○服部
参考人 城西国際大学の服部でございます。
私は、今、大学では二十ぐらいの学生に福祉を教えておりますけれ
ども、東京の渋谷区で、渋谷区第一号のNPO
法人をつくりまして、居宅
介護支援単独事業をやっております。もう六年目に入りました。私も
ケアマネジャーの一人ということで、地域に出ている、
在宅に出ている
ケアマネジャーの一人でございます。
きょうは、お手元に資料をつくらせていただきました。短い時間ですので、資料を御紹介しながら発言させていただきます。
まず、資料、データの一枚を見ていただきたいのですが、私は、今回の
介護保険のポイントの
一つが、給付ということにあるというふうに思っております。
現在、
介護保険制度の
一つの欠陥が、重度を
在宅で見られないというところに欠陥があるというふうに
考えております。現在、資料を見ていただきますと、
介護度五と認定された方は六割、四と認定された方は五割強、
介護度三と認定された方も三分の一は
施設に入所をしております。
そして、なぜそうなるかということですけれ
ども、
在宅で
介護をしている人の
介護負担というものを見ていただきますと、
介護度五の場合ですと、ほとんど丸一日
介護に時間をとられているというのが約六割です。
介護度四でも五一%の方が終日
介護に時間をとられているというこのデータでございます。したがって、
介護する者がいない、または
介護する者が高齢である、病気である、または
介護する者がお昼仕事についている、こういう状態と、
在宅の
介護が重度になったときには並立できないという実態がございます。
その結果として、
介護給付というものを見た場合に、データ一の真ん中の左側を見ていただきたいのですけれ
ども、現在、
施設と
在宅の一人当たりの給付費を比較いたしますと、
全国平均で一人当たり四・七倍の差がございます。これは、単位は千円という単位でデータをつくっておりますけれ
ども、昨年の十一月
段階の給付費の実態
調査から見ますと、
平均で、
在宅は一人当たり七万五千五百円を使っております。それに対して、
施設は三十五万五千六百円。同じように
介護度別に見たデータがそこでございます。したがって、人数からしますと、要
支援、要
介護度一は全体の四七%、約半数弱ですけれ
ども、
介護費用に関しては要
介護度四と五で約半数の四六%を給付として使っているという実態がございます。
私は、
施設に
費用がかかるということを否定はいたしません。ただ、実態として
在宅と
施設に支払われる給付の差があるということで、
施設に入ることをおくらせることによって
介護給付費が大幅に削減できるということを申し上げたいと思います。
大田区のデータを出しておりますけれ
ども、
介護者がいない、または
介護者がいても高齢である、日中
介護者がいない、昼間独居である、家族に迷惑をかけたくない、これが
施設に入所した方の理由であります。より長く、一日でも長く
在宅で
生活ができるような
介護保険制度をつくることによって、
介護給付費が大幅に削減できるというふうに
考えております。
データの二枚目を
お願いいたします。
これは午前中も言われておりましたけれ
ども、
ケアマネジメントの独立確保。これも、今回の
介護保険制度の、五年間見過ごされてきた
一つの欠陥だというふうに私は思います。サービスと併設することがすべて悪いわけではありません。しかし、そこで
ケアマネジャーの独立性が阻害されているという実態がございます。
これは東京都の
介護保険課が平成十五年の秋に行ったデータでございます。
ケアマネジャーの約六割が兼務をしております。そして、サービス
事業所と併設をしているのが九五%。約五、六%しか独立をしていないという実態があります。それは、
介護給付費が非常に低いというところから、私の
事業所も、
ケアマネジャーの給与といただける
介護給付費がほぼとんとんです。したがって、事務所経費が一円も出ないというのが実態でございます。
そういう中で、
ケアマネジャーは、数を多くこなすことで
自分の給料を稼げと言われております。または、併設サービスを導入することでトータルで
事業所の収支を合わせろというふうに言われております。
その結果でございますけれ
ども、データ二の一番下の左側のデータを見ていただきたいんですが、これは、
ケアマネジャーさんが現在の
事業所の中でプランをつくるときに、
所属事業所から何らかの指示、提示を受けるかというデータでございます。それに対して、ほとんどある七%、行われる場合もある二九%。三六%の
ケアマネジャーが、これは東京都がとったデータです、何らかの形で指示を受けるという、これを申しております。このような、非常に板挟みになっている、利用者さんと雇用されている
事業所との板挟みになっている、そして数をたくさんこなさなければいけない、こういう
