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内田参考人 東洋大学の
建築学科の教員の
内田でございます。こういう
機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
今回は、
二つの
法律、
公営住宅法の一部
改正の
法案、それから
特別措置法に関する
二つでございます。私は、きょうは、時間の
関係もございますので、主に
公営住宅法の問題をしゃべりたいと思います。
ただ、
一言、
特別措置法に関しても申し上げておきたいと思うんですけれども、私は、特に
中心になっております
地域住宅政策交付金というのは、先行して実施されております
まちづくり交付金と同様な性格を持つ
一括補助金だというふうに思います。
確かに、他分野との
連携とか、
小林参考人が申されたような、
自治体が
計画を立てて
評価するというこの
プロセス等、非常に注目すべき点は多いのでございますけれども、
地方自治体の職員の
方々に伺いますと、
まちづくり交付金が、非常にチェックが厳しくて使い勝手が悪いというふうな批判があるということはぜひ理解していただきたいと思います。
それから、そもそもこれは、
一括補助金でございますけれども、本来で言えば、
交付税なりあるいは税源の移譲が本筋ではないかということも述べておきたいと思います。
それから、私が申し上げます
公営住宅法の一部
改正についてでございますけれども、私は、個々の
施策については
それなりの
改善案として
評価しております。その上で、私が申し上げたいのは、一部
改正は
それなりに理解いたしますけれども、
公営住宅をめぐる
状況認識がちょっと甘いのではないかということを危惧するわけでございます。
今日、私もさまざまな
自治体と
住宅マスタープランなんかをやりますけれども、
公営住宅を積極的につくっていこうという
自治体はもう皆無の
状態です。
大都市では建てかえのみが行われているという
状況なんですね。なぜそうなのか。単にこれは財政上の問題ではないというふうに私は思います。やはり、もう
公営住宅システムがかなり破綻しているのではないか。あるいは、
自治体の
担当者なり
担当部局がやる気を失っている。あるいは、私がかかわりました
住宅の
審議会等において、
公営住宅をもっと建てようという
発言に対して、
市民の方からブーイングが起こるという
状況だということも理解していただきたいと思います。
そこに、私の簡単な、「
大都市の
公営住宅行政の改革を」というペラの
メモがございます。御存じのように、一九九六年に
公営住宅法の
改正が行われて、
応能応益家賃が
中心になりました。これは
公営住宅の
入居者に対して
家賃補助をするというふうに読みかえてもよろしいかというふうに思います。
私は、
豊島区の
住宅対策審議会の会長として
住宅マスタープランの
答申案策定にかかわり、この間、
情報開示を
徹底して求めました。どういうふうになっているかということを求めて、ある程度
実態を知ることができました。
私は、
住宅供給に当たりまして
市場メカニズムを重視しておりますけれども、例えば、主たる
家計支持者が失業したとか死去したという場合の
セーフティーネットとして、あるいは
ファミリー層に対する安定した
賃貸住宅の
供給主体として、あるいは
まちづくりとの
連携で、例えば
木造密集市街地ですけれども、そういうところの
まちづくりと
連携して
公的住宅を供給するという
意味では、
公共の
役割について非常に
評価しております。ただ、
一体、
住宅行政における
セーフティーネットとは何かということをもう少しはっきりお互いに
議論した方がいいのじゃないかというふうに思うんですね。
例えば、
豊島区においては、
区営住宅と
都営住宅が千五百戸ございますけれども、ほとんど空き家は発生しないという
状況です。発生すると、百倍近い
応募率なんですね。そうしますと、いざ、
セーフティーネットとして、困ったと駆け込んできた
方々が
公営住宅に入る
機会は皆無に等しいという
状況でございます。
それから、
高齢の
年金生活者のほぼ八〇%は、収入の上では
公営住宅の
入居階層になっている。そういたしますと、どこまで
住宅をつくっていいのかというのが
担当部局の非常に困惑するところだと思います。
それから、
豊島区の場合でいいますと、
区営住宅に対して区、都、国からさまざまな
補助があるわけです。
建設補助もありますし、
家賃補助もあるわけですけれども、その
補助は平均九十万円ぐらいに及んでいます。八十万から百万を超えるところまである。そうしますと、
公営住宅に入れた方と、入れないで
民間の
借家に住んでいる方の格差は余りにもひどいんじゃないか、
公平性を失しているのじゃないかというふうに思います。よく、
