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山本参考人 全国町村会長の
山本でございます。
最初に、平素から私
ども町村の
行政について
先生方には格別な御支援それから御指導をいただいておりますことに対して、お礼を申し上げさせていただきます。また、今日はこのような
機会をつくっていただきまして、ありがとうございました。お礼申し上げます。
私は、きょう、
国民健康保険に関しまして六点ほど申し上げたいと思います。
まず
最初に
医療保険制度の
現状、それから二番目に
国保の
現状、それから
国保と他の
保険制度との比較、それから
保険制度に対する一本化ということで、その次は、
都道府県が今回の
調整を行うための
制度に入ってきたということ、それから一番
最後のまとめで
お話を申し上げたいと思いますので、よろしく
お願い申し上げたいと思います。
まず
最初に、
医療保険制度の
現状というのは、私がここで申し上げるまでもなく
先生方は十分に御
承知だと思いますけれ
ども、あえて申し上げさせていただきますが、我が国の
医療保険制度は
国民皆
保険制度を採用しておりまして、世界でも最もすぐれた
制度である、私はそういうふうに思っております。言いかえますと、
フリーアクセスをとっているのは日本だけじゃないか、一番すぐれている
医療保険制度じゃないか、そういうふうに思っているところでございます。この
国民皆
保険制度を堅持することは、
国民の総意であると言ってもいいと私は思っているところでございます。
ただ、
国保の場合は、御
承知のように、
自営業者や
無職の人が大変多いということです。
有職者の人が一〇%以下でございまして、あとほとんど年金、あるいは言いかえると
無職者が大半であるということで、中でも無
収入の方がたくさんいるということでございます。こういうような、言うなら被
保険者の
構造が極めて、一番悪い
状況下にある、こう言ってもいいというような気がいたします。
市町村国保には
人口の約三六%が加入しておりまして、その
財政運営というのは、さっきの
お話がありましたように、極めて危機的な
状況でございます。さらにまた、最近では、
リストラやフリーター、それからまたニートの
増加等に起因いたします、そういう
人たちがどんどん入ってきております。さっき申し上げたように、
無職者が多い、低
所得者が多い、その中にそういう方がどんどん入ってくるということでございます。もちろん、これは入ることを拒むわけではありません。どうぞというところなんですけれ
ども、そういうような被
保険者の
構造になっているということでございます。
ですから、こういうようなことを考えていきますと、先ほ
どもお話がありましたように、言いかえますと一兆円以上の
財源不足が生じているということでございます。さらにもう一つは、
老人医療費がかなり圧迫を加えているという
状況下であります。これが今の
国保の現況ではないかというふうに思っておるところでございます。
続いて、今の
国保なんですけれ
ども、この
現状を見てみますと、
平成十四年度の
市町村で
国保の
財政状況を申し上げますと、
法定分で
一般会計繰入金が六千百三十四億円となっており、あわせて、
法定外の
負担、言うなら純粋な
繰入金として扱っているのが三千六百八十億円でございます。これらを合わせますと一兆円になることになるわけでございまして、それにもかかわりませず、そのように
繰り入れているのにもかかわらず四千百八十八億円の
赤字となっておりまして、
保険者の六割、いわゆる
保険者でございます
市町村ですが、六割が
赤字の
運営を行っているというところでございます。したがいまして、
国保の
運営がいかに
市町村に重荷になっているかということが言えると私は思います。
国保の
事業については、もう御
承知だと思うのですけれ
ども、
特別会計で行っておりまして、
住民のことを第一と考えれば、
制度を維持するために、
市町村の
一般会計から毎年
多額の
法定外繰り入れを行っています。さっき申し上げたとおりです。それでも
赤字収支となっている
現状を考察いたしますと、もはや
国保制度は
破綻をしていると言ってもいいと思っているところでございます。
国保の
保険料の
収納率でございますけれ
ども、
平成十五年度の
全国平均は九〇・二一%でございます。
町村部は九三・七六%でございます。毎年
低下傾向にあるわけでございますけれ
ども、何としてでも九〇%を超える
収納率を維持してきたことは、
市町村の努力の結果であるというふうに思っているところでございます。
しかしながら、今日の厳しい