ケアマネジャーの実態がございます。
その結果、その上のデータですけれ
ども、現在の
ケアマネジメントの職場でケアマネを続ける自信があるかという問いに対して、続ける自信がある四三%、自信がない三七%、今やめたい二〇%ということで、五七%の
ケアマネジャーが今の
事業所で継続をするということに対して自信を失っているという状態がございます。
そして、右の一番下のデータですけれ
ども、指定取り消しの中で一番多いのが訪問
介護、そして二番目に多いのが居宅
介護支援事業所でございます。
これは、不正というのは、
ケアマネジャーが意識的に協力するか、または見て見ぬふりをするか、そのような形で何らかの協力がなければ、私は不正というのは存在しないというふうに
考えております。したがって、
ケアマネジャーを独立させることによって、
介護保険の不正というのを一〇〇%防ぐことができるというふうに私は思います。
私も
ケアマネジャーの一人として、先週、給付管理をやりましたけれ
ども、毎月毎月のサービスの、そのサービスを利用者さんごとにどのくらい受けたのかというデータを
事業所からもらって、
ケアマネジャーはそれをチェックして、それを国保連合会に送っております。したがって、発生時点で一〇〇%チェックをすることが可能です。やっていないのにつけるというようなこととか、またはもっと多くをつけてしまうということは、ミス以外には一〇〇%不正をチェックするということが、
ケアマネジャーの独立を確保することによって可能であるというふうに私は
考えております。そのお金を減らすだけ、またはそういうことに伴う不信感を減らすだけでも、
介護保険制度に対して信頼を回復できるというふうに思います。
そして、三点目、データの三番目を見ていただきます。
今回の
介護保険制度の改定のポイントになっているのが、要
支援、要
介護度一、
介護保険の約半数の方を
予防給付に変えるということであります。今までもお話をされておりましたけれ
ども、
予防給付は認定
審査会が行って、
介護保険証に既に、あなたは要
支援一、要
支援二というふうに記載をされて
自分の手元に戻ります。したがって、そこには利用者さんの意向は全く反映されません。これは行政処分であります。そのような形で、今までサービスを利用していたものから大幅に制限されるということ、これ自身が、
介護保険制度の二条にあります利用者の選択制ということに反しているのではないかというふうに私は
考えております。
まして、要
支援、要
介護度一でも八十歳以上がやはり六割というこの実態を
考えたときに、本当に
筋トレで
生活が支えられるか、これに大きな疑問を持っております。
現在、
予防給付に関しては、
筋トレと口腔ケアと栄養改善という、この指導というものが新しくメニューに加わりました。
ところが、口腔ケアと栄養改善に関しては、平成十二年の
段階から居宅療養管理指導という既存のプログラムの中に既に入っているものであります。新たに入ったのは
筋トレだけでございます。これだけを入れるために大幅な改定をするということが本当に必要なのかどうか、もう一度ぜひ
考えていただきたいというふうに思います。
その
予防プランを、今、保健師がつくるというふうになっております。現在働いている専門職の人数をそこに入れました。看護師が約百十万、医師が二十六万、
介護福祉士が十七万六千人、保健師は全国で三万八千三百五十名であります。
全国五千カ所の今回の地域包括
支援センター、そこに
予防給付約百六十万人、それと各
市町村の六十五歳以上の五%の人口約百二十万人、合わせて二百二十万ぐらいの
予防給付を保健師さんがやるというのは人数的に不可能であります。実質は
ケアマネジャーがそれを担当する。
しかし、厚生労働省の書類によりますと、
ケアマネジャーが
予防プランをつくったとしても、
予防プランの指示と決定と評価、これは
ケアマネジャーには委託をしない、保健師がやるんだということが明記をされております。ということは、実質、保健師がチェックをするということであります。
保健師というのは地域包括
支援センターに雇用され、それを雇用しているのは
市町村であります。
介護保険で多くの方が言われていたように、
ケアマネジャーがサービスの
事業所に雇用されているというところから中立性が保てないということを言われておりました。それでは、
保険者に雇用された保健師であれば中立性が保てるというふうに言えるのでしょうか。むしろ、
保険者の意向と
在宅の実態の板挟みにまた保健師がなっていくという同じ過ちを繰り返すのではないか、このように私は危惧をしております。
そして、
トレーニングに関して、午前中も言われておりましたけれ
ども、決して
トレーニングは体力測定だけではかるものではございません。
筋トレで例えば歩く時間が短くなったとしても、筋力がアップをしたとしても、やはりその人間の体力というものは精神的な要素と身体的な要素というのがございます。