高額所得者が偽っているというような
議論がありますけれども、それは私から見るとマイナーな問題で、むしろ、入居できた人と入居できない人の問題をどう考えるかということが問題だというふうに思います。
あるいは、
一言申し上げたいんですけれども、
生活保護の
住宅扶助額というのは
月額で五万三千七百円でございます。ということは、場合によっては、
生活保護の
住宅扶助額の倍ぐらい
公営住宅の方に対する助成がなされているという
実態でございます。
それから、そもそも、
応能応益家賃に移行したときに、当時の
政府のお考えでは、
所得の大体一五ないし一八%が
住居費だということだったと思います。それが、実際には今九%ぐらい。あるいは、
公営住宅に関しては七、八%だと思うんですね。こういう
状態でいいのか、なぜそういうことが起こっているのかということ。
私は、特に
規模係数の問題が大きいと思っているんですけれども、これはちょっと技術的な問題に入りますけれども、
公営住宅に住んでいる方は今ほとんど
高齢の方が多いんですね。お一人の場合もありますし、お二人の場合もある。それで、小さな
住宅に住んでおられるわけです。しかし、実際に、
応益係数、要するに
規模係数では七十平米で割っているということですと、小さな
住宅に住んでいる方は大体半額ぐらいにディスカウントされるということになっております。そういう問題も大きいと思いますし、詳しいことは触れませんけれども、
近傍同種家賃というのは、
市場並み家賃ではない、
関係者では大体八割ぐらいじゃないかと言われているわけですけれども、利益が入っていないというふうな問題がありまして、そこら辺も問題があるように思います。
それから、これは国の問題ではございませんけれども、
公営住宅法の本来
家賃に対してさらに
自治体レベルで各種の
減免措置がなされていて、例えば
豊島区の場合、半数以上の
方々が
月額一万円の
家賃であるという
実態です。しかも、多く払っている方の中には、
生活保護である程度ちゃんと出せるという方がおられるわけですから、非常に低
家賃になっているということも申し上げたいと思います。
それから、これは
市民のいろいろな御
意見で特に出てくることでございますけれども、
入居選定に当たって
資産の問題がチェックされていないわけですね。そのために、
資産がおありでも、あるいは
子供夫婦に自分の
住宅を譲ったなんという形で
借家に入られるなんということも起こり得るわけであって、そういう点もかなり問題だろう。
それから、一たび入居した場合、今度、
継承の問題、だれがその
権利を引き継ぐかという問題でございますけれども、今の
継承は、まず同居は三親等まで認められています。私はこれは結構だと思うんですけれども、
継承の
権利というのが同居している
親族ということになっているわけですね。そうすると、三親等まで現実的には
継承されている。そうしますと、ほとんど家族内で、あるいは
親族間で
継承されまして、ほとんど表に出てこない。そうしますと、一生懸命
住宅をつくっても、そういう形でどんどん
ストックになってしまっていて、いざ、
セーフティーネットとしてというときに苦労するわけでございます。そこら辺の
実態をぜひ御理解いただきたいと思います。
私は、
政府なりがやる気になれば、
規模係数、先ほど申しました七十平米というのを直すこともできるし、
近傍同種家賃というのもこれも改定可能だと思います。こういうことはすぐにでもやっていただきたい。
二番目に、第二段階としては、やはり、これは
地方自治体の問題ですけれども、独自
減免措置というのが今のままでいいのかどうかということをちょっとは検討していただきたい。それから、
セーフティーネットとして、例えば五年間の時限つきの
借家なんかもぜひ考えていただきたい。それを乗り切れば、かなり頑張れる若い世帯も多いと思うんですね。そこら辺を思います。
それから、もう終わりますけれども、入居に当たって、単純なガラガラポンと称されている抽せん方式ではなくて、ポイント制にしてほしい。あるいは、居住の承継も
基本的には夫婦間でいいのではないかというふうなことがございます。あるいは、
資産についても申告制にして、不正があったらペナルティーをかけるというふうなことを考えてもよろしいんじゃないか。
さらに、
最後に
一つだけ私は申し上げたいんですけれども、先ほど、
民間の
借家に入っている方と、あるいは公団もそうなんですけれども、
公営住宅に入る方の不公平が非常に多いんですね。
公平性を失していると思います。そういう面でいえば、今の全体の
公営住宅に入っている方に費やされている助成をもっとみんなにやった方がいいのではないか。そのためには、一種の、
民間に入っている方、公団に入っている方にも
家賃補助を本気で考えていく必要があるというふうに思います。
以上でございます。ありがとうございます。(拍手)