経済情勢及び
介護保険制度の導入に従いまして、
国保加入者にとって
負担感が大きくなっています。
国保と
介護保険料は一緒に徴収をいたしますので、納入するということになっておりますので、
負担増になったんだ、そういう感覚を持たれているようでございます。したがいまして、この
収納率がだんだん厳しくなってくるということが予想されているところでございます。
また、近年は、さっき申し上げたように、失業された方やそれから
所得のない
加入者が
増加をしておりまして、
保険料の
未納者の
増加につながってくるおそれがあるというところでございます。
結局、
収納率が低下いたしますと、
制度を維持するためには穴のあいた金額を
市町村が
一般会計より補わなければならない、そういうような悪循環を繰り返していくことになると思います。
一般会計から
法定外の
繰入金を投入することは、本来
市町村が行うべき
事業の予算へは回りません。したがいまして、各種の
福祉施策や
行政サービスを阻害することになりかねない、そういう
状況にございます。言うならば、今が最高の限度に達しているんじゃないか、そういうふうに思っているところでございます。
また、このことは、
国保加入者のみならず、間接的には、他の
被用者保険加入者を含めた全
住民がこの
国保の
負担をすることになると思います。要するに利用し合うということでございます。
次に、
国保とほかの
制度を比較してみますと、どういうふうになっているかといいますと、
保険の主なものは、もう御
承知だと思いますけれ
ども、
政府管掌の
保険、
一般の
健保、それから
国民健康保険というので大体被
保険者の皆さんが大別される、そういうふうに思います。
そこで、
国保でございますけれ
ども、
市町村国保は、今、四千六百十九万人の人が加入しております。率でいきますと三六・一%でございます。そのほかに
国保組合というのがございますが、これは四百十一万ぐらいで、
政管健保が三千五百八十五万人の方が加入しておりまして、二八%。それから、
組合健保ですけれ
ども、これは三千五十七万人で二三%ぐらいの比率。そのほか、
共済組合、その他がございます。
特に、三つの大きい
組合を対象にいたしますと、年齢が、
国保は五十二・五歳、
政管健保は三十七・二歳、それから
組合健保が三十四歳でございます。
特に一番気になるのは、一人
当たりの平均的な標準の月額の
収入でございますけれ
ども、
国保の場合、一人
当たりがなかなか出てまいりません。
政管健保は二十八・九万円、それから
組合健保は三十七・二万円の
収入でございます。一
世帯当たりしか
国保の場合は出てまいりません。一
世帯当たりを見てみますと、百五十三万円が
国保で、
政管健保は二百三十七万、それから
健保組合は三百八十一万円で、
健保組合に比べますと半分の
所得しかない、こういう
状況でございます。
こういうような
状況で
運営をしているために、さっき申し上げたような
財政的な
破綻状況が起こり得る
可能性が高いということでございます。
次に、
医療保険制度の一本化でございます。
私
ども全国町村会は、かねがね、この
医療保険制度の
一元化、一本化について提言を申し上げて今日に至っておりますけれ
ども、
負担と
給付の
公平化のためにも、ぜひともこの
一元化というのはやるべきである。
医療費というのは、
全国平均でうまくいけばいいんですけれ
ども、御
承知のように、
地域によっては
医療費が高いところもあれば少ないところもございます。ですから、
県単位ぐらいで
一元化を図って、将来
全国一本化を行っていくことが望ましいのではないかというのが、私
ども町村会で考えていることでございます。
ところが、それぞれの
健保組合には歴史がございますので、簡単に一本化というのはいかないようでございますけれ
ども、いずれにしても、
県単位程度で、この
国保だけでも早く
一元化をすることが必要ではないか、こういうふうに思っているところでございまして、できれば今回の
措置で
一元化が実現すれば、もっともっとこの
運営がやりやすくなっていくんじゃないかというふうに思っているところでございます。その点については、今回もそういうことをねらいながらの
法改正を
お願いしているというところでございます。
御
承知だと思いますけれ
ども、
平成十五年の三月に、
政府は
医療保険制度の
基本方針を閣議決定されました。
その中で、「
保険者の
自立性・
自主性を尊重した上で、
医療保険制度を通じた
給付の平等、
負担の公平を図り、
医療保険制度の
一元化を目指す。」
二つ目は「
保険者の
財政基盤の安定を図るとともに、
保険者としての機能を発揮しやすくするため、