トレーニングの中で、これは大田
先生という筑波の
先生で、
介護予防というのを平成十二年から推進している方のデータから抽出をいたしましたけれ
ども、精神的なストレスに対する抵抗力、こういうものがその方の体力そして
生活力に影響しているということを申されております。
また、一番最後のデータですけれ
ども、リハビリというのは人間復権というふうに言われております。それは、自立ができる可能性のある人だけを
対象にしてしまうと自立が望めない人は除かれてしまう、これは妥当ではないということです。
したがって、今回も、
介護予防というのは必要なものです。それは要
支援、要
介護度一だけではありません、二も三も四も五も、その方がたとえ重度であったとしても口腔ケアも、
介護予防というこの視点が必要であります。最後まで人間らしくその方が
在宅で暮らし続けるように、排せつも、それから食事も含めて、その方の
介護度を悪化させないという努力をすべきであるというふうに私は
考えております。
データの四番目に参ります。
要
支援、要
介護度一でございますけれ
ども、現在、要
支援、要
介護度一と認定された方が約半数弱ございます。その
方々の今までの限度額に対するサービスの利用率を見たのがデータの右の一番上でございます。要
支援は過去五年間利用率が変わっておりません。これは
全国平均です。半分も使っていません。一番新しい昨年の十一月のデータを見ても四八%です。要
介護度一は四割も使っておりません。したがって、要
支援、要
介護度一がサービスを多く使っている、過剰に使っている、それが給付を押し上げているというのは実態と違うデータでございます。この方
たちは、御自身の
生活の中で地域のサービスを利用しながら
生活をしているという実態が、この給付の限度額に対する利用率の低さというところであらわれているというふうに思います。
では、どうして要
支援、要
介護度一がふえているかといいますと、それは加齢によるものであります。左の真ん中のデータは、これは厚生労働省が
介護保険を導入するときに出したデータでございます。年齢別の要
介護発生率というのは年齢に従ってアップするものであるというデータを厚生労働省が出しております。平成十二年、
介護保険が導入されたとき一七・三%の高齢化率、ことしは一九・九%の高齢化率であります。特に八十歳以上の超高齢の方が今人数がふえております。その結果として要
支援、要
介護度一の方がふえているという実態がございます。
そして、要
支援、要
介護度一がサービスを利用されている実態を東京都の
社会福祉協議会が
調査したデータが、その後でございます。真ん中の右を見ていただきますと、独居が多いということです。要
支援、要
介護度一の四六%がひとり暮らしをしております。
全国平均のひとり暮らしが一九・七%というデータから比べると、倍の独居率であります。したがって、家族がいれば買い物も洗濯も調理も、または掃除も家族がフォローしていただけます。ところが、超高齢になってそこからできないところが出てくる、重い荷物を持って買い物に行けない、その結果、そのサービスを支えにして
在宅で
生活をしているという実態でございます。
そして、データの四の一番下の左側を見ていただきますと、その場合で、ホームヘルプサービスも一番多く利用されておりますけれ
ども、真ん中の五番目以降のデータを見ていただきますと、食事、緊急通報サービス、近隣やボランティアの手助け、有償の自費による家事援助サービス、保険外の有償、お金を払った移送サービス、このような地域のサービスと自費のサービス、これを組み合わせながら最低限の
生活を
介護保険で支えているというのが実態であります。そしてその結果、
自分でできたことがふえたという
意見も出ているのが実態であります。
したがって、今この要
支援、要
介護度一の
方々の最後の支えである
生活援助というものを外すことによって、私はやはり、歩いている人のつえをとってしまう、そういう役割を果たすのではないか。ぜひここを今回の
介護保険の中では、一人一人の
生活が違う、したがって一人一人の
生活に合わせたプランをつくりながら、その実態に合わせてプランを組んでいく。一律に利用を抑制するという、今回の要
支援、要
介護度一を分けていくという
考え方に関してはもう一度見直して、現在のサービスの中に
トレーニングを組み込んでいく、こういうことが必要ではないかと思います。
時間ですので終わらせていただきます。この
介護保険または福祉という問題に関しては、どの地域で
調査をとったとしても、すべて
国民が一番関心を持っている内容でございます。ぜひとも、私はどの党派に関係なく、今の
在宅の実態を知っていただきたいと思いますので、よろしく
お願いいたします。
ありがとうございました。(拍手)