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土肥委員 理解なんですよ。恐らく全社がほとんどこれを理解していないんじゃないでしょうか。ですから、体質だとかなんとかいいますけれ
ども、まず人間の
可能性として、理解できない人がいる、たくさんいるということです。その理解の方法は、日勤
教育みたいなものでやっても必ずまた
事故が起きるというのが、ヒューマンファクターというか、人間的な要素における事実があるんです。
私は今ここに論文を持っておりますけれ
ども、立教大学の文学部心理学科の教授で芳賀繁先生というのがいるんですけれ
ども、「違反の心理と組織
風土」という論文があるんです。人間は必ず違反をする、物事に違反をするルールが五つあるというんです。それは、一番目は、「ルールを知らない、または忘れた」。それから二番目は、「ルールを理解していない」。それからもう
一つは、「ルールに納得していない」というんです。これも人間の大問題であります。四番目は、「みんなも守っていない」。手帳は持っているけれ
ども、それを常時読むとかいうことは守っていない。そして、最も大事なことは、「守らなくても注意を受けたり罰せられたりしない」。これが人間が過ちを犯す五つのファクターだというんです。
こうなると、人間の組織というのはどこでも問題が起きるということです。それを、何かむちを打つようにしてやったって、本当に理解しているのかどうか、本当にそれを受け入れているのかどうか、そして周りを見て、やはり共通の理解になっているのかどうか。ひょっとすると、職場は、こんなものは守らなくてもいいみたいなことを言っているのではないか、つまり、この省令は全く形骸化している、こう言わざるを得ないと思うのであります。
ですから、この芳賀先生の言い方からすれば、むしろリスクはいつも起きますよと。不良
社員というのは、ちょっと
言葉は悪いけれ
ども、この先生の
言葉ですからね、不良
社員であっても、個人的に誤りを犯すものではなくて、組織
風土が、まさに
社長が
風土、
風土と言っていますけれ
ども、「組織
風土がそれを許し、あるいはそそのかしているのである。」と。まあ、ちょっとこれは
鉄道事故の話じゃありませんからね。しかし、産業心理的な見方からするとこういうものだというんです。
ですから、何かもう過敏になって隅々をいいの悪いのと言うよりは、まずは人間理解をちゃんと持ってもらわないと、我々、
運転士さんに命を預けることはできないわけです。では、その人間が犯すであろう
可能性のある過ちをどう防ぐかというのはまさに技術の問題だ、このように思うわけでございます。まあ、ゆっくり今の私の芳賀先生の話をそしゃくして考えていただきたいと
思います。
今回、役所の方のことについて申し上げたいんでありますけれ
ども、大変皮肉なことに、ことしの三月二十四日に、「
輸送安全総点検の緊急実施について」という通達が出ているんです。依命通達という、何か非常に、聞いたことのない話なんですけれ
ども。これは、事務次官から、
鉄道局長、
航空局長に出たわけです。
そこで言われているのは、最近、人的要因と考えられる
事故が多発していると。だから、
国土交通省も、人的な要因だと言っているわけです。これは本当にそうなのか。例えば、「点検対象は、鉄軌道
事業者、
航空運送
事業者、
航空管制機関」。これ、三月の二十四日です。四月の二十九日には、管制官が、十八名ぐらいですか、そろって、今閉鎖されている滑走路に飛行機をおろしてしまった。まさにヒューマンファクターなんですよ、これは。こういうことがやはり起こるんですね。
盛んに、自主点検をしなさいとかトラブル
再発防止のために体制を整えなさいとか、こう言っております。
事故が起きました。さあ、
鉄道局長も、人的要因、機会あるごとに注意を喚起したが、また起こったねと書いてあるんです。どれくらい喚起したのか、きょうは時間がありませんから
一つ一つ聞きません。
そして、点検項目というのを丁寧につけておりまして、鉄軌道
事業者用の点検項目。「作業ごとに」「曖昧な表現はないか。」、つまり、理解できないような表現をしちゃだめよということです。「係員は、規定類を理解しているか。」と言っております。理解しているかどうかということは、相当詰めた話になるわけです。「係員は、規定類と異なる作業を行っていないか。」、だから、
鉄道局もわかっているわけですよ、
問題点が。
教育訓練とかなんとか言いますけれ
ども、安全意識もありますけれ
ども。
ここで、「情報伝達の迅速性」ということで、
先ほど言いましたように、二名の乗務員がいて、そのまま、上司に電話して、帰ってこいと言うから帰っていった。「トラブルや
事故等の情報は、迅速に、上司に
報告もしくは
関係部署等に水平展開されているか。」と。これは、縦の
関係だけでやっている組織では横へ行かないんです。これがボウリング場問題です。横へさっと流れるようなシステムに
JR西日本はなっていない。これに対して結果をお出しになるんでしょうから、私もそれを見せていただきたい、大変興味深く思っております。
私が申し上げたいのは、
国土交通省あるいは
鉄道局も、
最後に五月九日の、急曲線、つまり急なカーブですね、「急曲線に進入する際の速度制限に関する対策等について」というのをプレスにも発表しているわけでございまして、
ATSを義務づけましょう、あるいは線区ごとの運転最高速度や曲線部進入前後の速度差、
列車の運行頻度等を勘案して、今月までに結果を出しなさい、こう言っているわけですけれ
ども、そんなことが今もう一遍言わなきゃいけないんですかね。
運転士の資格要件な
ども言っておりますが、「適性」という
言葉が出てまいります。これも非常に危ない話でございまして、何をもって適性とするかということです。
運転士さんの適性とは何かということを余り厳密に考えますとおかしな話になる。ロボットの方が安全だということになってしまう。
そういうことを考えまして、大臣、
最後にお聞きしたいんですが、この問題は、私は、
JR西日本だけじゃなくて国の公共
鉄道事業に対する姿勢も問われているし、国民全体が国に対しても不安を持っている。一体どこがチェックするの、どこがきちっとした仕事をしてくれるのか、
JR西日本だけでいいのかということだと思うんですね。
今後、国の対策として、予算にも触れられておられます、記者会見で。そういう話も含めて、あるいは、心の
ケアなどというのは、そんなに
JR西日本だけでやれる話でもございませんし、それから、今言いましたような人間の研究な
ども、これは
事故調査委員会は無理だと
思いますので、あるいは、人間工学の先生もいらっしゃいますが、もっと広くやっていただきたいな、こういうふうに思う次第でございますが、一言大臣の
答弁をお願いいたします。