再編・
統合を推進する。」ここが私もさっき申し上げたところでございますが、「
再編・
統合を進めるに当たっては、」「
都道府県単位を軸とした
保険運営について検討する。」ということを決められたことはもう御
承知のとおりでございまして、次に、
市町村国保についてでございますけれ
ども、「
都道府県と
市町村が連携しつつ、
保険者の
再編・
統合を計画的に進め、
広域連合等の活用により、
都道府県においてより安定した
保険運営を目指す。」こういうふうにされておるところでございます。
これらから考えて、最終的には
医療保険制度の一本化を目的に、段階的な
措置として
市町村単位の
国保を
都道府県単位に推進すべきではないだろうか、そういうふうに思っているところでございます。
そして、
都道府県単位の次の段階として、同じく
県単位で分割し
運営することになります
政管健保を
国保と一本化することの方が、今ちょうど、言うなればその時期に来ているんじゃないかと思います。御
承知のように、
政管健保は
保険庁でやっておりますので、
社会保険庁の方がああいう
状況でございますので、この際、思い切って
政管健保と
国保を一本化することによって、私は、広域的な
保険運営ができることになるんじゃないかと思いますのと、みんなで支え合っていく、そういう
保険制度をつくり上げていくことができるんじゃないでしょうか、そういうふうに思っているところでございます。
言いかえますと、できればこういう
保険者というのは、最終的には国が
保険者になることの方が一番望ましいというふうに思っているところでございます。どうぞ、早い時期にすべての
医療保険については一本化をして、国がその
保険者となって
運営をしていただくような、そういう時代を
先生方のお力でつくってほしいというふうに願っているところでございます。
それから、次でございますけれ
ども、
都道府県の
財政調整交付金の
制度でございます。
都道府県の
財政調整交付金で、今まではございませんでしたけれ
ども、今回そういう
制度を設けることになりましたのは、私
ども市町村に対しては、当然
地方という
立場からいくならば、
都道府県がその一端を担っていくということについては大賛成でございます。早くそういうふうにやっていただければよかったのではないかと思いますが、これが、私は将来の
全国一本になる一つのきっかけと切り口になるというふうに思っているところでございます。
言うならば、
都道府県の方はできるだけこういうものには近寄らないようにしよう、近寄ることによって
財政負担を担わざるを得ないというお考えもあったかもしれませんけれ
ども、むしろ将来のことを考えていくならば、今
都道府県がこの
調整金だけでも
負担をするということになっていけば、将来の
全国一本化への道を切り開いていくことができるのではないか、そういうふうに思っておりますので、今回のこの
制度については、私は全く賛成でございます。
もう一つは、
介護保険もそういうふうにやっていくべきだと思います。ばらばらの、
市町村単位の
保険者というのはもう存在しない、そういう時代ではないというふうに私は思います。ですから、できるだけ広域的にこういう
制度というのは活用していくことが、より被
保険者の皆さんたちに利益を与え、そして
負担をそう増大していくことがないというふうに思っているところでございますので、ぜひともひとつ、こういうことを考えていけば、今回の
調整交付金を県が一部担当することになったことは、将来に向かって大変大きな貢献をするきっかけをつくることになる、そういうふうに思っているところでございます。
最後でございますが、取りとめのないようなことをいろいろ申し上げましたが、
医療保険制度は
国民生活に直結する重大な問題であります。しかしながら、
国保を初め、
医療保険財政は各
制度とも崩壊状態にあることは御
承知のとおりでございます。残念ながら、
国保はもう既に
破綻状況にございます。
現状のまま持続するほどの体力はもう残っておりません。
今日まで、数度にわたりまして抜本
改革の実行年度が示されておきながらも、
意見集約等に困難を来しまして、実現されるに至っておりません。もはや一切の時間的な猶予はないと思います。早急に
医療保険制度の一本化をさせなければならない、そういう
状況下にあると思います。今回の改正はそのための第一歩であるというふうに思っておりますので、ぜひとも
先生方の格別のお力で、よりよい
保険制度の確立をしてくださることを
お願い申し上げて、私の
意見を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)