○城島
委員 今回のこの
東急観光のケースのように、投資ファンド運用
会社、いわば純粋持ち株
会社というのが経営権を握った場合の使用者性、これについては現行法は手当てをしていないのではないかというふうに思うんですね。今回起こったようなケースというのは、今まで、こういったケースが生ずることを想定してこなかったのではないかというふうに思うわけです。
これまで、直接の雇用主ではない者についての使用者性、例えば
事業持ち株
会社と子
会社との
関係、派遣先
企業と派遣元との
関係、それから請負発注先
企業と請負
会社の
関係など、労組法上の使用者性、すなわち、団体交渉に応ずるべき立場にあるのかないのかの判断については、最高裁において、
基本的な労働条件について、雇用主と同視できる
程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるという考え方が示されているわけであります。これは
平成七年の二月二十八日、朝日放送事件の最高裁判決であります。
それでは、純粋な持ち株
会社の使用者性についてはどうかといえば、これは資料にも記載をしておりますけれ
ども、実は、一九九九年、持ち株
会社解禁時に一度論議されてきましたけれ
ども、実質的には中断されたままになっているということではないかと
思います。
資料十七ページをごらんいただきたいんですけれ
ども、九九年に、持株
会社解禁に伴う
労使関係懇談会というのが中間報告をまとめております。二十三ページ、ここに、「団体交渉当事者としての純粋持株
会社の使用者性が問題となるケース」が仮にあったとしても、「これまでの判例の積み重ね等を踏まえ現行法の解釈で対応を図ることが適当であると考えられる。」というふうに結論づけられているわけであります。
といいますのは、八年前でありますけれ
ども、当時は、二十二ページにありますが、使用者側の主張がそこに書いてありますが、そこには、純粋持ち株
会社の動きも見えず、問題もまだ生じていないとか、「純粋持株
会社においては、グループ内において、戦略的に経営資源の配分を行うのが本来の役割であり、子
会社の役員人事と財務しか扱わないのではないか。したがって、純粋持株
会社においては、子
会社の日常的な経営判断に関わることはなく、また、子
会社の
労働者の労働条件の決定にまで関わることもない」、こういうふうに使用者側の主張があります。というのは、恐らく当時としては、私もうろ覚えでありますが、本当の
実態であったろうというふうに
思いますよ。
ですから、この段階では、例えば、親
会社である
投資ファンド会社の代表者がその子
会社の取締役会の議長におさまって、子
会社の
労働者の給与とか賞与とかいった労働条件について公の
会議において考え方を示すといったようなことを含めて、日常的な経営判断にかかわるといったようなケースは想定できなかっただろうな、また想定していなかったんだろうなということだと
思います。
さらに、この中間報告では、二十四ページを見ていただくとわかりますが、「使用者性が推定される
可能性が高い典型的な例」ということで次の二つを挙げておりますね。一つ、「純粋持株
会社が実際に子
会社との団体交渉に反復して参加してきた実績がある場合」。二点目が、「労働条件の決定につき、反復して純粋持株
会社の同意を要することとされている場合 例えば、賃上げ等について、子
会社が反復して純粋持株
会社と相談し同意を得た上で決めているような場合やその都度純粋持株
会社に報告して同意を得ないと実施できないような場合等が考えられる。」
この二番目にちょっと注目をしたいと思うのであります。すなわち、投資ファンド
運営会社の代表がみずから子
会社の取締役会の議長となり、その同意がなければ労働条件の決定ができないにもかかわらず、先ほど申し上げたように、
労使交渉とは名ばかり、実質的な
労使交渉が形骸化しているばかりか、組合員であることを理由にボーナスが支払われないような不当労働行為が横行する場合、これはまさに純粋持ち株
会社が経営に大きな支配力を持っているというふうにみなされて、今言った二点目に当てはまるケースではないかというふうに
思います。
日本の経済
社会情勢が大きく今変わっているわけでありまして、特に
企業再建市場というのは、今、
日本企業の再建にとって重要なツールとしてまさに大きな注目を浴びています。昨今、しょっちゅうこういうニュースが大きく報道されることが多いわけであります。
しかし、投資ファンドとて、当該
企業における
労使自治、あるいは
労使協議という
社会的ルールをないがしろにするということであれば、それはまさに、よく言われるように、ハゲタカファンドとかあるいは
買収屋といったような悪いイメージがまさにひとり歩きをしてしまうという危険性があるのではないかというふうに
思います。
労働組合員であることを理由にボーナスを支給しないというような、これは今言った代表例でありますが、こういう不当労働行為がまかり通るのであれば、再建
企業、再建市場の健全な
発展そのものをそういうのが阻害してしまうのではないか。今こういう再建市場は大事ですから、そういうことが健全な
発展を阻害するんじゃないかというふうに思うんですけれ
ども、
大臣、この辺の御見解はいかがでしょうか。