそういう
状況じゃないんですよ。
特に製造業、これはこの十年間に一六%も減少したわけですね。この減少をとめる方法というのは、要するに、為替介入によって円高進行を阻止する、また、関税を上げるとか補助金を出すとかいうことしかないと私は思っています。関税を上げることは中国からの野菜で一部やった程度、それから為替介入も結局うまくいかなかった。
いずれにしましても、そういう
状況の中で
企業はリストラに踏み切らざるを得なかった、そして、多くの従業員は賃金支払い
総額の減少を甘んじて受けて、賃金水準の低下または頭打ちを現状のんでおる、こういうことでようやく今国際競争力というのが若干
回復してきた、こういうことではないのかな。
そういう背景の中で行われてきたこの
定率減税、これが三・三兆円というのは家計
所得の一・一七%にしかならない。これは二〇〇二年度なんですけれ
ども、
雇用者
所得と自営業者、自営業主の
所得を足したのが二百八十一・七兆円ということですから、三・三兆円というのは一・一七%にしかならない。しかし、九八年から二〇〇二年にかけて、家計
所得というのは毎年四・四七兆円ペースで減少したわけですよ。だけれ
ども、その中で三・三兆円というのは非常に大きかったわけですよね。それがこの
定率減税の効果だったわけです。
景気を今振興させる、支えていくには、こういった
国民にとって直接的な効果のある
所得減税の採用を続けること、そして
住宅減税をやること、こういうことが必要なんですよ。このときにいわゆる
定率減税を
縮減していこうというのは、私は、政策的に絶対に間違っておる、こういうふうに本当に強調させていただきたいと思うんです。
少し長くなりましたけれ
ども、そういう視点の中で今から少し
質問をさせていただきたいというふうに思うんです。そして、この
定率減税の
縮減によって一番大きな
負担を強いられるのはだれなのかということなんですが、これは低
所得者層や
年金で暮らすお年寄りなんですよ。この方々に非常に大きなしわ寄せがいく。こういうことを前提として、今から四、五点お
伺いをしていきたいというふうに思うんです。
まず第一番として、昨年度の税制
改正で老年者
控除が廃止された、そして
年金課税の方が給与課税より税
負担が重くなった、年齢によっては課税
最低限も勤労者世帯より低くなった。
年金暮らしのお年寄りにとっては、このたびの
定率減税の
縮減と相まって税
負担が急増する。老年者
控除の廃止等や
定率減税の
縮減は、世代間の公平、世代内の公平にむしろ逆行するんではないか、こういう視点で私は御
質問をさせていただきたいと思うんです。
その表が、今配らせていただいた表の二番なんですね、「給与課税と
年金課税との
所得税
負担の比較」。これは夫婦のみであります。これは
定率減税適用前の額ということであります。ここを見ていただきますと、三百万円のところを見ますと、勤労世帯は八万六千円、ところが
年金世帯、これは六十五歳未満と六十五歳以上なんですが、九万五千円、そして六十五歳以上八万八千円。すなわち、もしまたもとへ戻すと、勤労世帯よりも
年金世帯の方が税が高いという、高くなってしまうという表なんです。このことについて
財務省はどのようにお
考えになっておるのか、まず第一番目にお
伺いしたいと思います。