○千坂会計検査院当局者
平成十五年度
農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御
説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十四件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項六件及び
意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置
状況二件であります。
まず、不当事項について御
説明いたします。
検査報告番号一三六号は、復旧治山事業の実施に当たり、護岸工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
同一三七号は、経営構造整備事業の実施に当たり、事業主体でない者が取得したホイールローダーを事業主体みずからが取得したように装って補助の
対象としていたものであります。
同一三八号は、農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、ブロック積み護岸の基礎として築造した底版等の所要の安全度が
確保されていない
状態になっているものであります。
同一三九号は、中山間農地保全
対策事業の実施に当たり、補助金の交付申請前に既に自力により導入を完了していて、補助の
対象とならないコンバインを補助の
対象としていたものであります。
同一四〇号は、森林保全整備事業の実施に当たり、コンクリート吹きつけ工の施工が設計と著しく相違していたため、工事の
目的を達していないものであります。
同一四一号は、新山村振興等農林漁業特別
対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、もたれ式コンクリート擁壁等の所要の安全度が
確保されていない
状態になっているものであります。
同一四二号は、食品リサイクルモデル整備事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入れ控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないものであります。
同一四三号は、農業生産総合
対策条件整備事業の実施に当たり、既に自力により導入を完了していて補助の
対象にならない葉たばこ乾燥調製の作業用機器等を、補助の
対象としていたものであります。
同一四四号は、地域農業経営確立支援事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入れ控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないものであります。
同一四五号は、経営体質強化施設整備事業で実施した農家台帳データ入力業務において、主要な項目のデータが入力されていなかったため、農地等のデータを蓄積して担い手への土地の集積を図るという補助の
目的を達していないものであります。
同一四六号は、小規模零細地域営農確立促進
対策事業の実施に当たり、導入する農業用機械施設を
利用することについての十分な合意形成が得られないまま事業実施計画を
策定したため、導入した機械施設の一部が
利用されていないこととなるものであります。
同一四七号は、地域用水環境整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、洪水吐け等の所要の安全度が
確保されていない
状態になっているものであります。
同一四八号は、中山間総合整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋梁上部工等の所要の安全度が
確保されていない
状態になっているものであります。
同一四九号は、小規模零細地域営農確立促進
対策事業の実施に当たり、圃場の整備工事を実績報告書記載の事業費より低額で施行していたため、補助
対象事業費が過大に精算されているものであります。
次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御
説明いたします。
その一は、緊急食糧支援事業費補助金の経理に関するもので、
農林水産省では、社団法人国際農業交流・食糧支援基金が緊急食糧支援事業として行う基金造成事業、運送等事業、差額補填資金造成事業、備蓄事業、管理運営事業の各事業の実施に必要な
経費について、
一般会計から緊急食糧支援事業費補助金を交付しているところですが、運送等事業及び管理運営事業に係る補助金について、実際に要した
経費ではなく、交付決定額と同額で額の確定を行い、差額について精算する手続をとっていなかったり、差額補填資金造成事業に係る補助金について、
対象国を特定せずに、実施されていない緊急食糧支援に備えて補助金が交付され、差額補填資金が造成されたりしている事態が見受けられました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。
その二は、生産振興総合
対策事業等により設置した農作物
被害防止施設に関するもので、
農林水産省では、生産の組織化及び作付の団地化等を図るため、防霜ファンや防風網等の農作物
被害防止施設の整備を行う農業協同組合等に対して補助金を交付しているところですが、これらの農作物
被害防止施設を設置する農地は、まとまりのある団地となっていなければ効率的な設置効果が得られないとされているのに、施設を設置した農地が事業実施地区の市町村内に広範囲に点在し、まとまった団地とはなっていない
状況が多数見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
その三は、中山間ふるさと・水と土保全
対策事業の実施に関するもので、
農林水産省では、この保全
対策事業を実施するため、五年度から九年度までの間に、基金を造成する道府県に対して補助金を交付しております。この基金を造成している道府県では、基本的
対策等の作成及びこれに要する調査等を行う調査
研究事業などを実施することとしているところですが、基本的
対策等を作成している道県は二十四道県のうち十県にすぎないなど、保全
対策事業に係る
取り組みが十分でないなどの事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
その四は、畜産環境総合整備事業等により整備した堆肥化施設に関するもので、
農林水産省では、家畜排せつ物のリサイクルシステムを構築することなどのため、家畜排せつ物を発酵させ、堆肥化するなどの堆肥化施設を整備している都道府県、都道府県農業公社等の事業主体に対して補助金を交付しているところですが、畜産農家など施設運営主体において、家畜排せつ物が野積みされるなどしていて、補助事業の効果が十分発現していない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
その五は、漁業共済事業の運営に関するもので、水産庁では、漁業災害補償法に基づき、漁業災害補償
制度を運営しております。
この
制度は、保険の仕組みによりその危険負担を分散することとして運営されており、漁業共済事業の実施主体となる漁業共済組合は、漁業者への共済金の交付等に係る事務の一部を漁業協同組合に委託し、事務委託手数料を支払っているところですが、漁協が共済金を交付する際、事業に係る事務に要する費用としたり、漁業者から受託している漁獲物の販売手数料の減収を補うなどの
目的で漁業者から手数料を徴収している事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
その六は、土地
利用型酪農
推進事業に関するもので、
農林水産省では、土地
利用型酪農
推進事業を
独立行政法人農畜産業振興
機構に実施させており、酪農経営者に対し経産牛一頭当たりの飼料作物作付地の面積の
水準に応じて奨励金を交付させております。そして、飼料作物の作付を実施していない酪農経営者に対しても、飼料生産のための土地の
確保等への
取り組みを誘導するため、奨励金を交付させているところですが、十五年度に作付を実施していない酪農経営者の大半が継続して飼料作物の作付を実施していないという
状況が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
引き続きまして、
平成十五年度
農林漁業金融公庫の決算について検査いたしました結果を御
説明いたします。
平成十五年度
農林漁業金融公庫の決算について検査しました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
以上をもって概要の
説明を終わります。